17 / 24
ゴミの中の宝石
17
しおりを挟む
事務所に戻ると、吉井さんのデスクの前に高梨がしゃがみ込んでいた。
パソコンのモニター裏で、何やらケーブルを抜き差ししている。
「どうしたんだ?」
思わず声をかけると、吉井さんが顔を上げて微笑んだ。
「パソコンの調子が悪くて、高梨さんに見てもらってたんです」
「あ、そうなんだ」
そういや高梨、前に “機械関係強いんですよ” とか言ってたっけ。
業務でもよく頼られてる。しかも、見た目もそこそこ整ってる。
(……こいつに負けたくねぇ)
くだらないと分かっていても、
吉井さんが他の男に「ありがとうございます」と笑うのを見ると、
胸がざらつく。
「ケーブルの接触だと思う。これで多分大丈夫」
高梨が立ち上がり、吉井さんの隣でマウスを操作する。
並んだ二人の距離が、なんか近い。
(近い近い近い!)
思わず身を乗り出したところで、高梨の目がこっちを向いた。
「──何だよ」
「ハスハス」
「いや、お前は“蓮井”って呼べ。……っていうか何だよ」
高梨が手を伸ばしてきたのを避けても、
手が追いかけてくる。
(お前の手、自動追尾機能でも付いてんのか)
と思った瞬間──
「……毛がついてる」
高梨が俺の袖から、金色の毛を摘み取った。
「あれ? レンレンさん、動物飼ってましたっけ?」
「えっ!? いや……ちょっと預かってるんだよね」
「犬ですか? 猫ですか?」
「……えーと、狐?」
「……狐?!」
高梨の目がまんまるになり、
吉井さんまで椅子から身を乗り出してきた。
「キツネって……本物ですか?」
「いや、まぁ……多分……たぶん狐……みたいな……感じの……やつ?」
「えぇ~! すご~い! 可愛いんでしょうね!!」
「えー…いや、どうかな」
「そんなことないですよ~。私も今すぐ猫ちゃん吸いに帰りたいくらいですもん!」
「吸う?」
「匂いがね。すごく恋しくなるんです」
「そっか……俺はあいつが何してるか気になってるけど」
そう言うと、吉井さんが嬉しそうに笑った。
「よっぽど可愛いんですね!」
“気になってる”の意味が違う気がするが……
吉井さんの中で俺の株が上がった気がして、悪い気はしない。
「そういう時は、ペットカメラ付けたらいいですよ」
「ペットカメラ?」
「スマホから様子が見られるやつです。うちの猫、よくお昼寝中に見て癒されてます」
「あ~……あれか、見守りカメラみたいなやつ?」
「そうそう! 画角も変えられますし、ズームもできますよ!」
「へぇ……(絶対イヤな予感しかしねぇけど)」
心の中でため息をつきながらも──
吉井さんがにこっと笑った瞬間、「買おうかな」と言ってしまっていた。
「いいじゃないですか! 離れてても様子が見られると安心ですし。撮れたら見せてくださいね~!」
「可愛いのが撮れたら……ね」
心臓が跳ねた。
横を見ると、高梨が無表情で立っている。
(羨ましいか?お前)
そう思うと、少し勝ち誇った笑みが漏れる。
「おすすめのカメラ、あとで紹介しましょうか?」
「え、いいの?」
「もちろんです!」
吉井さんの笑顔だけで、今日は空が飛べそうだ。
昼休み、コンビニ弁当を買って来た俺と、手作り弁当を持参している吉井さんと並んで外のベンチに座った。
(吉井さんの待ち受け、猫なの初めて知った……
コジャクの写真を待ち受けにしたら……
またこうやって一緒にお昼食べられるかな)
そんな邪な考えが胸の奥で蠢くのだった。
パソコンのモニター裏で、何やらケーブルを抜き差ししている。
「どうしたんだ?」
思わず声をかけると、吉井さんが顔を上げて微笑んだ。
「パソコンの調子が悪くて、高梨さんに見てもらってたんです」
「あ、そうなんだ」
そういや高梨、前に “機械関係強いんですよ” とか言ってたっけ。
業務でもよく頼られてる。しかも、見た目もそこそこ整ってる。
(……こいつに負けたくねぇ)
くだらないと分かっていても、
吉井さんが他の男に「ありがとうございます」と笑うのを見ると、
胸がざらつく。
「ケーブルの接触だと思う。これで多分大丈夫」
高梨が立ち上がり、吉井さんの隣でマウスを操作する。
並んだ二人の距離が、なんか近い。
(近い近い近い!)
思わず身を乗り出したところで、高梨の目がこっちを向いた。
「──何だよ」
「ハスハス」
「いや、お前は“蓮井”って呼べ。……っていうか何だよ」
高梨が手を伸ばしてきたのを避けても、
手が追いかけてくる。
(お前の手、自動追尾機能でも付いてんのか)
と思った瞬間──
「……毛がついてる」
高梨が俺の袖から、金色の毛を摘み取った。
「あれ? レンレンさん、動物飼ってましたっけ?」
「えっ!? いや……ちょっと預かってるんだよね」
「犬ですか? 猫ですか?」
「……えーと、狐?」
「……狐?!」
高梨の目がまんまるになり、
吉井さんまで椅子から身を乗り出してきた。
「キツネって……本物ですか?」
「いや、まぁ……多分……たぶん狐……みたいな……感じの……やつ?」
「えぇ~! すご~い! 可愛いんでしょうね!!」
「えー…いや、どうかな」
「そんなことないですよ~。私も今すぐ猫ちゃん吸いに帰りたいくらいですもん!」
「吸う?」
「匂いがね。すごく恋しくなるんです」
「そっか……俺はあいつが何してるか気になってるけど」
そう言うと、吉井さんが嬉しそうに笑った。
「よっぽど可愛いんですね!」
“気になってる”の意味が違う気がするが……
吉井さんの中で俺の株が上がった気がして、悪い気はしない。
「そういう時は、ペットカメラ付けたらいいですよ」
「ペットカメラ?」
「スマホから様子が見られるやつです。うちの猫、よくお昼寝中に見て癒されてます」
「あ~……あれか、見守りカメラみたいなやつ?」
「そうそう! 画角も変えられますし、ズームもできますよ!」
「へぇ……(絶対イヤな予感しかしねぇけど)」
心の中でため息をつきながらも──
吉井さんがにこっと笑った瞬間、「買おうかな」と言ってしまっていた。
「いいじゃないですか! 離れてても様子が見られると安心ですし。撮れたら見せてくださいね~!」
「可愛いのが撮れたら……ね」
心臓が跳ねた。
横を見ると、高梨が無表情で立っている。
(羨ましいか?お前)
そう思うと、少し勝ち誇った笑みが漏れる。
「おすすめのカメラ、あとで紹介しましょうか?」
「え、いいの?」
「もちろんです!」
吉井さんの笑顔だけで、今日は空が飛べそうだ。
昼休み、コンビニ弁当を買って来た俺と、手作り弁当を持参している吉井さんと並んで外のベンチに座った。
(吉井さんの待ち受け、猫なの初めて知った……
コジャクの写真を待ち受けにしたら……
またこうやって一緒にお昼食べられるかな)
そんな邪な考えが胸の奥で蠢くのだった。
8
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
追放された俺のスキル【整理整頓】が覚醒!もふもふフェンリルと訳あり令嬢と辺境で最強ギルドはじめます
黒崎隼人
ファンタジー
「お前の【整理整頓】なんてゴミスキル、もういらない」――勇者パーティーの雑用係だったカイは、ダンジョンの最深部で無一文で追放された。死を覚悟したその時、彼のスキルは真の能力に覚醒する。鑑定、無限収納、状態異常回復、スキル強化……森羅万象を“整理”するその力は、まさに規格外の万能チートだった! 呪われたもふもふ聖獣と、没落寸前の騎士令嬢。心優しき仲間と出会ったカイは、辺境の街で小さなギルド『クローゼット』を立ち上げる。一方、カイという“本当の勇者”を失ったパーティーは崩壊寸前に。これは、地味なスキル一つで世界を“整理整頓”していく、一人の青年の爽快成り上がり英雄譚!
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
猛獣のお世話係
しろねこ。
恋愛
「猛獣のお世話係、ですか?」
父は頷き、王家からの手紙を寄越す。
国王が大事にしている猛獣の世話をしてくれる令嬢を探している。
条件は結婚適齢期の女性で未婚のもの。
猛獣のお世話係になった者にはとある領地をあげるので、そこで住み込みで働いてもらいたい。
猛獣が満足したら充分な謝礼を渡す……など
「なぜ、私が?私は家督を継ぐものではなかったのですか?万が一選ばれたらしばらく戻ってこれませんが」
「その必要がなくなったからよ、お義姉さま。私とユミル様の婚約が決まったのよ」
婚約者候補も家督も義妹に取られ、猛獣のお世話係になるべくメイドと二人、王宮へ向かったが…ふさふさの猛獣は超好み!
いつまでもモフっていたい。
動物好き令嬢のまったりお世話ライフ。
もふもふはいいなぁ。
イヤな家族も仕事もない、幸せブラッシング生活が始まった。
完全自己満、ハピエン、ご都合主義です!
甘々です。
同名キャラで色んな作品を書いています。
一部キャラの台詞回しを誤字ではなく個性として受け止めて貰えればありがたいです。
他サイトさんでも投稿してます。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
追放料理人とJKの異世界グルメ無双珍道中〜ネットスーパーは最強です〜
音無響一
ファンタジー
わーい、異世界来ちゃった!
スキルスキル〜何かな何かな〜
ネットスーパー……?
これチートでしょ!?
当たりだよね!?
なになに……
注文できるのは、食材と調味料だけ?
完成品は?
カップ麺は?
え、私料理できないんだけど。
──詰みじゃん。
と思ったら、追放された料理人に拾われました。
素材しか買えない転移JK
追放された料理人
完成品ゼロ
便利アイテムなし
あるのは、調味料。
焼くだけなのに泣く。
塩で革命。
ソースで敗北。
そしてなぜかペンギンもいる。
今日も異世界で、
調味料無双しちゃいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる