27 / 46
26話
しおりを挟む
──問題は、どうやって会うかだ。
正攻法で「取材お願いします!」なんて突撃は無理だ。俺、高校生だし。しかも音楽関係者でも何でもない。
突然やって来た怪しいガキに、ポロっと本音を話す大人なんていないだろう。
(となると……)
① 雑誌社の見学に紛れ込む。
② 街で“偶然”を装って接触。
③ メールで「ファンです」と送って会う約束を取り付ける。
いやいや、どれも怪しすぎるだろ。
でも、ロロのためにも──いや、正直に言えば、俺自身のためにも知りたい。気になる。放っておけない。
スマホを握りしめ、月島泉の所属する雑誌社のページを開く。案の定、会えそうな雰囲気はゼロだ。
でも、何もしないよりはマシだ。
「おはようロロ!」
やって来たロロに声をかけると、カバンを下ろしたロロが力なく笑う。
「おはよ」
そこから無言の時間が続き、ぽつとロロが溢した。
「……アズサ、キョウくる…かな?」
ロロの瞳が、うる、と震えた。
その奥には、罪悪感や不安、期待──いくつもの感情が入り混じっているように見えた。
それが痛いほど伝わってきて、気づけば俺は声をかけていた。
「……あのさ。もし、フランスで何かがあって、東雲が変わっちまった理由が分かるとしたら──それでも、知りたいって思うか?」
ロロはしばらく俯き、唇をかすかに噛んだ。
そして、ほんのわずかに首を傾げる。
「東雲のこと、昔の記事で書いてた人がいる。……フランス時代のことも、知ってるかもしれない」
「……ニホン、いる?」
「うん。今は国内の雑誌社にいるらしい。放課後、会いに行こうと思ってる。……って言っても、どうやって話を聞けるかは分かんないんだけどさ」
そう言った瞬間、ガタン、とロロが椅子を引いた。
立ち上がると、迷いなくカバンを肩に背負い直す。
「お、おい……って、今から行く気か!?」
無言のまま扉へ向かうロロを慌てて追いかける。
「場所わかんのか?」
ふるふると、首を横に振る。
……ほんっと、衝動のかたまりみたいなやつだな。
「……まったく。しょうがねぇな! 道案内してやるよ!」
人生初の授業サボり。
胸の奥がちょっとだけ弾む。
こんな無茶な行動が、どうしようもなく楽しいなんて──これって、もしかして青春ってやつじゃねぇの?
⸻
「ですからっ! 月島さんに、お話を……!」
雑誌社の受付で、俺とロロは必死に頭を下げていた。
受付の女性は困ったように眉を下げる。
「申し訳ありませんが、事前にアポイントを──」
「……オネガイ、します!」
ロロもつたない日本語で食い下がる。
その時、背後から低く渋い声が落ちてきた。
「……俺に用事?」
振り向けば、片手にコーヒーを持った無精髭の男が立っていた。目を細め、俺たちを観察する。
「月島さん……ですか?」
「そうだけど?」
俺はすかさず名乗った。
「田中善人といいます! 東雲梓真さんの記事、あなたが書かれてますよね!?
……どうしても話を聞きたくて!」
「東雲……?またえらく懐かしい名前引っ張り出して来たな」
月島は鼻で笑い、コーヒーを啜る。
「……でもな、記事に書いた以上のことは話す気ない。あれはもう昔の話だ」
「それでも知りたいんです! あいつに何があったのか…!」
月島の眉がぴくりと動く。
「……何があったか、ねぇ」
「はい。……俺、アイツの“友達”なんです」
ロロも小さく頷いた。
「……アリガトウ、イイタクテ。……ニホン、キタ」
月島はしばらく黙り込み、コーヒーの表面を見つめた。
その沈黙がやけに長く感じられる。
「……友達、か」
低く呟いて、ほんのわずか口元が動いた。
「……あそこの椅子で待ってろ。話す価値があるかどうかぐらいは、見てやってもいい」
背を向ける月島を、俺とロロは顔を見合わせて見送る。
ロロの拳はぎゅっと握られていて、俺の心臓はさっきから落ち着く気配がなかった。
これから何を聞かされるのか──まったく想像もつかなかった。
正攻法で「取材お願いします!」なんて突撃は無理だ。俺、高校生だし。しかも音楽関係者でも何でもない。
突然やって来た怪しいガキに、ポロっと本音を話す大人なんていないだろう。
(となると……)
① 雑誌社の見学に紛れ込む。
② 街で“偶然”を装って接触。
③ メールで「ファンです」と送って会う約束を取り付ける。
いやいや、どれも怪しすぎるだろ。
でも、ロロのためにも──いや、正直に言えば、俺自身のためにも知りたい。気になる。放っておけない。
スマホを握りしめ、月島泉の所属する雑誌社のページを開く。案の定、会えそうな雰囲気はゼロだ。
でも、何もしないよりはマシだ。
「おはようロロ!」
やって来たロロに声をかけると、カバンを下ろしたロロが力なく笑う。
「おはよ」
そこから無言の時間が続き、ぽつとロロが溢した。
「……アズサ、キョウくる…かな?」
ロロの瞳が、うる、と震えた。
その奥には、罪悪感や不安、期待──いくつもの感情が入り混じっているように見えた。
それが痛いほど伝わってきて、気づけば俺は声をかけていた。
「……あのさ。もし、フランスで何かがあって、東雲が変わっちまった理由が分かるとしたら──それでも、知りたいって思うか?」
ロロはしばらく俯き、唇をかすかに噛んだ。
そして、ほんのわずかに首を傾げる。
「東雲のこと、昔の記事で書いてた人がいる。……フランス時代のことも、知ってるかもしれない」
「……ニホン、いる?」
「うん。今は国内の雑誌社にいるらしい。放課後、会いに行こうと思ってる。……って言っても、どうやって話を聞けるかは分かんないんだけどさ」
そう言った瞬間、ガタン、とロロが椅子を引いた。
立ち上がると、迷いなくカバンを肩に背負い直す。
「お、おい……って、今から行く気か!?」
無言のまま扉へ向かうロロを慌てて追いかける。
「場所わかんのか?」
ふるふると、首を横に振る。
……ほんっと、衝動のかたまりみたいなやつだな。
「……まったく。しょうがねぇな! 道案内してやるよ!」
人生初の授業サボり。
胸の奥がちょっとだけ弾む。
こんな無茶な行動が、どうしようもなく楽しいなんて──これって、もしかして青春ってやつじゃねぇの?
⸻
「ですからっ! 月島さんに、お話を……!」
雑誌社の受付で、俺とロロは必死に頭を下げていた。
受付の女性は困ったように眉を下げる。
「申し訳ありませんが、事前にアポイントを──」
「……オネガイ、します!」
ロロもつたない日本語で食い下がる。
その時、背後から低く渋い声が落ちてきた。
「……俺に用事?」
振り向けば、片手にコーヒーを持った無精髭の男が立っていた。目を細め、俺たちを観察する。
「月島さん……ですか?」
「そうだけど?」
俺はすかさず名乗った。
「田中善人といいます! 東雲梓真さんの記事、あなたが書かれてますよね!?
……どうしても話を聞きたくて!」
「東雲……?またえらく懐かしい名前引っ張り出して来たな」
月島は鼻で笑い、コーヒーを啜る。
「……でもな、記事に書いた以上のことは話す気ない。あれはもう昔の話だ」
「それでも知りたいんです! あいつに何があったのか…!」
月島の眉がぴくりと動く。
「……何があったか、ねぇ」
「はい。……俺、アイツの“友達”なんです」
ロロも小さく頷いた。
「……アリガトウ、イイタクテ。……ニホン、キタ」
月島はしばらく黙り込み、コーヒーの表面を見つめた。
その沈黙がやけに長く感じられる。
「……友達、か」
低く呟いて、ほんのわずか口元が動いた。
「……あそこの椅子で待ってろ。話す価値があるかどうかぐらいは、見てやってもいい」
背を向ける月島を、俺とロロは顔を見合わせて見送る。
ロロの拳はぎゅっと握られていて、俺の心臓はさっきから落ち着く気配がなかった。
これから何を聞かされるのか──まったく想像もつかなかった。
0
あなたにおすすめの小説
悪役令息ですが破滅回避で主人公を無視したら、高潔な態度だと勘違いされて聖人認定。なぜか溺愛ルートに入りました
水凪しおん
BL
BL小説『銀の瞳の聖者』の悪役令息ルシアンに転生してしまった俺。
原作通りなら、主人公ノエルをいじめ抜き、最後は断罪されて野垂れ死ぬ運命だ。
「そんなの絶対にお断りだ! 俺は平和に長生きしたい!」
破滅フラグを回避するため、俺は決意した。
主人公ノエルを徹底的に避け、関わらず、空気のように生きることを。
しかし、俺の「無視」や「無関心」は、なぜかノエルにポジティブに変換されていく。
「他の人のように欲望の目で見ないなんて、なんて高潔な方なんだ……!」
いじめっ子を視線だけで追い払えば「影から守ってくれた」、雨の日に「臭いから近寄るな」と上着を投げつければ「不器用な優しさ」!?
全力で嫌われようとすればするほど、主人公からの好感度が爆上がりして、聖人認定されてしまう勘違いラブコメディ!
小心者の悪役令息×健気なポジティブ主人公の、すれ違い溺愛ファンタジー、ここに開幕!
【完結】男の後輩に告白されたオレと、様子のおかしくなった幼なじみの話
須宮りんこ
BL
【あらすじ】
高校三年生の椿叶太には女子からモテまくりの幼なじみ・五十嵐青がいる。
二人は顔を合わせば絡む仲ではあるものの、叶太にとって青は生意気な幼なじみでしかない。
そんなある日、叶太は北村という一つ下の後輩・北村から告白される。
青いわく友達目線で見ても北村はいい奴らしい。しかも青とは違い、素直で礼儀正しい北村に叶太は好感を持つ。北村の希望もあって、まずは普通の先輩後輩として付き合いをはじめることに。
けれど叶太が北村に告白されたことを知った青の様子が、その日からおかしくなって――?
※本編完結済み。後日談連載中。
アプリで元カノを気にしなくなるくらい魅力的になろうとした結果、彼氏がフリーズしました
あと
BL
「目指せ!!魅力的な彼氏!!」
誰にでも優しいように見えて重い…?攻め×天然な受け
⚠️攻めの元カノが出て来ます。
⚠️強い執着・ストーカー的表現があります。
⚠️細かいことが気になる人には向いてません。
合わないと感じた方は自衛をお願いします。
受けは、恋人が元カノと同級生と過去の付き合いについて話している場面に出くわしてしまう。失意の中、人生相談アプリの存在を知る。実は、なぜか苗字呼び、家に入れてもらえない、手を出さないといった不思議がある。こうして、元カノなんか気にしなくなるほど魅力的になろうとするための受けの戦いが始まった…。
攻め:進藤郁也
受け:天野翔
※誤字脱字・表現の修正はサイレントで行う場合があります。
※タグは定期的に整理します。
※批判・中傷コメントはご遠慮ください。
完結|好きから一番遠いはずだった
七角
BL
大学生の石田陽は、石ころみたいな自分に自信がない。酒の力を借りて恋愛のきっかけをつかもうと意気込む。
しかしサークル歴代最高イケメン・星川叶斗が邪魔してくる。恋愛なんて簡単そうなこの後輩、ずるいし、好きじゃない。
なのにあれこれ世話を焼かれる。いや利用されてるだけだ。恋愛相手として最も遠い後輩に、勘違いしない。
…はずだった。
【完結】言えない言葉
未希かずは(Miki)
BL
双子の弟・水瀬碧依は、明るい兄・翼と比べられ、自信がない引っ込み思案な大学生。
同じゼミの気さくで眩しい如月大和に密かに恋するが、話しかける勇気はない。
ある日、碧依は兄になりすまし、本屋のバイトで大和に近づく大胆な計画を立てる。
兄の笑顔で大和と心を通わせる碧依だが、嘘の自分に葛藤し……。
すれ違いを経て本当の想いを伝える、切なく甘い青春BLストーリー。
第1回青春BLカップ参加作品です。
1章 「出会い」が長くなってしまったので、前後編に分けました。
2章、3章も長くなってしまって、分けました。碧依の恋心を丁寧に書き直しました。(2025/9/2 18:40)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる