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第5章 未知なる猛獣との遭遇
⑤
しおりを挟む「…そのリンク、私にも送って」
私は菜津子に頼み込む。
「いいよ」
菜津子は、すぐにリンクをlineに貼って送ってくれる。これだと、アカウント登録しなくても見られるみたい。
「サンキュ」
そう言ってスマホを取り出した時に、知らない電話番号から、何件も着信が
あったことに気が付いた。
この番号誰のだろう。
10分置きに2回。うーん、もう1回掛かってくるの待とう。そう思った瞬間、下からお母さんが呼ぶ声がした。
「咲良~、電話よ。何とか事務所の人」
え、冴木さん? 私は慌てて、階段を駆け下りた。
電話はやっぱり冴木さんからだった。金曜までに書類を作成しておくけれど、それは郵送にした方がいいか、事務所に取りに来るか、確認するもの。
どうせ今週いっぱいは暇だし、美雪のインスタの件も聞いて欲しかったから、事務所に伺うと伝えて、電話を切った。
切った瞬間…いや、話してる間からずっと、お母さんからの視線が痛い。
「咲良」
「な、何?」
「今の弁護士の方なの…? どうして弁護士の方があなたに」
お母さんの疑問はもっともで、だからこそ悩んだ。
どうしよ、心配掛けたくない。けど、もうどうしたって、婚約破棄の流れは止めらんない。いずれバレてしまうことだ。
「…ごめん、お母さん、透との結婚ダメになった」
日曜日、いきなり透がやってきて、卒倒させるよりは…と、私は小さな声でやっと真実を告げた。
お母さんも、透のことはよく知っている。家に来て、今日の菜津子みたいに、一緒にご飯食べたのだって、一度や二度じゃない。
お母さんはしばらく黙って、私の顔をじっと見つめてた。表情を読み取られてるみたい。小さい頃、嘘つくと、よくそんな目で見たれたな。
あの頃みたいに、つい目線逸らしたくなる。
今、私は嘘もついてないし、悪いことだってしてないのに。
「理由は?」
「…透が会社の女の子とも付き合ってて、彼女に子どもが出来たから」
流石にそんな下種な理由だとは想定外だったのだろう。お母さんは、小さく息を呑んだ。
けど、そこに自分の感想や感情は込めずに、事実だけを確認するように聞く。
「それで弁護士さんに入ってもらうことにしたの?」
「…そう、慰謝料の請求とか、私じゃわからないことだらけだから」
「ばかね。先に、お父さんとお母さんに言えばいいのに。お父さんだったら、いい弁護士さん、知ってただろうし」
私の心配など取るに足らないことのように、お母さんは言って、ふわりと笑った。
「ごめんなさい…」
「怒ってるんじゃないのよ。けど、最初に相談してもらえなかったのは、ちょっと残念」
「わかってる。けど、心配させたくなかったから…。それに、知り合いにいい弁護士さん、紹介してもらったの。だから、大丈夫」
「なら良かったけど」
「日曜、透、家に来るって。――お父さん、家にいるかな」
「ゴルフの予定は聞いてないから、いるんじゃないかしら。お母さんから言っておこうか?」
「…うん」
淡々と私の話を聞いてくれるお母さんにほっとした。
お母さんは味方でいてくれてる…きっとお父さんも。
日曜日は透との直接対決だ――
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