皇女殿下の飛空艇~皇女殿下は鬼畜な艇長にしごかれています~

うにおいくら

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第三章 嘆きの迷宮

本気

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「何の事だ?」
とシバは怪訝な表情を浮かべて聞き返した。

「ケイトに聞いた」
とフレデリックはカタリーナの名前を愛称で呼んだ。どうやらカタリーナを迎えに行った時に、彼女がシバに話した内容をフレデリックも本人から聞かされたようだ。

「あぁ、その事か……モルタリアの片棒を担ぐって話ね……」
そう言うとシバは手に持ったグラスをテーブルに置いた。

「色々とあってバタバタしていたからな。こうやってじっくりお前たちと話をする機会もなかったからな。本当に申し訳ない。お前たちは、こういう世界に関わるのが大嫌いだったからな」
とフレデリックはまた頭を下げた。

「まぁな」
とシバはテーブルのグラスを見つめたまま応えた。

「本当にすまん」
とフレデリックはまた頭を下げた。

「皇帝様がいちいち何度も頭を下げるな。どっちにしろ、いつまでもどっちつかずに居られることは無いと思っていたから丁度良い時期だったかもしれん」
とシバはフレデリックに向き直って冷静に言った。

「そうなのか?」

「ああ。それにこうやって久しぶりのあんたとここで飲めるしな」
とシバは笑った。

「そうそう。どうせ痛くもない腹を探られるのであれば、もう誰かに気兼ねをする必要もないだろう。正々堂々と肩入れしてやればよい」
とアキトも同調した。シバもアキトもこの件に関しては居直る事にした。何を言っても勘繰られるのが関の山だと二人とも理解していた。

「ま、そう言う事だ。実はケイトに指摘されるまで、俺も気が付いていなかったんだけどな」
とシバはさっぱりした表情で言った。もうこの件に関しては二人とも本当に何も気にしていないようだった。

「そうだと思った」
とフレデリックは口元を少し緩めた。

「まぁな。俺たちもそこまで考えが至っていなかった」
とシバは諦め顔でうなずいた。

「お前達だったら、どこかの国を乗っ取る事も簡単だろうに……この世界を統治するのも可能だろう? 本当に欲のない奴らだ」
と言うとグラスを取って酒を喉に流し込んだ。
シバたちが今回の事をそれほど気に留めていないと分かって、フレデリックは安心して無防備に思った事を口にした。

「世界征服ねぇ……それも良いかもな……あんたが世界を欲しいんだったら手伝ってやるよ」
とシバはボソッとつぶやいた。

 部屋の空気が一瞬で変わった。アキトとメリッサは、その瞬間お互いの顔を見合わせて視線が重なった。

「本気か?」
フレデリックは険しい表情で聞き返した。

「ああ。でもあんたにその覚悟があったらな……」
とシバは言葉を継いだ。

「その内、この世界の王様たちは俺たちが『モルタリア帝国に肩入れした』と勝手に言い出すんだろう? どうせそう思われるならそれも良いなと思っている」
とシバは真顔で言った。

「マジ?」
思わぬ話にフレデリックは冗談で流そうとしたが無理だった。

「マジだよ」
とシバは真顔で再び答えた。

「お前。酔っているだろう?」

「……かもな」
とシバは応えた。アキトとメリッサは黙って二人のやり取りを聞いていた。

「それよりも、あんたが本気で世界を取りに行く気があるのか?……だ。俺が聞きたいのは」

「そんな事を直ぐに答えられるか!」
とフレデリックは語気を強めて言った。
確かにモルタリア帝国はラシール帝国とこの大陸の覇権を争ってはいるが、この世界の全ての国を自国に取り込もうとはフレデリックも考えていなかった。

 シバとアキトの二人なら本当にそれを実現できる力があると思っているだけに、フレデリックは即答が出来なかった。

「そっか……つまらん奴だ」
とシバは薄笑いを浮かべてテーブルのグラスを掴むと、一気にそれを仰いだ。
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