吸血鬼が憩える保健室

坂餅

文字の大きさ
18 / 25

代休

しおりを挟む
 結局泥のように眠れたみたいで、目が覚めたのは午後だった。

「ぶっ通しかあ……」

 それだけ寝たから、体も殆ど元に戻っている。まだちょっと体は重たいけど、声も出るし一人で歩ける。

「シャワー浴びよ」

 確かめるように、自分のこれからの行動を声に出してみる。

「佳に連絡入れとかないと、あとは……あっ、先輩からも連絡きてた」

 あと母と父からもメッセージが入っていたからそれにも返す。

 昨日は体を拭いてもらっただけだから、シャワーで全身を流すととても気持ち良い。髪を洗って体を洗う、暖かくて至福の一時。

 シャワーを浴びていると、ふと自分の腕の色が変わっているのに気づいた。

 私は吸血鬼の血を引いているからか、日焼け知らずの綺麗な白い肌を持っている。でもそんな私の体――正確に言えば左腕の前腕部内側。そこに火傷跡のような、なんかこれは……小指ぐらいかな。

 小指の先から第一関節ぐらいの大きさの火傷ができていた。お湯がかかっても触っても痛くないから火傷かどうかも分からないけど。

 私の綺麗な体に傷がついたということだ。

 傷つけられた……。

「なんだろう……これ……」

 大きさが大きさだし、多分母も先生も、先輩も気づかなかったんだと思う。いや、別に支障は無いから別にいいんだけど、なんか……なんだろ?

「まあいいか」

 考えても分からないし、そのうち治るだろうと気にせず浴室から出る。

 体を拭いて着替えて、失った水分を補給する。

「あ~、疲れたあ~」

 疲れるのに疲れた。一日で戻ってくれて良かった。本当に良かった。体を伸ばしてほぐして、ぐで~んとソファに伸びる。

 なんかこんなに元気なら、学校休んだのに罪悪感がある。まあ休んだからこんなに元気になったんだけどね。

 ぐで~んとして、身体がソファに沈み切り、微睡んでいるとスマホが鳴り響く。電話……? 時間的に授業中だし仕事中。

 誰からかと確認すると相手はまさかの佳だ。

「どうしたの?」
『あっ、なっちゃん? だいじょーぶだってメッセージ貰ったからさ』
「ああ、それで。うん、もう大丈夫。明日は学校行けると思う」

 私の言葉に佳は電話越しでも胸を撫で下ろしていることが分かるぐらいの安堵の息を吐いていた。本当に、良い人。佳みたいな良い人が友達で本当に良かった。でもそう思えば思うほど、自分の血が恨めしいし、佳に対する罪悪感も募る。

『ねーなっちゃん。今から家行ってもいい?』

 私がいくら罪悪感を募らせていても、それは佳には伝わらない。伝わったら困るから別にいいけど。

「いや、今からって……学校は?」
『今日は休みだよ?』
「え?」

 …………そうか。だよね、平日でも次の日は休みだよね。そっかそっか、そうか……。実際私みたいにぶっ倒れた人間がいるし。

『休みだよ』
「うん」

 ちょっっっっっっっっっっっっと、考えろー。病み上がり。佳が来る。追い打ち。明日も休む。

 うん、断ろう――って断れたら苦労しないんだよなぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼

 来てもらうとしてだ! 私と佳の二人っきりってのはちょっとマズい。

『えっと……無理だった?』
「いや、無理じゃない」

 言っちゃったぁぁぁぁぁぁぁぁ!

 ああもう、こうなれば!

「住所送るから、来てくれると嬉しい。丁度永海先輩も来るって言ってたし」
『永海先輩も⁉ わっ、分かったよなっちゃん。うち、恥ずかしくないようにするから』
「え? うん、分かった。じゃあ」

 なんで先輩に会うのに恥ずかしくないようにしないと駄目なのかは分からないけど、そんなことはどうでもいい。

 私は慌てて先輩に電話をかける。これで無理だったらどうしよう。本当にお願いします永海先輩!

『どうしたの?』
「よっしゃあ‼」
『鳴月?』
「あっ、すみません……。あの、先輩、今日私の家に来てくれません?」
『ん。でもどうして急に?』
「佳が家に来てくれるんですけど。今、家に私しかいないんです」
『そういうこと。住所教えて、向かう』
「ありがとうございます……‼ 先輩がいてくれて良かったです‼」

 良かった……良かったよう……、これで生きてられる……!

『じゃあ』

 早速先輩に住所を送る。良かった。本当に良かった。

 これでひとまず今日は生きながらえることができる。

 えっと、お菓子お菓子……無理言って来てもらうんだからそれなりに準備しないと――って、なんにもないじゃん。また別のお礼でも考えるか。

 どっちが早く着くのか、もしかして一緒に来るかもしれない。

 先輩は全部解っていると思うし、変に身構えなくても大丈夫かな。本当に頼れる先輩だ。それと同時に、来年はどうなっているのだろうと、少しゾッとするのだった。

 我ながら忙しい人間だ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ゆりいろリレーション

楠富 つかさ
青春
 中学の女子剣道部で部長を務める三崎七瀬は男子よりも強く勇ましい少女。ある日、同じクラスの美少女、早乙女卯月から呼び出しを受ける。  てっきり彼女にしつこく迫る男子を懲らしめて欲しいと思っていた七瀬だったが、卯月から恋人のフリをしてほしいと頼まれる。悩んだ末にその頼みを受け入れる七瀬だが、次第に卯月への思い入れが強まり……。  二人の少女のフリだけどフリじゃない恋人生活が始まります!

筋肉女子の弱点

椎名 富比路
青春
シックスパック女子唯一の弱点とは? pixivお題「腹筋」より

ほのぼの学園百合小説 キタコミ!

水原渉
青春
ごくごく普通の女子高生の帰り道。 帰宅部の仲良し3人+1人が織り成す、ほのぼの学園百合小説。 ♪ 野阪 千紗都(のさか ちさと):一人称の主人公。帰宅部部長。 ♪ 猪谷 涼夏(いのや すずか):帰宅部。雑貨屋でバイトをしている。 ♪ 西畑 絢音(にしはた あやね):帰宅部。塾に行っていて成績優秀。 ♪ 今澤 奈都(いまざわ なつ):バトン部。千紗都の中学からの親友。 ※本小説は小説家になろう等、他サイトにも掲載しております。 ★Kindle情報★ 1巻:https://www.amazon.co.jp/dp/B098XLYJG4 2巻:https://www.amazon.co.jp/dp/B09L6RM9SP 3巻:https://www.amazon.co.jp/dp/B09VTHS1W3 4巻:https://www.amazon.co.jp/dp/B0BNQRN12P 5巻:https://www.amazon.co.jp/dp/B0CHFX4THL 6巻:https://www.amazon.co.jp/dp/B0D9KFRSLZ 7巻:https://www.amazon.co.jp/dp/B0F7FLTV8P Chit-Chat!1:https://www.amazon.co.jp/dp/B0CTHQX88H Chit-Chat!2:https://www.amazon.co.jp/dp/B0FP9YBQSL ★YouTube情報★ 第1話『アイス』朗読 https://www.youtube.com/watch?v=8hEfRp8JWwE 番外編『帰宅部活動 1.ホームドア』朗読 https://www.youtube.com/watch?v=98vgjHO25XI Chit-Chat!1 https://www.youtube.com/watch?v=cKZypuc0R34 イラスト:tojo様(@tojonatori)

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話

釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。 文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。 そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。 工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。 むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。 “特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。 工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。 兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。 工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。 スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。 二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。 零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。 かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。 ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。

義姉妹百合恋愛

沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。 「再婚するから」 そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。 次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。 それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。 ※他サイトにも掲載しております

名称不明なこの感情を表すために必要な2万文字。

春待ち木陰
青春
 高校一年生の女の子である『私』はアルバイト先が同じだった事から同じ高校に通う別のクラスの男の子、杉本と話をするようになった。杉本は『私』の親友である加奈子に惚れているらしい。「協力してくれ」と杉本に言われた『私』は「応援ならしても良い」と答える。加奈子にはもうすでに別の恋人がいたのだ。『私』はそれを知っていながら杉本にはその事を伝えなかった。

処理中です...