はい、そうです。敗走です

幽零

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君のお顔に火炎瓶

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「って、いう訳で村から追放されちゃったんだよー……」

「あらあら~、それは可哀想~。良~し良~し」

「でへー」

「……はぁ」

トキシーの両腕に抱かれながら、ハイサルは不幸自慢をしている。ぱっと見おっとりお姉さんだが、その実サイクロプスを溶かすような劇物を持ち歩いていた女なのだ。

……ハイサルは鼻の下を伸ばしているが。

「おい、ハイサル」

ギリギリギリ……と、ハイサルの頬を引っ張るフォルト。

「い、だ、だ、だ、だ!!!」

「お前の好みなのは分かるが、もう少し取り繕え」

「あらあら~」


サイクロプスを倒したものの、骨になってしまったので特に得るものもなかった。強いて言えばあの巨人の持っていたデカすぎる棍棒を小さく加工して今はフォルトが持っていることぐらいだろうか。

『小さく加工』とはいえ、元々はあの巨体が振っていた物だ。フォルトは大きめな体格だが、それを超える大きさなので、ほとんど鈍器だ。


「……どうした?」

「あーいや、フォル兄良くそんなデカい棍棒肩に乗せて歩けるなって……」

もはや木の幹を担いでいるような感じだ。

「まぁ、道中レールが壊れて、鉱石満タンのトロッコを引きづりながら洞窟を出た時もあったからな。あれに比べたら楽だ」

「あらまぁ~、力持ちなのですね~」

「……え、あの洞窟魔物も出たよね……」

「……?あぁ、そうだな」


さも当然のように答えるフォルト。


「それより、その木の剣はどうだ」

「ん?あぁこれ?」

ハイサルは、腰にぶら下がっている荒削りな木の剣をトントン叩く。

「結構いいよこれ!あのおもちゃよりよっぽど良い!ズッシリしてて本物みたい!」

「端材で作ってみたが、嬉しそうだな」

ようやくまともな武器が手に入ったのが嬉しいのか、手渡した時にはブンブン振っていた。年頃の男児という感じで、少し安心はした。

「そーいえばー、トキシーはなんでこの森にいたの?」

「あら、わたくしですか~?薬草を採るつもりで~、道に迷ってしまって~」

「……え、ここ『巨人の森』なんだけど…」

トキシーは、頬に手を当てて答える。

「あらあら~、気がついたら遠い所に来てしまっていたみたいで~」


そんな会話をしていたら、目の前に魔物が2匹現れた。



《ゴブリン が 2匹 あらわれた!》



「あぁ、丁度いいな。おいハイサル、試しにその剣で……」

「無理無理無理!!!ゼッッッッタイ無理!!」

一瞬で遠い岩陰に隠れるハイサル。

「……何の為の剣だ……まぁ……」

いつものハイサルに呆れつつ、フォルトは肩に乗せていた棍棒を両手で構える。

「俺も、コイツを試すのに良い機会か」

「あらあら~、ではわたくしは後方支援しますわね~」

「あぁ、頼むぞ……って」


振り返ると、腰に下がった杖を構えている……訳ではなく、なぜか瓶を持っていた。


「……おい」

「はい?」

おっとり糸目で、割と本気で分かっていないような相槌を打つトキシー。

「……お前僧侶だよな……?」

「はい」

「……回復魔法とか使えるのか?」

「はい~」

「で、手に持っているのは?」

「火炎瓶です~」

「選択肢おかしいだろ」


劇物の次は爆発物を隠し持っていやがったこの僧侶。



シャァァァァッッッ!!



「……む」

そんな話をよそに、ゴブリンはフォルトに襲いかかる。だが、パリンッという音と共に体が炎に包まれた。

「……顔面放火とは、良い趣味だな」

「あらあら~、変なお顔がもっと爛れちゃいましたわ~」

恍惚な顔を浮かべて、燃えるゴブリンを眺めるトキシー。

「……アイツ本当に僧侶なのか?」


キ、キシャァ……


「……あぁ、2匹いたんだっけな」

フォルトは思い出したように、狼狽えるもう1匹のゴブリン目掛けて、容赦なく棍棒を振るう。

「……成程、こんなものか」

振り終わった棍棒を再び肩に背負い、手をグッパとして調子を確かめるフォルト。



「終わったー!?」



ハイサルは相変わらず、岩陰の裏から手を振っている。



「あぁ、終わったぞ。あとトキシー、火炎瓶はやめろ火炎瓶は」

「あらあら~……」


とっても残念そうな顔を浮かべるトキシー。




まだ、森は長い。





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