24 / 25
休憩
しおりを挟む
「はあ……はぁ……つっ、疲れたぁ……」
「……なんで畳?」
「貰えた物が和風の物ばかりだった」
「まあそうなんですけど……」
私も一緒に走り回ったから経緯は知っているけど……いるけど……もう……無理……。
△
各部活を周っている最中、佳の陽にやられていた鳴月が倒れ、いつも通りベッドに運ぶ。
言い出しっぺの鳴月がいないが、今いる三人で保健室の改装を始めることにする。
「えーっと……じゃあ、えっと……やりましょー……」
しかし、鳴月がいなくなったことで固くなった佳は、ぎこちなく、押し寄せる疲労に負けそうになりながらも、なんとか声を振り絞る。
「一旦休憩してからにしよっかぁ」
畳が軽いはずもなく、疲れている状態で作業して怪我をしないよう海幻は静止する。
茶道部がもう使わなくなった畳を貰ったらしい。もう使わなくなり、放置していた畳だったが、ゴールデンウィーク明けに部活から逃げるため、茶道部がわざわざ掃除した物だった。ちなみに結構感謝された。
「疲れたあ……」
特に会話も起こらず、ただ佳の呟きだけが静かな保健室内に響く。
「どうして固いの?」
そんな沈黙の中、まるで魚が餌に食いついたみたいに、陽伽は佳に踏み込む。
「えっ……」
「鳴月がいれば私とも会話していた。でも鳴月がいないと固くなる」
戸惑う佳だが、陽伽は言葉を続けて、佳を海に引きずり込もうとする。
「確かに私は凄く綺麗。その反応をされるのは慣れている。でも、鳴月と話している時はそんなことないのに、私の時だけ固くなるのが不思議」
「なっ、永海さん……?」
陽伽がここまで言葉を続けるなんて、教師の立場である海幻ですら見たことがない。新任教師だから、付き合いが短いから、ということではなく、これは陽伽を三年間見てきた教師までもが抱く感想だろう。
「別に責めてない。不思議に思っていただけ」
「あぅ……」
美人は怖く見えると言うけれど、今の陽伽にはそれだけでは収まらないなにかを感じる。その謎の迫力と、陽伽と直接言葉を交わしているという緊張で佳は言葉が出なかった。
「うちは……」
ただ、陽伽も感情のまま捲し立てた訳ではなく、今は黙って佳の言葉を待っている。
「そぉ言われてみればぁ、佳ちゃんはなっちゃんには緊張してないよねぇ」
陽伽と一体一ではなくなったことで、少しは呼吸をする余裕が生まれた佳は、引きずり込まれた気持ちを、深呼吸を以て気持ちを取り戻す。
「なっちゃんは……」
ゆっくりと立ち上がった佳は、ベッドで寝息を立てる鳴月に近づく。その短く切られている綺麗な白髪の感触を指先で確かめて、静かに説く。
「なっちゃんは、なんか違うくて……チョー美人だし、頭も良いし、運どー神経も抜群だけど、あんまり遠くに感じなくて、隣にいてもいいんだーって……えーっと。最初はめっちゃきんちょーしたんですけど……」
上手く言えそうだと思っていたのに、いざ口に出すと上手く言葉にできない。
最初はあまりにも綺麗なその姿に言葉が出てこずにいた。でも、自分の後ろの席になったといことで、一世一代の勇気を振り絞り声をかける。
驚いた様子だったが、鳴月は拒絶せず、自分と話してくれた。思わず夢中で話し込んでしまい困らせてしまったり、先生に注意もされたが、それでも佳は嬉しかった。
鳴月といることが心地良い。
「ん。なんとなく分かった」
言葉が出てこなくなった佳に陽伽は頷いて話の終了を伝える。深々と息を吐いた佳はそのまま鳴月の眠っているベッドに腰を下ろした。
「なっちゃんのこと大好きなんだねぇ」
朗らかな海幻の言葉が佳の緊張を溶かし、佳が鳴月に抱いている感情をシンプルに纏める。
「あっ……。そーだ、海幻ちゃんのゆーとーりで、うち……なっちゃんのこと大好きなんだ……」
大きな気づきではなくて、シンプルな気づき。もともとあったものを、緊張が解けた頭で俯瞰してみれば解る。
全てをひっくるめて、佳は鳴月が大好きだ。
「その大好きって……」
「どぉしたのぉ?」
「休憩は終わり。始めよ?」
陽伽の呟きは海幻にしか聞こえず、しかし陽伽は首を振り、休憩が終わるのだった。
「……なんで畳?」
「貰えた物が和風の物ばかりだった」
「まあそうなんですけど……」
私も一緒に走り回ったから経緯は知っているけど……いるけど……もう……無理……。
△
各部活を周っている最中、佳の陽にやられていた鳴月が倒れ、いつも通りベッドに運ぶ。
言い出しっぺの鳴月がいないが、今いる三人で保健室の改装を始めることにする。
「えーっと……じゃあ、えっと……やりましょー……」
しかし、鳴月がいなくなったことで固くなった佳は、ぎこちなく、押し寄せる疲労に負けそうになりながらも、なんとか声を振り絞る。
「一旦休憩してからにしよっかぁ」
畳が軽いはずもなく、疲れている状態で作業して怪我をしないよう海幻は静止する。
茶道部がもう使わなくなった畳を貰ったらしい。もう使わなくなり、放置していた畳だったが、ゴールデンウィーク明けに部活から逃げるため、茶道部がわざわざ掃除した物だった。ちなみに結構感謝された。
「疲れたあ……」
特に会話も起こらず、ただ佳の呟きだけが静かな保健室内に響く。
「どうして固いの?」
そんな沈黙の中、まるで魚が餌に食いついたみたいに、陽伽は佳に踏み込む。
「えっ……」
「鳴月がいれば私とも会話していた。でも鳴月がいないと固くなる」
戸惑う佳だが、陽伽は言葉を続けて、佳を海に引きずり込もうとする。
「確かに私は凄く綺麗。その反応をされるのは慣れている。でも、鳴月と話している時はそんなことないのに、私の時だけ固くなるのが不思議」
「なっ、永海さん……?」
陽伽がここまで言葉を続けるなんて、教師の立場である海幻ですら見たことがない。新任教師だから、付き合いが短いから、ということではなく、これは陽伽を三年間見てきた教師までもが抱く感想だろう。
「別に責めてない。不思議に思っていただけ」
「あぅ……」
美人は怖く見えると言うけれど、今の陽伽にはそれだけでは収まらないなにかを感じる。その謎の迫力と、陽伽と直接言葉を交わしているという緊張で佳は言葉が出なかった。
「うちは……」
ただ、陽伽も感情のまま捲し立てた訳ではなく、今は黙って佳の言葉を待っている。
「そぉ言われてみればぁ、佳ちゃんはなっちゃんには緊張してないよねぇ」
陽伽と一体一ではなくなったことで、少しは呼吸をする余裕が生まれた佳は、引きずり込まれた気持ちを、深呼吸を以て気持ちを取り戻す。
「なっちゃんは……」
ゆっくりと立ち上がった佳は、ベッドで寝息を立てる鳴月に近づく。その短く切られている綺麗な白髪の感触を指先で確かめて、静かに説く。
「なっちゃんは、なんか違うくて……チョー美人だし、頭も良いし、運どー神経も抜群だけど、あんまり遠くに感じなくて、隣にいてもいいんだーって……えーっと。最初はめっちゃきんちょーしたんですけど……」
上手く言えそうだと思っていたのに、いざ口に出すと上手く言葉にできない。
最初はあまりにも綺麗なその姿に言葉が出てこずにいた。でも、自分の後ろの席になったといことで、一世一代の勇気を振り絞り声をかける。
驚いた様子だったが、鳴月は拒絶せず、自分と話してくれた。思わず夢中で話し込んでしまい困らせてしまったり、先生に注意もされたが、それでも佳は嬉しかった。
鳴月といることが心地良い。
「ん。なんとなく分かった」
言葉が出てこなくなった佳に陽伽は頷いて話の終了を伝える。深々と息を吐いた佳はそのまま鳴月の眠っているベッドに腰を下ろした。
「なっちゃんのこと大好きなんだねぇ」
朗らかな海幻の言葉が佳の緊張を溶かし、佳が鳴月に抱いている感情をシンプルに纏める。
「あっ……。そーだ、海幻ちゃんのゆーとーりで、うち……なっちゃんのこと大好きなんだ……」
大きな気づきではなくて、シンプルな気づき。もともとあったものを、緊張が解けた頭で俯瞰してみれば解る。
全てをひっくるめて、佳は鳴月が大好きだ。
「その大好きって……」
「どぉしたのぉ?」
「休憩は終わり。始めよ?」
陽伽の呟きは海幻にしか聞こえず、しかし陽伽は首を振り、休憩が終わるのだった。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ゆりいろリレーション
楠富 つかさ
青春
中学の女子剣道部で部長を務める三崎七瀬は男子よりも強く勇ましい少女。ある日、同じクラスの美少女、早乙女卯月から呼び出しを受ける。
てっきり彼女にしつこく迫る男子を懲らしめて欲しいと思っていた七瀬だったが、卯月から恋人のフリをしてほしいと頼まれる。悩んだ末にその頼みを受け入れる七瀬だが、次第に卯月への思い入れが強まり……。
二人の少女のフリだけどフリじゃない恋人生活が始まります!
ほのぼの学園百合小説 キタコミ!
水原渉
青春
ごくごく普通の女子高生の帰り道。
帰宅部の仲良し3人+1人が織り成す、ほのぼの学園百合小説。
♪ 野阪 千紗都(のさか ちさと):一人称の主人公。帰宅部部長。
♪ 猪谷 涼夏(いのや すずか):帰宅部。雑貨屋でバイトをしている。
♪ 西畑 絢音(にしはた あやね):帰宅部。塾に行っていて成績優秀。
♪ 今澤 奈都(いまざわ なつ):バトン部。千紗都の中学からの親友。
※本小説は小説家になろう等、他サイトにも掲載しております。
★Kindle情報★
1巻:https://www.amazon.co.jp/dp/B098XLYJG4
2巻:https://www.amazon.co.jp/dp/B09L6RM9SP
3巻:https://www.amazon.co.jp/dp/B09VTHS1W3
4巻:https://www.amazon.co.jp/dp/B0BNQRN12P
5巻:https://www.amazon.co.jp/dp/B0CHFX4THL
6巻:https://www.amazon.co.jp/dp/B0D9KFRSLZ
7巻:https://www.amazon.co.jp/dp/B0F7FLTV8P
Chit-Chat!1:https://www.amazon.co.jp/dp/B0CTHQX88H
Chit-Chat!2:https://www.amazon.co.jp/dp/B0FP9YBQSL
★YouTube情報★
第1話『アイス』朗読
https://www.youtube.com/watch?v=8hEfRp8JWwE
番外編『帰宅部活動 1.ホームドア』朗読
https://www.youtube.com/watch?v=98vgjHO25XI
Chit-Chat!1
https://www.youtube.com/watch?v=cKZypuc0R34
イラスト:tojo様(@tojonatori)
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話
釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。
文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。
そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。
工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。
むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。
“特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。
工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。
兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。
工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。
スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。
二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。
零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。
かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。
ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。
義姉妹百合恋愛
沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。
「再婚するから」
そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。
次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。
それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。
※他サイトにも掲載しております
名称不明なこの感情を表すために必要な2万文字。
春待ち木陰
青春
高校一年生の女の子である『私』はアルバイト先が同じだった事から同じ高校に通う別のクラスの男の子、杉本と話をするようになった。杉本は『私』の親友である加奈子に惚れているらしい。「協力してくれ」と杉本に言われた『私』は「応援ならしても良い」と答える。加奈子にはもうすでに別の恋人がいたのだ。『私』はそれを知っていながら杉本にはその事を伝えなかった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる