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水族館編 夏休み 8月
水族館にて 2
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四人が来ている水族館は八階建てだ。
展示は八階から順に円を描くように下って行く形になっている。
アクアゲートを抜けた先には長いエスカレーターがあり、早速涼香と涼音はそれに乗る。
エスカレーターがある場所は明るいため、さり気なく手を離した涼音。
「ジェットコースターのようなワクワク感があるわね」
「そうですか?」
「そうなのよ」
うずうずしている涼香と共にエスカレーターを降りて、涼音は再び手を繋ごうと思っだ繋げなかった。
二人を迎えたのは『日本の森』という展示だ。
建物の中なのに、木々が生い茂り、滝の落ちる音も聞こえれば、鳥の鳴き声も聞こえる。
「森よ!」
渓流を模したこの場所、展示されている動物はカワウソやアユ、オシドリやサワガニなど。
ここの目玉は主にカワウソだろう。
通路から見下ろした位置、小さな滝が落ちる付近の岩の上にカワウソがいた。
「涼音、カワウソよ」
「寝ているんですかね?」
カワウソは岩の後ろや、隅の方で丸まっており、姿を確認することはできるが、動いているところは見えなかった。
それでもカワウソの可愛さは隠しきれず、涼香はすかさずシャッターを切った。
「綾瀬彩に送りましょう」
「綾瀬先輩ってカワウソ好きなんですか?」
意外な情報、涼音は目を丸くして涼香に聞き返す。
「ええ、アルパカも好きだったはずよ。私は詳しいの」
「仲が良いのか悪いのか……」
普段の二人のやり取りを見ていると、喧嘩する程仲がいいのか、彩の涼香に対しする当たりが強いだけなのかどちらなのか分からない。
彩自身、他人に対する当たりが強いため尚更だ。
「彩の家の鍵に付いていたキーホルダーがカワウソとアルパカだったのよ」
「あっ……」
これは誰にも言ってはいけないな、と察した涼音はこれ以上なにも言わないことにした。
「それ、誰にも言わない方がいいと思いますよ」
一応釘は刺しておくが、もう既に広まっているかもしれない。
「二人の秘密ね」
カワウソを観察した後、魚のいる水槽を涼香は覗き込む。
「アユって美味しいのよね?」
「食べたこと無いんで分からないですけど、よく串刺しにされてますよね」
串刺しのアユが炭火焼きで焼かれている様子が頭に浮かぶ。
「食べたいわ」
「そうですか」
どこかのバーベキューで同じことをできないかと、後で調べようと思った涼音である。
「これは……アマゴという魚ね」
「どれですか?」
「これよ、ほら、このピンクの魚よ」
「あ、この魚ですか」
涼音は魚を一目見て、魚の解説文を読む。
「へえ、サツキマスとも言う……」
「名前が二つですって⁉」
「いや、既に読んでますよね」
魚の名前の下に説明文が書いてあるのだ、涼香も当然目を通しているはず。
「この子達はサツキマスにはなれないのね……残念だわ」
一生川で過ごす個体がアマゴ、海へ行ってまた帰ってくるものがサツキマスと呼ばれるらしい。
力無く首を振る涼香であったが――。
「サワガニよ!」
「えぇ……」
さっきの重たい空気はどこへ行ったのか、目を輝かせながら展示を楽しむのだった。
展示は八階から順に円を描くように下って行く形になっている。
アクアゲートを抜けた先には長いエスカレーターがあり、早速涼香と涼音はそれに乗る。
エスカレーターがある場所は明るいため、さり気なく手を離した涼音。
「ジェットコースターのようなワクワク感があるわね」
「そうですか?」
「そうなのよ」
うずうずしている涼香と共にエスカレーターを降りて、涼音は再び手を繋ごうと思っだ繋げなかった。
二人を迎えたのは『日本の森』という展示だ。
建物の中なのに、木々が生い茂り、滝の落ちる音も聞こえれば、鳥の鳴き声も聞こえる。
「森よ!」
渓流を模したこの場所、展示されている動物はカワウソやアユ、オシドリやサワガニなど。
ここの目玉は主にカワウソだろう。
通路から見下ろした位置、小さな滝が落ちる付近の岩の上にカワウソがいた。
「涼音、カワウソよ」
「寝ているんですかね?」
カワウソは岩の後ろや、隅の方で丸まっており、姿を確認することはできるが、動いているところは見えなかった。
それでもカワウソの可愛さは隠しきれず、涼香はすかさずシャッターを切った。
「綾瀬彩に送りましょう」
「綾瀬先輩ってカワウソ好きなんですか?」
意外な情報、涼音は目を丸くして涼香に聞き返す。
「ええ、アルパカも好きだったはずよ。私は詳しいの」
「仲が良いのか悪いのか……」
普段の二人のやり取りを見ていると、喧嘩する程仲がいいのか、彩の涼香に対しする当たりが強いだけなのかどちらなのか分からない。
彩自身、他人に対する当たりが強いため尚更だ。
「彩の家の鍵に付いていたキーホルダーがカワウソとアルパカだったのよ」
「あっ……」
これは誰にも言ってはいけないな、と察した涼音はこれ以上なにも言わないことにした。
「それ、誰にも言わない方がいいと思いますよ」
一応釘は刺しておくが、もう既に広まっているかもしれない。
「二人の秘密ね」
カワウソを観察した後、魚のいる水槽を涼香は覗き込む。
「アユって美味しいのよね?」
「食べたこと無いんで分からないですけど、よく串刺しにされてますよね」
串刺しのアユが炭火焼きで焼かれている様子が頭に浮かぶ。
「食べたいわ」
「そうですか」
どこかのバーベキューで同じことをできないかと、後で調べようと思った涼音である。
「これは……アマゴという魚ね」
「どれですか?」
「これよ、ほら、このピンクの魚よ」
「あ、この魚ですか」
涼音は魚を一目見て、魚の解説文を読む。
「へえ、サツキマスとも言う……」
「名前が二つですって⁉」
「いや、既に読んでますよね」
魚の名前の下に説明文が書いてあるのだ、涼香も当然目を通しているはず。
「この子達はサツキマスにはなれないのね……残念だわ」
一生川で過ごす個体がアマゴ、海へ行ってまた帰ってくるものがサツキマスと呼ばれるらしい。
力無く首を振る涼香であったが――。
「サワガニよ!」
「えぇ……」
さっきの重たい空気はどこへ行ったのか、目を輝かせながら展示を楽しむのだった。
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