アレク・プランタン

かえるまる

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第2章 幼年編

612 ダンジョン主の部屋

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 ブワワァァッッ!

 「おっさん!」

 「「「ルシウス団長!」」」

 バリーさんの身替わりになって。ミスリルゴーレムのハンマーにぶち当たって吹き飛ばされたルシウスのおっさん。
 おっさんは最奥にある洞窟?崩落現場みたいなところまで落ちていったんだ。

 「なんてことをするでごわす!」

 そう言いながらも即座にゴーレムを膝かっくんで倒すキザエモン。

 「えっ‥‥!?」

 何が起こったのか理解のできないバリーさんがきょとんとキザエモンを見上げていたよ。

 「「バリーお前!」」

 「「なんてことしてるのよバリー君!」」

 「あなた!何をしたかわかってるの!」

 「何って。ゴーレムを倒そうとしてるに決まってるじゃないか!」

 「あなたの勝手な振る舞いでルシウスさんが‥‥!」

 「「そうだぞ!お前の勝手のせいで!」」

 「ずっとそう!あなたは規律も守れないのね!」

 「俺は悪くない、俺は悪くない!俺はなんにも悪くないんだ!
 俺はまだ新人なんだぞ!できなくて当たり前じゃないか!
 それを寄ってたかって俺を悪者にしやがって!」

 「「「あなた!(お前!)」」」




 「黙って!」

 俺は一喝してたんだ。

 おっさんが落ちた先。
 この新ダンジョン、ぱっと見、進む先が他には見つからなさそうだからこれが進む道なんだろうか。まさかおっさんみたいに飛び降りるわけじゃないって思うけど。わかんないな。
 いずれにせよ、すぐにおっさんを助けに行かないと。

 「メイズさん、俺おっさんを探してきます」

 「なにがあるかわからないんだよアレク君!」

 「‥‥だからですよ。だからメイズさん‥‥
 (もし1日経っても戻らないなら帰還してください)」

 これは当たり前だ。何があるかわからない。勝手をするなら責任も自分でとるべきなんだ。

 目を見開いたメイズさんが何かを言おうとしていたが‥‥

 「じゃあ後はお願いしますメイズさん」

 おっさんの落ちた穴に飛び込んでいく俺。

 真っ暗だけど感覚で高さもわかるんだよね。着地寸前に風魔法を起こせば両脚で着地できる。
 まして俺以上にフライも発現できるおっさんだからたぶん大丈夫だ。

 ほんの1、2秒。体感的に5階建のビルの屋上から飛び降りたくらいの高さから下層の地面に着地したんだ。


 そこは洞窟内に広がるホールみたいな空間だった。壁一面に光苔が生えてたからホール全体が視えなくはない。

 「おっさん!」

 ルシウスのおっさんはそんなホールの壁に寄りかかって座っていた。
 明らかに折れた片脚は膝関節から不自然に曲がっている。さらには青白い顔色……。

 「おっさん!大丈夫か!?」

 苦痛に顔を歪めながらも俺にニヤリと片手を上げるおっさん。
 
 「ゴフッッ  ゴフッッ  ゴフッッ!」

 盛大な咳とともに吐血をするルシウスのおっさん。

 「おっさん、触るぞ!」

 「痛っ‥‥」

 「肋骨も折れてんな。あと内蔵もヤラれてる‥‥。
 おっさん、俺の回復魔法じゃ完治はできないから勘弁してくれよ」

 そう言いながら温かめのヒール水をルシウスのおっさんの全身にかけていく。

 「気持ちいいのぉ。風呂に入っているみたいじゃ。わははは‥‥」

 いや、まだまだ痛いはずだ。

 「そんだけやせ我慢言えりゃあ上等だよ」








 

 
















 「なあおっさん‥‥なんであんな馬鹿助けた?」

 「フッ。なんでじゃろうな。気づいたら身体が動いていたわ」

 「‥‥」

 「お主もそうであろう。目の前に弱き者がいれば‥‥助けるのに理由はなかろう?」

 「‥‥そうだね」

 「そうじゃろう小童め!
 彼奴は馬鹿者だがな、まだ若い。若者の馬鹿者と年寄りの馬鹿者、どちらが世に有用かは言うまでもなかろう」

 「っつたく‥‥おっさんの馬鹿は筋金入りだな」

 「うるさい。誰に口を聞いておる!
 わしは映えある帝国魔法軍軍団長様であるぞ!」

 「そんな偉いのに穴に落ちやがって!馬鹿じゃねぇか!」

 「一緒に落ちてきた馬鹿者に言われとうはないわ!」

 「「‥‥」」

 わははははは
 ガハハハハハ

 「おっさんは弱くねぇだろ!てか、太り過ぎなんだよ!もっと痩せてたら逆にいい感じでゴーレムに吹っ飛ばされるだけでここまで酷くはなんなかったんだぞ」

 「そうじゃの‥‥」








 「なんだよおっさん。やけに素直じゃねぇか!?」

 「太り過ぎか……。たしかにそうじゃの。
 小童の‥‥アレクの‥‥アレク商会‥‥ああミカサ商会経由ではあるがの、そこで売っとる物がなんでもかんでもうますぎての」

 「えっ!?」

 「粉芋やツクネはまだよかったわ。
 ああ、アレク袋に入ったお湯で温めるシリーズは良いの。あれはいい。温めるだけで食堂の味になる。食の都、サンダー王国ヴィヨルドの味と変わらん食堂の味になるからの」

 マジか?
 ルシウスのおっさんは俺の作った料理の熱烈なファンだった。

 「アレクのお得意さんじゃん!」

 おっさんはニッコリ笑って頷いたんだ。

 「マヨネーズがとくにうまいの。あれは別格じゃ。
 何にでもマヨネーズをかけ出してからわしも急に太りだしたわ。
 夜遅く帰ったあと、酒と一緒に飲むマヨネーズの直飲み。
 あれがわしの夜毎の楽しみじゃった‥‥」

 なんてこった!ルシウスのおっさんもマヨラーだったのか!しかもアレク商会のヘビーユーザーだったとは!

 そんなルシウスのおっさんの告白を聞いてたら。

 「!」

 「!」

 「おっさん!」

 「アレク!」

 ホールの先。
 長い通路の先に。索敵に引っかかるのはこの新ダンジョンで出会った魔獣のなかで最大規模の群れだった。
 ミスリルの蜘蛛、ミスリルのオオカミ、ミスリルゴーレムなどなど、ここで出会った魔獣のすべてが探知に引っかかる。
 50体を優に超える魔獣の大群だったんだ。

 「アレク、これやばいわ。アレクと私だけじゃ無理。こんだけいたら、このおっさんを守れない。しかもこの数は下手すりゃいずれアレクの魔力が尽きるわ!」

 「アレクよ。わしを置いて逃げよ。
 お主の脚なら壁を走って逃げられよう」

 「うるせー!」

 「くそっ!わしが下手をせねば飛んで2人逃げれたものを」

 「おっさん太り過ぎなんだよ!もっと痩せてたら俺が担いで走れたわ!」














 「そうじゃな‥‥」

 「なんだよおっさん。急に素直になって!?」
































 「最後にもう1度マヨネーズの直飲みをしたかったの‥‥」

 「そんなもんいつでもできるわ!てか帰ったら直飲み禁止だ!直飲みしなきゃすぐに痩せるわ!」

 「ガハハハ。そうじゃの」

 ギャーギャーギャー‥
 ガウガウ  ガウガウ‥

 ついに魔獣たちの声も聴こえてきた。






 「おっさん後ろ見たか?後ろ」

 「ん?」

 「早く見ろ!」

 「ま、まさか‥‥」

 「そうだよ、ダンジョン主の部屋だよ!どうするよ?」

 「ふっ。どうするもないわ!ここは1択、扉を開けるしかあるまい」

 「だよなおっさん!」

 「なにが出てくるかわからんぞ小童!」

 「ああ。恨むなよおっさん」

 「最後にもう1度マヨネーズが飲めんと‥‥恨むぞアレクよ!」

 わははははは
 ガハハハハハ

 「おっさん、杖の魔石、魔力チャージしとくぞ」

 「ちゃあじ?」

 「あ、ああ。魔力込めとくからな。あと10発や20発ぶっ放せるぞ」

 俺がおっさんの杖に魔力をチャージしたんだ。魔石は色が抜けかけていた魔石が金色になった。輝くくらいのゴールドに輝いた。

 「でかした小童!」

 「小童じゃねーわ、おっさん!」

 わははははは
 ガハハハハハ

 目の前に広がるのは見事な装飾の施された扉。
 その扉に2人で手をかける。

 「「いくぞ!」」

 ギギギギギーーーーーッッ!
 

――――――――――


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