【完結】Reste, mon étoile. −君にもう一度会いたくて−

豊川夢久

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26話

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──問題は、どうやって会うかだ。

正攻法で「取材お願いします!」なんて突撃は無理だ。俺、高校生だし。しかも音楽関係者でも何でもない。
突然やって来た怪しいガキに、ポロっと本音を話す大人なんていないだろう。

(となると……)
① 雑誌社の見学に紛れ込む。
② 街で“偶然”を装って接触。
③ メールで「ファンです」と送って会う約束を取り付ける。

いやいや、どれも怪しすぎるだろ。

でも、ロロのためにも──いや、正直に言えば、俺自身のためにも知りたい。気になる。放っておけない。

スマホを握りしめ、月島泉の所属する雑誌社のページを開く。案の定、会えそうな雰囲気はゼロだ。

でも、何もしないよりはマシだ。


「おはようロロ!」

やって来たロロに声をかけると、カバンを下ろしたロロが力なく笑う。

「おはよ」

そこから無言の時間が続き、ぽつとロロが溢した。
「……アズサ、キョウくる…かな?」

ロロの瞳が、うる、と震えた。
その奥には、罪悪感や不安、期待──いくつもの感情が入り混じっているように見えた。
それが痛いほど伝わってきて、気づけば俺は声をかけていた。

「……あのさ。もし、フランスで何かがあって、東雲が変わっちまった理由が分かるとしたら──それでも、知りたいって思うか?」

ロロはしばらく俯き、唇をかすかに噛んだ。
そして、ほんのわずかに首を傾げる。

「東雲のこと、昔の記事で書いてた人がいる。……フランス時代のことも、知ってるかもしれない」

「……ニホン、いる?」
「うん。今は国内の雑誌社にいるらしい。放課後、会いに行こうと思ってる。……って言っても、どうやって話を聞けるかは分かんないんだけどさ」

そう言った瞬間、ガタン、とロロが椅子を引いた。
立ち上がると、迷いなくカバンを肩に背負い直す。

「お、おい……って、今から行く気か!?」
無言のまま扉へ向かうロロを慌てて追いかける。

「場所わかんのか?」
ふるふると、首を横に振る。

……ほんっと、衝動のかたまりみたいなやつだな。

「……まったく。しょうがねぇな! 道案内してやるよ!」

人生初の授業サボり。
胸の奥がちょっとだけ弾む。
こんな無茶な行動が、どうしようもなく楽しいなんて──これって、もしかして青春ってやつじゃねぇの?



「ですからっ! 月島さんに、お話を……!」

雑誌社の受付で、俺とロロは必死に頭を下げていた。
受付の女性は困ったように眉を下げる。

「申し訳ありませんが、事前にアポイントを──」

「……オネガイ、します!」
ロロもつたない日本語で食い下がる。

その時、背後から低く渋い声が落ちてきた。

「……俺に用事?」

振り向けば、片手にコーヒーを持った無精髭の男が立っていた。目を細め、俺たちを観察する。

「月島さん……ですか?」
「そうだけど?」

俺はすかさず名乗った。

「田中善人といいます! 東雲梓真さんの記事、あなたが書かれてますよね!?
……どうしても話を聞きたくて!」

「東雲……?またえらく懐かしい名前引っ張り出して来たな」
月島は鼻で笑い、コーヒーを啜る。

「……でもな、記事に書いた以上のことは話す気ない。あれはもう昔の話だ」

「それでも知りたいんです! あいつに何があったのか…!」

月島の眉がぴくりと動く。

「……何があったか、ねぇ」

「はい。……俺、アイツの“友達”なんです」
ロロも小さく頷いた。

「……アリガトウ、イイタクテ。……ニホン、キタ」

月島はしばらく黙り込み、コーヒーの表面を見つめた。
その沈黙がやけに長く感じられる。

「……友達、か」
低く呟いて、ほんのわずか口元が動いた。

「……あそこの椅子で待ってろ。話す価値があるかどうかぐらいは、見てやってもいい」

背を向ける月島を、俺とロロは顔を見合わせて見送る。
ロロの拳はぎゅっと握られていて、俺の心臓はさっきから落ち着く気配がなかった。

これから何を聞かされるのか──まったく想像もつかなかった。
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