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文化祭編
文化祭にて 11
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「彩ちゃんは特に行きたい場所ってあるぅ? 夏美ちゃんのクラスとか~」
ちなみに、二年生の夏美のクラスは模擬店をしている。
「別に、明里の行きたい場所でいい」
「じゃあたこ焼き食べたいなー」
「結局行くのかよ……」
とかなんとか言いながら、彩の足取りは軽い。先程までの不機嫌はどこへ行ったのだろう。
歩いている最中、所々集団ができていた。
その理由は知っている彩と明里は特に疑問に思う訳でもなく横を通り過ぎる。
人が多いとはいえ、一部集団化しているため、場所を選べば歩きやすい。
「……げっ」
「わあ、人がいっぱいだねー」
しかし、その集団が自分達の行先にあればそれはそれで邪魔だ。
顔を顰めた彩は立ち止まったが、その手を明里が引く。
「行くよ~」
その手は振りほどこうにも振り払えず、彩はつんのめりながら明里の後ろをついて行く形になる。
食欲をそそる匂いを醸し出す模擬店の中、その匂いを出す店のひとつであるたこ焼き屋にやって来た。
「夏美ちゃーん、来たよー」
「あっ、明里先輩! それに彩先輩も! 来てくれたんですね!」
「当然だよぉ。ねっ、彩ちゃん?」
「まあ……」
ちょうど店番をしていた夏美が笑顔で迎えてくれるが、彩の表情はどこか煮え切らない。
もう少し、申し訳なさそうな表情をしてもいいのではないか、そんな身勝手で面倒臭いことを考えてしまう。
ソースの甘い匂いが鼻腔をくすぐるが、今はその甘さが、記憶と共に残りそうで早く離れたかった。
ふと、集団の方に目を向ける。その中心には若菜と紗里がいた。知っている顔、ご苦労なことだ。
なにを見ても淡白な感想しか出てこない。楽しそうにしている二人を見ても、羨望や嫉妬も抱けない。
「――はい、二人分です」
どうやら、既に明里がたこ焼きを購入していてくれたらしい。パックに入れられたたこ焼きを受け取りながら彩に言う。
「ごめん彩ちゃん、お金払っておいてくれるぅ?」
「あ? ああ」
たこ焼きは一パック百円で、それが二人分で二百円。彩は金券を二枚ちぎって夏美に渡す。
「ありがとうございました。先輩、せっかく誘ってくれたのに、一緒に回れなくてごめんなさい」
「え、あ……うん。別にいいよ、あたしも急に誘ったし」
改めて謝られ、さっきまでグチグチ心の中で言っていた自分に嫌気がさす。
「じゃっ、あたしらもう行くから、頑張って」
「はい! 先輩のクラス絶対に行きますね!」
「来てねー、ばいばーい」
「なんで明里が言うんだよ!」
そうして手を振って夏美と別れ、歩き始めて無言の時間。この少しの時間の間は、周りの会話のいくつかは聞こえる。そしてそのいくつかの内容を聞いて、彩と明里は顔を見合わせる。
「聞き間違いじゃ無いよねぇ?」
「遂にあの馬鹿がやったか」
要するに、涼香が涼音のクラスで、涼音は渡さないと言いながら抱きついた、という内容。
別に驚くことでは無い、よくあることだからだ。しかし、問題はそれをやった場所が二年生の教室ということだ。
「彩ちゃん……」
それは、彩にどういうことか理由を求める声だった。言われなくても、彩はなぜそうなったのかを頭をフル回転させて考えている。
「――大丈夫だな」
その結論がこれだ。
「大丈夫なのぉ?」
二人は人通りがある場所から離れ、人が疎らな特別棟の校舎の壁に背中を預ける。
ここにはなにも無いし、わざわざ足を運ぶ生徒などいない。背中にある教室も使っているだろうが訳の分からない部活のため客はほぼ来ないだろう。
「大丈夫、多分あの馬鹿の母親だ」
「……あー……、確かに似ているもんねぇ」
「正解よ、流石彩ちゃんね」
突然ガラッと音が鳴り、聞こえた声に彩と明里は肩を震わせる。
空いた窓から顔を出したのは、涼香にそっくりだが、かなりの知性を感じされる顔をしている涼香の母であった。
ちなみに、二年生の夏美のクラスは模擬店をしている。
「別に、明里の行きたい場所でいい」
「じゃあたこ焼き食べたいなー」
「結局行くのかよ……」
とかなんとか言いながら、彩の足取りは軽い。先程までの不機嫌はどこへ行ったのだろう。
歩いている最中、所々集団ができていた。
その理由は知っている彩と明里は特に疑問に思う訳でもなく横を通り過ぎる。
人が多いとはいえ、一部集団化しているため、場所を選べば歩きやすい。
「……げっ」
「わあ、人がいっぱいだねー」
しかし、その集団が自分達の行先にあればそれはそれで邪魔だ。
顔を顰めた彩は立ち止まったが、その手を明里が引く。
「行くよ~」
その手は振りほどこうにも振り払えず、彩はつんのめりながら明里の後ろをついて行く形になる。
食欲をそそる匂いを醸し出す模擬店の中、その匂いを出す店のひとつであるたこ焼き屋にやって来た。
「夏美ちゃーん、来たよー」
「あっ、明里先輩! それに彩先輩も! 来てくれたんですね!」
「当然だよぉ。ねっ、彩ちゃん?」
「まあ……」
ちょうど店番をしていた夏美が笑顔で迎えてくれるが、彩の表情はどこか煮え切らない。
もう少し、申し訳なさそうな表情をしてもいいのではないか、そんな身勝手で面倒臭いことを考えてしまう。
ソースの甘い匂いが鼻腔をくすぐるが、今はその甘さが、記憶と共に残りそうで早く離れたかった。
ふと、集団の方に目を向ける。その中心には若菜と紗里がいた。知っている顔、ご苦労なことだ。
なにを見ても淡白な感想しか出てこない。楽しそうにしている二人を見ても、羨望や嫉妬も抱けない。
「――はい、二人分です」
どうやら、既に明里がたこ焼きを購入していてくれたらしい。パックに入れられたたこ焼きを受け取りながら彩に言う。
「ごめん彩ちゃん、お金払っておいてくれるぅ?」
「あ? ああ」
たこ焼きは一パック百円で、それが二人分で二百円。彩は金券を二枚ちぎって夏美に渡す。
「ありがとうございました。先輩、せっかく誘ってくれたのに、一緒に回れなくてごめんなさい」
「え、あ……うん。別にいいよ、あたしも急に誘ったし」
改めて謝られ、さっきまでグチグチ心の中で言っていた自分に嫌気がさす。
「じゃっ、あたしらもう行くから、頑張って」
「はい! 先輩のクラス絶対に行きますね!」
「来てねー、ばいばーい」
「なんで明里が言うんだよ!」
そうして手を振って夏美と別れ、歩き始めて無言の時間。この少しの時間の間は、周りの会話のいくつかは聞こえる。そしてそのいくつかの内容を聞いて、彩と明里は顔を見合わせる。
「聞き間違いじゃ無いよねぇ?」
「遂にあの馬鹿がやったか」
要するに、涼香が涼音のクラスで、涼音は渡さないと言いながら抱きついた、という内容。
別に驚くことでは無い、よくあることだからだ。しかし、問題はそれをやった場所が二年生の教室ということだ。
「彩ちゃん……」
それは、彩にどういうことか理由を求める声だった。言われなくても、彩はなぜそうなったのかを頭をフル回転させて考えている。
「――大丈夫だな」
その結論がこれだ。
「大丈夫なのぉ?」
二人は人通りがある場所から離れ、人が疎らな特別棟の校舎の壁に背中を預ける。
ここにはなにも無いし、わざわざ足を運ぶ生徒などいない。背中にある教室も使っているだろうが訳の分からない部活のため客はほぼ来ないだろう。
「大丈夫、多分あの馬鹿の母親だ」
「……あー……、確かに似ているもんねぇ」
「正解よ、流石彩ちゃんね」
突然ガラッと音が鳴り、聞こえた声に彩と明里は肩を震わせる。
空いた窓から顔を出したのは、涼香にそっくりだが、かなりの知性を感じされる顔をしている涼香の母であった。
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