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新しい出会い

じゅうろくわめ

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 とんだ辱めを受けた後、動けない俺を介抱してくれたのはジュークでした。
 エルさんは実験するって言って地下室に篭ってましたよ、ええ。
 マッドサイエンティストってやつなんでしょうかね、ええ。
 爆発すればいいのに、と思ったけど材料無くなったからってまた採取されそうなんで爆発を願うのは止めておきました。
 こんちくしょ……採取に同意しなきゃ良かったと思えど後の祭り。
 ジュークがエルさんのフォローなのか文句なのかをぶちぶち言ってるのを子守唄におやすみなさいしました。

 すっきり……とまではいかないけれど、気持ち良く目が覚めた俺はベッドの上で転がってます。
 気分は悪くないんだけど、腰がね……。
 甲斐甲斐しく世話をしてくれるジュークに病人じゃないから少し休めば大丈夫と告げて1人にしてもらう。
 ジュークは家の中を片付けているようで下からドタバタと音が聞こえてきた。
 1人の時間をゲットした俺は今の内に、と片腕を枕に、仰向けに寝転がったまま空中にウィンドウを開く。
 勇者としてのチートは少しだけジュークにもエルさんにも説明したけれど、こっち──お子様から貰ったチート──は説明していない。
 説明もしにくいしね。
 それじゃあチートの確認をしていこうか。

 まず、ジュークに使った『魅了』。
 これは目を合わせたり体に触れて発動させることで相手を魅了する能力だ。
 度合いもある程度俺が調整出来て、そこそこ使い勝手がいい。
 効きには個人差もあるけどね。
 今の所ジュークにしか使っていない。
 理由はあの国から出るのに、1人では不安だったから。
 今はジュークが居てくれれば問題ないから暫く使う予定はない。

 そして俺の体液にもちょっとしたあれそれな効果がある。
 これは勇者としてのチートに含まれるのか、お子様の方に含まれるのか、ちょっとわからない。
 けれど、『精力増強』『催淫効果』『妊娠確率アップ』『細胞促進』『細胞活性』と見るとお子様の方のチートっぽいよね。
 俺の体液を摂取することで色々効果はあるみたいだけど……今の所全然わからない。
 ……これエルさんが調べたらわかるのかなぁ?

 勇者としてのチートにお子様のチートを混ぜ込んだ、っていう可能性が1番高そうだ。
 そこまで細かく知る必要はないからいいんだけど。

『勇者』の安全を考慮して造られた身体で、『俺』がこの世界を愉しむ為に能力が追加されている、という認識だ。

 そしてお子様チート──裏チートと何度か口にしているかもしれない──で、1番の秘密は今空中に浮いているウィンドウである。
 その名も『SP交換』。
 SPとは精気ポイントである。
 セーうんたら国で王様や宰相のズコバコぬこぬこを邪魔せず鑑賞、ついでにご飯にしていたのには理由がある。
 勿論俺のご飯なのも理由なんだけど、これはあえて言えば二の次でもいいのだ。
 普通のご飯でも栄養になるからね。
 俺が精気を欲しがるのは、この『SP交換』に必要なのであーる。
 貯めたSPポイントで、色々交換出来るんですよ!
 めっちゃそのまんま!
 これで交換出来るモノを簡単にご紹介しよう。
『転移陣』『拘束具』『触手』『布団』『異空間接続扉』などなど。
 これで交換することでお子様にも還元されて、更に交換出来るモノが増えるんですよ。
 今は微妙に使えないなー、と思っているのがSPで交換出来る魔物系。
 魔物連れて移動したら勇者なのに魔王側と認知されそうだからね。
 勇者のチートと偽って、魔物使いっていうのも有りかもしれないけど。
 ただ、魔物もいるけど、妖魔族に分類されるのも居るんだよね。
『妖狐』とか。
 文字をタップすると簡単な説明文が見れるんだけど、そこに妖魔って書いてあるから。
 妖魔族なら交換してもいいかもだけど、今ジューク居るし、必要性は感じないな。

 むしろ生活用品が欲しいんだよね。
 異空間収納に入れられるならログハウスとかさ、旅を快適に出来るモノが欲しい。
 ただ、交換出来る物のラインナップや説明文にちょいちょいアダルティックな単語が見えるんですよね。
 それはそれで気になってはおります、はい。
 とは言っても旅に必要な物から交換していく方がいいんだろうということはわかってる。

 なので折角のこの1人の時間で、ゆっくりと交換出来る物のラインナップを確認しておきたかったのだ。

 まず、移動に使えそうな物は『妖狐』だった。
 妖魔族に分類されるらしい、狐だ。
 身の丈は2m程になるって書かれている。
 ちょっと、いやかなりもふもふに惹かれるけど、ジュークが居るからもふもふ系はまだ無理かなぁ?
 馬も放置してくわけにはいかないしね。
 更に説明文を読むとちょっと惹かれるモノがあるんだけど、これは今必要ないんだよね。
 この子は少しお預けだ。

 そしてこのSP交換で召喚出来る妖魔族や魔物には『普通の』それらとはちょっと違う部分がある。
 俺と同じように『普通のご飯』で栄養も摂れるが、精気もご飯になる。
 俺と一緒だね。
 俺の眷属だか隷属だかになるからっぽい。
 この世界の奴隷とかはどうなるんだろうね?
 奴隷を持つつもりはないけれど。

 まあ、そんなこんなでもふもふは今しばらくはお預けだ。

 一通り目を通してみたが、食器やお鍋とかはなかった。
 道中の食事事情改善はこっちで買い物しなくちゃいけないみたいだ。
 調味料もない……。
 ここはいずれ交換出来るようになるといいな、と期待したい。
 もしくはこっちで買えないかなぁ?

 寝具は『布団』だけだった。
 代わりといったら変だけど、下着とかは色々あったよ。
 アダルティなグッズもね。
 狙いはわかるけど、もう少しラインナップは考えて欲しかったと言わざるを得ない。

 ここで1つ気になったのが『異空間接続扉』である。
 他のは微妙に使えなさそうだと判断したが、これは目を引いた。
 説明文を読めば、サイズの指定が出来る扉であることと、この扉を通じて異空間に行けるようになるらしい。
 異空間収納とはまた別物のようだ。
 異空間収納は『生命活動しているモノ』は入れられないからね。
 この扉を使って旅を快適に出来ないか頭を悩ませてみる。

 扉と言われて連想するのは青いたぬきがよく使うどこでも行けちゃうドアだ。
 自立式の扉ならば、置くだけで異空間とやらに行けるようになるだろうし、壁とかに設置しなくちゃいけないなら建物とかが必要になるだろう。
 自立式ならば旅をしながらも使えるけど、設置型なら使えないな。
 でも、異空間を隠し部屋とするならば、この先きっと必要になりそうだ。
 異空間がどんな形で、どんな大きさなのかにもよるかもしれないけど……。

 うんうん唸りながら考えた結果、この扉は持っていても損にはならないと判断しました。
 交換ポイントは64万ポイントで、俺の持ってるポイントは3万ポイント……うん、足りないね!
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