皇女殿下の飛空艇~皇女殿下は鬼畜な艇長にしごかれています~

うにおいくら

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第四章 要人警護

新たな依頼

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「何とか伯爵のおかげで無事に、家族ともども亡命することができました」
と安堵の表情を浮かべながらクラーキン子爵は言った。カクセール伯爵の説明によるとミハエル・クラーキン子爵は権力闘争の派閥争いに巻き込まれて、身に覚えのない疑いを掛けられそうになり亡命を選んだらしい。
子爵とカクセール伯爵は古くからの知己で、ラシール帝国の貴族の中では珍しく温和で信頼のおける人物だった。それもあり亡命にあたりカクセール伯爵を頼ったとの事であった。

「で、子爵にはこの度、トウイの国へ大使として赴任してもらう事になった。そこで子爵を無事にトウイの国まで送り届けて貰いたいのだ」

 子爵はこのラシール帝国の東域辺境伯領に仕える子爵であった。この帝国での子爵は伯爵以上の貴族に仕えるのが主で、主人である伯爵から領地の管理を任されていた。それ故にこの大陸の東域から更に海を渡ったトウイという島国に関しての知識も持ち合わせていた。

――それにしても亡命者をそのままトウイの大使に抜擢するとは……よほどの信頼があるようだな――

とシバはグラスを口につけながら考えていた。

「なるほど……それでトウイですか……」
とシバはさっきの酒が出て来た理由にも合点がいった。

「そういう事だ。これが本来の依頼だ」
とカクセール伯爵はうなずいた。

 飛空艇ミカサならここからトウイまで三~四日ほどで到着する。
勿論途中で燃料の補給もせずにである。この世界での飛空艇や航空戦艦の航続距離は長い。はっきり言って飛空石がある限り落ちる事は無い。ただこの速さで飛べるのはミカサだけだった。他の国の艦船ならその倍の時間はゆうにかかる。

 しかしだ、トウイまで飛ぶには通常ラシール帝国の上空を飛ぶことになる。流石にラシール帝国からの亡命貴族を乗せてその上空を飛ぶのは気が引ける。もしその情報が帝国の知るところとなれば、ただでは済まない。故に危険を避けるために大きく南か北に迂回して飛ぶことになる。多少航続距離が延び時間も掛かるが、それが一番無難なコース取りだとシバには思えた。

「分かりました。トウイまで運ぶのは子爵だけで?」

「いや、駐在武官も二人同行する。どちらも陸軍少佐だ」

「ほほぉ、陸軍少佐を二名ですか」
とシバが復唱した。

「そうだ。陸軍から二人だ」
と念を押すようにカクセール伯爵はシバの目を見つめて言った。

「合計三人ですね。分かりました。で、出立はいつ?」
とシバは話を続けた。

「そうだな。早い方が良い」
とカクセール伯爵は表情を緩めて言った。

「そうでしょうねえ……もう皆さん準備は出来ていると?」
ラシール帝国にこの情報がいつ伝わってしまうのか分からない状況である。行動は迅速に行う事に越したことはないとシバも納得した。

「うむ」

「では週明けでは如何ですかな?」

「うむ。それで良い」

「分かりました。週明けにまたお迎えに参ります。アキトもそれで良いな?」
とシバが確認すると

「ああ、俺の方は問題ない」
とアキトは答えた。

「それではよろしく頼む」
とカクセール伯爵は頭を下げた。

「ご依頼は承りました。それでは今日はこれで。ご馳走様でした」
と言ってシバとアキトは立ち上がった。
カクセール伯爵とクラーキン子爵も立ち上がり、二人を見送るために部屋を出て行った。

 テーブルには空いたグラスが三つ残されていた。
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