狐は喋るし、俺は疲れてる〜25尾のキツネのコジャク〜

豊川夢久

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ゴミの中の宝石

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 スーパーから逃げるようにして、動物用品を置いている店へ駆け込んだ。
 さっきの騒ぎで、今後どこへ行くにもキャリーケースが必須だと痛感したからだ。

 ──とはいえ、コジャクには申し訳ないが、長く飼うつもりはない。
 飼い主が見つかれば、すぐに引き渡すつもりだ。
 だから、できるだけ安く済ませたい。……いや、むしろ一円でも節約したい。

 ペットショップの入口には、当然のように「動物同伴OK」の文字。
 俺は胸をなで下ろしながら、コジャクを抱えて入店した。

「ふむ、ここはなかなか……良い香りがいたしますわね」

 入ってすぐ、ペット用カートが置かれていたので、そこにコジャクを乗せる。
 乗った瞬間から、キョロキョロと首を振り、尻尾をふわふわ揺らす。
 猫用おやつの棚、鳥のケージ、ハムスターの回し車──どこを見ても目を輝かせて落ち着かない。

「目的はキャリーケースだけ。他のは買わないからな」

「そうなんですの!? あんなに素敵なものがたくさんあるのに!」

 コジャクは、まるで王族のショッピングのような勢いであれこれ指を差す。
 いや、正確には“尻尾を指し棒のように振って”だが。

「ちょっと、あのフワフワの毛布、気になりますわ!」
「あれは!? おやつコーナー!? 油揚げはありませんの!?」
「見てくださいまし! あのブラシ、金の持ち手がついてますの!」

「落ち着け! 買わねぇよ!」

 コジャクの尻尾がカートの中でわさわさ暴れるたび、
 通りすがる犬たちが一斉に振り返る。
 俺は「すまん、こいつテンション高めなんだ」と心の中で謝りながら歩いた。

(……こいつに“しつけ”とか、できる気がしねぇ)

 そう思いながら、ようやく辿り着いたキャリーケースコーナー。
 思ったより種類は少なかったが、リュック型のものがあるとは知らなかった。

「これ、いいかもな」

 ひとつ背負ってみると、軽くて丈夫そうだ。
 腕に抱えるより、両手が空く方がありがたい。
 値段をろくに見ずにカゴに放り込んだのが、今思えば間違いだった。

 よし、これで決まり──と思ったところで、視界の端に「首輪コーナー」が映る。
 一つ手に取ると、最近はマイクロチップ入りの首輪が主流らしい。
 真ん中に小さなメダルのようなタグがぶら下がっている。
 “迷子防止”の文字を見て、つい視線をそらした。

「……どうせ飼わないからな」

 あれこれ騒ぐコジャクを半ば無視しながら会計へ向かう。
 そして、レジの表示金額を見た瞬間──俺は硬直した。

(……ゼロ、多くないか?)

 ただのリュックだろ、これ。
 そう心の中で呟きつつ、にこやかな店員さんに「やっぱりやめます」とは言えず、
 そのまま会計を済ませた。

 財布の中はスカスカ。軽くなったどころか、もはや無重力だ。

 キャリーケースに入れられたコジャクは、不満げに飛び跳ねながら怒る。

「ふんっ! 何ですの、この狭っ苦しい檻は!
 ワタクシの麗しの尻尾が折れてしまいますわ!!」

 ぴょん、ぴょん、どすっ。
 跳ねるたびに、キャリーケースがリュックごと揺れる。

「おい、いいからじっとしてろ!」

「もうっ! さっさと油揚げとダージリンを買って帰るんですわ!!」

「ほんと曲げねぇな、お前!!」
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