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ゴミの中の宝石
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「じゃあ行ってくるからな!!」
そう残して家を出て、数分歩いただけで、世界が驚くほど静かになった。
「このキャリーケース狭いですわね!」と背中で暴れられることも、
「油揚げはどこですの!?」と道案内されることもない。
(……静かだな)
あの狐がいないだけで、こんなに心穏やかに歩けるとは。
“慣れ”って怖いなと思う。
いや、違う。“静けさの尊さ”を今、噛みしめているだけかもしれない。
朝の空気がやけに澄んでいて、
人のざわめきも、信号の音も、すべてが新鮮に感じられた。
職場に着くと、ちょうど吉井さんがデスクに座ったところだった。
いつも通りの制服姿に、少し遅めの出勤時間。
俺は自然と「おはようございます」と声をかけた。
「おはようございます。……あれ? レンレンさん、何かいいことありました?」
「え? いや、別に……? そう見える?」
そう答えながらも、心の中では思っていた。
(朝から吉井さんに会えたぐらいで、だな)
いつもいい匂いがするけど、
朝の吉井さんは、特に香りが強い気がする。
髪からふわりと漂うシャンプーの匂いに、思わずすんすんしてしまう。
(……気づかれたら終わる。慎重に行け、俺)
曖昧に笑って、いつもの作業台へ向かう。
ゴミが流れるレーンの音が、一定のリズムで響いていた。
どこまでも単調なはずなのに、
ふと、そのベルトの上をぼんやり見ながら、思い出していた。
(……ここで、あいつを拾ったんだよな)
モゾモゾ動く音と、キュウキュウ鳴く声。
もしかして、と生きているのか?と不安に思ったのが始まりだ。
あの時に、面倒臭がらずに上司に報告していたら、コジャクは俺の家に来なかったのかもしれない。
今となっては後の祭りだが、そんなことが脳裏を掠めた。
(……今ごろ、何してんだろ)
想像してみる。
クッションの上で丸まって寝てるか。
それとも、ベッドの上で跳ね回ってるか。
いや、あの性格だ。
俺の留守中に、家中の“ダサい物”を断罪してるに違いない。
「このマグカップ、センスが壊滅的ですわ!」
「カーテンの色味、ショーワですわね!!」
──そして、本当にカーテンをビリビリにしてそうな気がして、
想像だけで胃がキリキリする。
「……はぁ」
ため息をひとつついて、流れるゴミを見つめる。
(でも、俺がいない間、コジャクはどうやって過ごしてるんだろうな)
そう残して家を出て、数分歩いただけで、世界が驚くほど静かになった。
「このキャリーケース狭いですわね!」と背中で暴れられることも、
「油揚げはどこですの!?」と道案内されることもない。
(……静かだな)
あの狐がいないだけで、こんなに心穏やかに歩けるとは。
“慣れ”って怖いなと思う。
いや、違う。“静けさの尊さ”を今、噛みしめているだけかもしれない。
朝の空気がやけに澄んでいて、
人のざわめきも、信号の音も、すべてが新鮮に感じられた。
職場に着くと、ちょうど吉井さんがデスクに座ったところだった。
いつも通りの制服姿に、少し遅めの出勤時間。
俺は自然と「おはようございます」と声をかけた。
「おはようございます。……あれ? レンレンさん、何かいいことありました?」
「え? いや、別に……? そう見える?」
そう答えながらも、心の中では思っていた。
(朝から吉井さんに会えたぐらいで、だな)
いつもいい匂いがするけど、
朝の吉井さんは、特に香りが強い気がする。
髪からふわりと漂うシャンプーの匂いに、思わずすんすんしてしまう。
(……気づかれたら終わる。慎重に行け、俺)
曖昧に笑って、いつもの作業台へ向かう。
ゴミが流れるレーンの音が、一定のリズムで響いていた。
どこまでも単調なはずなのに、
ふと、そのベルトの上をぼんやり見ながら、思い出していた。
(……ここで、あいつを拾ったんだよな)
モゾモゾ動く音と、キュウキュウ鳴く声。
もしかして、と生きているのか?と不安に思ったのが始まりだ。
あの時に、面倒臭がらずに上司に報告していたら、コジャクは俺の家に来なかったのかもしれない。
今となっては後の祭りだが、そんなことが脳裏を掠めた。
(……今ごろ、何してんだろ)
想像してみる。
クッションの上で丸まって寝てるか。
それとも、ベッドの上で跳ね回ってるか。
いや、あの性格だ。
俺の留守中に、家中の“ダサい物”を断罪してるに違いない。
「このマグカップ、センスが壊滅的ですわ!」
「カーテンの色味、ショーワですわね!!」
──そして、本当にカーテンをビリビリにしてそうな気がして、
想像だけで胃がキリキリする。
「……はぁ」
ため息をひとつついて、流れるゴミを見つめる。
(でも、俺がいない間、コジャクはどうやって過ごしてるんだろうな)
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