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大怪獣と桃色のヒロイン!編

第3話「どっちの怪獣が強いの?」

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 ユウくんとリンちゃんに、こっぴどくしかられたタクヤ。
 帰りのホームルームも終わって放課後になったけど、タクヤとユウくんとリンちゃんの3人は、すぐには帰らず、タクヤの席で今後のことを話し合っている。
 あの3人を助けてあげたいのは山々なんだけど……。
 残念ながら、サッカーチームに所属していないあたしには、どうしてあげることもできないんだよね。
 とはいえ、困っている3人を残して帰るのは、気が引けるというかなんというか……。
(なに言ってるのよ。あなたには、あなたの仕事があるでしょう?)
 ポケットの中のシーちゃんのテレパシーだ。
(ああッ! そうだった! あたしは学校の見回りをしないといけなかったんだ!)
 放課後になったからって油断しちゃいけない。
 まだ残っている生徒はたくさんいるから、どこかで事件が起きるかもしれないんだよね。
 もしくは、なにか事件の前触れのような異変もあるかもしれない。
 だから、放課後も可能な限り学校中を調べなきゃいけないんだ。
「それじゃあ、私と藤堂さんは塾だから先に帰るわね」
「もうすぐ塾のテストなんだよね? 勉強、がんばってね!」
「ありがとう。まあ、無理しない程度にがんばるわ」
 アヤちゃんとルリちゃんが、連れだって教室を出て行った。
 あのふたりも塾のテストのためにがんばってるんだ。
 あたしも、自分の仕事をがんばらなきゃ。
「ごめんね。あたしも何かの力になりたいけど用事があってさ。先に帰るね」
 むずかしい顔をして話しこんでるユウくんたちの邪魔にならないように、小声でひとこと言ってから、あたしは教室を出た。
 さて、と……どこから見回ろうかな。
(二手に分かれましょう。私はスズメに変身して空から学校を見下ろしてみる。ユイは、校舎の中を重点的に調べてちょうだい)
(おっけー!! それでいこう!)
 ひとまず屋上に出ると、シーちゃんはあたしがシェアした魔力でスズメに変身。
「30分後に、また屋上で!」
 そう言うとシーちゃんは、大空へと飛び立っていった。
「すご~~い! 空を飛ぶの、めちゃくちゃ上手だ!」
 鳥に変身したのだから空を飛べるのは当たり前かもしれないけど、もともとあたしたちは人間だから翼の使い方なんてよくわかんないはずなんだ。
 だから、あたしは上手く飛ぶことが、まだできないんだよね。
 それに比べて、シーちゃんはスズメの身体を上手く活用して、本物のスズメよりも俊敏な動きで空を飛んでいる。
 ほんと、すごいなぁ。
「あっちの世界で、訓練を受けてたのかな」
 おっとっと、そんなこと言ってる場合じゃなかった。
 あたしも、あたしの持ち場を見て回らなくっちゃ。
 上から下の階へと降りながら、その階にある教室や廊下、トイレをくまなく観察していく。
 男子トイレは……う~~ん、さすがに入るのは無理だった。
 もしも誰か使用中だったら、お互いびっくりしちゃうだろうからね……。
 あと、上級生の教室に顔を出すのは、ちょっぴり勇気が必要だった。
 だけど、あたしが、
「なにか、変わったことはないですか?」
 と、訊ねると、上級生のみんなは、
「なんで、そんなことを訊くの?」
 と、首をかしげながらも、
「特に変わったことはないよ」
 と答えてくれた。
 ふぅ、よかったぁ。
 相手が一個上の6年生だから、どきどきしたけど、ちゃんと教えてくれた。
 優しい先輩たちで良かったよ。
 にしても、ここまでは、なんにもおかしなところはなかったな。
 次は移動教室で使う理科室や音楽室を調べてみよう。
 理科室のおっかない人体模型や骨格標本が動いていたり……。
 音楽室から誰もいないのにピアノの音が聞こえてきたり……。
 家庭科室に血塗られた包丁が落ちていたり……。
 と、そんなことを期待……じゃなかった予想してたのに、な~~んにもなし。
 ふだん通りで、なんにも事件の兆しなんて見当たらない。
 これだけ問題がないと、正直、拍子抜けしちゃうよ。
 別に、何か起きてほしいわけじゃないけどさ。
 ていうか、この学校で起きた事件って、まだあたしが原因になったカバさんパニックだけじゃない?
 外道魔法使いのスクラップよりも、あたしのが人騒がせな存在になってんじゃん。
 なんだかなぁ……。
「……はあ。あたしってば、なにやってんだろ」
 ひとまず、シーちゃんと合流するか……。
 だいたい30分ほど経ったから、シーちゃんもそろそろ屋上に戻ってきてるかもしれないよね。
 あ、そうだ。
 その前に、教室に寄ってユウくんたちの様子を見てこよう。
 やっぱり、気になっちゃうもん。
 そう思って、あたしは自分の教室に向かった。
 そしたら、教室まであと十歩ってところまできたとき、
「だから、そうじゃないって言ってるだろ!!」
「なんでわかんないんだ!!」
 激しく言い争う声が廊下にまで響いてた。
 もしかして、サッカーのことでユウくんやタクヤがケンカしてるの!?
 そう一瞬、思ったけど。
 ちがうな。
 声があのふたりのじゃないもん。
 この声は、たぶん怪獣映画が大好き男子の狩谷くんと田中くんかな?
 あたしの予想は当たっていた。
 教室の後ろの方で、狩谷くんと田中くんが、向かい合ってギャーギャーとさわいでる。
「まあまあ! 落ち着きなよ!」
「ムキになることないだろ!」
 ありゃ……ユウくんとタクヤが狩谷くんたちの間に入ってる。
 ユウくんたち、それどころじゃないだろうに……。
「ふざけんなよ!」
「そっちこそ、ふざけんな!」
 うわぁ、クラスメイトが止めようとしてんのに、ぜんぜん聞いてないし。
 そもそも、なんなの? あれ?
「ねえねえ、あのふたりどうしたの?」
 教室を入ったすぐのところに、クラスメイトの女の子――姫宮美愛ちゃんがいたから訊いてみた。
「あら? 友永さん帰ったんじゃなかった?」
「ちょっとね、学校に残ってたんだよ。それで、あのふたりどうしたの?」
「とっても、くだらない口喧嘩よ。『がじーら?』と『ごもざ?』のどっちが強いかっていう話しからケンカになっちゃったんだって」
「なんだっけ、それ……。なんか聞いたことはある気がするんだけど」
 なんのことだっけ? と思い出そうとする、あたしの横から、
「ガジューラとゴモルザは怪獣の名前」
 おわ! リンちゃん!
「びっくりした! 気配もなく隣に立ってるなんて、あなたは忍者か!」
「わ、わたしもびっくりしちゃったわ」
 ミアちゃんも、目を丸くしてる。
「日本の誇る怪獣映画『ガジューラ』の主役怪獣にして帝王と呼ばれる怪獣の中の怪獣ガジューラ。そして『ゴモルザ』は日本の特撮ヒーロー界のレジェンド『ヴァリアントマン』に登場する有名な怪獣だよ」
 つらつらとガジューラとゴモルザについて解説してくれるリンちゃん。
「そ、そうなんだ……。そう言われてみれば、なんか知ってた気がするよ」
「は、花園さんって動物だけじゃなくて怪獣にまで詳しいの?」
 ミアちゃんがリンちゃんの意外な一面を知ったって感じで驚いてる。
「怪獣の中にもかわいいのもいるから気になったのは調べてみたりするくらいかな。ガューラとゴモルザもかわいいから知ってた。姫宮さんもかわいいの好きでしょ? きっと、気に入ると思うよ」
「そ、そうなの。ちょっと検索してみようかな」
 ポケットの中からスマホを取り出すミアちゃん。
 いいなぁ!
 自分のスマホを持ってるなんて!
 あたしは、まだ機能がめちゃくちゃ制限された子どもケータイ(ガラケー)しか渡されたことないよ……。
 タシ! タシ! タシ!
 わぁ、ミアちゃんてば、手慣れた手つきでスマホを操作してる。
「ええっと、ガジューラとゴモルザね。画像検索っと……んん!?」
「どう? かわいいでしょ?」
 と、リンちゃん。
「え、えっとその……なんていうか……その、ねえ?」
 ミアちゃんが、リンちゃんになんて言おうか言葉に迷って、あたしの方を見る。
 手に持ったスマホの画面をのぞくと、恐竜のような姿をした生物の画像が映ってた。
 口からするどく尖った牙が生え、目はギラギラと真っ赤に充血し、盛り上がった太い手足の爪はいちど食い込んだら抜けなさそうなかぎ爪だ。
 さらに、お尻から伸びた長い尻尾の先には、剣のような刃が付いている。
 そんな全身が凶器のような大きな巨体には、ごつごつとした鱗がびっしり。
 この、まさに怪獣といった風な姿をした生物はガジューラだ。
 あたしは、怪獣映画はあんまり見たことがないけど、あまりにも有名な怪獣映画だから、ガジューラの姿かたちは見たことがあった。
「う、う~~ん……。か、かわいいかな? これ?」
 素直な感想を口にする。
「そ、そうよね。かわいいとは、ちょっと……」
 と、ミアちゃん。
「かわいいよ? よく見て、こわもてに見えるけど顔は愛嬌があってかわいいでしょ?」
「「う、う~~ん?」」
 あたしとミアちゃんが顔を見合わせる。
 な、なんて言ったらいいのかわかんないよね……。
 怪獣として怖いなぁとは思うけど、「かわいい」とは、ちょっと思えない。
「……いいよ。かわいく見えないなら、それでも。感性はひとそれぞれだから」
 あたしたちの反応を見てリンちゃんも察してくれたみたいだ。
「ご、ごめんね」
「ゴ、ゴモルザの方は、ちょっとかわいいかも」
 ミアちゃんが、スマホを操作して次の画像を見せてくれた。
「あ~~、たしかにゴモルザの方がちょっぴりかわいいかも」
「ね! ガジューラに比べて丸みがあるし、目つきもつぶらで温厚そうだもの」
 それを聞いてたリンちゃんが、笑顔になった。
「そうなの! ゴモルザはね。古代から蘇った世界を滅ぼすほどの力を持った恐ろしい怪獣なんだけど、ずんぐりした体型と優しそうな瞳がかわいいの! 凶悪な設定と見た目のギャップも素敵だよね!」
「お、おう……そ、そうだね」
「か、かわいく見えてきたかもしれないわ」
 嬉しそうにゴモルザのことについて語るリンちゃんに、あたしたちは、もう何も言えなかった。
 ガジューラに比べたら、まだかわいげがあるかなってくらいで、リンちゃんほど素直にかわいいと思えなかったんだけど、言わない方がいいだろうなぁ。
「え、えっと……話を戻そうか。狩谷くんと田中くんは、そのガジューラとゴモルザのどっちが強いかって話してるうちにケンカになっちゃったんだよね?」
「そうみたい。まったく男子ってば、おこちゃまよねぇ」
 ミアちゃんが、くすくすと笑う。
「でも、わからなくもないかな。私もガジューラとゴモルザが戦ったら、どっちが勝つか興味はあるから」
「ねえ、リンちゃん。ガジューラとゴモルザって、戦ったことってないの? 戦ったことがあるなら、話しは早いんじゃない?」
 リンちゃんは、首を横に振る。
「それはないよ。どっちの怪獣も制作会社が別々だから、いままで共演することはなかったの」
「ええ~~? 直接、戦ったこともないのに、どうやってどっちが強いかなんて決めるのかしら?」
 ミアちゃんが、疑問を口にしたときだった。
「ガジューラの熱線は高層ビルなんて跡形もなく吹っ飛ばすし、東京タワーをへし折るぐらい腕の力が強いんだ! だからガジューラの方が強い!」
「それがなんだってんだ! ゴモルザは彦根城をぶっ壊したし、角と爪で硬い岩盤も貫いて地中を進むんだ! パワーはゴモルザのが強い!」
「うるせえ! 熱線も吐けないくせに、なにがパワーだ!」
「最近のゴモルザは角から衝撃波を撃てるんだぞ! 知らないのかよ!」
「まじかよ! かっけーじゃん!」
 うわっ、狩谷くんと田中くんの口論が激しさを増してる。
「と、まあ……こんな感じで、お互い作中の活躍や設定を並べて、どっちが強いか議論するしかないんだよね」
 と、リンちゃん。
「それって、議論に決着つくの?」
「ううん。ふたりとも、自分の好きな怪獣が一番だと思ってるからね。どちらかが譲るまでは、終わらないと思う」
「なにそれ……不毛って、やつじゃん」
 どうすんのさ。
 このケンカ、終わんないじゃん。
「だからガジューラのが強いんだって!」
「ちがうって! ゴモルザのが強いんだよ!」
 あ~あ、あのふたり……ついに取っ組み合いを始めたよ。
「どうしよう。止めた方がいいんだろうけど。言ってやめるような感じじゃないよね」
「委員長ならビシっと言ってきかせて止められそうじゃない?」
 と、ミアちゃん。
「それが、アヤちゃんは塾があるから、もう帰っちゃったんだ」
「あら! もう! 肝心な時にいないんだから!」
 たしかに、アヤちゃんなら、あのふたりのケンカを止められそうな気がする。
 まさか、塾にまで呼びにいくわけにもいかないけどさ。
「ちょっと! ふたりとも、やめなさ~~い!」
「え!? 先生!?」
 保科先生が、慌てた様子で教室に駆け込んできた。
 そんで、何もないところで……、
「あっ!?」
 ずた~~ん! と、つまずいて転んじゃった。
 がしゃんと眼鏡が床に落ちる音がした。
 うわっ、先生も心配だけど、眼鏡も割れてないかな。
 もうすでに、一個の眼鏡を壊しちゃったあとだし、一日に二個も壊れちゃうんなんて気の毒すぎて、あってほしくないんだけど。
「せ、先生……大丈夫ですか?」
 それまで、互いにつかみかかっていた狩谷くんと田中くんもケンカを中断して、転んでしまった保科先生のことを心配する。
「だ、大丈夫ですよ。先生、こう見えて、けっこう身体は頑丈なんです!」
 むくりと起き上がった保科先生が、床に落ちてた眼鏡を拾い上げて、目元にかけなおした。
 げっ! め、眼鏡が!
「ほ、保科先生……眼鏡、割れちゃってますよ」
 あたしが、右半分のグラスが割れた眼鏡を指さすと、保科先生は苦笑した。
「また、やっちゃいましたね。でも大丈夫! 予備は、まだまだあります!」
 にっこりほほ笑む保科先生。
 ポケットから、するっと予備の眼鏡を取り出して見せた。
「せ、先生……その予備の眼鏡も割れちゃってますよ」
「ええ!? ああ!? ほんとですね!? 転んだときの衝撃で割れちゃったのかしら!?」
 こ、これで三個目の眼鏡が割れちゃった。
 一日に三個も割っちゃうなんて……。
「でも平気です。予備の眼鏡はバッグにまだありますから」
「そ、そうなんだ。それなら、よかったです」
 いや、よくわないんだろうけど。
 先生ってば、いったいいくつの予備を持ってるんだろ?
「それよりも、狩谷くんに田中くん! 先生は、ふたりがケンカしていると聞いて飛んできたんです!」
 たぶん、クラスの誰かが保科先生に報告しに行ったんだろうね。
「ケンカの理由は、なんなんですか!」
 保科先生に問われて、狩谷くんと田中くんが、かくかくしかじかとケンカの理由を説明した。
「なるほど……。ケンカの理由はよくわかりました」
 深くうなずく保科先生。
「先生は、どっちの怪獣が強いと思いますか!」
「やっぱり、ゴモルザですよね!」
 先生~~! たまには、びしっと言ってケンカを止めてよ!
「狩谷くん田中くん、たしかにふたりの好きな怪獣は、とても強いかもしれません。ですが、やはり一番強いのは、ブレイヴ・ティーチャーです!」
 教室にいるみんなが、「ぽか~~ん」とした。
 ぶ、ブレイヴ・ティーチャー……?
「あ、あの……それって、なんなんですか?」
 あたしの質問に、保科先生は割れた眼鏡をクイっと押し上げて答えてくれた。
「ブレイヴ・ティーチャーとは、先生が幼い頃に放送されていたアニメです!」
「あ、アニメ?」
「はい! そのアニメの主人公は勇山桃花! 新米教師として小学校で働く彼女ですが、しかしてその実態は、悪霊や怪物から人々を守る勇者だったのです! 教師として教鞭を振るう傍ら、ひとたび事件が起きればブレイヴ・ピーチに変身して悪と戦う正義のヒロイン! その勇ましい姿に憧れて私は教師を目指したのです!」
 保科先生の眼鏡が「キラン!」と光った。
「え、ええ……?」
 まさか、先生が教師を目指した理由がアニメにあっただなんて……。
「よ、よくわかんねぇけど! そのなんとかティーチャーより怪獣の方が強いに決まってるじゃん!」
「そうだぜ! 変身しようが、人間が怪獣に勝てるわけないぜ!」
 狩谷くんと田中くんが、猛然と反論する。
 しかし保科先生も、
「いいえ! ブレイヴ・ティーチャーの方が強いんです! 怪獣相手でも負けません! 作中で巨大な怪物とも何度も戦い勝利したのですから間違いありません!」
 と、ゆずらなかった。
「人間相手に負けた怪物が弱かったんだよ! ガジューラは、そんなに弱くない! そのなんとかティーチャーだって返り討ちにしてるよ!」
「そうだそうだ! 怪獣は人間なんかに負けないんだ! ゴモルザなら、そのブレイヴなんとかってのも倒してるさ!」
「まあ! どうしてわかってくれないんですか! ブレイヴ・ティーチャーは、相手が何であろうと負けないんです! 勇気の心と人々の応援さえあれば、無敵なんです!」
 3人の主張が激しくぶつかり合う。
 おいおい、どうすんのさ……これ。
「はあ……。バカバカしくなっちゃった。私、帰るわね」
 ミアちゃんが、「バッカみたい」と言い残して教室を出ていく。
「わたしも、か~~えろっと」
「そうしよそうしよ」
 教室に残っていたみんなも、これ以上、あの3人のケンカに付き合いきれないって感じで続々と帰っていく。
「おい、友永。俺たちも帰るわ」
「え? タクヤたちも帰んの? ユウくんたちとの会議は?」
「だってよぉ、こんなに騒がしいんじゃ話し合いもできやしねぇじゃん」
「ボクたちは、場所を変えて話し合うよ。それじゃあね、ユイちゃん」
「ばいばい」
 タクヤとユウくんとリンちゃんまで、帰ってしまった。
「そもそも先生が言ってるのってアニメのキャラクターじゃん! 怪獣は特撮だしさ、比べる方がおかしいじゃん!」
「そうだそうだ! そもそもジャンルが合ってないじゃんか!」
「いいえ! たとえ、特撮の怪獣が相手であろうとブレイヴ・ティーチャーが最強なのは間違いありません!」
 あの3人のケンカ、なんかもうどうでもよくなってきたなぁ。
 あたしも帰ろうっと。
 ていうか、シーちゃんが屋上で待ってるだろうから、早く行かなきゃ。
 教室を出ても、まだあの3人の言い争う声が聞こえてくる。
 ほどほどにしておきなよね。
 屋上に行くとスズメの姿をしたシーちゃんが手すりの上に立っていた。
「もう! 遅いわよ! とっくに30分経ったのに!」
「ごめんごめん! 教室で、ちょっとね」
「教室で何かあったの?」
「狩谷くんと田中くんと、それと保科先生がケンカしてたんだよ」
「先生までケンカしてたの……?」
「笑っちゃうよね」
「念のために聞いておくけど、そのケンカって魔法の影響なんかを感じなかった?」
「魔法のアイテムは関わってないと思うよ。どの怪獣が一番強いかとか、そんなくだらない言い争いだったからね」
「ふ~~ん……まあ問題なさそうか」
「校舎の中を一通り見て回ったけど、特に何も気になるところはなかったよ。シーちゃんの方は?」
「私の方も、特にないわね。いたって、平和そのものよ」
「いいことじゃん」
「それは、そうなんだけどね。何も起きなさすぎて、逆に不安になるわ」
「とか言ってたら、めちゃくちゃ大変な事件が起きちゃうかもよ?」
「それは、それで困っちゃうわね」
 あたしたちは、帰宅するまで警戒していたんだけど、その日は何にも起きなかった。
 ほんとに外道魔法使いのスクラップが暗躍しているんだろうかと、疑ってしまうぐらい平和な一日だったなぁ。
 ただ、シーちゃんの言うように「何も起きなさすぎて、逆に不安」って感じで、なんだか嫌な予感なようなものが頭から離れない。
 明日も平和ならいいんだけどな。
 そんなことを思いながら、あたしはベッドの中で目を閉じた。



 読んでくださりありがとうございます!
 完結はまだまだ先ですが、マイペースに更新していきます!
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