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第1話 夕希
⑪
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『ごめん。好きになっちゃった』
淳弥の告白を聞いたのは、ほんの1時間前だ。
そして、今、夕希は彼の家で、同じ布団で同衾している。
(こんなことって…)
今、ここにいる自分が現実味がなくて、まるで映画でも見てるみたいだ。
~1時間前~
「うそ…」
思わずつぶやくと、淳弥は苦笑いする。
「好き、って言って、嘘だって言われたのは、いとちゃんが初めてだよ」
「あ、ごめんなさい。信じられなくて…」
淳弥の言葉が、じゃない。この状況が、だ。
好きな人、或いは心に留まっていた人に、好きだと言われたのは初めてだった。高校の時の彼氏は、友達の延長だったし、大学の時はそれまで殆ど話したこともない男の子から告白されて、断る理由がなくて付き合い始めた。
「…わ、私も好き、です…。淳弥さんのこと…」
言い終わるか終わらないかのうちに、淳弥の唇で唇を塞がれた。ちゅっ、と淳弥の唇でスタンプを押すみたいな軽いキスをして、淳弥はきまり悪そうに笑う。
「俺、いいのかな、いとちゃんにこんなことして」
昨日まではいくらプライベートの交流があったとしても、客と店員の壁は越えてなかったのに。淳弥のセリフはそのまま、夕希にも返ってくる。けれど、もう止められなかった。
「…い、いいです」
彼の行為を許諾してしまうと、ぐっと淳弥の行動は大胆になった。
「可愛い、いとちゃん。好きだよ」
ぐっと腰を抱きかかえられ、もっと強く激しく唇を吸われた。
「…ん…っ」
つま先立ちで淳弥にしがみつきながら、夕希はそのキスを受け止めるのがやっとだ。往来でこんなこと。日頃の夕希だったら考えられない。夕希の日頃の常識的な感覚を麻痺させてるのは、深夜の静寂と闇か、淳弥の情熱か。
夕希の唇を貪ってから、淳弥は夕希を抱きしめる。
「…あんなことあったあとじゃ、ひとりで家にいるの、イヤでしょ? うちに…来る?」
ためらいがちで、でも強引な誘い。けれど、夕希に「否」の選択肢はない。夕希が頷くと、淳弥は夕希の手を引いて、坂を降りた道をコンビニの灯りの方に誘導した。
初めて訪れた淳弥の家。
彼の家のベッドに身を横たえていても、まだ信じられない。
とくとくとく。薄手のTシャツを通して、夕希の頬に伝わるのは、淳弥の鼓動だ。いつもと違う天井を眺めながら、淳弥の腕を枕にして横たわる――
(ど、どうしてこんなことになってるんだろ…)
夕希自身にも、何がどうなってるのかわからない展開で、時計の針はもう3時を過ぎているのに、目が冴えてしまって眠れそうにない。
「いとちゃん?」
夕希が眠ってないのを察したのか、淳弥は夕希を呼ぶと、夕希の方を向く。
「寝れない?」
心配げに訊ねる淳弥の顔が間近に迫る。室内はアパートの廊下の照明が入るだけで、ほぼ闇の中なのに、それでも慣れない至近距離にまた夕希の心臓が跳ね上がった。。
淳弥の告白を聞いたのは、ほんの1時間前だ。
そして、今、夕希は彼の家で、同じ布団で同衾している。
(こんなことって…)
今、ここにいる自分が現実味がなくて、まるで映画でも見てるみたいだ。
~1時間前~
「うそ…」
思わずつぶやくと、淳弥は苦笑いする。
「好き、って言って、嘘だって言われたのは、いとちゃんが初めてだよ」
「あ、ごめんなさい。信じられなくて…」
淳弥の言葉が、じゃない。この状況が、だ。
好きな人、或いは心に留まっていた人に、好きだと言われたのは初めてだった。高校の時の彼氏は、友達の延長だったし、大学の時はそれまで殆ど話したこともない男の子から告白されて、断る理由がなくて付き合い始めた。
「…わ、私も好き、です…。淳弥さんのこと…」
言い終わるか終わらないかのうちに、淳弥の唇で唇を塞がれた。ちゅっ、と淳弥の唇でスタンプを押すみたいな軽いキスをして、淳弥はきまり悪そうに笑う。
「俺、いいのかな、いとちゃんにこんなことして」
昨日まではいくらプライベートの交流があったとしても、客と店員の壁は越えてなかったのに。淳弥のセリフはそのまま、夕希にも返ってくる。けれど、もう止められなかった。
「…い、いいです」
彼の行為を許諾してしまうと、ぐっと淳弥の行動は大胆になった。
「可愛い、いとちゃん。好きだよ」
ぐっと腰を抱きかかえられ、もっと強く激しく唇を吸われた。
「…ん…っ」
つま先立ちで淳弥にしがみつきながら、夕希はそのキスを受け止めるのがやっとだ。往来でこんなこと。日頃の夕希だったら考えられない。夕希の日頃の常識的な感覚を麻痺させてるのは、深夜の静寂と闇か、淳弥の情熱か。
夕希の唇を貪ってから、淳弥は夕希を抱きしめる。
「…あんなことあったあとじゃ、ひとりで家にいるの、イヤでしょ? うちに…来る?」
ためらいがちで、でも強引な誘い。けれど、夕希に「否」の選択肢はない。夕希が頷くと、淳弥は夕希の手を引いて、坂を降りた道をコンビニの灯りの方に誘導した。
初めて訪れた淳弥の家。
彼の家のベッドに身を横たえていても、まだ信じられない。
とくとくとく。薄手のTシャツを通して、夕希の頬に伝わるのは、淳弥の鼓動だ。いつもと違う天井を眺めながら、淳弥の腕を枕にして横たわる――
(ど、どうしてこんなことになってるんだろ…)
夕希自身にも、何がどうなってるのかわからない展開で、時計の針はもう3時を過ぎているのに、目が冴えてしまって眠れそうにない。
「いとちゃん?」
夕希が眠ってないのを察したのか、淳弥は夕希を呼ぶと、夕希の方を向く。
「寝れない?」
心配げに訊ねる淳弥の顔が間近に迫る。室内はアパートの廊下の照明が入るだけで、ほぼ闇の中なのに、それでも慣れない至近距離にまた夕希の心臓が跳ね上がった。。
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