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#7 インプとの邂逅
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その後の授業も順調に進み、書斎机の横にある振り子時計が七回鳴ったところでお開きになりました。私はマスターから大量の宿題を出され、人間だった頃――と言っても数日前ですが――家庭教師に出されていた宿題を思い出しました。
「明日までにこの本の第一章『悪魔の生態』を暗記してこい。それが今日の宿題だ」
「はい!」
脳死の返事であることは言うまでもありません。
このときの私の張り付いた笑顔を剥がすのにどれほど苦労したことか。一章分だけで百ページ以上あるのです。しかもそれが第十章まであります。
地獄の暗記週間が始まりました。
◆◇
一月後、私が地下書庫の扉を開けるとマスターは初めてここへ来たときと同じ姿勢で違う本を読んでいました。
「マスター……レヴィ……です」
「フハハッ、半死半生の逃亡兵のような顔をしているぞ」
「ふへへ……大丈夫です……やっと第十章を覚えられました」
私は『悪魔大全』をマスターに預けると、目を瞑って第十章を暗誦しました。
「合格」
マスターは短く言い切りました。他に言葉を掛けてくれることもありませんでした。しかし、私はマスターの口角がほんの少し上がるのを見逃しませんでした。
私は安堵感からドッと脱力し、マスターが用意してくれた椅子にぐったりと腰掛けました。
「何をしてるのだ? 今日の授業はまだ始まったばかりだぞ」
「え!?」
確かにそうです。まだ私は何もしていません。しかし、体感的には授業後のようです。だって悪魔大全のずべての章を暗記し終えたのですから。
私はゆっくりと体を起こしました。
「立て。中庭に行くぞ」
「中庭?」
◆◇
私はマスターと一緒に中庭に植えられた桜の木の下までやってきました。あれだけ探索したと思っていたお城でしたが、私の必死の探索を嘲笑うかのごとく鎮座する姿に、改めてお城の巨大さを実感しました。
「貴様は城の中で誰かを見たことがあるか?」
突然マスターが切り出しました。
「いえ、マスターとスージーさん以外見たことありません。それについては以前から気になっていたのですが、このお城には誰もいないのですか?」
「まさか。我が居城には一万の配下がいる」
「ええ!? どこにいるのですか?」
「そこら中に」
そう言ってマスターは中庭を手で示します。私は目を凝らしてみますがそれらしき影はちっとも見当たらず、素晴らしい庭ばかり目に入りました。
「見えないのは私の悪魔としての実力が足りないからでしょうか?」
「そうだ。今の貴様は『目』を使いこなせていない。それではいくら悪魔とてインプにも寝首を掻かれるだろうな。この眼鏡を掛けてみろ」
言われた通り眼鏡を掛けてみると、度が入っているわけではないようで、視界がゆがむことはありませんでした。でも、それなら何を見るための眼鏡なのでしょう?
眼鏡は目が悪い人のためのものです。マスターがおしゃれのために渡すはずもありませんから、私にはその意図が測り兼ねました。
「これは何に使うのですか?」
「それは悪魔を見る眼鏡だ。こいつを見ろ」
マスターはどこからか小さな小鳥の入ったガラス瓶を取り出すと、それを私に寄越しました。
「ちゃんと空気穴を開けて上げないと死んでしまいますよ――って、ななななんですかこの生き物は!?」
目を凝らすとガラス瓶の中にへんてこりんな生き物が現れたではありませんか!
「これがインプだ」
「明日までにこの本の第一章『悪魔の生態』を暗記してこい。それが今日の宿題だ」
「はい!」
脳死の返事であることは言うまでもありません。
このときの私の張り付いた笑顔を剥がすのにどれほど苦労したことか。一章分だけで百ページ以上あるのです。しかもそれが第十章まであります。
地獄の暗記週間が始まりました。
◆◇
一月後、私が地下書庫の扉を開けるとマスターは初めてここへ来たときと同じ姿勢で違う本を読んでいました。
「マスター……レヴィ……です」
「フハハッ、半死半生の逃亡兵のような顔をしているぞ」
「ふへへ……大丈夫です……やっと第十章を覚えられました」
私は『悪魔大全』をマスターに預けると、目を瞑って第十章を暗誦しました。
「合格」
マスターは短く言い切りました。他に言葉を掛けてくれることもありませんでした。しかし、私はマスターの口角がほんの少し上がるのを見逃しませんでした。
私は安堵感からドッと脱力し、マスターが用意してくれた椅子にぐったりと腰掛けました。
「何をしてるのだ? 今日の授業はまだ始まったばかりだぞ」
「え!?」
確かにそうです。まだ私は何もしていません。しかし、体感的には授業後のようです。だって悪魔大全のずべての章を暗記し終えたのですから。
私はゆっくりと体を起こしました。
「立て。中庭に行くぞ」
「中庭?」
◆◇
私はマスターと一緒に中庭に植えられた桜の木の下までやってきました。あれだけ探索したと思っていたお城でしたが、私の必死の探索を嘲笑うかのごとく鎮座する姿に、改めてお城の巨大さを実感しました。
「貴様は城の中で誰かを見たことがあるか?」
突然マスターが切り出しました。
「いえ、マスターとスージーさん以外見たことありません。それについては以前から気になっていたのですが、このお城には誰もいないのですか?」
「まさか。我が居城には一万の配下がいる」
「ええ!? どこにいるのですか?」
「そこら中に」
そう言ってマスターは中庭を手で示します。私は目を凝らしてみますがそれらしき影はちっとも見当たらず、素晴らしい庭ばかり目に入りました。
「見えないのは私の悪魔としての実力が足りないからでしょうか?」
「そうだ。今の貴様は『目』を使いこなせていない。それではいくら悪魔とてインプにも寝首を掻かれるだろうな。この眼鏡を掛けてみろ」
言われた通り眼鏡を掛けてみると、度が入っているわけではないようで、視界がゆがむことはありませんでした。でも、それなら何を見るための眼鏡なのでしょう?
眼鏡は目が悪い人のためのものです。マスターがおしゃれのために渡すはずもありませんから、私にはその意図が測り兼ねました。
「これは何に使うのですか?」
「それは悪魔を見る眼鏡だ。こいつを見ろ」
マスターはどこからか小さな小鳥の入ったガラス瓶を取り出すと、それを私に寄越しました。
「ちゃんと空気穴を開けて上げないと死んでしまいますよ――って、ななななんですかこの生き物は!?」
目を凝らすとガラス瓶の中にへんてこりんな生き物が現れたではありませんか!
「これがインプだ」
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