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12話
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教室の後ろの黒板に、大きく「文化祭準備」の文字が書かれた瞬間、教室の空気がぱっと明るくなった。窓から入る初夏の風が、プリントの端をひらひらと揺らす。
「はいはい、今年もやってきました文化祭準備の季節です」
担任の森先生が言うと、クラス中から小さく歓声が上がった。
「ブンカサイ…?」
ロロが首を傾げるのに、東雲は一切興味がなさそうな顔をしているので、俺が説明してやる。
「文化祭っていうのは、クラスごととか部活ごとに出し物をするお祭りなんだよ。たとえば、食べ物を作って売ったりするお店とか、お化け屋敷とかそういう部屋でやる展示とか、あとはクラス全員で演劇をする、とか」
「ブンカサイ!シュゴイ…!!」
「他の学校だと秋にするところも多いんだけどさ、うちの学校は毎年この時期にやるんだよ。7月は期末試験で忙しいし、8月は夏休みだろ?だから夏前にやっちゃうの。そういえばロロは夏休みどうするんだ?」
「フランス、かえる、ナツヤスミおわった、またくる」
「あ、なるほどね。じゃあ半年間のプログラムなんだな」
「ナツヤスミおわる……アキは…なにもナイ?」
「秋は体育祭と球技大会があるんだよ。日本にはスポーツの秋って言葉があってさ、うちは季節ごとに行事が詰まってんだよな」
田中はプリントをくるっと回して見せる。そこには文化祭当日までのカウントダウンスケジュールがびっしり書かれていた。
「去年は何やったんだっけ? 東雲のクラス」
「……参加してないから覚えてない」
「……まじかよ?」
あまりにも素っ気ない答えに、俺は苦笑いするしかなかった。
ほんと、東雲ってこういう学校行事に興味なさそうだ。
「Bunkasai……」
ロロが、日本語の響きを確かめるみたいに小さくつぶやいた。机の上のプリントをじっと見つめ、その目はきらきらしている。
「フランスにはないんだよね?」
「うん……たぶん、ない。」
「何にするかは、皆で決めるんだけど、ロロは何してみたいの?」
「お店!つくってみたい!!」
「模擬店かぁ…!留学生のロロの意見だしな、案外通るかもよ!」
「タノシソウ!!」
その笑顔は、こっちまで楽しくなってくるような明るさを持っていた。
「コトシハ、イッショにやろ?」
ロロが東雲に向かって、期待に満ちた声をかける。
だが東雲は、少しだけ視線をそらし、「……考えとく」と短く返した。
(なんだよ! お前、誘われて嬉しいのかよ!)
心の中で叫びながら、俺は口を挟むタイミングを逃した。
その日の係決めは、ホームルームの後半戦だった。
出し物の候補を黒板に書き出し、クラス全員であーだこーだと言い合う。
「パンケーキカフェとかよくない?」
「定番すぎない?」
「メイド喫茶にしようぜ」
「男子のメイド服は見たくない」
笑い声と軽口が飛び交う中、ロロはメモ帳を片手に真剣に聞き入っていた。
時々、「それ、どういう意味?」と俺に小声で訊いてくるのが妙に可愛い。
ワクワクしてるのが手にとってわかるようで。
「じゃあ、喫茶店系で決定な。あとは接客班、調理班、宣伝班に分けるぞー」
担任の号令で、クラス内の空気がまた変わった。
──というのも。
仲のいい子と一緒にやりたい、というのはもちろんなんだけど、それだけじゃない。
同じ班になると、それだけグッと距離が縮まることから、ちょっと気になるあの子と一緒にやりたい、という恋愛イベントが発生しやすいのだ。
そりゃ一緒に過ごす時間が増えるのと同時に、共通の話題ができて、普段は話をしないような2人の距離がグッと縮まることもあるわけだ。
──もちろん、俺もだ!
俺も、当然ロロと一緒がいい。
「同じのにしような!」
そうロロに言うと──。
ロロは少し考え込んだあと、ゆっくりと言葉を選ぶように口を開いた。
ロロは東雲に「ニホンゴ、ムズカシイから……イッショにやろ?」と言っていた。
一瞬、教室のざわめきが遠くなる。
それは“お世話してくれる人”としてじゃなく、迷いなく東雲を指名している声だった。
まるで、他の誰でもなく東雲と一緒にいたい、と言っているみたいで、胸がギュッと苦しくなる。
だけど、それに東雲は「別に田中でもいいだろ」と言っていたけどさ。
(──やっぱお前何なんだよ!!)
ま、東雲は別に一緒じゃなくてもいいんだけど、一緒にしてやってもいい。
そう思ってたのに──!!!
「……何で俺が、リーダーなんだよ!!!」
「田中は、調理班のリーダーで決定、と」
調理班に決定したまでは良かったんだけど、くじ引きの結果、俺がリーダーに選ばれてしまった。
皆敬遠してやりたがらないから、と先生がくじ引きを手にして、皆の前に手を出したのに、ロロは1番に、東雲は最後の余りになったくせに。
東雲とロロはちゃっかり真っ白なくじを選んでいた。
──何たる、くじ運の悪さ!!!
「いいなぁ…お前ら!!」
じとっと睨んでも、東雲は涼しい顔だ。
……まあ、こいつがリーダーだったら班が崩壊してたかもしれない。
「ガンバロ!」とロロが言うのに、東雲がふっと小さく笑った。
その笑顔はロロだけに向けられているみたいで、胸の奥がざわつく。
──やっぱ東雲もそうなのか?
そう思えて、どうしても視線が二人から離せなかった。
「はいはい、今年もやってきました文化祭準備の季節です」
担任の森先生が言うと、クラス中から小さく歓声が上がった。
「ブンカサイ…?」
ロロが首を傾げるのに、東雲は一切興味がなさそうな顔をしているので、俺が説明してやる。
「文化祭っていうのは、クラスごととか部活ごとに出し物をするお祭りなんだよ。たとえば、食べ物を作って売ったりするお店とか、お化け屋敷とかそういう部屋でやる展示とか、あとはクラス全員で演劇をする、とか」
「ブンカサイ!シュゴイ…!!」
「他の学校だと秋にするところも多いんだけどさ、うちの学校は毎年この時期にやるんだよ。7月は期末試験で忙しいし、8月は夏休みだろ?だから夏前にやっちゃうの。そういえばロロは夏休みどうするんだ?」
「フランス、かえる、ナツヤスミおわった、またくる」
「あ、なるほどね。じゃあ半年間のプログラムなんだな」
「ナツヤスミおわる……アキは…なにもナイ?」
「秋は体育祭と球技大会があるんだよ。日本にはスポーツの秋って言葉があってさ、うちは季節ごとに行事が詰まってんだよな」
田中はプリントをくるっと回して見せる。そこには文化祭当日までのカウントダウンスケジュールがびっしり書かれていた。
「去年は何やったんだっけ? 東雲のクラス」
「……参加してないから覚えてない」
「……まじかよ?」
あまりにも素っ気ない答えに、俺は苦笑いするしかなかった。
ほんと、東雲ってこういう学校行事に興味なさそうだ。
「Bunkasai……」
ロロが、日本語の響きを確かめるみたいに小さくつぶやいた。机の上のプリントをじっと見つめ、その目はきらきらしている。
「フランスにはないんだよね?」
「うん……たぶん、ない。」
「何にするかは、皆で決めるんだけど、ロロは何してみたいの?」
「お店!つくってみたい!!」
「模擬店かぁ…!留学生のロロの意見だしな、案外通るかもよ!」
「タノシソウ!!」
その笑顔は、こっちまで楽しくなってくるような明るさを持っていた。
「コトシハ、イッショにやろ?」
ロロが東雲に向かって、期待に満ちた声をかける。
だが東雲は、少しだけ視線をそらし、「……考えとく」と短く返した。
(なんだよ! お前、誘われて嬉しいのかよ!)
心の中で叫びながら、俺は口を挟むタイミングを逃した。
その日の係決めは、ホームルームの後半戦だった。
出し物の候補を黒板に書き出し、クラス全員であーだこーだと言い合う。
「パンケーキカフェとかよくない?」
「定番すぎない?」
「メイド喫茶にしようぜ」
「男子のメイド服は見たくない」
笑い声と軽口が飛び交う中、ロロはメモ帳を片手に真剣に聞き入っていた。
時々、「それ、どういう意味?」と俺に小声で訊いてくるのが妙に可愛い。
ワクワクしてるのが手にとってわかるようで。
「じゃあ、喫茶店系で決定な。あとは接客班、調理班、宣伝班に分けるぞー」
担任の号令で、クラス内の空気がまた変わった。
──というのも。
仲のいい子と一緒にやりたい、というのはもちろんなんだけど、それだけじゃない。
同じ班になると、それだけグッと距離が縮まることから、ちょっと気になるあの子と一緒にやりたい、という恋愛イベントが発生しやすいのだ。
そりゃ一緒に過ごす時間が増えるのと同時に、共通の話題ができて、普段は話をしないような2人の距離がグッと縮まることもあるわけだ。
──もちろん、俺もだ!
俺も、当然ロロと一緒がいい。
「同じのにしような!」
そうロロに言うと──。
ロロは少し考え込んだあと、ゆっくりと言葉を選ぶように口を開いた。
ロロは東雲に「ニホンゴ、ムズカシイから……イッショにやろ?」と言っていた。
一瞬、教室のざわめきが遠くなる。
それは“お世話してくれる人”としてじゃなく、迷いなく東雲を指名している声だった。
まるで、他の誰でもなく東雲と一緒にいたい、と言っているみたいで、胸がギュッと苦しくなる。
だけど、それに東雲は「別に田中でもいいだろ」と言っていたけどさ。
(──やっぱお前何なんだよ!!)
ま、東雲は別に一緒じゃなくてもいいんだけど、一緒にしてやってもいい。
そう思ってたのに──!!!
「……何で俺が、リーダーなんだよ!!!」
「田中は、調理班のリーダーで決定、と」
調理班に決定したまでは良かったんだけど、くじ引きの結果、俺がリーダーに選ばれてしまった。
皆敬遠してやりたがらないから、と先生がくじ引きを手にして、皆の前に手を出したのに、ロロは1番に、東雲は最後の余りになったくせに。
東雲とロロはちゃっかり真っ白なくじを選んでいた。
──何たる、くじ運の悪さ!!!
「いいなぁ…お前ら!!」
じとっと睨んでも、東雲は涼しい顔だ。
……まあ、こいつがリーダーだったら班が崩壊してたかもしれない。
「ガンバロ!」とロロが言うのに、東雲がふっと小さく笑った。
その笑顔はロロだけに向けられているみたいで、胸の奥がざわつく。
──やっぱ東雲もそうなのか?
そう思えて、どうしても視線が二人から離せなかった。
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