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第45話 「興味もない」
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ルーイを襲っていた謎の慟哭はデビルゴートを斬り捨てた瞬間、まるで凪いだ水面のように収まった。
(なんだったんだ……)
槍から血糊を払い、その場に突き刺す。
途端、緊張を切らせた身体が悲鳴を上げる。堪らずルーイは膝をつき、ゆっくりと大の字になって寝そべった。
「いっつつ……ってぇ……」
身体の傷はなんてことはない軽傷だったが、魔素欠乏症らしき兆候に加えて、全身を苛む倦怠感が凄まじい。
上体を起こし、膝に両手をつき深呼吸していると、コツコツと靴音を鳴らせて近付いてくる影が見えた。
一人の少女が立っていた。
服は血に染まり、髪はボサボサ。左腕は見るからに折れていて、右手でそれを庇っている。
クレハだ。
「ルーイ様、ご無事ですか」
「……かすり傷だな」
大嘘である。
ルーイとて年頃の男子。カッコつけて意地を張る場面くらいは弁えているのだ。
「下手な嘘ですね」
「……うるせぇ……そう言うクレハはどうなんだ」
「擦り剥きました」
全身血染めである。
治癒魔術を施したとはいえ、時間がない中でとりあえず動けばいい程度に留めていたので挫いた足は腫れたままだし、左腕は辛うじて神経が繋がっただけの状態だ。
「強がんなよ……」
「強がってなど……いえ、そうですね」
「おっと」
そう言った途端にクレハが膝から崩れ落ちる。
自ら抱き着きに行くかのような姿勢、クレハは力を入れておらず己の肢体をルーイに委ねている。
抱き締められるように身体を支えられながら、クレハは心からの謝罪を口にする。
「……申し訳ございません。このような危険な目に合わせてしまって」
「お互いこうして生きてるんだし気にすんな。こっちこそ寝てて悪かった」
「いえ、それでも私がもう少ししっかりしていれば、このような事態は避けられました。本当に「あー、分かった。そしたら、お互い一言だけ思ったことを言って終わりにしよう」
ルーイはそう言ってクレハの両肩に手を置く。
そして、翡翠の双玉に真っ直ぐ目を向ける。
思わぬ距離で見詰められ、血で汚れたクレハの白い頬が朱に染まる。
「クレハ」
「は、はい」
「……」
「な、なんでしょう……」
少年の真剣な面差し。
「ル、ルーイ……様……?」
少年は目を逸らさない。
真剣に見詰められることで、クレハも自分から視線を逸らすということが出来ないでいた。
胸が高鳴っている理由が分からず、クレハが困惑していると唐突にルーイはふいっ、と顔を逸らしてぼそっと言った。
「……前隠してくれ」
「……へっ?」
クレハは己が旅装を見下ろす。
羽織っていた外套《がいとう》はボロボロで、もはや只の布切れと化している。
動きやすいショートパンツはほつれ、ニーハイ丈のブーツにも所々に穴が空いている。
そして何より、上半身は着衣どころか下着すらも引き裂かれ、引き千切られている。
うなじ、鎖骨、そして何より女性の象徴と言える丸い膨らみは、半ばまで丸見えで肌色面積が非常に多かった。
「………………」
「だ、大丈夫だ! 見てない、見えてない、興味もない」
――業ッ!!!
燃え滓程度だったはずのクレハの魔素が、爆発的に燃え上がった。
「うわっち!」
ルーイが声を上げる。
思わずその場から飛び退こうとするが、しなだれかかるクレハがそれを許さない。
「ルーイ様」
「は、はい!」
「お互い思ったことを一言言って終わり。そう言いましたね?」
「い、いえす、マム痛い痛い痛い痛い!」
クレハは右手をルーイの肩に優しく置いた。
――嘘だ。握り潰さんばかりの力で握っていた。
「そうですか。それなら私も一言で終わらせますね」
クレハは魔術方陣を展開する。
ドロドロと、まるでマグマが垂れ落ちるように臨界突破《オーバーフロー》した魔素《マナ》が魔術方陣から零れ落ちる。
「あ、あのクレハさん――いえ、クレハ様」
「少し待ってください。一言で終わらせるにはまだ足りませんので」
「い、いえ、あの、その、それって」
どんどん魔素《マナ》が溢れ落ち、まるで胎動するかのように魔術方陣が震える。
それに合わせてルーイの身体も恐怖に震える。
「よし」
「な、なにがよ、よししなんでせうか」
とても良い笑顔である。
会ってから一番の、愛らしい笑顔。
だが、ルーイには死神が笑っているようにしか見えない。
そして、終わりの言葉が告げられ、
「〝死ね〟!」
「あぎゃあああああああああああああ!!!」
ルーイが爆発した。
(なんだったんだ……)
槍から血糊を払い、その場に突き刺す。
途端、緊張を切らせた身体が悲鳴を上げる。堪らずルーイは膝をつき、ゆっくりと大の字になって寝そべった。
「いっつつ……ってぇ……」
身体の傷はなんてことはない軽傷だったが、魔素欠乏症らしき兆候に加えて、全身を苛む倦怠感が凄まじい。
上体を起こし、膝に両手をつき深呼吸していると、コツコツと靴音を鳴らせて近付いてくる影が見えた。
一人の少女が立っていた。
服は血に染まり、髪はボサボサ。左腕は見るからに折れていて、右手でそれを庇っている。
クレハだ。
「ルーイ様、ご無事ですか」
「……かすり傷だな」
大嘘である。
ルーイとて年頃の男子。カッコつけて意地を張る場面くらいは弁えているのだ。
「下手な嘘ですね」
「……うるせぇ……そう言うクレハはどうなんだ」
「擦り剥きました」
全身血染めである。
治癒魔術を施したとはいえ、時間がない中でとりあえず動けばいい程度に留めていたので挫いた足は腫れたままだし、左腕は辛うじて神経が繋がっただけの状態だ。
「強がんなよ……」
「強がってなど……いえ、そうですね」
「おっと」
そう言った途端にクレハが膝から崩れ落ちる。
自ら抱き着きに行くかのような姿勢、クレハは力を入れておらず己の肢体をルーイに委ねている。
抱き締められるように身体を支えられながら、クレハは心からの謝罪を口にする。
「……申し訳ございません。このような危険な目に合わせてしまって」
「お互いこうして生きてるんだし気にすんな。こっちこそ寝てて悪かった」
「いえ、それでも私がもう少ししっかりしていれば、このような事態は避けられました。本当に「あー、分かった。そしたら、お互い一言だけ思ったことを言って終わりにしよう」
ルーイはそう言ってクレハの両肩に手を置く。
そして、翡翠の双玉に真っ直ぐ目を向ける。
思わぬ距離で見詰められ、血で汚れたクレハの白い頬が朱に染まる。
「クレハ」
「は、はい」
「……」
「な、なんでしょう……」
少年の真剣な面差し。
「ル、ルーイ……様……?」
少年は目を逸らさない。
真剣に見詰められることで、クレハも自分から視線を逸らすということが出来ないでいた。
胸が高鳴っている理由が分からず、クレハが困惑していると唐突にルーイはふいっ、と顔を逸らしてぼそっと言った。
「……前隠してくれ」
「……へっ?」
クレハは己が旅装を見下ろす。
羽織っていた外套《がいとう》はボロボロで、もはや只の布切れと化している。
動きやすいショートパンツはほつれ、ニーハイ丈のブーツにも所々に穴が空いている。
そして何より、上半身は着衣どころか下着すらも引き裂かれ、引き千切られている。
うなじ、鎖骨、そして何より女性の象徴と言える丸い膨らみは、半ばまで丸見えで肌色面積が非常に多かった。
「………………」
「だ、大丈夫だ! 見てない、見えてない、興味もない」
――業ッ!!!
燃え滓程度だったはずのクレハの魔素が、爆発的に燃え上がった。
「うわっち!」
ルーイが声を上げる。
思わずその場から飛び退こうとするが、しなだれかかるクレハがそれを許さない。
「ルーイ様」
「は、はい!」
「お互い思ったことを一言言って終わり。そう言いましたね?」
「い、いえす、マム痛い痛い痛い痛い!」
クレハは右手をルーイの肩に優しく置いた。
――嘘だ。握り潰さんばかりの力で握っていた。
「そうですか。それなら私も一言で終わらせますね」
クレハは魔術方陣を展開する。
ドロドロと、まるでマグマが垂れ落ちるように臨界突破《オーバーフロー》した魔素《マナ》が魔術方陣から零れ落ちる。
「あ、あのクレハさん――いえ、クレハ様」
「少し待ってください。一言で終わらせるにはまだ足りませんので」
「い、いえ、あの、その、それって」
どんどん魔素《マナ》が溢れ落ち、まるで胎動するかのように魔術方陣が震える。
それに合わせてルーイの身体も恐怖に震える。
「よし」
「な、なにがよ、よししなんでせうか」
とても良い笑顔である。
会ってから一番の、愛らしい笑顔。
だが、ルーイには死神が笑っているようにしか見えない。
そして、終わりの言葉が告げられ、
「〝死ね〟!」
「あぎゃあああああああああああああ!!!」
ルーイが爆発した。
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