狐は喋るし、俺は疲れてる〜25尾のキツネのコジャク〜

豊川夢久

文字の大きさ
24 / 24
ゴミの中の宝石

24

しおりを挟む
 防音マットが届いた翌朝。

「よし……これで足音も大丈夫……の、はず……」

 俺は部屋中にみっちりマットを敷き詰め、ようやく一息ついた。
 コジャクはその様子を、なぜか真剣な面持ちで見守っていた。
 軽くジャンプをしてみた俺は、音がしないことに頷いた。

「今のは……何の儀式でしたの?」

「儀式じゃねぇよ。お前の足音がしないように敷いたんだよ!!
 ツルツルで柔らかい“ペット用静音クッションマット”っての買ったんだよ」」

「…ワタクシの足音ですの…??まったく、繊細な人間界ですわね」

 その口ぶりはめちゃくちゃ偉そうなのに、
 姿勢はちょこんと正座していて可愛い。

 そして──

「よし、今日から“忍びの術”を使えるか?」

「シノビ…?」

「いいか?“静かにしろと言われた時は、忍びになる”んだ」

 コジャクは、俺の言葉を聞いた瞬間──

 ぴんっ!!

 と耳を立てた。

「静かに歩く、静かに動く、というのが忍びだ!」
 
「……ワタクシ、そういうの、得意ですわ!!」

 なぜか自信満々だ。

「いいか。足音がしないように歩くんだ。」

「なるほど。足音がしないように…。
 ふふん……任せなさいまし!!」

 胸を張るコジャク。
 背中の尻尾25本が、誇らしげにふわふわ揺れる。

(……いや、その尻尾の揺れがもううるさいんだけどな)

 コジャクは両前足をそろえ、そぉ~~~っと一歩踏み出した。

 パタッ。

(可愛……いや違う、いやでも可愛い……!!!)

 続けてもう一歩。

 パタタッ。

 もはや“軽快なヒョコヒョコ歩き”で、忍びとは程遠い。

「どうですの!?今の完璧でしたでしょ!?音ゼロ!!」

「いや、普通に聞こえたよ。
 ……というか、ステップ踏んでるみたいだったぞ」

「ステップ!?
 失敬ですわ!ワタクシ、完璧に忍んでおりますのに!!」

 怒って尻尾25本をぶんぶんさせる。

 ぶんぶん。

(その尻尾の音のほうがうるさいんだよ!!)

「いや、こうジャンプするんじゃなくてだな…ゆっくり歩くのはどうだ?」

「……ゆっくり、ですの?」

「そう、お前足が短いから、ちょこちょこ歩くだろ?それを何とかできないか、と思ってさ」

「……ゆっくり」

  コジャクはそぉ~……っと前足をあげた。

 俺も息を飲む。

 そして踏み出した、その瞬間──

 パフっ。

(……え、何の音??)

 軽い、ふわっとした音だった。

 さすが防音マット、と感心する間もなく、
 次の一歩が繰り出された。

 ぱふっ、ぱふっ、ぱふぱふっ。

(……いや、防音マットの音なのか?これ。
 ……いやでも、俺は何の音もしないのに…これ何だ?何の音だ?)

「蓮井!どうですの!?音ゼロでしょ!!」

「いや……いや、うん……うん…??とりあえず、ダメだな…これ…」

 ガックリ肩を落としながらも、俺はじっとコジャクの足元を見る。

 肉球はぷにぷに、足裏の毛はふわふわ。

(……これ、絶対“毛”が空気押してるやつだ……
 マットじゃなくて……コジャクの構造的問題だ……)

 そう思った瞬間、

「何をぶつぶつ言ってますの?
 ワタクシ、完全静音の忍びでしたわよ!」

 と、当の本人は胸を張っていた。

(……いや、ぱふぱふ音が出てんのはお前の足だからなぁ……)

 俺は頭を抱えたのだった。
しおりを挟む
感想 3

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(3件)

NoUser
2025.11.10 NoUser

ブス補正レンズに笑いました!
コジャク絶対可愛いのに!

2025.11.15 豊川夢久

感想、ありがとうございます!

主人公に、あまりにも撮影技術がないんでしょうかね…??(笑
もしくは写真写りがとても悪いのか…。。

最後まで楽しんでもらえるように頑張りたいと思います!
よろしくお願いします…!!

解除
NoUser
2025.11.02 NoUser

コジャクかわいい!ダンボールから出てくるところ、想像したらかわいい!

2025.11.02 豊川夢久

コメントありがとうございます!
そうなんですよ……私もそこお気に入りでして…!!
共感してもらえて嬉しいです🦊💕

まだまだ頑張っていきたいと思いますので、よろしくお願いします…!

解除
NoUser
2025.11.01 NoUser

面白かったです!
この先の関係性がどう動くのか、とても楽しみにしています!

2025.11.02 豊川夢久

申し訳ありませんでした!!
返信のやり方がわかっておらず、遅くなってしまいました……!!

初コメントありがとうございます〜🙏✨️
嬉しいです!!
ゆる~く、人間が振り回される話にできたらいいなと思ってます(笑)
最後までお付き合いいただけるよう頑張ります!

コメントありがとうございました!!

解除

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

追放された俺のスキル【整理整頓】が覚醒!もふもふフェンリルと訳あり令嬢と辺境で最強ギルドはじめます

黒崎隼人
ファンタジー
「お前の【整理整頓】なんてゴミスキル、もういらない」――勇者パーティーの雑用係だったカイは、ダンジョンの最深部で無一文で追放された。死を覚悟したその時、彼のスキルは真の能力に覚醒する。鑑定、無限収納、状態異常回復、スキル強化……森羅万象を“整理”するその力は、まさに規格外の万能チートだった! 呪われたもふもふ聖獣と、没落寸前の騎士令嬢。心優しき仲間と出会ったカイは、辺境の街で小さなギルド『クローゼット』を立ち上げる。一方、カイという“本当の勇者”を失ったパーティーは崩壊寸前に。これは、地味なスキル一つで世界を“整理整頓”していく、一人の青年の爽快成り上がり英雄譚!

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

猛獣のお世話係

しろねこ。
恋愛
「猛獣のお世話係、ですか?」 父は頷き、王家からの手紙を寄越す。 国王が大事にしている猛獣の世話をしてくれる令嬢を探している。 条件は結婚適齢期の女性で未婚のもの。 猛獣のお世話係になった者にはとある領地をあげるので、そこで住み込みで働いてもらいたい。 猛獣が満足したら充分な謝礼を渡す……など 「なぜ、私が?私は家督を継ぐものではなかったのですか?万が一選ばれたらしばらく戻ってこれませんが」 「その必要がなくなったからよ、お義姉さま。私とユミル様の婚約が決まったのよ」 婚約者候補も家督も義妹に取られ、猛獣のお世話係になるべくメイドと二人、王宮へ向かったが…ふさふさの猛獣は超好み! いつまでもモフっていたい。 動物好き令嬢のまったりお世話ライフ。 もふもふはいいなぁ。 イヤな家族も仕事もない、幸せブラッシング生活が始まった。 完全自己満、ハピエン、ご都合主義です! 甘々です。 同名キャラで色んな作品を書いています。 一部キャラの台詞回しを誤字ではなく個性として受け止めて貰えればありがたいです。 他サイトさんでも投稿してます。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

追放料理人とJKの異世界グルメ無双珍道中〜ネットスーパーは最強です〜

音無響一
ファンタジー
わーい、異世界来ちゃった! スキルスキル〜何かな何かな〜 ネットスーパー……? これチートでしょ!? 当たりだよね!? なになに…… 注文できるのは、食材と調味料だけ? 完成品は? カップ麺は? え、私料理できないんだけど。 ──詰みじゃん。 と思ったら、追放された料理人に拾われました。 素材しか買えない転移JK 追放された料理人 完成品ゼロ 便利アイテムなし あるのは、調味料。 焼くだけなのに泣く。 塩で革命。 ソースで敗北。 そしてなぜかペンギンもいる。 今日も異世界で、 調味料無双しちゃいます!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。