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文明崩壊
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始めは何処からか、それはもう今となっては誰も知らない。研究施設から生まれたのか、自然と発生したものなのか、元から存在したものなのか……
始め、『ソレ』が確認された時は新種のウィルスが発見されたと、大騒ぎになった。しかし、『ソレ』に感染しても大した病状が出ないことから軽視する人が多かったのが事実だった。
……そうやって甘く見ていたから、人類は追い詰められ始めたんだ。
『ソレ』の対策がされて数年、再び『ソレ』は世界に広まり始めた。人類が対策したものに対して『ソレ』は適応し、時間をかけて進化していたのだ。
しかし、それでも所詮大した事ないウィルスだと研究員達は言った。その言葉通り、進化した『ソレ』への対策はすぐにでき、再び『ソレ』はその勢いを弱めた。
……しかし、さらに数年後、再び『ソレ』は進化し、世界に広がった。そしてある科学者が言った。「このウィルスは進化する度、強力になっている」と。
『ソレ』と人類のイタチごっこは数十年に及んだが、遂に『ソレ』は人類の科学力で対応できる範囲を超え、更には強力な殺人ウイルスとして進化し、世界中の生命を蹂躙した。
ある人が言った、「まるで侵略者だ」と。
その言葉にならい、『ソレ』は『Virus that invades humanity』(人類を侵略するウィルス)と名ずけられ、略して『VTIH』と呼ばれた。
『VTIH』は地球上からあらゆる生命を消し去り、文明を崩壊させた。こうして人類は滅びたのである……
………俺以外は。
俺は何故かこの『終わった後の世界』に一人生き残っている。理由は俺の体の中に『VTIH』に対する『抗体』が存在したからだとか。それが理由で研究施設とか何だとかを行き来させられたりしたが、結局無意味だった。なんでも、『VTIH』に対する『抗体』は、その人物の体内でしか存在する事が出来ず、培養、増殖などは不可能だったらしい。
俺以外にも、世界で十数人の『抗体保持者』がいるそうだが、裏を返せば今の世界ではもう十数人しか生き残っていないと言う訳だ。
俺はある研究施設の中に保護(もはや監禁に近かったが)されており、外に出る事が出来なかった。暇を潰せるものといえば防弾ガラスの外にいる担当の研究員との雑談ぐらいだった。しかし、仲良くなったとしても死んでしまったりしてコロコロと担当は変わった。そしてその施設最後の研究員が担当になった時、そいつは俺の部屋のロックを解除してくれた。
「悪いな、長い事閉じ込めちまって。もうここには俺しかいない。好きにして良いぜ」
とはいえ、どこにも行くあてもなく、例の『VTIH』で家族も失っていた俺は、施設にとどまり、そいつと数週間過ごした。しかし、最後の研究員も、死んでしまった。「お前が最後の話し相手で良かった」と言いながらそいつは息絶えた。たった数週間しか一緒にいなかったとはいえ、涙を流したのは言うまでもない。
なんでもその研究員は若い頃から優秀で、それ故に、ほかの研究員からのイビリや、嫉妬などをその身に受けてきたのだという。
そいつが死んだ後はしばらく施設をフラフラしていたが、そいつが死ぬ前に言った、「お前自身の目で今の世界を見てみるといい。どうせ数年間、外の景色なんて見てないのだろう?」という言葉が頭から離れず、研究施設を出る事を決意した。
俺が知っている情報は、今の世界はおそらく俺が知らない生物が存在しているかも知れないと言うこと、文明が崩壊している事、そして人類はほぼいないと言うことだ。
生前アイツに貰った今の世界にいる生物のデータを網羅した端末と、警備員室にあった防砂・防水処理を施された自動小銃を片手に外に出た。幸いな事に銃弾は充分過ぎるほどあったのでリュックに詰め込んだ。
実に数年ぶりに外の景色を見た時、俺は絶句した。道は砂に埋もれ、植物は伸び放題で電波塔やら高層ビル群やらに巻き付きながら巨大に育っている。見たこともない植物が生えている等など、驚くほど変化があった。
予想以上に風が強く、砂が目に入る危険があったが、何故か施設に置かれていたスキーのゴーグルを持ってきて良かったと心底感じたのを覚えている。
そうして、世界に置いていかれた俺はただ一人、あてもなくこの世界に旅に出たのだ。
始め、『ソレ』が確認された時は新種のウィルスが発見されたと、大騒ぎになった。しかし、『ソレ』に感染しても大した病状が出ないことから軽視する人が多かったのが事実だった。
……そうやって甘く見ていたから、人類は追い詰められ始めたんだ。
『ソレ』の対策がされて数年、再び『ソレ』は世界に広まり始めた。人類が対策したものに対して『ソレ』は適応し、時間をかけて進化していたのだ。
しかし、それでも所詮大した事ないウィルスだと研究員達は言った。その言葉通り、進化した『ソレ』への対策はすぐにでき、再び『ソレ』はその勢いを弱めた。
……しかし、さらに数年後、再び『ソレ』は進化し、世界に広がった。そしてある科学者が言った。「このウィルスは進化する度、強力になっている」と。
『ソレ』と人類のイタチごっこは数十年に及んだが、遂に『ソレ』は人類の科学力で対応できる範囲を超え、更には強力な殺人ウイルスとして進化し、世界中の生命を蹂躙した。
ある人が言った、「まるで侵略者だ」と。
その言葉にならい、『ソレ』は『Virus that invades humanity』(人類を侵略するウィルス)と名ずけられ、略して『VTIH』と呼ばれた。
『VTIH』は地球上からあらゆる生命を消し去り、文明を崩壊させた。こうして人類は滅びたのである……
………俺以外は。
俺は何故かこの『終わった後の世界』に一人生き残っている。理由は俺の体の中に『VTIH』に対する『抗体』が存在したからだとか。それが理由で研究施設とか何だとかを行き来させられたりしたが、結局無意味だった。なんでも、『VTIH』に対する『抗体』は、その人物の体内でしか存在する事が出来ず、培養、増殖などは不可能だったらしい。
俺以外にも、世界で十数人の『抗体保持者』がいるそうだが、裏を返せば今の世界ではもう十数人しか生き残っていないと言う訳だ。
俺はある研究施設の中に保護(もはや監禁に近かったが)されており、外に出る事が出来なかった。暇を潰せるものといえば防弾ガラスの外にいる担当の研究員との雑談ぐらいだった。しかし、仲良くなったとしても死んでしまったりしてコロコロと担当は変わった。そしてその施設最後の研究員が担当になった時、そいつは俺の部屋のロックを解除してくれた。
「悪いな、長い事閉じ込めちまって。もうここには俺しかいない。好きにして良いぜ」
とはいえ、どこにも行くあてもなく、例の『VTIH』で家族も失っていた俺は、施設にとどまり、そいつと数週間過ごした。しかし、最後の研究員も、死んでしまった。「お前が最後の話し相手で良かった」と言いながらそいつは息絶えた。たった数週間しか一緒にいなかったとはいえ、涙を流したのは言うまでもない。
なんでもその研究員は若い頃から優秀で、それ故に、ほかの研究員からのイビリや、嫉妬などをその身に受けてきたのだという。
そいつが死んだ後はしばらく施設をフラフラしていたが、そいつが死ぬ前に言った、「お前自身の目で今の世界を見てみるといい。どうせ数年間、外の景色なんて見てないのだろう?」という言葉が頭から離れず、研究施設を出る事を決意した。
俺が知っている情報は、今の世界はおそらく俺が知らない生物が存在しているかも知れないと言うこと、文明が崩壊している事、そして人類はほぼいないと言うことだ。
生前アイツに貰った今の世界にいる生物のデータを網羅した端末と、警備員室にあった防砂・防水処理を施された自動小銃を片手に外に出た。幸いな事に銃弾は充分過ぎるほどあったのでリュックに詰め込んだ。
実に数年ぶりに外の景色を見た時、俺は絶句した。道は砂に埋もれ、植物は伸び放題で電波塔やら高層ビル群やらに巻き付きながら巨大に育っている。見たこともない植物が生えている等など、驚くほど変化があった。
予想以上に風が強く、砂が目に入る危険があったが、何故か施設に置かれていたスキーのゴーグルを持ってきて良かったと心底感じたのを覚えている。
そうして、世界に置いていかれた俺はただ一人、あてもなくこの世界に旅に出たのだ。
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