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#4 悪魔公の目的
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説明を終えたスージーさんは一礼をすると虚空へ消えていき、部屋には私とグリードさんが残されました。
「私はどうなってしまうのですか?」
母上から聞かされた逸話によれば、私は悪魔公の配下になるはずです。
「貴様は我の配下になる。しかし、我は命令するつもりはない。何をするかは貴様が決めることだ」
「それは私に服を脱げと……そういうことでしょうか?」
私は無意識に自身の体を引き寄せていました。
「フハハッ! 我が貴様の貧相な体を欲すると? 自惚れるなよ? そのままの意味だ」
「……」
勘違いと羞恥心のあまり視線があちこちに泳いでしまいます。
「我が貴様を悪魔にしたのは、ひとえに貴様がそれを望んだからだぞ?」
「私が?」
そんな覚えはありません。
「呪詛を吐いていたではないか」
「呪詛……」
そういえば確かに呪詛を吐いていました。
「貴様のしたいこと――いや、やり残したことはなんだ?」
「私のやり残したこと……」
「貴様を毒殺した相手を殺したいのだろう?」
ああ、そうです。私は子爵を殺したいのです。私の純情を弄び、父上と母上を騙した罪は、死を以って償わせなければなりません。
「――はい」
「我がその機会を与えてやる」
「いいのですか?」
「我は復讐譚が大好きなのだ。貴様の話を聞くためなら最大限の助力をしよう」
「ありがとうございます!」
「その代わり血沸き肉躍るとびきりの復讐譚を我に語れ。でなければ貴様の魂を喰らいつくしてやるからな」
「は、はい……」
とても恐ろしい人ですが悪い人ではなさそうです。いえ、人ではありませんね。悪魔です。
私はグリードさんに跪きました。私は悪魔流の礼儀など知りませんから人間流でしか出来ませんが、それでもグリードさんに私の思いは伝わったようで、ひじ掛けに頬杖を突き私を見下ろす彼の口角がみるみる吊り上がっていきます。
「私レヴィ・エコーズは貴方様に忠誠を誓います」
「こっちを見ろ」
「……はい」
顔を上げようとした瞬間、私は無理矢理顎を引き寄せられ――
「舐めるのだ」
「――んあッ」
――口の中に親指を突っ込まれました。
しかも親指からは血が流れているようで、グリードさんの血の味が私の口の中に広がっていきます。
「しっかり舐めるのだ」
「ふぁい……」
言われた通りグリードさんの血を舐めていると、ふと気分が高揚している私がいることに気が付きました。不思議なことに体がぽっぽとしてくるのです。胸の奥の方と言った方が正確でしょうか?
この奇妙な感覚に揺蕩いながら指を舐めていると、グリードさんが唐突に指を引き抜きました。
「これくらいで十分だろう。この血は眷属の証だ。心して受け取るがよい」
「ありがとうございます」
名残惜しい気持ち半分、これ以上はいけないという背徳感半分、私が唾液の滴る親指を目で追いかけていると、マスターはハンカチで指を拭いて立ち上がりました。
「今日はもう寝ろ。明日からは我が直々に悪魔のイロハを叩きこんでやるから覚悟しておけ、いいな? それとこの部屋は貴様にやる。自由に使うがいい」
そういうと、マスターは部屋から出て行ってしまいました。
残された私はもう一度姿見の前に立ち、角としっぽの触感を確かめてから未だに火照る顔をパタパタと手で仰いで冷ますと、ふかふかのベッドに飛び込みました。
「私、悪魔になっちゃいました」
「私はどうなってしまうのですか?」
母上から聞かされた逸話によれば、私は悪魔公の配下になるはずです。
「貴様は我の配下になる。しかし、我は命令するつもりはない。何をするかは貴様が決めることだ」
「それは私に服を脱げと……そういうことでしょうか?」
私は無意識に自身の体を引き寄せていました。
「フハハッ! 我が貴様の貧相な体を欲すると? 自惚れるなよ? そのままの意味だ」
「……」
勘違いと羞恥心のあまり視線があちこちに泳いでしまいます。
「我が貴様を悪魔にしたのは、ひとえに貴様がそれを望んだからだぞ?」
「私が?」
そんな覚えはありません。
「呪詛を吐いていたではないか」
「呪詛……」
そういえば確かに呪詛を吐いていました。
「貴様のしたいこと――いや、やり残したことはなんだ?」
「私のやり残したこと……」
「貴様を毒殺した相手を殺したいのだろう?」
ああ、そうです。私は子爵を殺したいのです。私の純情を弄び、父上と母上を騙した罪は、死を以って償わせなければなりません。
「――はい」
「我がその機会を与えてやる」
「いいのですか?」
「我は復讐譚が大好きなのだ。貴様の話を聞くためなら最大限の助力をしよう」
「ありがとうございます!」
「その代わり血沸き肉躍るとびきりの復讐譚を我に語れ。でなければ貴様の魂を喰らいつくしてやるからな」
「は、はい……」
とても恐ろしい人ですが悪い人ではなさそうです。いえ、人ではありませんね。悪魔です。
私はグリードさんに跪きました。私は悪魔流の礼儀など知りませんから人間流でしか出来ませんが、それでもグリードさんに私の思いは伝わったようで、ひじ掛けに頬杖を突き私を見下ろす彼の口角がみるみる吊り上がっていきます。
「私レヴィ・エコーズは貴方様に忠誠を誓います」
「こっちを見ろ」
「……はい」
顔を上げようとした瞬間、私は無理矢理顎を引き寄せられ――
「舐めるのだ」
「――んあッ」
――口の中に親指を突っ込まれました。
しかも親指からは血が流れているようで、グリードさんの血の味が私の口の中に広がっていきます。
「しっかり舐めるのだ」
「ふぁい……」
言われた通りグリードさんの血を舐めていると、ふと気分が高揚している私がいることに気が付きました。不思議なことに体がぽっぽとしてくるのです。胸の奥の方と言った方が正確でしょうか?
この奇妙な感覚に揺蕩いながら指を舐めていると、グリードさんが唐突に指を引き抜きました。
「これくらいで十分だろう。この血は眷属の証だ。心して受け取るがよい」
「ありがとうございます」
名残惜しい気持ち半分、これ以上はいけないという背徳感半分、私が唾液の滴る親指を目で追いかけていると、マスターはハンカチで指を拭いて立ち上がりました。
「今日はもう寝ろ。明日からは我が直々に悪魔のイロハを叩きこんでやるから覚悟しておけ、いいな? それとこの部屋は貴様にやる。自由に使うがいい」
そういうと、マスターは部屋から出て行ってしまいました。
残された私はもう一度姿見の前に立ち、角としっぽの触感を確かめてから未だに火照る顔をパタパタと手で仰いで冷ますと、ふかふかのベッドに飛び込みました。
「私、悪魔になっちゃいました」
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