財産目当てに殺された私の魂は悪魔公に拾われました。

鉛風船

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#6 悪魔の六種族

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 四苦八苦して地下書庫へ続く階段を見つけたとき、時間は正午に差し掛かろうとしていました。もし鏡を見たら、きっと私の顔は相当げんなりしているでしょう。

 階段はお城の隅にありました。そのせいか、階段を降るつれて肌に纏わり付くような陰気な感じがして私は身震いしました。心なしか壁にかかるランプも陰気さに飲まれて鈍重に揺らめいている気がします。

「地下書庫に何があるのでしょうか?」

 びくびくしながら重く大きな扉を開けると、とんでもない広さの書庫が現れました。立ち並ぶ書棚も私の背丈の何倍もあります。

 そして、その一番奥の書斎机――私の位置からだと点にしか見えません――にマスターが頬杖をついて私のことを待っていました。

 私が急いで駆け寄ると、マスターは読んでいた本をゆっくりと閉じました。

「遅れてしまい申し訳ございません」

「謝ることは無い。初めての場所に迷わず来いというのが無理な話だ。むしろ久々にゆっくりと読書ができた。礼を言う」

「え……いやいやいや! そんな! 滅相もございません!」

 これは一体何の間違いでしょう! 昨日のマスターとは大違いです。

「我が城を探索できたのではないか?」

「は、はい、それはもう!」

「では次から遅れることはないな」

「……」

 そういうことでしたか。マスターはあえて情報を少なくすることで、お城の間取りを体で覚えさせようとしたみたいです。実際、かなり覚えられました。ほぼ半日の間お城中を駆けずり回っていましたからね。

「では本題に入ろう。そこに掛けるがよい」

 マスターが机に向かうように置かれた椅子を指しました。そして、手に持っていた本を私に寄越しました。

 題名は『悪魔大全』とあります。著者が掠れて読めませんが、紙の状態から相当古い本だということが分かりました。

「それは、昔の人間がおこがましくも我々悪魔のことを知ろうと書き記した書物だ。人間風情にしてはこれが中々面白く書かれている。しばらくはこれを教科書に悪魔について学ぶがよい」

「はい」

 ずっしりと重い本を開くとすべて昔の言葉で書かれていました。幸い、私は教育係から古典文学について教わっていましたので、恐らく問題なく読めるはずです。

 とはいえこれだけ分厚いのですから読むだけでも相当時間がかかりそうです。内容を覚えるとなると尚更時間がかかるでしょう。

「今日は我ら悪魔という種族について軽く教えてやろう」

「悪魔……」

 改まった態度に思わず唾を飲みます。

「して、貴様は悪魔をどれくらい知っておるのだ?」

「ええと、お伽噺ではよく国を傾ける存在として登場していました。それ以上のこととなると……ちょっと」

「ふん、貴様でその程度となると、今の人間どももその程度しか知らないとみていいだろう。まあ、これが時代の流れという奴か。よし、その本の六ページを開け」

「開きました」

「なんて書いてある?」

「『悪魔の種類』について書かれています」

 私がすべてを読み上げようとするのをマスターは手で遮り、

「そうだ。悪魔と一口に言えども、およそ六種類の種族に分類される。序列の上から順にマリッド、イフリート、シャイターン、ジン、ジャーン、インプだ。これより下の序列の悪魔もいることにはいるが、そんな有象無象など考えなくていい」

 と続けました。

 私の中で、悪魔とは国を滅ぼす者というイメージだったので、序列があったことに驚きです。しかも六種族も。ということはつまり、序列の高い悪魔はより簡単に国を滅ぼせるということでしょうか?

「あの、悪魔はインプでも国を滅ぼせるのでしょうか?」

「いや、国を滅ぼせるほどの力を持っているのはイフリート以上だ。インプなら精々人間一人を破滅させるくらいだろう」

「それでも十分過ぎますよ」

「そうか? インプ程度なら今の貴様でも使役できるぞ?」

「ええ!?」

 私がインプを使役? それは何というか……非常に魅力的な話です。人でなくなった今、少しくらい悪魔らしいことをしてもいいのでは?

「嬉しそうだな」

「い、いえ……別にインプをペットにしたいだなんて思っていませんよ?」

「……」

 マスターは何か言いたげな様子でしたが、結局何も言わず教科書を指さしました。

「話を続ける。次の項目を読んでみろ」

「はい。『各序列ごとの有名な悪魔』について書かれています。ええっと……『マリッドで有名なのは次の五体である。まずはグリード・ディラン』……え?」

 私がマスターを見ると、マスターはニヤリと笑います。

「これが我がこの本を好きな理由だ。他のマリッド共を差し置いて我の名が記されている。フハハッ!」

「マリッド……え?」

「そうだ、いかにも我はマリッドのグリード・ディランだ」

 どうやら私のマスターは世界最強クラスの悪魔なようです。
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