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第4章 経過報告と休息のコーヒー

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「何、どしたの? 具合悪いの?」
「午後から嵐じゃない? 御園さんが早退なんて」

営業課のみんなから、からかわれつつ心配されて、私はカバンを持って、フロアを出る。

透のデスクの横は通り過ぎないように、ルートを考えながら歩く。
そっちを見たつもりはないんだけれど、一瞬だけ目がかち合った。

何か言いたげに透は腰を浮かしかけて、けどすぐに座り直す。


始業早々この私が早退。入社6年目になるけれど、こんなのは初めて。公認の彼女が帰るって言うのに、透は私に声もかけない。
まだ私たちの関係が破綻したと知らない他の同僚たちも、よそよそしい態度に「ん?」と首を傾げてる。

柏木課長のことだから、この後透からもいろいろ話、聞くんだろうな。

週明け、私が戻ってきた時に、私、どんな顔してここに戻ってくればいいのか…。あぁぁぁぁ、想像しただけで気が重たい。このままとんずらこいて、二度とこの床を踏みたくないような気さえなってくる。

もう社内恋愛はしない、何があってもしない。副社長とか御曹司に見初められて口説かれても、だ。


そんな決意を固めながら、私はフロアを出た。


このフロアは営業課とあと壁と廊下で仕切られた経理と人事課があり、
廊下の中央にエレベーターがある。

当たり前だけど、出社時間になったばかりのこの時間、普通ならエレベーターはあまり稼働してない。ここは他のオフィスや店舗も入ってる複合ビルだけど、何処も勤務時間はあまり変わらないし。


けど、何故か私が下りのボタンを押す前に、エレベーターがこのフロアについて、ドアが開くや否や鉄砲玉みたいに飛び出してきた。


無防備にぼんやりと扉の前に立ってた私は、その弾丸を避けきれず、まともにぶつかった。


「いた」
「あ、ごめんなさい、前方不注意でした。急いでるもので、申し訳ないですが、謝罪はこれくらいで」

おいおいと思うようなセリフに、その人の顔をまじまじと見る。


「って、今、出社なの? 菜津子」

エレベーターから飛び出してきたのは、友人の菜津子だった。
呆れた。完全遅刻じゃん。


「あ、咲良! 久しぶり!」

ぶつかった相手が私だとわかり、菜津子はほっとした顔になる。そして気は急いでいるものの、私と話したい欲求もあるみたいで、その場に足踏みしてとどまってる。


「久しぶり! やだ、私、話したいことが…」

私も一瞬状況を忘れて、菜津子を呼び止めてしまう。

「惚気? だったら聞いてる暇ないよん」
「や、惚気じゃなくて…今日! 暇? 時間あったら帰り、うち来てよ」
「ん~多分大丈夫。って咲良は? 今から外回り?」
「違うの、私今日から有給もらって3日間お休みなの」
「え、何、それ。いいなあ」

菜津子の足踏みは完全に止まってる。やばい、このままだと、エレベーターあ前会議が始まってしまう。


「いや、だからさ、いろいろあったんだって。今夜ゆっくり話すから」
「わかった、じっくり聞いたげる」

菜津子はそう言って、慌ただしく経理課の方に走っていく。

菜津子と入れ違いに私はエレベーターに乗り込む。
ビルの外は、6月とは思えないくらい、強い日差しが降り注いでいた。


(ん~、暑くなりそう)

伸びをして、陽射しを目一杯吸い込んだ。

この3日間、無駄には出来ないけど、まずは…。
向かうと決めてた場所に足を向ける。
戦士にだって休息は必要だもん。


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