10 / 11
寸前
しおりを挟む
「それで、正規軍も動員される中…どうやって仇を打つのです?」
口火を切ったのはダンテだった。
地下酒場でクズが場を収めたのだが、どうにも連中は腹の虫が収まらないらしく、テーブルに着いたあともずっとこちらを伺ってくる。
「……現状、下手に動いても正規軍に見つかるだろう」
「慎重だねシグルト。まぁ私はどっちでも良いけどー」
「……とりあえず状況を整理しよう」
政府関係者を暗殺していたシグルトとアラクネは、ルシルの襲撃を行う。しかし、『首無し』こと『死神デュラハン』によって敗走を余儀無くされ、失敗したことにより『アトラ正規軍』が動員されてしまった。ラジオの話を信じるのであれば、正規軍の隊長クラスも動員されているらしい。
「……色々と状況が不利ですねぇ」
「そもそもさー、ルシルは今どこにいるんだか、わからないんだよね」
「……だが、いつまでも逃げている訳にもいかないだろうさ」
「……?なぜです?」
ダンテの問いに、シグルトはグラスを持ち上げながら答える。
「アイツはこの国の『英雄』で、政府とも関わっている。政府と関わっているせいで、皮肉にも長い間空席には出来ない」
シグルトの言葉に、アラクネが提案するように続ける。
「じゃあ今アイツの屋敷に忍び込んで罠でも仕掛けておく?」
指先でシュルルとワイヤーを遊ばながら提案するアラクネに、シグルトが呆れたように答る。
「あのな…俺たちが殺し損ねたせいで、今は正規軍が配備されている筈だ。『アトラ正規軍』はそこらの警備隊や賞金稼ぎとは全く違う」
先の大戦で戦線を共にしたからだろう。シグルトは正規軍の強さを痛い程理解しているようだった。
「ごめんじゃん」
「しかし、話が堂々巡りですね。どうしましょうか」
「僕でも正規軍相手はきついですよ」と続けつつ、ダンテはテーブルのウォッカを飲み干す。
「……一つ提案があるんだが」
シグルトが唱えると、痺れを切らしたのか先程の賞金稼ぎ達がテーブルまでやってきた。チラリとクズを見たが、どうやら酔って寝ているようだ。
……なるほど、タイミングを伺ってたな。
「まさかとは思いますが……彼我の力量を計れないほど、弱い訳じゃあないでしょう?」
ダンテが肩肘をテーブルにつき、値踏みするように視線を動かす。ニヤつく口元に、酒で火照った顔、なるほど色男なだけに絵になる。
「ウルセェ!!テメェら三人で何ができる!こっちは五人いるんだぞッッ!!」
「………ハァ~」
後ろで様子を見ていたアラクネは、ため息を吐いた後に五人の前に立つ。
「ねぇ~、貴方達ぃ~?私達ぃお金なくて困ってるの……」
アラクネが前屈みになって胸を強調しつつ、蜜より甘い声で目の前の雄を惑わす毒を吐く。
「ねぇ~?抜いてあげるからぁ~……さっきの事、ゆ・る・し・て?」
アラクネは親指と人差し指で円を作ると、その中に舌を入れて上下に動かす。
「お、おおぅ…」
賞金稼ぎ達はしどろもどろになる。
「でもぉ~…ここじゃあ恥ずかしいからぁ~…地下の部屋いかない?」
鼻息荒く、賞金稼ぎ達はダンテが使った先程の部屋の鍵を受け取ると、そそくさとアラクネを連れて地下へと潜っていった。
「………ハァ~~」
シグルトは片手で顔を押さえながら深いため息をついた。
「あの、良いのですか?行かせてしまって…」
「あぁ…別にアイツが死ぬことは…」
「いえ、そうでは無くて」
ダンテは肘をついた腕を頬に添えつつ続ける。
「あの人たちが危ないのでは?流石に罠でしょう」
「あぁ…」
シグルトは呆れた様子で答える。
「そこら辺は上手くやるだろ」
「……随分ご信頼されているのですね」
「……長い付き合いだからな……」
一方、地下に行ったアラクネだが……
アラクネを中心に、五人の男が自分の腕で自分の首を締めていた。
「ぐ……ゴホッ!……」
「ふ~ん、結構粘るねー」
(な、何が……)
部屋に入るなり、この女は自分の口に指を入れて…唾液を糸状に伸ばした。
次の瞬間にはこうなってた。
「な……にが……」
言いかけた男は、ガクリと首が傾く。酸欠で意識が飛んだのだろう。
「ん~、まぁ教えてあげてもいいけどー?」
アラクネは舌で艶かしく指を舐めると、口と指先に唾液のアーチができる。
「まぁ、後10分耐えたら教えてあげてもいいよぉ~?」
『超人部隊』アラクネ
蜘蛛の異形の名を冠する彼女の能力は、『グリム計画』による身体能力の強化に加え、「体液の硬度を変えることが出来る」能力を手にしている。
つまり彼女は、物理的なワイヤーを使用できる他……
自分で生成する事も可能
ちなみに、彼女が賞金稼ぎ達にしていることは至極単純。
体液で生成した極細のワイヤーを筋繊維に通し、外から人形のように操っているだけ。
(ま、弱い相手にしか通用しないし。殆ど密着した状態じゃないと使えないのが難点だけどねー)
アラクネは妖艶な表情の裏で思考を回しつつ。コイツらをどうしようか悩んでいた。
「……地下か?」
「まぁ見落としてた訳じゃあ無いですがー、居るとしたら賞金稼ぎに扮してやり過ごすのが妥当でしょうねー」
「なるほど、地下の酒場ならば目にも付きにくい…か……エスフリート」
「わかってますよー、戦闘準備でしょう?」
エスフリートは言われた通り、関節の補助装甲や両手剣の様子を確かめる。
「さて、行こうか諸君。国賊討伐だ」
白き正義が、目前に迫っていた。
口火を切ったのはダンテだった。
地下酒場でクズが場を収めたのだが、どうにも連中は腹の虫が収まらないらしく、テーブルに着いたあともずっとこちらを伺ってくる。
「……現状、下手に動いても正規軍に見つかるだろう」
「慎重だねシグルト。まぁ私はどっちでも良いけどー」
「……とりあえず状況を整理しよう」
政府関係者を暗殺していたシグルトとアラクネは、ルシルの襲撃を行う。しかし、『首無し』こと『死神デュラハン』によって敗走を余儀無くされ、失敗したことにより『アトラ正規軍』が動員されてしまった。ラジオの話を信じるのであれば、正規軍の隊長クラスも動員されているらしい。
「……色々と状況が不利ですねぇ」
「そもそもさー、ルシルは今どこにいるんだか、わからないんだよね」
「……だが、いつまでも逃げている訳にもいかないだろうさ」
「……?なぜです?」
ダンテの問いに、シグルトはグラスを持ち上げながら答える。
「アイツはこの国の『英雄』で、政府とも関わっている。政府と関わっているせいで、皮肉にも長い間空席には出来ない」
シグルトの言葉に、アラクネが提案するように続ける。
「じゃあ今アイツの屋敷に忍び込んで罠でも仕掛けておく?」
指先でシュルルとワイヤーを遊ばながら提案するアラクネに、シグルトが呆れたように答る。
「あのな…俺たちが殺し損ねたせいで、今は正規軍が配備されている筈だ。『アトラ正規軍』はそこらの警備隊や賞金稼ぎとは全く違う」
先の大戦で戦線を共にしたからだろう。シグルトは正規軍の強さを痛い程理解しているようだった。
「ごめんじゃん」
「しかし、話が堂々巡りですね。どうしましょうか」
「僕でも正規軍相手はきついですよ」と続けつつ、ダンテはテーブルのウォッカを飲み干す。
「……一つ提案があるんだが」
シグルトが唱えると、痺れを切らしたのか先程の賞金稼ぎ達がテーブルまでやってきた。チラリとクズを見たが、どうやら酔って寝ているようだ。
……なるほど、タイミングを伺ってたな。
「まさかとは思いますが……彼我の力量を計れないほど、弱い訳じゃあないでしょう?」
ダンテが肩肘をテーブルにつき、値踏みするように視線を動かす。ニヤつく口元に、酒で火照った顔、なるほど色男なだけに絵になる。
「ウルセェ!!テメェら三人で何ができる!こっちは五人いるんだぞッッ!!」
「………ハァ~」
後ろで様子を見ていたアラクネは、ため息を吐いた後に五人の前に立つ。
「ねぇ~、貴方達ぃ~?私達ぃお金なくて困ってるの……」
アラクネが前屈みになって胸を強調しつつ、蜜より甘い声で目の前の雄を惑わす毒を吐く。
「ねぇ~?抜いてあげるからぁ~……さっきの事、ゆ・る・し・て?」
アラクネは親指と人差し指で円を作ると、その中に舌を入れて上下に動かす。
「お、おおぅ…」
賞金稼ぎ達はしどろもどろになる。
「でもぉ~…ここじゃあ恥ずかしいからぁ~…地下の部屋いかない?」
鼻息荒く、賞金稼ぎ達はダンテが使った先程の部屋の鍵を受け取ると、そそくさとアラクネを連れて地下へと潜っていった。
「………ハァ~~」
シグルトは片手で顔を押さえながら深いため息をついた。
「あの、良いのですか?行かせてしまって…」
「あぁ…別にアイツが死ぬことは…」
「いえ、そうでは無くて」
ダンテは肘をついた腕を頬に添えつつ続ける。
「あの人たちが危ないのでは?流石に罠でしょう」
「あぁ…」
シグルトは呆れた様子で答える。
「そこら辺は上手くやるだろ」
「……随分ご信頼されているのですね」
「……長い付き合いだからな……」
一方、地下に行ったアラクネだが……
アラクネを中心に、五人の男が自分の腕で自分の首を締めていた。
「ぐ……ゴホッ!……」
「ふ~ん、結構粘るねー」
(な、何が……)
部屋に入るなり、この女は自分の口に指を入れて…唾液を糸状に伸ばした。
次の瞬間にはこうなってた。
「な……にが……」
言いかけた男は、ガクリと首が傾く。酸欠で意識が飛んだのだろう。
「ん~、まぁ教えてあげてもいいけどー?」
アラクネは舌で艶かしく指を舐めると、口と指先に唾液のアーチができる。
「まぁ、後10分耐えたら教えてあげてもいいよぉ~?」
『超人部隊』アラクネ
蜘蛛の異形の名を冠する彼女の能力は、『グリム計画』による身体能力の強化に加え、「体液の硬度を変えることが出来る」能力を手にしている。
つまり彼女は、物理的なワイヤーを使用できる他……
自分で生成する事も可能
ちなみに、彼女が賞金稼ぎ達にしていることは至極単純。
体液で生成した極細のワイヤーを筋繊維に通し、外から人形のように操っているだけ。
(ま、弱い相手にしか通用しないし。殆ど密着した状態じゃないと使えないのが難点だけどねー)
アラクネは妖艶な表情の裏で思考を回しつつ。コイツらをどうしようか悩んでいた。
「……地下か?」
「まぁ見落としてた訳じゃあ無いですがー、居るとしたら賞金稼ぎに扮してやり過ごすのが妥当でしょうねー」
「なるほど、地下の酒場ならば目にも付きにくい…か……エスフリート」
「わかってますよー、戦闘準備でしょう?」
エスフリートは言われた通り、関節の補助装甲や両手剣の様子を確かめる。
「さて、行こうか諸君。国賊討伐だ」
白き正義が、目前に迫っていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる