例によって例の如く異世界転生を果たし最強に。けど普通に無双するのは単純だから最弱の”人類国家”を裏方からこっそり最強にする。超能力でな!

ガブガブ

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いざ、異世界へ

”ディエルバ王国” 新たな夜明け

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「――ふぇ~……。ったく、ヒデー目に遭ったぜ……」

 俺――超能寺 才己ちょうのうじ さいこは、ヒリヒリと痺れる頬を擦りながら涙目になる。
 ひょんなことから、ゴブリン達に喧嘩を売った俺であったのだが、それと同時に何やら国民の顰蹙ひんしゅくも買ってしまったらしく、その者らにフルボッコにされたのだ。
 そんなこんなで悲しみに暮れている俺に対し、アンナは酷くドライな態度を見せる。

「当然の報いよ。全く……ロクでもないことを言ってくれちゃって……。本当に大変なことになったわね……」

 アンナはそう言いつつとても暗い顔を見せる。
 そんなアンナの心境を<テレパシー>を使わずとも読み取れた俺は、恐る恐るといった具合に声を掛けてみた。

「そ、そうしょんぼりすんなって……。勝手に独断に走っちまったのは悪いと思っているが、かといってあのまま何もしなかったらどうなっていたか分からなかっただろ?」
「けれど、もっとやりようはあった訳であって……」

 アンナはまるで世界の終わりだと言わんばかりに顔を俯かせる。
 こういう時に気の利いた言葉が言えない辺り、俺はしょうもないくらいにコミュ障なのだ。

(――とは言え、せっかく憧れの人と同じ見た目になれたのだから、心も同じ様に振る舞わなきゃ本物のあの人超能寺 才己に失礼なんじゃないか?)

 そう決意をする俺であるが、そう簡単な話じゃない。陰キャがいきなりパリピを演じるなど到底無理な――

「むむっ? 演じる……?」

 この時、俺は幼い頃の思い出を想起させる。
 そして俺は、ニヤリとしたり顔をしてみせた。

(そうだ……そうだよ! あの人超能寺 才己を演じることなんて俺からしてみれば軽いもんじゃないか! 小さい時俺が何度、超能寺 才己のモノマネをしてきたと思ってるんだ! 台詞も動作もパーペキに再現出来るくらいに極まった今の俺なら、超能寺 才己そのものになりきれるんじゃないか?)

 何だかそう考えると不安が吹っ飛んだように感じた。
 それに今のこの状況、『超能戦士〈サイコマン〉』第1話”救え、迷える姫君を”のワンシーンに似ている。
 何故か異国の地から物語が始まるという衝撃的な『超能戦士〈サイコマン〉』第1話。
 キャラ設定も世界観も何も分からないまま話は進み、異国の王女様をゴブリンから助けた超能寺 才己は今の俺のように『何勝手なことしてくれるんじゃ、我は~ッ!(怒)』と糾弾をされていた。
 ここまで似ているのであれば、俺がすべきことは一つ……。
 あの時の超能寺 才己と同じ言葉と行動でこの場を切り抜けてみるとしよう。

「ふぅー――」

 俺は深呼吸を一つし、
 そして冷静沈着にこう告げた。

「それでいいのか?」
「えっ?」
「アイツらにやられっぱなしでいいのかと言ったんだ」

 俺の言葉にアンナは顔を真っ赤にさせ激昂げきこうする。

「いい訳ないじゃない!」
「なら何故、剣を取らない?」
「うっ……。そ、それは王女として民を危険にさらす訳には……」
「戦わないのは民全員の総意なのか? それともアンナの独断による物なのか?」
「…………」
「沈黙か。それはつまり、実際に民の声を聞いておらず、アンナが勝手に戦わないと決めたということだな」

 俺の問いにアンナは奥歯を噛み締め、涙を流す。

「し、仕方ないじゃない……。さっきも言ったけど、大事な国民を巻き込む訳にはいかないの……。私自身とっても悔しいの……。アイツらの横暴にはもう懲り懲り……。絶対に一泡吹かせてやりたいと思っても、それは所詮しょせん私のワガママに過ぎない。私が反抗することによってディエルバ王国が火の海になる所なんて見たくはないッ!」

 アンナは泣きじゃくりながらも必死に思いの丈をにぶつけた。
 その言葉からは、アンナの煮えたぎる様な怒り……そして民を想う王女としての責務……そして相反するその二つの感情に板挟みになっている葛藤がヒシヒシと感じられた。

(アンナの言ったことは至極真っ当で素晴らしい物だろう。このアンナの想いを受け取り、アンナを苦しみの淵から救い出すのはにとっては造作もないことだ。だが、今この場でそれをするのはの役目ではない。――そろそろ来る頃合いだろうか?)

 が敢えて黙っていると、突如として我々の耳に鳴り響いた声があった。



『――アンナ姫、まさか貴方様がそこまで思い悩んでいたとは。国民としてそれを知らず大変申し訳ありませんでした』



「えっ?」

 突然聞こえてきた声にアンナは目を丸くさせる。
 それもその筈。何せ、この場にはとアンナしか居らず、その声の主はどこにもいないのだから。
 アンナはその声の主を探そうと必死に視界を動かす。しかし、その声の主は見つからない。
 それだけではなく――



『まさか俺達が足枷になっていたなんて……』
『えぇ、そうね。私達が不甲斐ないばっかりにアンナ姫だけに苦しい思いをさせていたなど、本当に恥じるべきことです』
『嬢ちゃん! 俺は”ディエルバ王国”の国民じゃねぇが、いい心構え持ってるじゃねぇか! 嬢ちゃんが戦うっちゅうなら俺も一緒に戦ってやるぜ!』
『弱いですが、僕も一緒に!』
『ウチもあのゴブリン達、チョーウザいって思ってたとこなのよね~。姫ぴっぴがやるっちゅうなら、ウチも参戦しない訳にはいかないでしょ、わら』
『そうです! 我々はもうやられるだけの存在じゃいられないんです! ここらで一発、”人類族”の力を見せつけてやりましょう!』



 心の中で多くの声が囁いた。



『俺達は弱者じゃない!』
『私達は虐げられるだけの家畜じゃない!』
『我々にも曲げられない意思がある!』
『僕達にも守るべき信念がある!』
『そうだ!』
『そうだ!』
『そうだ!』



「「「「「「「「「「そうだ!」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「皆、共に戦おう!」」」」」」」」」」
「「「「「「「「「「自由を手に!」」」」」」」」」」

 そして心の中だけで聞こえていた言葉が、実際の物となって”ディエルバ王国”全体に轟いた。
 慌てた様子で窓から外の様子を見たアンナが絶句した。
 俺もゆっくりと立ち上がり、アンナと同じ方向を見る。そして、彼女の頭を撫でてやった。

「どうやら君の隠していた感情は、君だけの物じゃなかったみたいだな」
「えぇ……えぇ……ッ!」

 俺達の視界の先には、剣や槍、盾を持った多くの――恐らく全員と言っても差し支えないだろう――民が夜中なのにも関わらず外に出てこちら側に向け声を上げていた。
 その様子を見たアンナはまたもや涙目になっていた。しかしそれは、先程のそれとは正反対の物であった。
 嬉し涙を流すアンナは軽く俺の横腹を叩く。

「サイコ……また貴方の仕業ね?」
「さぁ? なんのことかさっぱり」

 俺はわざとあっけからんとした仕草を見せる。
 一応俺が何をしたか種明かしをしておこう。
 俺は、相手の心を見通す超能力<テレパシー>を応用させたのである。
 基本的に<テレパシー>で知り得た心情は俺以外に聞かれることはない。しかし、力を調整すれば、その心の声を俺以外の他人に聞かせることが可能なのである。
 つまりは、俺にしか聞けないアンナの心の声を”ディエルバ王国”に居る者全てに伝達できる様にしたのである。
 また、同時に”ディエルバ王国”に居る者全てにアンナと同じ超能力を行使した。
 なので、さっき聞こえた謎の声は、”ディエルバ王国”に居る誰かの声なのである。勿論その声も”ディエルバ王国”全土に拡がっている。
 ……とまぁ、こんな感じで心の内を全ディエルバ国民に見通されたアンナは羞恥で顔を赤らめる。

「もう! そうやってまたはぶらかして! 勝手に私の言葉を全国民に垂れ流さないでよ、恥ずかしいじゃない……」
「いいじゃないか別に。良く言うだろ? 悩みは一人で抱え込まず誰かに発散させろって」
「確かにそうだけど、こんな不特定多数にはゴメンよ」
「けど、結果オーライだろ?」
「うん、十分過ぎるくらいにね」

 アンナは額に流れる雫を完全に拭い去ると、俺にこう言った。

「……サイコ、もう一度私の想いを全国民に!」
「あいよ」

 アンナの言い付け通り、俺は超能力<テレパシー>を再び行使する。
 そしてアンナは<テレパシー>を通じ、こう宣言をした。



『私達のこの選択は、世界のことわりに反する重大な罪である! しかし、私達は戦わなければならない! ”人類族”の輝かしい未来の為に! この道は決して安全な物ではない! それでも尚、進むというのであれば、力を貸して欲しい! そして共に勝ち取るのです! ”人類族”のをッ!』




 アンナの言葉に”ディエルバ王国”の国民は、



「「「「「「「「「「――うおおぉおぉおおぉおぉおぉおぉおぉぉおぉぉおぉおぉおぉぉおぉ」」」」」」」」」」



 雪崩の様な大喝采かっさいで応えるのであった。

「…………」

 俺はその様子を見て、一人微笑んだ。

、超能寺 才己は、だ。皆が力を合わせて一つのことを成し遂げるというのであれば、も少しばかりせざるを得ないな)

 そんなの思考など露知らず、”ディエルバ王国”は新たな夜明けを迎えるのであった。
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