62 / 974
6月
休み時間にて 5
しおりを挟む
水原涼香は下級生を中心に、クールで美人な先輩という認識を持たれている。
その認識はまあ間違いでは無い。
窓辺で佇むその姿、艶のあるまっすぐな黒のロングヘアーが風に揺られ、物憂げに窓の外を眺める姿は、まるで息をするのを忘れるかのような美しさ。
シミひとつない、日焼け知らずの肌。一見冷たく見えるその目は、相手を突き放すよりも吸い込んでしまう程の綺麗さをほこり、左の目尻にあるホクロが大人の雰囲気を醸し出している。
傍から見ればクールビューティーなのだ。
そんな涼香の後ろを通る下級生達、その目は涼香に釘付けだった。そして、涼香が窓辺から立ち去る時、ふわっとたなびく髪の毛から香るシャンプーの香りが彼女達の心をわしづかむ。
水原涼香とはそういう生徒だ。下級生基準で考えればの話だが。
そしてとある休み時間。一人の下級生が勇気を出して涼香へと話しかけていた。学校の渡り廊下、他の生徒達が通り過ぎる、みんな(下級生を中心に)涼香に目を奪われながら。
「み、水原先輩!」
「どうしたの?」
勇気を出して声をかけた生徒に、涼香が鈴を鳴らしたような声で返す。
そしてその様子をたまたま離れた位置で見ているのが。
「まーた先輩捕まってる」
檜山涼音、涼香の一つ下の生徒、涼香の幼なじみでもある。
茶色に染められた髪をおさげにしている生徒。クリっとした目は今は細められていた。
涼音の見つめる先では、涼香が女子生徒となにか話している。そしてその少し後ろでは、女子生徒の友達だろうか、何人かの生徒がその様子を見守っていた。
幾度となく見た光景だ。だいたいこういうのは涼香とお近づきになりたいとかそんな感じの話。
盗み聞きは良くないなと思いながら、涼音はススス……と二人の会話が聞こえる位置に移動する。
「あのっ、私ずっと……先輩のことを見てて……」
もごもごと一言一言選びながら話す女子生徒。
「あら、そうなの⁉ 結構人に見られるものなのね」
「それはもう当然です! 水原先輩はめちゃくちゃ有名ですから!」
(いや、あなた達が先輩を探しているからでしょうが)
その言葉をジト目で聞いている涼音。今のような移動教室の時以外、涼香はほとんど教室を出ない。登校時ならよく見られるがそれぐらいだ。
それでも廊下を歩けば下級生に声をかけられたりするのだから、涼香の人気は凄まじい。
「そうみたいね、ありがとう。それではそろそろ、次の授業があるから」
「え、あ、もうそんな時間⁉️ あ、じゃあせめて連絡先でも!」
十分という時間はなんと残酷か、まともに会話することなく終わりを迎えようとしている。
ならばせめて連絡先を、距離を詰めるための高速タックル、しかし彼女のタックルは避けられることとなる。
「ごめんなさいね、今はスマホ持ってないのよ」
『今スマホ持っていないの』という言葉は、連絡先を交換したくない時に使われる常套手段である。
「あ……そ、そうですよね。私なんかと連絡先なんて交換したくないですよね……!」
「え、ちょっと――」
「お時間頂きありがとうございました!」
そう言って見守る友達の元へと戻っていく女子生徒。その顔は悲しみに染まっていたがどこか吹っ切れたようだった、そして彼女を迎える友達も涙を浮かべながら迎える。
(先輩リアルに今はスマホ持ってないだけなんだけどなあ……)
今日の涼香はスマホを家に忘れてきただけなのに。
「なんだか凄く申し訳ないことをしてしまった気がするわね」
涼香がそう呟いたと同時にチャイムが鳴る。生徒達が早足で次の授業へと向かっていく。涼音もバレないようにコソコソとその場を離れる。
「まあ友達も付いていたみたいだし、大丈夫そうね」
雑に納得した涼香も授業へと向かったのだった。
その認識はまあ間違いでは無い。
窓辺で佇むその姿、艶のあるまっすぐな黒のロングヘアーが風に揺られ、物憂げに窓の外を眺める姿は、まるで息をするのを忘れるかのような美しさ。
シミひとつない、日焼け知らずの肌。一見冷たく見えるその目は、相手を突き放すよりも吸い込んでしまう程の綺麗さをほこり、左の目尻にあるホクロが大人の雰囲気を醸し出している。
傍から見ればクールビューティーなのだ。
そんな涼香の後ろを通る下級生達、その目は涼香に釘付けだった。そして、涼香が窓辺から立ち去る時、ふわっとたなびく髪の毛から香るシャンプーの香りが彼女達の心をわしづかむ。
水原涼香とはそういう生徒だ。下級生基準で考えればの話だが。
そしてとある休み時間。一人の下級生が勇気を出して涼香へと話しかけていた。学校の渡り廊下、他の生徒達が通り過ぎる、みんな(下級生を中心に)涼香に目を奪われながら。
「み、水原先輩!」
「どうしたの?」
勇気を出して声をかけた生徒に、涼香が鈴を鳴らしたような声で返す。
そしてその様子をたまたま離れた位置で見ているのが。
「まーた先輩捕まってる」
檜山涼音、涼香の一つ下の生徒、涼香の幼なじみでもある。
茶色に染められた髪をおさげにしている生徒。クリっとした目は今は細められていた。
涼音の見つめる先では、涼香が女子生徒となにか話している。そしてその少し後ろでは、女子生徒の友達だろうか、何人かの生徒がその様子を見守っていた。
幾度となく見た光景だ。だいたいこういうのは涼香とお近づきになりたいとかそんな感じの話。
盗み聞きは良くないなと思いながら、涼音はススス……と二人の会話が聞こえる位置に移動する。
「あのっ、私ずっと……先輩のことを見てて……」
もごもごと一言一言選びながら話す女子生徒。
「あら、そうなの⁉ 結構人に見られるものなのね」
「それはもう当然です! 水原先輩はめちゃくちゃ有名ですから!」
(いや、あなた達が先輩を探しているからでしょうが)
その言葉をジト目で聞いている涼音。今のような移動教室の時以外、涼香はほとんど教室を出ない。登校時ならよく見られるがそれぐらいだ。
それでも廊下を歩けば下級生に声をかけられたりするのだから、涼香の人気は凄まじい。
「そうみたいね、ありがとう。それではそろそろ、次の授業があるから」
「え、あ、もうそんな時間⁉️ あ、じゃあせめて連絡先でも!」
十分という時間はなんと残酷か、まともに会話することなく終わりを迎えようとしている。
ならばせめて連絡先を、距離を詰めるための高速タックル、しかし彼女のタックルは避けられることとなる。
「ごめんなさいね、今はスマホ持ってないのよ」
『今スマホ持っていないの』という言葉は、連絡先を交換したくない時に使われる常套手段である。
「あ……そ、そうですよね。私なんかと連絡先なんて交換したくないですよね……!」
「え、ちょっと――」
「お時間頂きありがとうございました!」
そう言って見守る友達の元へと戻っていく女子生徒。その顔は悲しみに染まっていたがどこか吹っ切れたようだった、そして彼女を迎える友達も涙を浮かべながら迎える。
(先輩リアルに今はスマホ持ってないだけなんだけどなあ……)
今日の涼香はスマホを家に忘れてきただけなのに。
「なんだか凄く申し訳ないことをしてしまった気がするわね」
涼香がそう呟いたと同時にチャイムが鳴る。生徒達が早足で次の授業へと向かっていく。涼音もバレないようにコソコソとその場を離れる。
「まあ友達も付いていたみたいだし、大丈夫そうね」
雑に納得した涼香も授業へと向かったのだった。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ほのぼの学園百合小説 キタコミ!
水原渉
青春
ごくごく普通の女子高生の帰り道。
帰宅部の仲良し3人+1人が織り成す、ほのぼの学園百合小説。
♪ 野阪 千紗都(のさか ちさと):一人称の主人公。帰宅部部長。
♪ 猪谷 涼夏(いのや すずか):帰宅部。雑貨屋でバイトをしている。
♪ 西畑 絢音(にしはた あやね):帰宅部。塾に行っていて成績優秀。
♪ 今澤 奈都(いまざわ なつ):バトン部。千紗都の中学からの親友。
※本小説は小説家になろう等、他サイトにも掲載しております。
★Kindle情報★
1巻:https://www.amazon.co.jp/dp/B098XLYJG4
2巻:https://www.amazon.co.jp/dp/B09L6RM9SP
3巻:https://www.amazon.co.jp/dp/B09VTHS1W3
4巻:https://www.amazon.co.jp/dp/B0BNQRN12P
5巻:https://www.amazon.co.jp/dp/B0CHFX4THL
6巻:https://www.amazon.co.jp/dp/B0D9KFRSLZ
7巻:https://www.amazon.co.jp/dp/B0F7FLTV8P
Chit-Chat!1:https://www.amazon.co.jp/dp/B0CTHQX88H
Chit-Chat!2:https://www.amazon.co.jp/dp/B0FP9YBQSL
★YouTube情報★
第1話『アイス』朗読
https://www.youtube.com/watch?v=8hEfRp8JWwE
番外編『帰宅部活動 1.ホームドア』朗読
https://www.youtube.com/watch?v=98vgjHO25XI
Chit-Chat!1
https://www.youtube.com/watch?v=cKZypuc0R34
イラスト:tojo様(@tojonatori)
ゆりいろリレーション
楠富 つかさ
青春
中学の女子剣道部で部長を務める三崎七瀬は男子よりも強く勇ましい少女。ある日、同じクラスの美少女、早乙女卯月から呼び出しを受ける。
てっきり彼女にしつこく迫る男子を懲らしめて欲しいと思っていた七瀬だったが、卯月から恋人のフリをしてほしいと頼まれる。悩んだ末にその頼みを受け入れる七瀬だが、次第に卯月への思い入れが強まり……。
二人の少女のフリだけどフリじゃない恋人生活が始まります!
百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話
釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。
文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。
そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。
工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。
むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。
“特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。
工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。
兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。
工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。
スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。
二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。
零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。
かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。
ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる