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威圧
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「僕は力不足でしょうか?」
ダンテはわざとらしく悲しそうな笑みを浮かべながらシグルトに話しかける。
(……普段の俺と相打ちになる程度には強い……だが、本当にこの男の目的は何なんだ……?)
シグルトは闘技場から移動すると、傍にある上等な椅子に座る。ダンテはその様子を見ると、微笑みながら近寄って壁に寄りかかる。
「僕は『アトラ正規軍』を敵に回さないといけない、貴方たちは『英雄ルシル』を殺したい。ましてや、僕は貴方たちのファンときてる。これ以上ない良い条件じゃありませんか?」
ダンテの言葉にシグルトが呆れたような声で答える。
「腹の底を見せないお前に、背中を刺されるとも限らん」
「やだなぁ、そんな事しませんって。何ならそこのお嬢さんに…」
「アラクネ。で、アンタより年上。舐めんなボンクラ」
「おっと、それは失礼。それで、アラクネさんが僕の背後に付けば安心でしょう?」
『お嬢さん』と言われた事が余程嫌だったのか、珍しく不機嫌になるアラクネ。そんな事は梅雨知らずと、にこやかに提案をするダンテ。
「………」
シグルトは沈黙しながら思考を回す。
(……提案を蹴った所で、コイツは勝手に付いてくるだろう…それにまた賞金稼ぎ共をけしかけられたら面倒この上無い……)
「………はぁ~~」
深い溜息をつくと、シグルトはダンテに言葉を投げる。
「一つだけ聞かせろ。先程俺に使ったあの技……あれは誰に習った」
「あの技」とは、裏拳で受け流しをした後に刺突に繋げるあの技だろう。
「あんな高度な技量を要求される剣技を使えるやつは……数人しか知らん。答えろ」
シグルトはダンテを尋問するかのような圧で問い詰める。
「……独学ですよ。いわば我流ですね」
未だ怪しい微笑みを浮かべるダンテは、何でも無いように答えた。
「……分かった。足手纏いだと判断したら置いていくぞ」
シグルトは不承不承といった感じで答えた。
「ようやく認めてくださいましたか。いやぁ、これで僕らも仲間ですね。宜しくお願いしますね?」
ダンテはアラクネに近寄って握手を求めるが、アラクネは手を叩いて嘲笑気味に答える。
「私はまだアンタを信用した訳じゃ無い。弁えろよ?ボンクラ」
「ダンテ、ですよ?アラクネお嬢さん」
アラクネは笑いつつも顔が引き攣り、ダンテは負けじと怪しい微笑みを浮かべていた。
「……初手から険悪になるな、お前ら…」
VIPルームと呼んでいた部屋を後にし、上の階の酒場に戻る。
「さてと、鍵は返してきました。あぁ、お金に関してはご心配無く。こう見えてある程度持っているので」
「……汚い金じゃあ無いだろうな?」
「いやだなぁシグルトさん。賞金稼ぎ達が勝手に同士討ちを始めて、共倒れした所から拝借してきただけですよ」
「まぁ、唆したのは僕ですが」と続けつつ。ダンテはテーブルに着く。
「それで、これからどうするのです?まさか正面からやり合う訳じゃあ無いでしょう?」
「無論だ…だが、先日の奇襲は失敗に終わった。『アトラ正規軍』も動員されているらしいからな」
「どうするのか、困ったよねー」
これからの行動を話していると、酒場の扉が勢いよく開かれる。
「いたッ!コイツらだ!コイツらが賞金首だかなんだかだ!」
どうやら、外を嗅ぎ回っていた連中は懲りずにまだ探して回っていたらしい。
「……チッ」
「あ~…そう言えば……唆した人らの誤解解いてませんでしたね」
「お前、責任とって一人で収集つけろ」
アラクネはワイヤーの標準を密かに向けつつ、ダンテに動くように促す。
一触即発の空気を察してか、他の客は場から離れたり、隅に逃げたりしていた。
「ゲヘヘ…コイツらぁ殺せばしばらくは金にこまんね……」
そこまで言った賞金首の一人は、突然青ざめた顔になり、冷や汗を垂らす。
彼は、右手がなくなっていたのだ。一瞬のうちに。だがそれは幻覚で、現実ではしっかりと腕はくっついている。
「はっ…はっ……腕…俺の手……あ、ある……?」
「おい、どうした!」
「しっかりしろ!」
「あ~、すまねぇなぁ~。ちょ~~っとばかしやり過ぎちまったぁ~い」
間延びした声の主は、店の一番端の席で酒をあおっていた。腰には長さの違うサーベルが二本刺さっており、着ている服はまるでバスローブのようなゆったりした格好。空を飛んでいるデッカイ蛇の意匠はドラゴンの一種だろうか?それも片方だけ袖を通して、もう片方は半裸になっているとかいう独特な着方をしている。
男は、手にした細いパイプのような物から煙を出していた。
「ここは~ヨォ~…酒場なんだぁ~よ。目の前でぇ殺し合いなんかぁされちゃあ~、不味くなっちまうわな~」
ふらふらとした足取りで、口から煙を拭きながら青ざめた男に近寄り、無理やり肩を組む。
「ンな訳で、俺はよぉ~。タノシィ~ク酒を飲みテェのよ。納めてくれねぇかい?」
「な、何を勝手な…」
「……アン?」
「……ッッ!?」
間延びした声の男に睨まれ、賞金稼ぎは声を飲み込んだ。察した賞金稼ぎたちは、各々獲物を収める。
「にぃ~、話が早くて助かるねぇ~。チョ~っと遅かったら……アンタら、死んでたぜ?」
冗談めかして笑う男のおかげで、どうやら事は荒立たずに済みそうだった。
「……何者か知らんが、助かった」
シグルトが事の後に男に話しかけると、男はボ~ッとした顔で煙を吐きながら答える。
「いいって事よぉ~。俺は不味い酒は飲みたくねぇ~だけなのよ」
「……アンタ、名前は」
「アン?あ~…『クズ』」
「……は?」
「『クズ』って名乗ってんだよ。名前なんだからしょ~がねぇでしょうよ」
『クズ』と名乗った男は、思い出したように続ける。
「そういやアンタら、『助かった』って言ってたな?じゃ俺が助けたことになるな?」
クズがそういうと、シグルトは微笑を浮かべて答える
「そうか、一杯奢ろう」
「話が早くて助かるねぇ~。ちょっと遅かったら、アンタ、死んでたぜ?」
変わった風貌の男、『クズ』のお陰で、どうやら大事は避けられたらしい。
ダンテはわざとらしく悲しそうな笑みを浮かべながらシグルトに話しかける。
(……普段の俺と相打ちになる程度には強い……だが、本当にこの男の目的は何なんだ……?)
シグルトは闘技場から移動すると、傍にある上等な椅子に座る。ダンテはその様子を見ると、微笑みながら近寄って壁に寄りかかる。
「僕は『アトラ正規軍』を敵に回さないといけない、貴方たちは『英雄ルシル』を殺したい。ましてや、僕は貴方たちのファンときてる。これ以上ない良い条件じゃありませんか?」
ダンテの言葉にシグルトが呆れたような声で答える。
「腹の底を見せないお前に、背中を刺されるとも限らん」
「やだなぁ、そんな事しませんって。何ならそこのお嬢さんに…」
「アラクネ。で、アンタより年上。舐めんなボンクラ」
「おっと、それは失礼。それで、アラクネさんが僕の背後に付けば安心でしょう?」
『お嬢さん』と言われた事が余程嫌だったのか、珍しく不機嫌になるアラクネ。そんな事は梅雨知らずと、にこやかに提案をするダンテ。
「………」
シグルトは沈黙しながら思考を回す。
(……提案を蹴った所で、コイツは勝手に付いてくるだろう…それにまた賞金稼ぎ共をけしかけられたら面倒この上無い……)
「………はぁ~~」
深い溜息をつくと、シグルトはダンテに言葉を投げる。
「一つだけ聞かせろ。先程俺に使ったあの技……あれは誰に習った」
「あの技」とは、裏拳で受け流しをした後に刺突に繋げるあの技だろう。
「あんな高度な技量を要求される剣技を使えるやつは……数人しか知らん。答えろ」
シグルトはダンテを尋問するかのような圧で問い詰める。
「……独学ですよ。いわば我流ですね」
未だ怪しい微笑みを浮かべるダンテは、何でも無いように答えた。
「……分かった。足手纏いだと判断したら置いていくぞ」
シグルトは不承不承といった感じで答えた。
「ようやく認めてくださいましたか。いやぁ、これで僕らも仲間ですね。宜しくお願いしますね?」
ダンテはアラクネに近寄って握手を求めるが、アラクネは手を叩いて嘲笑気味に答える。
「私はまだアンタを信用した訳じゃ無い。弁えろよ?ボンクラ」
「ダンテ、ですよ?アラクネお嬢さん」
アラクネは笑いつつも顔が引き攣り、ダンテは負けじと怪しい微笑みを浮かべていた。
「……初手から険悪になるな、お前ら…」
VIPルームと呼んでいた部屋を後にし、上の階の酒場に戻る。
「さてと、鍵は返してきました。あぁ、お金に関してはご心配無く。こう見えてある程度持っているので」
「……汚い金じゃあ無いだろうな?」
「いやだなぁシグルトさん。賞金稼ぎ達が勝手に同士討ちを始めて、共倒れした所から拝借してきただけですよ」
「まぁ、唆したのは僕ですが」と続けつつ。ダンテはテーブルに着く。
「それで、これからどうするのです?まさか正面からやり合う訳じゃあ無いでしょう?」
「無論だ…だが、先日の奇襲は失敗に終わった。『アトラ正規軍』も動員されているらしいからな」
「どうするのか、困ったよねー」
これからの行動を話していると、酒場の扉が勢いよく開かれる。
「いたッ!コイツらだ!コイツらが賞金首だかなんだかだ!」
どうやら、外を嗅ぎ回っていた連中は懲りずにまだ探して回っていたらしい。
「……チッ」
「あ~…そう言えば……唆した人らの誤解解いてませんでしたね」
「お前、責任とって一人で収集つけろ」
アラクネはワイヤーの標準を密かに向けつつ、ダンテに動くように促す。
一触即発の空気を察してか、他の客は場から離れたり、隅に逃げたりしていた。
「ゲヘヘ…コイツらぁ殺せばしばらくは金にこまんね……」
そこまで言った賞金首の一人は、突然青ざめた顔になり、冷や汗を垂らす。
彼は、右手がなくなっていたのだ。一瞬のうちに。だがそれは幻覚で、現実ではしっかりと腕はくっついている。
「はっ…はっ……腕…俺の手……あ、ある……?」
「おい、どうした!」
「しっかりしろ!」
「あ~、すまねぇなぁ~。ちょ~~っとばかしやり過ぎちまったぁ~い」
間延びした声の主は、店の一番端の席で酒をあおっていた。腰には長さの違うサーベルが二本刺さっており、着ている服はまるでバスローブのようなゆったりした格好。空を飛んでいるデッカイ蛇の意匠はドラゴンの一種だろうか?それも片方だけ袖を通して、もう片方は半裸になっているとかいう独特な着方をしている。
男は、手にした細いパイプのような物から煙を出していた。
「ここは~ヨォ~…酒場なんだぁ~よ。目の前でぇ殺し合いなんかぁされちゃあ~、不味くなっちまうわな~」
ふらふらとした足取りで、口から煙を拭きながら青ざめた男に近寄り、無理やり肩を組む。
「ンな訳で、俺はよぉ~。タノシィ~ク酒を飲みテェのよ。納めてくれねぇかい?」
「な、何を勝手な…」
「……アン?」
「……ッッ!?」
間延びした声の男に睨まれ、賞金稼ぎは声を飲み込んだ。察した賞金稼ぎたちは、各々獲物を収める。
「にぃ~、話が早くて助かるねぇ~。チョ~っと遅かったら……アンタら、死んでたぜ?」
冗談めかして笑う男のおかげで、どうやら事は荒立たずに済みそうだった。
「……何者か知らんが、助かった」
シグルトが事の後に男に話しかけると、男はボ~ッとした顔で煙を吐きながら答える。
「いいって事よぉ~。俺は不味い酒は飲みたくねぇ~だけなのよ」
「……アンタ、名前は」
「アン?あ~…『クズ』」
「……は?」
「『クズ』って名乗ってんだよ。名前なんだからしょ~がねぇでしょうよ」
『クズ』と名乗った男は、思い出したように続ける。
「そういやアンタら、『助かった』って言ってたな?じゃ俺が助けたことになるな?」
クズがそういうと、シグルトは微笑を浮かべて答える
「そうか、一杯奢ろう」
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