狐は喋るし、俺は疲れてる〜25尾のキツネのコジャク〜

豊川夢久

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ゴミの中の宝石

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 昼食の弁当を食べ終え、食器を片づけると、俺は机にスマホを手に取った。
 画面には、朝入力しようとしていた無料の譲渡掲示板のフォーム。
 今日、動物病院で受け取ったワクチンの証明書も、机の端に並べてある。

 ――これで、もう準備は整った。

 そう思いながら、今朝の続きを打ち込んでいく。

 種類:狐(たぶん狐ですが、詳しくはわかりません)
 拾った場所:ゴミの中に紛れ込んでいました
 名前:コジャク
 性別:不明
 予防接種:接種済み(証明書添付)
 備考:病気も特にありません

 文章を見直して「保存」を押す前に、思わず手を止めた。
 “良い飼い主に出会えますように”──
 そんな考えが胸をかすめる。

 たった数時間しか一緒にいないのに、喋る動物と暮らすのは正直、疲れる。
 けれど同時に、胸の奥がほんの少しだけざわついた。

 カメラを取り出し、コジャクの写真を撮ろうと構える。
 譲渡ページには、当然写真が必要だ。
 交渉中や譲渡済の一覧を見れば、どれも“愛くるしい顔”ばかり。
 コジャクも見た目は悪くない。
 写真さえ上手く撮れれば、すぐに貰い手が見つかるはずだった。

 リラックスした様子でクッションの上に座り、尻尾を手入れしている。
 案外、絵になる。
 そう思って、シャッターを切った。

 ──が、撮れた写真のコジャクは見事に半目だった。

「……こりゃダメだな」

「なんですの?今の音」

「いや、可愛い写真を撮ってやろうと思ってな」

「シャシン? シャシンって何ですの?」

「いいから、じっとしてろって」

 そう言ってレンズを構えると、コジャクはすくっと立ち上がり、カメラの前に出てくる。
 画面いっぱいに広がるドアップの顔。

「何ですの? シャシンって何ですの?」

 興味津々でレンズを覗き込むその姿に、シャッターを押せない。
 思いついてインカメラに切り替えると、そこには──
 コジャクと一緒に写る、半笑いの男。

(……俺は写りたくないんだけどな)

 とりあえず、画像加工でカットすればいいかと、夢中になって画面を覗くコジャクの写真を撮る。

「面白いよなー」
 ……カシャ、カシャ。

「……この音がシャシンですの?」

「いいからいいから、じっとしてろって」

 そう言いながら数枚撮り、「ほら、見てみろよ」と画面を見せる。

 スクロールして現れる写真の数々。
 半目、ニタリ顔、寄り目。

 ──どれも絶妙にブサイクだった。

「こいつ、ブスですわね」

 ケラケラと笑うコジャク。
 どうやら、自分の写真だとは気づいていない。

(悪いな……それ、お前なんだよ……)

「……俺が圧倒的に下手なのか?」

 独り言のようなつぶやきに、コジャクが小首をかしげた。
 その仕草が、今まででいちばん“可愛かった”。
 だが、俺が撮ると、なぜか全部ブスになる。

(……俺、もしかして“ブス補正レンズ”でも付いてんのか?)
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