3 / 14
世界で一番異世界に飛んでいくもの
しおりを挟む
ねえねえ、きみきみ。そうそう、君だよきみきみ。今、時間あるかい? ほんの少しだけ話せないかな。実はとっても大事な話があるんだ。
え? 君と私は初対面だろうって? 確かにそうだ。私と君は初対面だ。しかし、初対面だからといって大事な話をしちゃいけない法律もあるまい。
それに、私は是非ともたくさんの人に知って欲しいから、こうして寒空の下でここを通りかかる人を待っていたんだ。
警戒しなくていいよ。私は君を取って喰おうだなんてこれっぽっちも考えていないんだからね。狼じゃあない。
兎に角、もっと真剣に聞いて欲しい。これからする話は量子力学を始めとする現代科学のすべてを引っくり返すような重大な話なのだからね。ようく、聞き耳を立てるんだ。
冬空の風が寒いって? 大丈夫だ、私も寒い。君も寒くて私も寒い。おあいこじゃないか。そういう問題じゃないと思うだろうがそういう問題なのだ。我慢してくれ。
おっと、その前に君。耳に付けているイヤーフォンを外してくれないか? これでは私の話を聞き逃すかもしれない。
なに? 大丈夫だって? それがどっこい、問題がある。木枯らしだって吹いているんだ。北風小僧に邪魔されても知らないぜ。私はこの話を一回しかしないつもりだからね。
別に聞きたくもない? 早く解放してくれ? おいおい、無粋なことを言うなよ。折角私がNASAも驚く世紀の大発見をしたというのに、君はそれを聞きたくないと言うのか?
そう言わずに。君は私の話を黙って聞いていればいいんだ。ただそこへ座って、ね。それと、音楽は止めておいた方がいい。音楽プレイヤーの電池を無駄に消費したくないだろう?
ところで君は何の音楽を聴いているんだい? え? 言ってもわからない? 大丈夫だ。私は世紀の大発見をするために一日何時間も様々なジャンルの音楽を聴いている。大抵のジャンルは網羅しているから心配ない。言ってみてよ。
へえ、ロックときたか。いい趣味をしている。ちなみに私はロックにうるさいよ? どれくらいうるさいかというと、ロックは八十年代で死んだと言うくらいにはうるさいから、そのつもりでね。
King Crimsonの「Fallen Angel」だって? いい! じつにいい! グッドでベターでベストな選曲だよ。この冬空の下で聞くと少しばかり寂しくなるのが難点だが、それを含めて最高の選曲だ。
ゴホン、失礼。大分話が逸れてしまった。話を戻そう。私が世紀の大発見をした話だったね。では君、一つ尋ねるが、思うこの世界で最も多く異世界へ飛ばされているものは何だと思う?
いきなり何を言い出すんだっていう顔をしているね。まあ、それも仕方ない。私の発見は時代を先取りしすぎている側面も否めないからね。そういう反応は慣れっこさ。
さあ、どうだい? あると思うかい? ライトノベルや漫画の読みすぎ? 私が? 生憎だが、私はライトノベルや漫画は一つも読んだことがないんだ。だから、そのような批判はお門違いだよ。
それに、ライトノベルや漫画に異世界について扱った作品が多いのなら、私の発見も遠からず認められるだろう。何せそういった作品を読んでいる読者たちは、いわば異世界のプロだろうからね。
安心してくれ。私の発見は彼らも全員が納得してくれるレベルの発見だから、もし君がそういった異世界のプロだったとしても十全だ。
ふむ、わからないか。そうだろう、そうだろう! 何せ異世界へ行く方法は私が発見したのだからな。それをこうして伝授しようとしているのだから、君はもう少し私に感謝してもいいんじゃないか?
馬鹿馬鹿しい? 私から言わせてもらえば、そういった安直な否定こそ最も馬鹿馬鹿しいものだと思うけどね。
正解を教えて欲しい? そうだな、そろそろいいだろう。いつまでも引っ張っていると意地の悪い奴だと思われかねない。正解はそれだ。それだよ、それ。君が持っているものだよ。
え? どれかわからない? 嘘を吐くなって? いやいや、君の耳にぶら下がっているじゃないか。君の耳に掛かっているイヤーフォンだよ。
もっと正確に言えばイヤーフォンに付いているシリコンになる。君だって経験したことあるだろう? ふとしたときにイヤーフォンが外れて、その拍子にシリコンまで外れてしまうことが。そして、地面や床に落としたことがあるだろう?
そのとき、まともに見つけ出せた試しはあるかい? うむ、ほとんどないだろう。何故ってイヤーフォンの先に付いているシリコンこそが世界で一番異世界に飛んでいっているものだからね。
ごく稀に他の物質でも行けるみたいだけれど、そうした実例はほとんどない。でも、イヤーフォンの先についたシリコンだけはほとんどの確率で異世界に飛ばされるんだ。
実のところ、原理はよくわかっていない。どうやら環境が大きく関係しているみたいなんだけれど、解明には至っていない。
何だって? 何を言っているんだ君は? 私は最初から人間が異世界に行くとは行っていないぞ。え? ライトノベルや漫画では人間が異世界に行くだって? フン! それこそ夢物語だよ。人間が異世界に行けるわけないじゃないか。行けるのはイヤーフォンの先についたシリコンだけだよ。
あっ、おい、待て! 何処に行く! まだ私の話は終わっていないぞ! まだイヤーフォンの先に付いているシリコンが異世界へ行った事例を紹介していないじゃないか。それではまだこの発見のすべてを知ったことにはならないぞ。おい、戻ってこいって!
対策方法も話していないじゃないか。もし、君のイヤーフォンの先に付いているシリコンが異世界に行ったらどうするつもりだ? 固いプラスチックの気持ちの悪い感触のまま音楽を聴くつもりなのか!?
おい、待てって!
待てってば!
待ってくれよ!
え? 君と私は初対面だろうって? 確かにそうだ。私と君は初対面だ。しかし、初対面だからといって大事な話をしちゃいけない法律もあるまい。
それに、私は是非ともたくさんの人に知って欲しいから、こうして寒空の下でここを通りかかる人を待っていたんだ。
警戒しなくていいよ。私は君を取って喰おうだなんてこれっぽっちも考えていないんだからね。狼じゃあない。
兎に角、もっと真剣に聞いて欲しい。これからする話は量子力学を始めとする現代科学のすべてを引っくり返すような重大な話なのだからね。ようく、聞き耳を立てるんだ。
冬空の風が寒いって? 大丈夫だ、私も寒い。君も寒くて私も寒い。おあいこじゃないか。そういう問題じゃないと思うだろうがそういう問題なのだ。我慢してくれ。
おっと、その前に君。耳に付けているイヤーフォンを外してくれないか? これでは私の話を聞き逃すかもしれない。
なに? 大丈夫だって? それがどっこい、問題がある。木枯らしだって吹いているんだ。北風小僧に邪魔されても知らないぜ。私はこの話を一回しかしないつもりだからね。
別に聞きたくもない? 早く解放してくれ? おいおい、無粋なことを言うなよ。折角私がNASAも驚く世紀の大発見をしたというのに、君はそれを聞きたくないと言うのか?
そう言わずに。君は私の話を黙って聞いていればいいんだ。ただそこへ座って、ね。それと、音楽は止めておいた方がいい。音楽プレイヤーの電池を無駄に消費したくないだろう?
ところで君は何の音楽を聴いているんだい? え? 言ってもわからない? 大丈夫だ。私は世紀の大発見をするために一日何時間も様々なジャンルの音楽を聴いている。大抵のジャンルは網羅しているから心配ない。言ってみてよ。
へえ、ロックときたか。いい趣味をしている。ちなみに私はロックにうるさいよ? どれくらいうるさいかというと、ロックは八十年代で死んだと言うくらいにはうるさいから、そのつもりでね。
King Crimsonの「Fallen Angel」だって? いい! じつにいい! グッドでベターでベストな選曲だよ。この冬空の下で聞くと少しばかり寂しくなるのが難点だが、それを含めて最高の選曲だ。
ゴホン、失礼。大分話が逸れてしまった。話を戻そう。私が世紀の大発見をした話だったね。では君、一つ尋ねるが、思うこの世界で最も多く異世界へ飛ばされているものは何だと思う?
いきなり何を言い出すんだっていう顔をしているね。まあ、それも仕方ない。私の発見は時代を先取りしすぎている側面も否めないからね。そういう反応は慣れっこさ。
さあ、どうだい? あると思うかい? ライトノベルや漫画の読みすぎ? 私が? 生憎だが、私はライトノベルや漫画は一つも読んだことがないんだ。だから、そのような批判はお門違いだよ。
それに、ライトノベルや漫画に異世界について扱った作品が多いのなら、私の発見も遠からず認められるだろう。何せそういった作品を読んでいる読者たちは、いわば異世界のプロだろうからね。
安心してくれ。私の発見は彼らも全員が納得してくれるレベルの発見だから、もし君がそういった異世界のプロだったとしても十全だ。
ふむ、わからないか。そうだろう、そうだろう! 何せ異世界へ行く方法は私が発見したのだからな。それをこうして伝授しようとしているのだから、君はもう少し私に感謝してもいいんじゃないか?
馬鹿馬鹿しい? 私から言わせてもらえば、そういった安直な否定こそ最も馬鹿馬鹿しいものだと思うけどね。
正解を教えて欲しい? そうだな、そろそろいいだろう。いつまでも引っ張っていると意地の悪い奴だと思われかねない。正解はそれだ。それだよ、それ。君が持っているものだよ。
え? どれかわからない? 嘘を吐くなって? いやいや、君の耳にぶら下がっているじゃないか。君の耳に掛かっているイヤーフォンだよ。
もっと正確に言えばイヤーフォンに付いているシリコンになる。君だって経験したことあるだろう? ふとしたときにイヤーフォンが外れて、その拍子にシリコンまで外れてしまうことが。そして、地面や床に落としたことがあるだろう?
そのとき、まともに見つけ出せた試しはあるかい? うむ、ほとんどないだろう。何故ってイヤーフォンの先に付いているシリコンこそが世界で一番異世界に飛んでいっているものだからね。
ごく稀に他の物質でも行けるみたいだけれど、そうした実例はほとんどない。でも、イヤーフォンの先についたシリコンだけはほとんどの確率で異世界に飛ばされるんだ。
実のところ、原理はよくわかっていない。どうやら環境が大きく関係しているみたいなんだけれど、解明には至っていない。
何だって? 何を言っているんだ君は? 私は最初から人間が異世界に行くとは行っていないぞ。え? ライトノベルや漫画では人間が異世界に行くだって? フン! それこそ夢物語だよ。人間が異世界に行けるわけないじゃないか。行けるのはイヤーフォンの先についたシリコンだけだよ。
あっ、おい、待て! 何処に行く! まだ私の話は終わっていないぞ! まだイヤーフォンの先に付いているシリコンが異世界へ行った事例を紹介していないじゃないか。それではまだこの発見のすべてを知ったことにはならないぞ。おい、戻ってこいって!
対策方法も話していないじゃないか。もし、君のイヤーフォンの先に付いているシリコンが異世界に行ったらどうするつもりだ? 固いプラスチックの気持ちの悪い感触のまま音楽を聴くつもりなのか!?
おい、待てって!
待てってば!
待ってくれよ!
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる