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捜索
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草木も寝静まる深夜、シグルト達がクズと酒場にいる頃……
スラム街の長屋には、新たな人影が現れていた。
「………」
長いブロンド色の髪、そして端正な顔立ち。纏っているのは、白を基調とした軍服、上からサーコートのようなものを着ていることから、前線に立つというよりは、指揮を取る側の衣服。無論本人が弱い訳ではないのだろう。
その女性のそばには、完全武装した4人が周辺を捜索していた。
動き方からして、そこらの賞金稼ぎとは比べ物にならない程の手練だろう。
「……隊長…これを…」
「……む…賞金稼ぎの死体…か…」
「さして珍しいものでもないですが……」
部下の言葉をよそに、『隊長』と呼ばれた女性は、死体のそばに屈むと検死するように死体に触れる。
(……賞金稼ぎ…民営の為死んでいたとしてもさして大事にはならない……普通に考えれば、賞金首に返り打ちにあって死亡したとするべきだろうが……)
女性は、賞金稼ぎ達の首や額に触れる。
(これは……弾丸での狙撃……いや…)
グチュッと死体の額に指を突っ込み、何かを引っ張り出す。
「た、隊長ッ!指が……」
「構うな」
部下の心配を一蹴すると、女性は血まみれの指で掴んだ物体を凝視する。
(弾丸だが……弾頭が潰れている?これは弾き返したのか…?こんな正確に…?)
………似ている…ルシル様が襲撃を受けた際にあった護衛の死体…報告にあったものに酷似している。
(……首元の鮮やかな切り口…曲剣……だろうか)
女性は立ち上がると、部下に指示を飛ばす。
「皆、指令だ。恐らく、彼らはルシル様を襲撃した犯人と対峙した。心して捜索しろ。付近にいるはずだ」
ブロンドの髪を靡かせて、堂々たる姿勢で言い放つ。
「襲撃犯は、この第3隊長『シルヴィア』が討ち取る」
『シルヴィア』と名乗った女性は、そう宣言すると、部下と共にスラム街へと歩みを進めていった。
街に入るや否や、建物に寄りかかった男が女性に話しかける。シルヴィアの側に控えている隊員とは、格好が違う。
右腕には黒鉄で鍛えられた肩から指先にかけてのガントレットを装備。そして、同じ素材で造られたであろう補助装甲を膝や肘などの関節に装備している。そして、1本の両手剣を背負っていた。
「あ、シルヴィア隊長」
「どうだった、『エスフリート』」
『エスフリート』と呼ばれた男は、無気力に言葉を紡ぐ。
「隊長の読み通り、街中には逃げ込んだみたいですが。その後の足取りが中々掴めませんねー」
エスフリートはやる気の無い顔で答える。
「……追ったのか?ちゃんと」
「えぇー、まぁー。ですが、痕跡もあんまり無いですしー、俺じゃあ所詮返り討ちにあって終わりでしょうし。ここはシルヴィア隊長と合流するのが先だと考えましてね」
「………はぁ…」
シルヴィアと呼ばれた女性は、ブロンドの髪を揺らしながら俯く。
「……あのな、エスフリート。私は『君ならば問題無い』と判断して先行させたんだ。それを君って奴は……」
頭を押さえながら首を振るシルヴィアとは対照的に、エスフリートは首裏に手を当てて軽く謝るだけだった。
「……君は、その…熱意はないのか?向上心というか」
「んー、どうでしょうねー。俺がここに入る時に全て費やしちゃったんですかね」
「……まぁ過ぎた事を責めていても仕方がない。行くぞ諸君、どうやらこのスラムのどこかに隠れているようだからな」
シルヴィアはそう言い放つと、街中へと歩みを進める。
(……エスフリートの無気力さには手を焼く……向上心でもあれば隊長の座も夢ではないだろうに…)
探索しつつ、シルヴィアは思考を回す。
(……隊長はすごいよなー、正規軍史上初の女性隊長だもんなー。比べて俺は…まぁ、特に長所の無い冴えない男だしー?)
シルヴィアとエスフリートはお互いの事を考えつつ、死角を潰すように入念に探索をしていた。
すると、ボロボロの建物の中から酔っぱらった賞金稼ぎが這い出てくる。
「おーうおう…いい身なりしちゃってヨォ~オ?俺たち賞金稼ぎは~…その日暮らしが関の山ってのに」
その様子を見た正規軍隊員は銃を構えるが、シルヴィアがそれを片手で制止する。
「世の中不平等だよな~ホントよー…あん?女じゃねぇか!」
「………」
「おいおい、不平等な俺の相手をしてくれよーなぁッ!?正規軍様よぉッ!」
酔ってる勢いか、こちらに猛進してくる賞金稼ぎ。それを傍目にエスフリートはぼんやりと考える
(正規軍って事は分かってるのに喧嘩は売るのかー)
そんな呑気な事を考えていると、シルヴィアが目線もくれずに呟いた。
「エスフリート、止めろ」
「え、あー…」
そう言うと、エスフリートは咄嗟に背負った両手剣を引き抜き、目の前の攻撃を受け止める。
「はいー」
「何ッ!?」
エスフリートは賞金稼ぎの攻撃を弾き、体勢を崩した所を一閃。賞金稼ぎの武器は、エスフリートの両手剣によって粉砕される。
「け、剣…がぁッ!?俺の剣がぁッッ!?」
エスフリートは動揺する賞金稼ぎを眺めつつ、両手剣を収める。
「それでー、どうしますー?一応正規軍の公務妨害は犯罪ですがー…」
「ただの酔っ払いだし、見逃そう…ただし…」
シルヴィアはギロリと賞金稼ぎを睨む。
「次は無い。『不平等だ何だ』と言い訳して努力を怠る人間にかける慈悲を、私は持ってない」
賞金稼ぎは逃げるようにその場を去っていった。
……化け物を見たような顔をしながら。
(うわー、怖ー…)
エスフリートは、首裏に右手を当ててぼんやり思考していると、シルヴィアが話しかける。
「ぼーっとしている暇はないぞエスフリート。ルシル様を襲撃した犯人がこのスラムに潜伏しているのは間違いない」
「あぁ、はい」
バサリとサーコートを翻すと、シルヴィアは正規軍隊員を引き連れ再びスラムへと歩みを進める。
シルヴィア率いる正規軍の部隊が、遂にスラム街へと足を踏み入れた。
to be continued…
スラム街の長屋には、新たな人影が現れていた。
「………」
長いブロンド色の髪、そして端正な顔立ち。纏っているのは、白を基調とした軍服、上からサーコートのようなものを着ていることから、前線に立つというよりは、指揮を取る側の衣服。無論本人が弱い訳ではないのだろう。
その女性のそばには、完全武装した4人が周辺を捜索していた。
動き方からして、そこらの賞金稼ぎとは比べ物にならない程の手練だろう。
「……隊長…これを…」
「……む…賞金稼ぎの死体…か…」
「さして珍しいものでもないですが……」
部下の言葉をよそに、『隊長』と呼ばれた女性は、死体のそばに屈むと検死するように死体に触れる。
(……賞金稼ぎ…民営の為死んでいたとしてもさして大事にはならない……普通に考えれば、賞金首に返り打ちにあって死亡したとするべきだろうが……)
女性は、賞金稼ぎ達の首や額に触れる。
(これは……弾丸での狙撃……いや…)
グチュッと死体の額に指を突っ込み、何かを引っ張り出す。
「た、隊長ッ!指が……」
「構うな」
部下の心配を一蹴すると、女性は血まみれの指で掴んだ物体を凝視する。
(弾丸だが……弾頭が潰れている?これは弾き返したのか…?こんな正確に…?)
………似ている…ルシル様が襲撃を受けた際にあった護衛の死体…報告にあったものに酷似している。
(……首元の鮮やかな切り口…曲剣……だろうか)
女性は立ち上がると、部下に指示を飛ばす。
「皆、指令だ。恐らく、彼らはルシル様を襲撃した犯人と対峙した。心して捜索しろ。付近にいるはずだ」
ブロンドの髪を靡かせて、堂々たる姿勢で言い放つ。
「襲撃犯は、この第3隊長『シルヴィア』が討ち取る」
『シルヴィア』と名乗った女性は、そう宣言すると、部下と共にスラム街へと歩みを進めていった。
街に入るや否や、建物に寄りかかった男が女性に話しかける。シルヴィアの側に控えている隊員とは、格好が違う。
右腕には黒鉄で鍛えられた肩から指先にかけてのガントレットを装備。そして、同じ素材で造られたであろう補助装甲を膝や肘などの関節に装備している。そして、1本の両手剣を背負っていた。
「あ、シルヴィア隊長」
「どうだった、『エスフリート』」
『エスフリート』と呼ばれた男は、無気力に言葉を紡ぐ。
「隊長の読み通り、街中には逃げ込んだみたいですが。その後の足取りが中々掴めませんねー」
エスフリートはやる気の無い顔で答える。
「……追ったのか?ちゃんと」
「えぇー、まぁー。ですが、痕跡もあんまり無いですしー、俺じゃあ所詮返り討ちにあって終わりでしょうし。ここはシルヴィア隊長と合流するのが先だと考えましてね」
「………はぁ…」
シルヴィアと呼ばれた女性は、ブロンドの髪を揺らしながら俯く。
「……あのな、エスフリート。私は『君ならば問題無い』と判断して先行させたんだ。それを君って奴は……」
頭を押さえながら首を振るシルヴィアとは対照的に、エスフリートは首裏に手を当てて軽く謝るだけだった。
「……君は、その…熱意はないのか?向上心というか」
「んー、どうでしょうねー。俺がここに入る時に全て費やしちゃったんですかね」
「……まぁ過ぎた事を責めていても仕方がない。行くぞ諸君、どうやらこのスラムのどこかに隠れているようだからな」
シルヴィアはそう言い放つと、街中へと歩みを進める。
(……エスフリートの無気力さには手を焼く……向上心でもあれば隊長の座も夢ではないだろうに…)
探索しつつ、シルヴィアは思考を回す。
(……隊長はすごいよなー、正規軍史上初の女性隊長だもんなー。比べて俺は…まぁ、特に長所の無い冴えない男だしー?)
シルヴィアとエスフリートはお互いの事を考えつつ、死角を潰すように入念に探索をしていた。
すると、ボロボロの建物の中から酔っぱらった賞金稼ぎが這い出てくる。
「おーうおう…いい身なりしちゃってヨォ~オ?俺たち賞金稼ぎは~…その日暮らしが関の山ってのに」
その様子を見た正規軍隊員は銃を構えるが、シルヴィアがそれを片手で制止する。
「世の中不平等だよな~ホントよー…あん?女じゃねぇか!」
「………」
「おいおい、不平等な俺の相手をしてくれよーなぁッ!?正規軍様よぉッ!」
酔ってる勢いか、こちらに猛進してくる賞金稼ぎ。それを傍目にエスフリートはぼんやりと考える
(正規軍って事は分かってるのに喧嘩は売るのかー)
そんな呑気な事を考えていると、シルヴィアが目線もくれずに呟いた。
「エスフリート、止めろ」
「え、あー…」
そう言うと、エスフリートは咄嗟に背負った両手剣を引き抜き、目の前の攻撃を受け止める。
「はいー」
「何ッ!?」
エスフリートは賞金稼ぎの攻撃を弾き、体勢を崩した所を一閃。賞金稼ぎの武器は、エスフリートの両手剣によって粉砕される。
「け、剣…がぁッ!?俺の剣がぁッッ!?」
エスフリートは動揺する賞金稼ぎを眺めつつ、両手剣を収める。
「それでー、どうしますー?一応正規軍の公務妨害は犯罪ですがー…」
「ただの酔っ払いだし、見逃そう…ただし…」
シルヴィアはギロリと賞金稼ぎを睨む。
「次は無い。『不平等だ何だ』と言い訳して努力を怠る人間にかける慈悲を、私は持ってない」
賞金稼ぎは逃げるようにその場を去っていった。
……化け物を見たような顔をしながら。
(うわー、怖ー…)
エスフリートは、首裏に右手を当ててぼんやり思考していると、シルヴィアが話しかける。
「ぼーっとしている暇はないぞエスフリート。ルシル様を襲撃した犯人がこのスラムに潜伏しているのは間違いない」
「あぁ、はい」
バサリとサーコートを翻すと、シルヴィアは正規軍隊員を引き連れ再びスラムへと歩みを進める。
シルヴィア率いる正規軍の部隊が、遂にスラム街へと足を踏み入れた。
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