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33話
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「Je me demande si Azusa joue encore du piano…」
(アズサはもうピアノを弾かないのかな…)
帰り道、ロロがぽつりと呟いた。
その横顔に、街灯の光が滲む。
「J’aimais tellement le piano d’Azusa…」
(アズサのピアノが本当に好きだったのに…)
声は小さく、けれど確かに震えていた。
「──…ロロ」
「月島さんも言ってたけどさ、“友達”でいることが大事なんじゃないか?
別にピアノ弾いてたって、弾いてなくたって、東雲は東雲だし」
そう言った瞬間、ロロを纏う空気が一変した。
「Tu peux dire ça parce que tu ne sais rien !」
(君は何も知らないからそんなことが言えるんだ!)
「Non, jamais ! Tu comprends ? Il ne faut pas lui enlever le piano !」
(だめ、絶対に!わかる? アズサからピアノを奪っちゃダメなんだ!)
そう叫ぶと、ロロは振り返りもせずに駆け出した。
追いかける間もなく、その背中は夜の街に溶けていく。
生ぬるい風だけが残った道で、俺は立ち尽くしていた。
──
「ピアノを弾いてなくたって、アズサはアズサ。」
そんな言葉に、胸の奥がざらつく。
分かってる。
分かってる、つもりだった。
だけど──ダメなんだ。
梓真には、ピアノがなくちゃダメなんだ。
だって、言ってたじゃないか。
あの日、僕を慰めてくれた時に──!
寮の部屋。
隅に小さくなって座る僕は、あの日のことを思い出していた。
あの梓真が泣いていた僕を、ピアノを弾いて慰めてくれた日のことだ。
「シャルロットは綺麗な音だよ。俺は好きだ。」
そう言ってくれたあと、僕は彼にこう言った。
「アズサはピアノが好きなんだね……羨ましいな。」
才能だけじゃない。
その指から溢れる音色には、僕の想像もつかないほどの時間と情熱が染み込んでいた。
そんなものに出会えることが、どれほど幸運で、どれほど尊いか──僕は心から羨ましいと思った。
そして、あの日、梓真は迷いなく答えたのだ。
「ピアノは俺の全てだから。ピアノがない人生なんて考えられない。」
……あの目を、僕は忘れられない。
あれはただの“好き”なんかじゃなかった。
それは息をするように、血を巡らせるように、彼の中に根付いているものだった。
だから──そんな人から、ピアノを奪ってはいけない。
絶対に。
例え、世界中の誰が彼の手を止めようとしても。
例え、本人が「もう弾かない」と言い張ったとしても。
僕が、守るんだ。
梓真のピアノを。
梓真の「全て」を、取り戻さなきゃ──
──
翌朝。
教室のドアが開く音に、思わず顔を上げた。
そこに立っていたのは──何の表情も浮かべていない梓真だった。
善人と顔を見合わせる。
きっと、あの弟がプリントを渡してくれたのだろう。
梓真が、また学校に来てくれた。
その事実だけで、少し胸の奥が温かくなった。
でも、これで終わりじゃない。
これが梓真にとっての、始まりなんだ──。
(アズサはもうピアノを弾かないのかな…)
帰り道、ロロがぽつりと呟いた。
その横顔に、街灯の光が滲む。
「J’aimais tellement le piano d’Azusa…」
(アズサのピアノが本当に好きだったのに…)
声は小さく、けれど確かに震えていた。
「──…ロロ」
「月島さんも言ってたけどさ、“友達”でいることが大事なんじゃないか?
別にピアノ弾いてたって、弾いてなくたって、東雲は東雲だし」
そう言った瞬間、ロロを纏う空気が一変した。
「Tu peux dire ça parce que tu ne sais rien !」
(君は何も知らないからそんなことが言えるんだ!)
「Non, jamais ! Tu comprends ? Il ne faut pas lui enlever le piano !」
(だめ、絶対に!わかる? アズサからピアノを奪っちゃダメなんだ!)
そう叫ぶと、ロロは振り返りもせずに駆け出した。
追いかける間もなく、その背中は夜の街に溶けていく。
生ぬるい風だけが残った道で、俺は立ち尽くしていた。
──
「ピアノを弾いてなくたって、アズサはアズサ。」
そんな言葉に、胸の奥がざらつく。
分かってる。
分かってる、つもりだった。
だけど──ダメなんだ。
梓真には、ピアノがなくちゃダメなんだ。
だって、言ってたじゃないか。
あの日、僕を慰めてくれた時に──!
寮の部屋。
隅に小さくなって座る僕は、あの日のことを思い出していた。
あの梓真が泣いていた僕を、ピアノを弾いて慰めてくれた日のことだ。
「シャルロットは綺麗な音だよ。俺は好きだ。」
そう言ってくれたあと、僕は彼にこう言った。
「アズサはピアノが好きなんだね……羨ましいな。」
才能だけじゃない。
その指から溢れる音色には、僕の想像もつかないほどの時間と情熱が染み込んでいた。
そんなものに出会えることが、どれほど幸運で、どれほど尊いか──僕は心から羨ましいと思った。
そして、あの日、梓真は迷いなく答えたのだ。
「ピアノは俺の全てだから。ピアノがない人生なんて考えられない。」
……あの目を、僕は忘れられない。
あれはただの“好き”なんかじゃなかった。
それは息をするように、血を巡らせるように、彼の中に根付いているものだった。
だから──そんな人から、ピアノを奪ってはいけない。
絶対に。
例え、世界中の誰が彼の手を止めようとしても。
例え、本人が「もう弾かない」と言い張ったとしても。
僕が、守るんだ。
梓真のピアノを。
梓真の「全て」を、取り戻さなきゃ──
──
翌朝。
教室のドアが開く音に、思わず顔を上げた。
そこに立っていたのは──何の表情も浮かべていない梓真だった。
善人と顔を見合わせる。
きっと、あの弟がプリントを渡してくれたのだろう。
梓真が、また学校に来てくれた。
その事実だけで、少し胸の奥が温かくなった。
でも、これで終わりじゃない。
これが梓真にとっての、始まりなんだ──。
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