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1.瑠璃の章
1.帝国と反帝国同盟
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その街は海のすぐ側にあった。
波の穏やかな透明度の高い海で、珊瑚礁があり色とりどりの魚たちが泳ぐ。
湾を入った港には、たくさんの漁船が停泊しており、その近くにはセリが行われたり屋台が建ち並ぶ広場があって、たくさんの人で賑わっていた。
しかし、そんな広場の賑わいに水をさすかのように、空にはどんよりと雨雲が立ち込めている。
今にも雨が落ちてきそうな気配に、人々は早々に用を済ませ、家路へと向かっていた。
大きくはない街だった。
素焼きレンガの平屋がほとんどを占める。
しかし、きちんと計画を立てて造られた街のようで、石畳の道路は整然と走り、最後には中心にすべてが集まるのだ。
その中心に位置している建物は、割としつらえの良い、白亜の屋敷だった。
門扉の両脇にはその外観に似つかわしくない、重装備の警備が立ち、装甲車が停められている。
そして屋内の一室では、やはり優雅な建物には似合わない、剣呑な空気が漂っていた。
「奇襲が功を奏し、我が軍がまずは先手を打ったという所でしょうか」
そう言いながらも表情ひとつ崩さないのは、隻眼の男。
黒皮の眼帯で覆った左目から頬にかけて、肉のえぐれた古傷がひと筋走っている。
その隻眼の男が対しているのは、漆黒の髪と瞳を持つ青年だった。
真の闇を映したような瞳を半ば伏せ、青年は「そうか」とだけ呟いた。
「何かご不満がおありのようですが」
漆黒の青年よりもいくらか年長に見える隻眼の男は、それでも意外そうな素振りを見せることなく淡々と問い掛ける。
「不満などない。ようやくここまで辿り着いたんだ。あとは最後まで突っ走るだけだ。そうだろう?」
初めて隻眼の男の表情が動いた。
満足そうに微笑んでいる。
「総統の迷いは、すぐさま全軍に波及し足枷となるのです。どうぞ迷うことなく、ただ一心に前を向いておられますように」
総統と呼ばれた漆黒の青年は、力強く頷いた。
「迷うことなど何もない」
という言葉とともに。
そして彼は窓辺に寄り、できたばかりの新しい街に目をやった。
ここに来たころは、まだ掘っ立て小屋のような家ばかりだった。
それを、傍らの隻眼の男とともに、ここまでの街にした。
『すべての人に等しい幸福を』
帝国にいては叶えられないその願いを胸に。
10代の終わりからの数年を費やしたのだ。
「皇帝と元帥の首を取るまで俺は止まることはない」
漆黒の青年の言葉に、隻眼の男の眼帯に隠されていないほうの目が鋭い光を宿した。
「どこまでもついて参りましょう。あなたさまの理想の国ができるまで」
そして、その日、反帝国を旗印に結集した南の大陸の同盟軍は、海を隔てた先にある帝国への総攻撃を開始した。
波の穏やかな透明度の高い海で、珊瑚礁があり色とりどりの魚たちが泳ぐ。
湾を入った港には、たくさんの漁船が停泊しており、その近くにはセリが行われたり屋台が建ち並ぶ広場があって、たくさんの人で賑わっていた。
しかし、そんな広場の賑わいに水をさすかのように、空にはどんよりと雨雲が立ち込めている。
今にも雨が落ちてきそうな気配に、人々は早々に用を済ませ、家路へと向かっていた。
大きくはない街だった。
素焼きレンガの平屋がほとんどを占める。
しかし、きちんと計画を立てて造られた街のようで、石畳の道路は整然と走り、最後には中心にすべてが集まるのだ。
その中心に位置している建物は、割としつらえの良い、白亜の屋敷だった。
門扉の両脇にはその外観に似つかわしくない、重装備の警備が立ち、装甲車が停められている。
そして屋内の一室では、やはり優雅な建物には似合わない、剣呑な空気が漂っていた。
「奇襲が功を奏し、我が軍がまずは先手を打ったという所でしょうか」
そう言いながらも表情ひとつ崩さないのは、隻眼の男。
黒皮の眼帯で覆った左目から頬にかけて、肉のえぐれた古傷がひと筋走っている。
その隻眼の男が対しているのは、漆黒の髪と瞳を持つ青年だった。
真の闇を映したような瞳を半ば伏せ、青年は「そうか」とだけ呟いた。
「何かご不満がおありのようですが」
漆黒の青年よりもいくらか年長に見える隻眼の男は、それでも意外そうな素振りを見せることなく淡々と問い掛ける。
「不満などない。ようやくここまで辿り着いたんだ。あとは最後まで突っ走るだけだ。そうだろう?」
初めて隻眼の男の表情が動いた。
満足そうに微笑んでいる。
「総統の迷いは、すぐさま全軍に波及し足枷となるのです。どうぞ迷うことなく、ただ一心に前を向いておられますように」
総統と呼ばれた漆黒の青年は、力強く頷いた。
「迷うことなど何もない」
という言葉とともに。
そして彼は窓辺に寄り、できたばかりの新しい街に目をやった。
ここに来たころは、まだ掘っ立て小屋のような家ばかりだった。
それを、傍らの隻眼の男とともに、ここまでの街にした。
『すべての人に等しい幸福を』
帝国にいては叶えられないその願いを胸に。
10代の終わりからの数年を費やしたのだ。
「皇帝と元帥の首を取るまで俺は止まることはない」
漆黒の青年の言葉に、隻眼の男の眼帯に隠されていないほうの目が鋭い光を宿した。
「どこまでもついて参りましょう。あなたさまの理想の国ができるまで」
そして、その日、反帝国を旗印に結集した南の大陸の同盟軍は、海を隔てた先にある帝国への総攻撃を開始した。
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