婚約者にフラれたので、復讐しようと思います

紗夏

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エピローグのその後

前編

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※エピローグの『その後』です。なんとなく思いついちゃったので。
はっきり言ってイチャイチャしてるだけで、内容はないですが、それでもいい!という方だけ、↓へどうぞ。







マスターのマンションは二回目。
だけど前回の時は、非常事態だったから、緊張もドキドキもなかったけれど。


もうアラサーだって言うのに。
いい社会人だって言うのに。
つき合い始めてから『初めて』のおうち訪問は、期待と不安がごちゃ混ぜになって、鼓動も忙しない。


マスターのマンションは黒い壁に、白で統一された家具がおしゃれに配置されている。
仕事忙しいだろうに、部屋の中はとてもきれいだった。




マスターの家には当たり前だけど、コーヒー用の器具がたくさんあって、あれこれ触ろうとしたら、「だめですよ」とやんわりと言われてしまった。


「ご、ごめんなさい…」
ガラス器具に触れていた手は、いつの間にかマスターの手に握られてる。


「咲良さんが謝る必要ないですよ。けどそういうのは全部僕がやります」
「は、はい」

言われてる内容よりも、手と手が触れてることにドキドキしてきちゃう。


あー、やばいな。自分で思ってるよりずっと、私この人のこと好きなんだ…。
些細な言動に揺れる心に、触れた先から、熱くなる指先に、そんなことを自覚させられる。


「これ、珍しいなと思って。コーヒーメーカーなんですか?」

私はポットみたいな形のシルバーの容器を指差した。


「ありませんか? これは、エスプレッソマシンなんです。マキネッタとも言いますね」
「エスプレッソ」

って、にがーいコーヒーを、ちっちゃなカップで飲むあれか。
好奇心でいっぱいになっちゃった私に、マスターはいち早く気がつく。


「…飲んでみます?」
「はいっ」

即答したら、笑われちゃった。


「これはエスプレッソ用のすごく粒子の細かい粉で淹れるんです」

私に説明を加えながら、マスターはその器具の真ん中をぱかっと取った。

人間で言えばお腹の所に粉を入れ、下の部分に水を入れ、直接火にかける。


「こうやってやるんですか」

だからポットみたいな形なんだ。


コーヒーって、一口に言っても、いろいろあるんだなあ。


「飲みますよね」
「はい」

二人でソファに腰掛けて、ちっちゃなカップのコーヒーを味わう。
コクと苦味の強い大人の味。


「よく考えたら、マスターとコーヒー飲むの初めてですね」

いつも淹れてくれる側と淹れて貰う側。
店主と客。そんな関係から、一歩進んでるんだと、改めて感じられて、私はしみじみ呟いた。


「マスター?」

まだ呼び方が定着しない私に、ちょっと意地悪くマスターが笑う。


「あ、ごめんなさい。智之…さん」

名前を呼ぶとマスターは、今度は柔らかく目を細めて、「はい」と静かに応じてくれる。

マスターの手が私の髪に触れ、そのまま後頭部を抱き寄せられる。
ゆっくり目を閉じれば、コーヒーの香りと味のするキスをされた。


「これも初めて…ですね」
「そうですね」

なんかまだ、慣れなくて、照れくさい。


「あ、智之さん。お腹空いてませんか? な、何か作ります…?」

って、私、あんまり料理上手じゃないし、得意料理なんて、豚肉の生姜焼きくらいなんだけど。

マスターのパンケーキの方が、よっぽどおしゃれだし、女子力高い。

「いいですよ」

立ち上がろうとした腕を引っ張られ、もう一度ソファに座らされると思ったら、今度はマスターの膝の上だった。

長い手足にすっぽり包まれて、子どもみたい。お父さんの膝の上って、いつまで座ってたっけ。


「もっとこうしていたいの…僕だけですか?」

マスターの手のひらが私の頬を滑ってく。
くすぐったい、恥ずかしい。だけど…嫌じゃない。


「そんなことは…」

そう答えると、顔を傾けられて、もう一度キスされた。
今度はもっと長くて深い大人のキス――。


「咲良さん、好きです」

キスを解いてから、マスターは熱っぽい声で、そう言った。

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