奴隷とイッショ!~愛欲の加護~

冬生羚那

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NO.13

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 それからどうしたかというと……。

 まずは精霊さんを宥め、相手を双子にお願いする。
 そしてわたしは蹲る狸さんに声をかけた。
 狸の女性、仙狸さんはどうやら月兎さんが好きなようで、今までに何度も買い上げてから月兎さんを自由にしたいと言ってたとか。
 要するに、奴隷から解放したかった、と。
 今回も月兎さんがレンタルを終えたと聞いて、奴隷商会に意気揚々と乗り込めば既に買われた後だった、と。
 ショックを受けながらギルドに戻れば月兎さんが新しい主の為に家を探してるとか。
 しかも買い上げられて。
 だからわたしが憎かったという話。
 見た目はグラマラスなお姉さんだったけれど、こう泣きながら訴える彼女は可愛らしかった。
 館の金額を上げようと思ったのは、嫌がらせで、主の情けない姿を月兎さんに見せて幻滅させようと思ったらしい。
 大泣きで時間がかかったけど、漸く話を聞き終えることが出来ましたよ。

 精霊さんに吹っ飛ばされて本性に戻ってしまった仙狸さんと並んで、玄関の階段に腰掛けて話を聞きました。
 ずるずるでべしょべしょな顔の仙狸さんにハンカチを差し出して、ずっと聞いてました。
 途中で玉藻さんとエイルさんが帰って来たんだけど、先に家の中に入っててもらいました。
 月兎さんがこれからどうするかの説明とかしておいてくれるでしょう。
 丸投げごめーん。
 でも、わたしにぶちまけたことで少しはすっとしたのか、仙狸さんは真っ赤な目をしながらも意地悪なこと言って悪かったと謝ってくれました。
 嗤われてわたしもちょっとムカッときたけど、こうして話を聞く限りじゃあ仙狸さんも悪い人じゃないんだよね。
 人っていうか狸だけど。
 小さな前足でハンカチを器用に使って涙を拭き、鼻をかむ……っておい、わたしのハンカチ!
 いいけどさぁ……。

 書類を確認して、サインを終える。
 そして仙狸さんが取り出した水晶に手を触れて支払いを終える。
 無事に完了しましたよ!
 仙狸さんは書類と水晶を仕舞うとポン、と音を立てて再びグラマラスなお姉さん姿になった。

「ふん……月兎に、飽きたらわたしの所に来るように言っておきなさいよね」

 仙狸さんはそう捨て台詞を残して帰っていきましたとさ。
 仙狸さんに言われたからじゃないけど、いずれ皆を奴隷という立場から解放したいとは思ってるんだよ。
 今はまだわたしのこの世界での土台が出来てないから無理だけど。
 仙狸さんを見送り、よっこいしょ、と小さく掛け声をかけて立ち上がると、お尻を軽く叩いて汚れを落とす。
 そして館の中へと戻った。

 ら、精霊さんが何故かべったり引っ付いて離れないです。
 どうしたよ、精霊さん。
 皆で食堂に集まり、それぞれ椅子に座っているんだけど、精霊さんはわたしの膝の上に座り抱き着いております。

「主に悪意を向けた者なぞ消してしまえば良かったのに」

 物 騒 だ な お い !

「まあまあ、やり切れない時って誰にもあることだからね」

 精霊さんを撫でてそう言えば、ぷくーっとほっぺを膨らませちゃいました。
 可愛い。
 物騒なこと言ってたけど、めっちゃ可愛いぞ。

「そうだ、名前で呼んでよ」

 これは精霊さんだけじゃなく、皆に向かって言った。
 なんせわたし見た目少女ですから。
 主とかご主人様とか……なんかねぇ?
 玉藻さんには特に言いづらかったんですけどね、ここではっきり意思表示しておこうと思いました、まる。
 だって玉藻さんめっちゃ真面目なんだもん。
 食事だって毎回一緒に、って言ってるんだよ。
 理由もつけてね。
 それでも最初は渋るんです。
 これからも一緒にいてもらうのに、仰々しいのは嫌なんですがね。
 わたしの発言に対して渋い顔をしたのは双子と玉藻さん。
 玉藻さんはやっぱりなーって感じだけど、双子が渋るったことにちょっとびっくりした。
 あ、でも執事的な方向に向かってるなら、そうなっちゃうの、か?
 いやでも月兎さんは嬉しそうなんですけど。
 まあ、強制はしないよ、と言っておく。

「名前……?」
「うん。そうだ、精霊さんの名前は?」
「童に名は……ない」
「そうなんだ?じゃあ何か名前考えなくちゃね」
「……うんっ」

 さて……センスのないわたしにいい名前が浮かぶだろうか……。
 わたしの名前は5月生まれだから『皐月』だ。
 安易だけど、同じように旧暦からでもいいかなー?
 精霊さんがキラッキラした目で見てくるよ。
 うう……そんな期待されると怖い。
 でも……うん、頑張るよ。

 じゃあそうなると今は何月?
 スマホを取り出し日付けを確認してみる。
 いつものように、画面の上から下へ向かって指を滑らせれば大きく表示される日付け。
 ……『黄緑の月』って出てる。
 これ何月何日を示してんだろうか……。
 そこは後で調べるとして、黄緑か……。
 黄緑色って何があったかな……?
 …………野菜?
 いやいや、そんなの可愛くないし!
 もっと可愛いものがいい!
 えー……。
 …………黄緑色の何かって難しいね。
 ネギとか出てきちゃうよ。
 あ、そうだ!
 黄緑色なら萌黄とも言えるんじゃない!?
 確か萌黄って黄緑色の系統だったはずだし、今から新しい人生……精霊さんは人生じゃないか?まあいいや、芽吹く若葉色ってことで!
 あああ、こうなると若葉でもいいかもしれない。
 ううーん……しまった、どっちがいいかなぁ。
 うーん……うーん……年取っても若葉ちゃん……?
 名前って一生ものだから物凄く悩むよねぇ……。
 でも……萌黄にしようかな。
 どっちも捨て難いけど、最初に浮かんだのは萌黄だし。

「萌黄ってどうかな?」
「萌黄?……萌黄…………うん、童は萌黄!」
「良かった……わたしはサツキだよ」
「サツキ、サツキ様?」
「んんー、別に様はいらないんだけどね。萌黄の言いやすい方で」
「わかった、サツキ様」

 あ、やっぱり様はつくんですか。
 いいけどね。

 こうして一段落ついたので、これからについてを皆で考えていくことにしました。

「午後からは買い物かな」
「そうですね。必要なものが足りませんから」
「買い物するにしても主には護衛が必須だ」
「皆で手分けする?」
「サツキちゃんは目立ちたくないんでしょ?じゃあ家に呼ぶ?」

 皆が意見を出してくれるからとても助かります。
 でも、買い物するにしても支払いはわたしがするんだよね。
 この所持金MAXを皆で分け合えたら楽なんだけどなぁ……。
 しっかし……お腹すいてきたよ。

「……あっ!ご飯どうしよう!そういや家事出来る人っている……?」

 大変なことに今気付きました……。
 わたしご飯作れないよ。
 いや、簡単なものなら作れるけど、この世界の材料がわからないんだよね。
 名称が違うから、1から覚えないとダメだし……。

「僭越ながら……お食事でしたら私が」

 そう月兎さんが言ってくれました!
 いよっ、万能執事!
 ホント月兎さん色々知識はあるし、色々出来るし有能だわぁ。
 月兎さんに出来ないことってあるんだろうか?
 にしても、台所用品とか食器がないからお昼は無理そうだけど。
 月兎さんの仕事が増えてくのは申し訳ないんだけどね……。

「僕も手伝います」
「八智、『私』だよ」
「あ……」
「私も手伝います」

 そんな月兎さんに双子がお手伝いすると声をあげる。
 そっか……八智『君』だったのか。
 いや、気付かなかったの?と聞かれると……うん、わからなかった。
 だってね、双子の顔って中性的なんだよ。
 綺麗!ってのはわかるけど、それで性別まで判断出来るか、ってなると……間違えたら気まずいなーってなっちゃって今まで確認しませんでした。
 書類もそこ見るの忘れてたんだよね。
 性別気にしてないもんで……。
 体つきで判断とか高等技術はわたし持ち合わせてないし。
 そこいくと、実は萌黄も性別がわからん!
 萌黄は子供ってのもあって余計にわかんないんだよね。
 可愛いからどっちでもいいんだけど!
 あっ。

 ロ リ シ ョ タ じ ゃ な い か ら ね !

 とりあえず家の中のことは執事親子に任せればいいらしい。
 そして萌黄は魔力を使うことで館の維持管理が出来るとか。
 掃除いらずなんだって、凄くない?
 といっても埃が溜まらないとか汚れないってやつらしい。
 出したら自分で片付けろ、と。
 問題なし!
 後、防犯も任せよと言われました。
 維持管理に防犯も含まれるんだね。

「そうだ、萌黄はご飯って食べるの?」
「ご飯……童は物を食べぬ」
「そっかぁ……じゃあ魔力だけなのかな?」
「うむ、サツキ様の魔力があれば童は存在出来る」
「OK、わかったよ」

 魔力……皆魔力が必要なんだなぁ。
 6人分かぁ……足りるのかな?
 日をずらしてもらえばいいのか。
 よし、問題なし。

「あ、これから買い物行くけど、萌黄ってついてこれるの?」
「童は出れぬ……だがその間はこの土地に魔力を巡らせておくことにする」
「うん?」
「サツキ様の魔力と童の魔力を混ぜたものを染み込ませるのだ。そうするとその範囲内は童の領分となる」

 ほ、ほう……。
 ちょっとよくわからん。
 嬉しそうに語る萌黄を見てると、いい事ではあるみたいだから、気にしなくてもいっか。

「なので魔力が欲しい」
「ああ、うん。わかったよ」

 もじもじとしながら萌黄がそう言った。
 何故もじもじするのかはわかんないけど、魔力はもっていくといいのだよ。
 ぱぁ、と表情を明るくした萌黄は腹から背中へ回していた腕を、わたしの首へと回した。

「んぷっ!?」

 そしてわたし達は見つめ合ったままキスをしたのであった。
 おいおいお前もか!!
 エイルさんにもこれやられたんですけど!

「ん……」

 とか思ってたら萌黄の小さな舌がわたしの口の中に!!
 慌てて口を離そうとしたけど、萌黄の力の方が強いんですが!
 小さな舌が口内を動き舌先が擦れ合う。
 ぞくりと背中が震えてしまった。
 その刺激に思わず目をぎゅっと瞑る。

「ん、んむ……っ」

 口内に唾液が溜まり、水音が脳みそに響く。
 萌黄は混ざりあった唾液を啜り上げる。
 その時、何かが一緒に吸い上げられる感覚がした。
 とりあえず言っていいかな……。

 人 生 初 デ ィ ー プ キ ス の 相 手 が 子 供 !

 体が震えそうになり、萌黄の服に指を食い込ませてしまう。
 萌黄は全然気にしてないみたいで、ただ嬉しそうであることがわかった。
 そしてゆっくりと唇が離れた。
 萌黄の唇が濡れていて、妖艶だった。
 その濡れた唇を拭う真っ赤な舌が目に毒だ。

「それでは童は馴染ませてくる。……早く帰ってきてね……?」

 少し寂しそうに微笑んで萌黄は姿を消した。

 残 さ れ た わ た し は ど う し た ら い い の か !

 真っ赤な顔をして手で口を押さえて、そっと皆を窺う。
 反応は2通り……。
 双子と玉藻さんはわたしみたいに顔を赤くして、目が合うとさっと逸らした。
 そして羨ましそうにしてる月兎さんとエイルさん。

 い た た ま れ ん !

「…………よし、午後からどうしようか」

 わたしに出来たのはなかったことにすることだけでした。
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