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キューピッドと歩兵銃
もらったラブレターは読め!
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暫くして高畠翔は戻って来た。
また同じようにベンチに座ったが、その片手には缶コーヒーがあった。どうやら近くの自動販売機まで行って買ってきたようだった。彼はそのタブを上げると缶に口をつけた。
まださっき貰った手紙を読む雰囲気はない。
――なんで読んであげないの?――
麻美は不思議だった。彼が目の前にいたら間違いなく聞いている。
そんな事を考えながら見続けているとまたひとりの少女が小走りに高畠翔の元へやって来た。
彼は先程と寸分も違わない笑顔で彼女を手を挙げて迎えた。
「待った?」
「いや、今来たところだよ」
そんな台詞のやり取りが聞こえてきそうな情景だったが、間違いなくその通りの会話をしていただろう。
「あ!!」
「どうしたの?今度は知り合い?」
「うん。隣のクラスの女の子。話した事はないけど顔は見た事があるわ」
その女の子はさっきの女の子と同じように高畠翔に手紙を差し出した。
それをさっきと同じように爽やかな笑顔で彼は受け取った。
女の子はもじもじと暫くしていたが、ニコッと笑うとさっきの女の子と同じように足早に去って行った。
さっきの少女と違うのは、二度ほど振り向いて高畠翔に手を振った事ぐらいだった。
高畠翔はさっきと同じように後姿を暫く眺めてから手紙をディバックにまた同じように無造作に放り込むとおもむろに歩き出した。
「あれもラブレターよね」
麻美は高畠翔から目を離さずに言った。
「多分……彼はもてるんだねえ」
「そうみたい……でも、なんか腹立つ」
「なんで?」
同じように高畠翔の姿を見ていたキューピッドは麻美に視線を移して聞いた。
「だって読んであげればいいじゃない。それに何?時間を変えて二人からラブレターを貰うなんて……」
麻美は高畠翔に対して憤っていた。キューピッドの顔をじっと見つめながら麻美は怒りを我慢している様に話をした。
「良いじゃない。ライバルを無下にしたって。麻美からしたらそれは喜ばしい事じゃないのかな?」
キューピッドは以外そうな顔で麻美を見た。
「それはそうだけど、同じ女としてなんだか腹が立つ」
「ふむ。そういうもんかね」
「そうよ。彼女たちがどんな思いでラブレターを書いたか分かっているとは思えない」
「うん。確かに判っていないね」
「でしょう?そう思うでしょう? それをあのバカは……」
これ以上口を開くと何を言い出すか分からないので麻美は敢えて口をつぐんで言葉を飲み込んだ。まだまだ言いたい事は山ほどあった。
その様子をキューピッドは黙って見ていたが、
「じゃあ、次に行こうか?」
おもむろにそう言うとまた羽を広げて麻美を抱きかかえ空に浮かんだ。
「今度はどこに行くの?」
今度は、麻美はさっきみたいに慌てなかった
「彼のいくところに先回りするのさ」
「え?そんな事判るの?」
「そりゃね。神様だからねってもう家に帰るはずだよ」
キューピッドの顔に確信に満ちた笑みが浮かんだ。
「だから家の前で狙う」
笑顔が消えた。
「そうなんだ」
高畠翔の家は一軒家だった。
一軒家と言っても周りには同じような建売住宅がひしめく住宅街の、こじんまりとした二階建ての一軒家だった。
彼の部屋は玄関の真上の二階の部屋だろう。
彼の家の玄関が良く見渡せるビルの屋上にキューピッドと麻美はいた。
「さて、どうする?」
キューピッドは麻美の顔をじっと見つめて言った。
また同じようにベンチに座ったが、その片手には缶コーヒーがあった。どうやら近くの自動販売機まで行って買ってきたようだった。彼はそのタブを上げると缶に口をつけた。
まださっき貰った手紙を読む雰囲気はない。
――なんで読んであげないの?――
麻美は不思議だった。彼が目の前にいたら間違いなく聞いている。
そんな事を考えながら見続けているとまたひとりの少女が小走りに高畠翔の元へやって来た。
彼は先程と寸分も違わない笑顔で彼女を手を挙げて迎えた。
「待った?」
「いや、今来たところだよ」
そんな台詞のやり取りが聞こえてきそうな情景だったが、間違いなくその通りの会話をしていただろう。
「あ!!」
「どうしたの?今度は知り合い?」
「うん。隣のクラスの女の子。話した事はないけど顔は見た事があるわ」
その女の子はさっきの女の子と同じように高畠翔に手紙を差し出した。
それをさっきと同じように爽やかな笑顔で彼は受け取った。
女の子はもじもじと暫くしていたが、ニコッと笑うとさっきの女の子と同じように足早に去って行った。
さっきの少女と違うのは、二度ほど振り向いて高畠翔に手を振った事ぐらいだった。
高畠翔はさっきと同じように後姿を暫く眺めてから手紙をディバックにまた同じように無造作に放り込むとおもむろに歩き出した。
「あれもラブレターよね」
麻美は高畠翔から目を離さずに言った。
「多分……彼はもてるんだねえ」
「そうみたい……でも、なんか腹立つ」
「なんで?」
同じように高畠翔の姿を見ていたキューピッドは麻美に視線を移して聞いた。
「だって読んであげればいいじゃない。それに何?時間を変えて二人からラブレターを貰うなんて……」
麻美は高畠翔に対して憤っていた。キューピッドの顔をじっと見つめながら麻美は怒りを我慢している様に話をした。
「良いじゃない。ライバルを無下にしたって。麻美からしたらそれは喜ばしい事じゃないのかな?」
キューピッドは以外そうな顔で麻美を見た。
「それはそうだけど、同じ女としてなんだか腹が立つ」
「ふむ。そういうもんかね」
「そうよ。彼女たちがどんな思いでラブレターを書いたか分かっているとは思えない」
「うん。確かに判っていないね」
「でしょう?そう思うでしょう? それをあのバカは……」
これ以上口を開くと何を言い出すか分からないので麻美は敢えて口をつぐんで言葉を飲み込んだ。まだまだ言いたい事は山ほどあった。
その様子をキューピッドは黙って見ていたが、
「じゃあ、次に行こうか?」
おもむろにそう言うとまた羽を広げて麻美を抱きかかえ空に浮かんだ。
「今度はどこに行くの?」
今度は、麻美はさっきみたいに慌てなかった
「彼のいくところに先回りするのさ」
「え?そんな事判るの?」
「そりゃね。神様だからねってもう家に帰るはずだよ」
キューピッドの顔に確信に満ちた笑みが浮かんだ。
「だから家の前で狙う」
笑顔が消えた。
「そうなんだ」
高畠翔の家は一軒家だった。
一軒家と言っても周りには同じような建売住宅がひしめく住宅街の、こじんまりとした二階建ての一軒家だった。
彼の部屋は玄関の真上の二階の部屋だろう。
彼の家の玄関が良く見渡せるビルの屋上にキューピッドと麻美はいた。
「さて、どうする?」
キューピッドは麻美の顔をじっと見つめて言った。
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