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#5 誰もいないけれども誰かがいる
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翌朝、枕元の机に一通の便せんと着替えが置かれていました。
「これは?」
裏を見ると宛名が私になっています。そこで封を開けると中には一通の手紙が入っていました。
『朝食は一階の大広間』
とても美しい字でした。これを書いた人物は相当質の高い教育を受けた方でしょう。マスターが置いてくれたのかとも思いましたが、昨日の出会いだけでもそのようなことをする人ではないことくらいわかりましたので、これは他の人が書いたものでしょう。
スージーさんでしょうか? 所作に物腰、言葉遣い、どれを取っても従者として完璧だったあの人ならば不思議ではありません。
あれほどの従者は王城にすらいないでしょう。まあ、そもそも彼女は人ではないので、いるはずがありませんが。
私はお腹が減っていたので、角としっぽに気をつけながら着替えて手紙のとおり大広間に向かってみることにしました。
大きなお城の中を迷い迷い、やっと見つけた大広間は圧巻の一言でした。私の立っている位置から端まで優にかけっこができそうです。そして、そんな大広間に似つかわしい長机の真ん中に、ぽつねんと湯気の立つ料理が並べられていました。
私は席に着きナイフとフォークを握ります。ぐるりと周りを見渡してみました。
「誰もいない……ですね」
響くのは私が立てる物音のみです。耳をそばだてれば心音まで聞こえて来そうです。
「いただきます」
ここには誰もいないので、この言葉を言わなかったところで誰も咎める人はいませんが、それがかえって私の良心をつつき、言わなければならないような気がしました。
まずは一口。
「――これは!」
私が今まで食べてきたどんな料理よりも美味しいです。頬が落ちるとはこのことを言うのでしょう。私は令嬢ということを忘れて夢中で頬張りました。
完食しナプキンで口元を拭いていると、視界の端に朝と同じ便せんが置かれていることに気が付きました。
「あら?」
いつの間に置かれていたのでしょうか? それとも最初から置かれていた?
いえ、それはあり得ません。いくら朝食に夢中になっていたとはいえ、料理以外見えなくなるくらいの視野狭窄に陥っていません。置かれたのならばすぐに気が付いたでしょう。
ともかく、便せんを開かないことには何も始まらないので、私は手を伸ばして便せんを取り封を破りました。
『地下書庫へ』
「……」
先ほどもそうでしたが、これでは情報が少な過ぎないでしょうか? このお城は王城に負けず劣らずの広さを持っているのに、たったこれだけの情報では探すのに時間がかかってしまいます。
しかし誰かに道を聞こうにも誰もいません。絶対にそんなはずはないのにです。私は便せんを手に地下書庫を探しに行くことにしました。
「食器……」
果たしてこれは誰が片付けてくれるのでしょうか? 私がいない間に使用人が? 人がいる気配すらないのに?
もし、誰も片付けないのならこの食器はずっとここに放置されることになるでしょう。
私は父上から『自分のことは自分で出来る人であれ』と教わってきました。今こそその教えが活きるときです。
というわけで私は、地下書庫へ向かう前に自分の使った食器を洗うことにしました。大体このような大広間には厨房が隣接している場合が多いので、探してみるとやはり厨房がありました。
「やっぱり誰もいません」
が、必要なものはありました。たわしに石鹸、布巾まで綺麗なものが置かれています。しかも、私の料理を作ったであろう調理器具がきちんと洗われて風通しの良い所に干されているのです。
明らかに誰かがいました。それもつい今しがたまで。
「……」
不気味です。
食器を洗い終わった私は、調理器具が干されている所に同じように食器を干し、改めて地下書庫へ向かうことにしました。
「これは?」
裏を見ると宛名が私になっています。そこで封を開けると中には一通の手紙が入っていました。
『朝食は一階の大広間』
とても美しい字でした。これを書いた人物は相当質の高い教育を受けた方でしょう。マスターが置いてくれたのかとも思いましたが、昨日の出会いだけでもそのようなことをする人ではないことくらいわかりましたので、これは他の人が書いたものでしょう。
スージーさんでしょうか? 所作に物腰、言葉遣い、どれを取っても従者として完璧だったあの人ならば不思議ではありません。
あれほどの従者は王城にすらいないでしょう。まあ、そもそも彼女は人ではないので、いるはずがありませんが。
私はお腹が減っていたので、角としっぽに気をつけながら着替えて手紙のとおり大広間に向かってみることにしました。
大きなお城の中を迷い迷い、やっと見つけた大広間は圧巻の一言でした。私の立っている位置から端まで優にかけっこができそうです。そして、そんな大広間に似つかわしい長机の真ん中に、ぽつねんと湯気の立つ料理が並べられていました。
私は席に着きナイフとフォークを握ります。ぐるりと周りを見渡してみました。
「誰もいない……ですね」
響くのは私が立てる物音のみです。耳をそばだてれば心音まで聞こえて来そうです。
「いただきます」
ここには誰もいないので、この言葉を言わなかったところで誰も咎める人はいませんが、それがかえって私の良心をつつき、言わなければならないような気がしました。
まずは一口。
「――これは!」
私が今まで食べてきたどんな料理よりも美味しいです。頬が落ちるとはこのことを言うのでしょう。私は令嬢ということを忘れて夢中で頬張りました。
完食しナプキンで口元を拭いていると、視界の端に朝と同じ便せんが置かれていることに気が付きました。
「あら?」
いつの間に置かれていたのでしょうか? それとも最初から置かれていた?
いえ、それはあり得ません。いくら朝食に夢中になっていたとはいえ、料理以外見えなくなるくらいの視野狭窄に陥っていません。置かれたのならばすぐに気が付いたでしょう。
ともかく、便せんを開かないことには何も始まらないので、私は手を伸ばして便せんを取り封を破りました。
『地下書庫へ』
「……」
先ほどもそうでしたが、これでは情報が少な過ぎないでしょうか? このお城は王城に負けず劣らずの広さを持っているのに、たったこれだけの情報では探すのに時間がかかってしまいます。
しかし誰かに道を聞こうにも誰もいません。絶対にそんなはずはないのにです。私は便せんを手に地下書庫を探しに行くことにしました。
「食器……」
果たしてこれは誰が片付けてくれるのでしょうか? 私がいない間に使用人が? 人がいる気配すらないのに?
もし、誰も片付けないのならこの食器はずっとここに放置されることになるでしょう。
私は父上から『自分のことは自分で出来る人であれ』と教わってきました。今こそその教えが活きるときです。
というわけで私は、地下書庫へ向かう前に自分の使った食器を洗うことにしました。大体このような大広間には厨房が隣接している場合が多いので、探してみるとやはり厨房がありました。
「やっぱり誰もいません」
が、必要なものはありました。たわしに石鹸、布巾まで綺麗なものが置かれています。しかも、私の料理を作ったであろう調理器具がきちんと洗われて風通しの良い所に干されているのです。
明らかに誰かがいました。それもつい今しがたまで。
「……」
不気味です。
食器を洗い終わった私は、調理器具が干されている所に同じように食器を干し、改めて地下書庫へ向かうことにしました。
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