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The end,and Restart
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全ては、唐突に終わりを迎える。正しさが、本当に正しいかはわからない。本当に正しいとしても、それはあっさりと踏み潰されることがある。
限界値を超えた心は、何も感じ取らなくなっている。
正義のヒーローが、必ず勝つとは限らない。
途切れる最後の記憶が、俺にそう語っていた。
『………ッ……いッ』
意識が溺れているような感覚の中、段々と収束していくのがわかる。
『………いッ………いってば』
視界が光を得ない中、朦朧としている意識を、声を頼りに集める。
「おい……いいかげん起きろ」
ばちんッという殴打音と共に、完全に目が覚める。視界の外には、見慣れてはいけない天井。覗き込む顔は制服を着た凛々しい女性のものだ。滲む目元をこすりながら、ベット代わりのソファから起き上がる。まだ意識がはっきりとしない中、女性から止めどなく声が届いてくる。
「私は仕事に行くんだ。お前に鍵を預けたく無いから、とっとと部屋を出ろ」
「……何も叩かなくても良くないか」
目が覚めるにつれて、徐々に痛みが増していく感覚から察するに、けっこう強く引っ叩かれたらしい。
「職業不明、本名不明、おまけに異性であるお前を部屋に居候させてやってるんだ。お前は土下座するレベルで感謝をしろ」
「……いや、仕事はしてるつもりだって」
「ならとっとと金を寄越せ。タダで住ませてやってると思うなよ」
痛む頬から手を離し、明日の方を見ながら呟く。
「………こんなのが警察かよ」
言うと、少年のこめかみに拳銃が突きつけられる。
「わかった、その言葉を墓標に刻む方針で良いんだな?」
スッと無言で両手を上げる。そのまま蹴り飛ばされるように部屋を出されると、女性警官は扉を施錠する。
「……さっきの質問だが、警官は常に人手不足だ。こんな街だからね。私が警官に向いてない性格だってのは、私が一番理解してるよ」
「自覚はあるのか」
「うるせぇ」
割と本気のグーで殴られ、意識がブレた。
「帰ってくるのは夜中だが、どこぞで野垂れ死ぬなよ」
それだけ言うと、女性警官はひび割れたアスファルトの道を歩いて行った。
「……『こんな街だから』……か……」
世界最大にして世界最高の犯罪率を誇る世界最悪のスラム街、『ロスト・シティ』
白昼堂々の薬物取引や銃乱射などBGMのようなものだ。混沌に無秩序に、今日もイカれた街はその歴史を刻んでいく。
「………いくか」
少年は服についた埃を払いながら立ち上がると、歩き始める。
女性警官が詰所に入る頃には、時刻ギリギリの時間になっていた。
「おはようございます」
「おぉはよぉ~、うひひぃ~……」
詰所に入りがてら、正気かどうかもわからない先輩と挨拶を交わす。警察がこんな調子なのだ。悪事を裁こうにも人手は足りないし、そもそも汚職で溢れている。
デスクにつくと、同期から話しかけられた。
「おはよう、『オーフィア』。珍しく遅いわね。まぁ、何時間遅刻しても怒られないだろうけど。そもそもオーフィアみたいなしっかり出勤してくる人の方が珍しいものね」
「おはよう。まぁ、今朝方ちょっとゴタゴタしてな」
「例の少年?」
同期から言われ、オーフィアは額に手を当てて答える。
「その通りだよ。家賃は払わねぇわ、今だに本名も言わねぇわ、今朝こめかみに拳銃突きつけてやったよ」
「わーお、刺激的な朝ね」
同期は適当に返すと、続ける。
「でも、貴女も変わってるわオーフィア。この街でそんな少年の面倒を見てるなんて。いつでも捨てることはできるのよね?」
「………そうなんだが」
もう数ヶ月も前になるだろうか。とある建物で爆破事件が起きた後、建前上の出動をした。崩落した建物もロクに調べることなく、『生存者0人』として、他の警察は早々に引き上げた。他の面々が引き上げた後、オーフィアだけ現場に残ってタバコ休憩をしていたところ、瓦礫の中から、一人の少年が這い出てきた。全身ボロボロで顔面に火傷を負いながらも、五体満足の少年は、焦点が合っているのかいないのかわからない眼でオーフィアを捉え、力強く彼女の腕に掴み掛かった。
『……助け…て……くれ……』
正直ゾッとした。何を見たのか、その眼は深い失望と、憎悪を宿しているような眼差しだった。
……そして、興味が湧いた。この街の人間をそれなりに長く見てきたが、こんな眼をする少年は他に出会ったことがない。彼が何を見て、何をしようとしているのか。そんな純粋な興味が彼女の次の行動を決めた。
『……とりあえずウチに来い。出会ったばかりで信用できないと思うが、ここで野垂れ死ぬよりはマシだろ』
そのあとは、度々意識を手放しそうなあの少年を引きずって家まで運び込んだ。相当重症だったようで、手当をした後の数日間は、昏睡状態に陥っていた。
あの少年を家に引きずって行ったのは、そんな興味もあったのだが、他にも『生存者0人』として記録してしまった事件に生き残りがいたとなれば、帳尻を合わせる為におそらく警察はあの少年を殺すだろう。理由は聞くだけ無駄だ。十中八九この街の警察なら「その方が楽だから」と答える。そんな街なのだ。
自分もだいぶこの街に染まって来たと思っていたが、自分にまだそんな良心が残っていたとは…正直意外だった。
「あら?どうしたの?固まっちゃって」
「別に。居候をどうしようか、悩んでただけ」
同期に対しては、宿なしの少年を拾ったと説明している。変に勘ぐられはしないだろう。適当に返事をしつつ、デスクの上に散らばる書類を片そうとペンを持った。
「全く、警察がこぞって書類仕事を放棄してるだなんて、世界の秩序に反していると思うんだけどな」
ぼやきながら、オーフィアは『爆破事件 事後報告書』と書かれた書類に手を付け始めた。
(あー…そういえば)
少年と出会ったあの日、放っておいてもマトモに捜査する警官がいないことぐらい上も知っているはずだが、あの時だけ何故か撤収命令が早々に出された事を、オーフィアは思い出した。
暗いマンホールの下、カツンカツンと梯子を降りていくと、そこにはアリの巣のように複雑な地下通路が現れる。侵入者対策だから仕方がないとは言え、目印ぐらいあっても良いんじゃないかと思う。
少年は、迷いなく地下通路を真っ直ぐ進んでいく。複雑そうに見えて、目的の場所まではさほど遠くないのが唯一の救いだろうか。少年がレンガ調になっている壁を押すと、そこが回転扉のように周り、別空間に来たのかと思うぐらいの施設がそこに広がっていた。
「お、来たか『アンス』。待っていたぞ」
顔見知りのメンバーに挨拶をして、部屋へと通る。扉一枚隔てた先の部屋には、年齢に性別、そして恐らく種族すらバラバラのメンバーが集まっていた。
「ん?あ、ようやく来たよ」
「オッセーな。待ちくたびれたっての」
「……悪かったな」
部屋は散らかっており、家具が適当に配置されている。なんなら本棚などは横に倒されて腰掛けにされている。だが、各々に定位置があるようで、アンスも特に迷わず、いつもの扉が外れた冷蔵庫に腰掛けた。
アンスが壊れた冷蔵庫に腰掛けたことで、全員が集合したと見なされたのか、ホワイトボードの近くにいた男が喋り始めた。
「今回集まってもらったのは、情報屋から重要な情報を取得したからだ」
片手が義手になっているその男は、手にしていた書類をボードに磁石で貼り付けて行く。
「数ヶ月前に起きた爆破事件、これは住人の不手際だとされていたが、どうやら真実は違う。警察が提出した書類にも『生存者0人』とされていたが、これにも矛盾があるな」
義手の男がアンスに目配せすると、アンスは仕方なさそうに話し始める。
「俺がその事件の唯一の生存者だ……前も話したぞ」
そんなアンスに、前髪を立てた男が絡む。
「オマエ、やっぱなんか知ってんじゃねーの?」
「…………知らない。それも話しただろ」
アンスが睨むと、前髪の男はケッとつまらなさそうにそっぽを向いた。
義手の男が軽く咳払いをした後、続ける。
「情報屋によれば、この建物の住人ではない人物が、ここに出入りしていたらしい。その男は行方をくらましていたが、その隠れ家が判明した。この男は我々が長年追い続けていた情報を有している可能性のある人物だ」
義手の男は、手にしていた書類の一つに赤くマーキングをして、ホワイトボードに貼り付ける。
「『オトニエ・ケイリー』。今回のターゲットだ。ターゲットは莫大な資金を何らかの方法で入手しており、護衛が多数いることが判明している。極力戦闘行為は避け、ターゲットを捕獲する事が今回の任務だ。任務は本日深夜に開始予定、メンバーは後にこちらから通達する。解散」
各々が部屋から出ていった後、義手の男にアンスが呼び止められる。
「アンス、今回の任務は君が適役だ。おそらく任務のメンバーになるだろう」
「……そうか」
「あぁ、それと要件があと一つ。ドクターが君を呼んでいた。おそらく薬の話だろう。後で寄ると良い」
「……わかった」
端的な返答を返すと、アンスはスタスタと部屋を出て行った。一人部屋に残った義手の男は、誰にでもなく呟く。
「……虚ろな眼の中に、時々見せる深い深い憎悪のような色……君は……本当はあの事件で、何を目にしたんだ……?」
カーテンをめくったその先には、白を基調とした病院のような部屋が広がっている。広めのデスクに簡易ベットと多種多様な(あからさまにガイコツマークのついたビンもある)薬が並んでいた。組織の人間が「医務室」と呼んでいる場所だ。
回転するタイプの椅子に座っている白衣の男は、若そうなのに髪が真っ白だった。男がアンスに気がつくと、目配せで目の前の椅子に座るように促す。
「最近はどうだ」
医者の単調な言葉が、アンスに投げられる。
「……悪夢を見る」
アンスの言葉に、医者は「だろうな」と分かりきっていたような表情で、手にしたペンでカルテのようなものに何かを記入していく。
「とりあえず、精神安定剤をまた処方しておく。飲んだあとはなるべく早く寝ろよ」
「……わかった」
アンスの言葉に腕をパタパタと振って答えた医者は、別のカルテに目を通し始める。組織が組織なだけに、怪我人も絶えないのだろう。
アンスが所属している組織は、この『ロスト・シティ』で秘密裏に活動する、『レジスタンス』と呼ばれる組織だった。義手の男が一応のリーダー格として存在しており、この街で長年「見えない敵」を追っている。
この街は誰も彼もが生きていく上で、自分のもしくは仲間の命を守るために、非人道的な人体実験や機械兵器の開発をしている。『ロスト・シティ』は外から見れば、異世界のように映るだろう。だが、この混沌とした街を整えるような技術は、軒並み潰されているような形跡がある。データ上それは第三者が関わっていることが明白であるが、表舞台には全くと言って良いほど、その名前も存在も出てこない。
そんな、この街の『闇』のようなものを相手にしている組織なのだ。死んだメンバーなど数え切れないと、義手の男は言っていた。
医務室を出ると、待ち構えていたかのように二人の人影があった。一人はバツ印のついた仮面をつけている男で、ミリタリーな黒いジャケットを着ている。もう一人はツバの長い帽子を目ぶかに被った、歯並びの良い笑顔が特徴的な女子だった。帽子少女はアンスに手を振りながら話しかける。
「ヤホー、アンス。今回の任務はあーしとコイツだってー」
「コイツって、ハハっ!『マイル』、オマエ殺されたいのか~?」
「サイコパスって、思考読めなくて怖すぎー」
不穏な単語が飛び交っているにも関わらず、普通に笑顔で会話している。逆に渋い顔をしているのはアンスだった。アンスは額に手を当てて、ため息がてら話す。
「……まぁ、マイルは分かる。機械に強いしな。だが……『ジャック』、なんでお前まで来るんだ」
「いやー、ターゲットが護衛を雇っている可能性大なんでしょ?だったら俺ちゃんの出番なんじゃーな~い?」
ジャックと呼ばれた男は、ナイフを手元で遊ばせながら適当に答える。
「……今回はターゲットを殺すわけじゃあないんだが」
「ま、潜入任務って言っても、流石に戦力ゼロはまずいって考えたんじゃなーい?こーれが最初じゃないんだしぃー。よろしくちゃんだぜー?」
そういうと、ジャックは通路の向こう側に消えていった。アンスは傍に残るマイルに話しかける。
「……お前も嫌なら断って良いんじゃないのか。サイコパスと組まされるなんてごめんだろ」
アンスの言葉に対して、口元を綺麗に歪ませながらマイルは答える。
「んー。あーしが機械強いのは本当だしー、ジャックはあんなだけど、確かに強力な戦力ではあるしねー」
でかい帽子で相変わらず目が見えないが、本気で嫌がっている訳でもないようだ。
「ただまー気をつけるのはアンスの方じゃない?あーしは付いて行くけど、基本的にサポートだしー。むしろ危ないのはずっと近くにいるアンスの方じゃないかなー?」
帽子からはみ出た髪の毛を気にしながら、マイルは続ける。
「『殺人鬼ジャックレイ・クロース』、殺人によって生を実感しているサイコパス。後方支援のあーしより、むしろアンスが気をつけるべきな気がするよ~」
「……ま、組まされるのは初めてじゃあ無いしな。それに、俺は何故か奴に気に入られてるらしいからな。心変わりしない限りは大丈夫だろうよ」
「そうかなー。まぁ、なんにせガンバンないとねー、アンス因縁の事件だし」
「………そう……だな」
……マイルは全て知っている訳じゃない。俺がその事件の生き残りだからそう言っているだけだ。
そうだ…………これで……この任務で………手がかりが………
「おーい、アンスぅー」
いつの間にか目の前に来ていたマイルは、ムニっと両手でアンスの頬を触る。
「ほーらー、笑顔だぞーん」
「……あぁ」
「んじゃー、また任務でなー」
そういうとマイルは、帽子をグイッと被り直して通路の向こうへ消えていった。
アイツは、正体をあまり明かしていない俺にも、無邪気に接してくる。空気を読むというよりは空気を和らげるような感じだ。レジスタンスにわざわざいなくても良い気がするが……
………いや、本名すら明かしてない俺が言える立場ではないか。
自嘲気味に鼻で笑うと、アンスはポケットから一枚の紙を取り出しながら、地下通路を歩いていった。
その日の職務を終えて家に着くと、扉に何やら白い紙のようなものがくっついていた。オーフィアはすぐさま拳銃を抜き、物陰に隠れる。『こんな街』だからこそ、あんな白い紙っぺら一枚でも、警戒しなくてはいけない。オーフィアは足音を殺しながら扉に近寄ると、軍用のライトを引き抜いて紙に当てる。
[今日中に帰れるかわからん。鍵閉めて寝とけ]
……………
オーフィアは若干イラつきながら、扉についた紙を引き剥がしてビリビリに破いた後、ジッポライターで燃やした。何のためにここまで警戒したんだ、数秒間無駄に気を張らされたと思うと腹が立つ。
……イヤに綺麗な文字だったが、見覚えがある。あれはアイツの字だ。
「………全く」
オーフィアは軍用ライトと拳銃をしまって、部屋に入る。ワインセラーには確かヴィンテージ物のボトルがあった筈だ。今夜は開けてやろう。
冷たい風を頬に受け、服の襟元をグッと上げる。手元のトランシーバーからジジ…とノイズが聞こえた。
《あー、あー。聞こえますー?あーしっすー》
「……聞こえているが、何でこんな古びた無線機なんだ?」
《あんねぇー、オンライン系のネットワーク通信なんて使ってみろー?逆探知され放題、ジャックし放題でしょってー》
「……そんなもんか」
《そんなもんすー》
アンスは無線の調子を確かめながら、手元にあるターゲットの情報がまとめられた紙に目を通す。
『オトニエ・ケイリー』
元々は『ロスト・シティ』で何でも屋のような稼業をしていた男で、言ってしまえば小物も小物だった。それこそ下請けのような依頼がほとんどで、それほど儲けがある訳でもなかった筈だ。それがどういう訳か、例の「爆破事件」の後に莫大な資産を手にいれた形跡がある。以来、この地下秘密基地みたいな家に閉じこもっているようだ。
爆破事件の起きた建物に出入りしていた人物で、レジスタンスによれば「見えない敵」の情報を持っている可能性が高いとの事だ。つまり任務でターゲットを捕獲した後、その情報を吐かせることが目的だろう。
思考をまとめていると、耳元につけたイヤホンから義手の男の声が聞こえて来た。
《確認するが、今回の任務は殺しではない。ターゲット捕獲後、速やかに脱出し待機させている車で拠点まで戻れ。接敵は極力避けろ。作戦開始後、そのイヤホンは破棄。『オトニエ・ケイリー』の捕獲が完了した後、トランシーバーでコチラに通信しろ。そちらから連絡するのはその一度だけにするんだ。では、検討を祈る》
イヤホンのからの音声が途切れると共に、ジジジ…ブツッと音が聞こえてきた。恐らく中の回路が自動的に焼き切れたのだろう。指示通りにイヤホンを捨てると、踏み潰して粉々にする。
「じゃー行こーぜぇーアンス」
ジャックがナイフと指ぬきグローブの調子を確かめつつ呟く。サイコパスと行動するなど不本意だが、戦力的には確かに期待できる。
「……あぁ」
手元にある『オトニエ・ケイリー』に関する書類を、ちゃちなライターで燃やしながらアンスは答えた。
《3…2…1…時間だー。作戦開始ー》
マイルの気が抜けた声で作戦が始まった。
(……この任務で、ようやく真実に一歩近づけるだろうか。あの事件の……)
オトニエの屋敷というか、引きこもっている家は、一階から地下に通ずるエレベーターがあり、本人はその最奥の地下5階に居を構えているようだ。異常なまでに何かを怖がっているように感じる。
一階のダクトから、天井裏に侵入し、隙をみてエレベーターに乗り込む予定だ。そして、驚くほど順調に天井裏まで侵入できたのだが………
アンスとジャックは何かに勘付く。
「なぁ、アンス」
背後から小声でジャックに話しかけられる。
「……あぁ」
オトニエは莫大な資金に物を言わせて、護衛を多数雇っているのではなかったか?
「………静かすぎる」
アンスとジャックが忍び込んでから、足音一つ聞こえない。
夜の喧騒が響く、ネオンに照らされた繁華街。その端に、四駆の車が止めてあった。車内は色々改造されており勿論違反だが、バレなければ良いのだ。
その車内には、無線機をいじるマイルと義手の男が乗っていた。
「こんな時間帯でもここは騒がしーなー」
「まぁ、繁華街だからな。銃声が無いだけマシだろう」
義手を閉じたり開いたりする男に、マイルは尋ねる。
「しょーじきな所、何でアンスを『レジスタンス』にしたんで?」
マイルの問いに、義手の男はその腕から視線を外して答える。
「……アイツはな。『見える』んだ」
「……『見える』?」
「あぁ、恐らく普通の人よりも格段に。視界に入った情報から自分の欲しい情報をまとめる。あれはもう努力の賜物とかではない。才能の類だ」
義手の男は続けて話す。
「それにだマイル。アイツを『レジスタンス』に入れたんじゃない。アイツの方から入ってきたんだ」
「………ハァ~イ?」
予想の斜め上の回答がきたのか、マイルは変なリズムで相槌を打つ。
「俺が任務外で行動してた時、俺はアンスに捕まった。俺が捕まえたんじゃ無い。俺が捕まったんだ。人気のない場所で後ろから声を掛けられてな。第一声が『アンタ、レジスタンスってヤツだろ?』だったのには、流石に驚いたが」
「アンスって改造人間でしたけー?それとも人工能力者ー?」
「人工能力者は都市伝説だが………アンスは素の人間だ。だから言ったろ、アイツの才能なんだ。言うなら『視覚情報の完全理解』みたいな感じだな」
「あー……だからアンスって監視カメラとかサーチシステムに引っ掛かんないんだー」
「ま、そういう事だな。アンスはその眼で監視カメラの死角やサーチシステムの範囲を視覚情報から理解して、避けることができる。ジャックが「殺人鬼」の通称で呼ばれているのに対して、アンスはあぁ言われてるからな」
「『観察者』………かー。そういう意味だったんねー」
「ま、そう言うことだ」
言って、義手の男が葉巻を咥えて火をつけようとした途端にトランシーバーが鳴った。マイルと義手の男は顔を見合わせる。
「……早すぎるな」
「なんかあったとかすかねー」
言いながらマイルはトランシーバーのチャンネルを開く。
「もしもーし、どったー?」
トランシーバーからは、確かにアンスの声が聞こえてきた。
《………『オトニエ・ケイリー』は……既に殺害されている》
天井裏からエレベーターに乗った後、一つのエレベーターで最下層まで行けない構造だったため、通路を通ってまた別のエレベーターへと乗らなくてはいけなかったのだが、その道中、恐らくオトニエが雇っていたと思われる傭兵や護衛や賞金稼ぎは全て殺されていた。
巨大な剣で裂かれたような遺体や、貫かれたような跡のある死体で通路が溢れかえっていた。
「アンス」
「わかっている」
明らかに何者かによって殺害されている護衛から察するに、先に誰かがここに侵入している。
通路には咽せ返るような血の香りが漂っていた。見た限りだと、全員が巨大な獲物によって一撃で葬られたような形跡だ。
「……ジャック、気をつけろ。先客の持っている獲物の大きさは推定2.5メートルだ」
「うわー知りたくなかったんだけど~」
既に何度か組んでいるジャックは、アンスが自身が『見た』情報を確実に引き出す才能に長けている事を知っている。つまり、アンスが言うことは、ほぼ間違いないのだ。
(死体の損傷具合から、恐らく片腕で振り回している。随分怪力だな……接敵したら逃げる選択肢を優先した方が良さそうだ)
(2メートル超の武器を振り回す敵…ねぇ~…さぁて、俺ちゃんどうやって立ち回るべきかなー……)
思惑は違えど、アンスとジャックはお互いに謎の先客を警戒しながら、死体のお花畑が広がる通路を渡り、エレベーターを乗り継ぎながら最下層の地下5階に辿り着く。
そこには……
「…………クソが」
アンスは吐き捨てるように呟くと、トランシーバーを持つ。
……そこには、胸に大穴を開けながら、壁にもたれ掛かるように死んでいるオトニエ・ケイリーの姿があった。
以下、『オトニエ・ケイリー捕獲作戦』の報告書
・「見えない敵」の情報保有者候補であった『オトニエ・ケイリー』の隠れ家を特定
・「殺人鬼ジャックレイ・クロース」及び「観察者アンス」を現場に派遣。その後、予定時刻よりかなり早い段階で通信
・ターゲット『オトニエ・ケイリー』は既に何者かによって殺害されていた事が判明
以下、簡潔に本作戦をまとめる。
『オトニエ・ケイリー』の捕獲失敗により、本作戦は失敗と判断する。又、『オトニエ・ケイリー殺害』の実行犯である「見えない敵」もしくはその他脅威勢力に警戒せよ。
地下通路の散らかった部屋で、レジスタンス構成員たちは集まっていた。
「以上が、結果報告になる。あと一歩の所で「見えない敵」の情報を得ることが出来なかった。しかし、これまで尻尾を掴むことすら出来なかった我々が、その足元に掴みかかる所まで来た事を考えると、成果はあった」
義手の男の言葉に、レジスタンスのメンバーが呟く。
「なぁ、そもそもその『爆破事件』て、本当に「見えない敵」と繋がってるんか?」
「その可能性が高いと考えての作戦だろ。オトニエが殺されたのも、口封じだろうな」
「だがよ、そもそもその『爆破事件』て、なんだっけ……えーと」
「『バトロ一家』だよ。マフィアの。数ヶ月前に少し話題になったでしょ」
「『エニグマス・バトロ』ね……マフィアの一家が爆破されても、この街じゃあ誰も不思議がらねぇさ。大方、恨みでも買ってたんじゃあねぇの?」
義手の男が咳払いをして続けた。
「今回は以上だ。解散」
各々が解散する中、義手の男はアンスに近寄る。
「アンス、今回は残念だったが気にしなくて良い」
「………あぁ」
虚な眼をするアンスを見て、義手の男は続ける。
「…なぁ、やはり君は…何かを知っているんじゃあ…」
言いかけると、アンスは遮るように言葉を発した。
「アンタが気にすることじゃあ無い。何も知らないさ」
「……そうか」
義手の男はそれ以上言及せず、話題を変えた。
「今日は帰って休むと良い」
「…あぁ」
アンスは振り返ることも無く、部屋から出ていった。その後ろ姿を見届けた後、義手の男は一人考える。
(……明らかにいつもと様子が違う……やはり…何かあったのだろうか……出来れば、力になってやりたいが……)
そこまで考えると、義手の男はハッとしたように首を横に振る。
「……何を考えているんだ、俺は」
雑念を払うように独り言を呟く。彼と死んだ息子を重ねるなど、どちらにも失礼で不敬な事だ。
気持ちを切り替え、義手の男は新たな作戦を考案すべく、手元の資料に目を落とした。
【監視カメラ映像より、一部抜粋】
以下、『____』の活動記録。
ガチャリ、ガチャリと金属質な重い音が、オトニエの屋敷に響く。
音を発しているのは、全身鎧にフルフェイスの鉄兜を被った、西洋騎士のような格好をしたモノだった。背丈は恐らく2メートル程の長身、しかし細身。片手には身長を優に超える超巨大な刀剣が握られていた。ソレが歩いた跡には、斬られ、貫かれ、断頭された遺体がバーゲンセールのように散らかっている。
黒く輝く全身鎧には、己が武勲を讃えるように、相手の返り血が跳ねていた。
『う、撃てッ!!撃てッ!!』
『ダ、ダメだッ!コイツっ、銃が効かないッッ!』
『馬鹿野郎ッ!鎧着ている奴に普通の銃弾が効くわけねぇだろッ!!』
黒服を着た護衛達は、阿鼻叫喚に飲まれていく。
ゆっくりと、だが確実に死を刻む足音を響かせる、黒く輝く全身鎧の騎士。
立ちはだかるモノを一撃で葬りながら、死屍累々を築き上げていく様は、まさに死神。
『お、おいッッ戦闘用のロボはどうしたッッ!!』
『真っ先に出して全部潰されたッ!!もう一体も残ってねぇよッ!!』
『お、おいッッ!早く退くぞッ!!はや…く゛ッッ!!』
悲鳴を上げる間もなく、黒騎士によって潰されていく傭兵や護衛達。恐怖が盤面を支配する。
『お、おい!防壁を下ろせッッ!』
『で、ですがまだ向こうに仲間が……』
『良いから下ろせッ!!死にたいのかッ!』
『りょ、了解ッッ!!』
厚さ30センチを超える防壁が通路を分断し、指示を出した黒服は防壁に寄りかかり、一呼吸つく。
……そして、その呼吸が、人生最後の呼吸になった。
厚さ30センチを超える防壁の向こう側から、巨大な刀剣が防壁を貫いて、寄りかかっていた黒服ごと突き刺した。
『ご…ごぶっ、ごぼっ……』
『あ……あぁぁぁッッッ!!!!』
防壁は軽々と破壊され、黒騎士は刀剣に黒服を突き刺したまま悠々とその歩みを進める。
『ば、化物がッ!!』
『死ねぇぇぇッ!!』
そう叫んだ果敢な護衛達も、すぐに物体へと成り果てた。
黒騎士は最下層に辿り着くと、扉を破り最奥の部屋へと辿り着く。
『ヒッ…ヒィッ!?た、助けてくれッ!俺はただ、アンタらの言う通りにしてただけじゃないかッ!』
扉の向こう側には、情けない顔で床に尻餅をつく男が居た。黒騎士は話すこと無く、手にしたボイスレコーダーのような物を男に向ける。
《あー、あー、聞こえてるかな?えーっと、あぁそうだそうだ、オトニエ君》
レコーダーからは、少女のような声が響く。幼さを残す可愛らしい声色は、裏腹に口調が随分と大人びていた。
《まぁ、私はただのお使いのような者だ。君の前に立っているヤツは私の代わりみたいなものだね。なにぶん現場に直接行く時間も惜しい身の上故、こんな形での対面だがご了承願うよ。さて話を戻すが、君はエニグマス氏のマフィアに潜入し、彼の所有していた重要書類をコピーして、オリジナルを破棄する仕事を頼まれていたらしいじゃ無いか》
レコーダーから聞こえてくる少女の声に、縋るようにオトニエは答える。
『そ、そうだッ!俺は言われた通り、奴らの情報が載っていた書類をコピーして、オリジナルを破棄した!コピーした書類も渡した……けど……』
オトニエは頭を抱えながら叫んだ。
『でも……人が死ぬなんて思ってなかったんだよおぉぉぉッ!!』
《ほう?それで?罪悪感とでも言うべき感情に動かされて、『コピーのコピー』をメディアに持ち込んだ、とでも?》
『ち、違う……罪悪感じゃない……!これは俺の良心だッ!……今頃アンタ達は『連合政府』に存在を知られたッ!この街で好き勝手は出来なくなるぞッ!』
オトニエがそう叫ぶと、レコーダーの向こうの少女は素っ頓狂な声を出す。
《あぁ、何か勘違いしているね。オトニエ君》
幼い少女の声は、オトニエを突き刺す。
《私はお使いといったが、奴らのお使いじゃない。君が言っている連合政府のお使いだよ》
『……………は?』
オトニエは、全身の血が凍ったかと思った。
『な、なんで………』
《鈍いね。鈍いなぁ、オトニエ君。マフィアに潜入したのによく生き残れたな?君》
少女の声はため息混じりに続く。
《連合政府は、彼らを黙認している。だが、存在が知られれば困るのは彼らでは無く、連合政府の方だ。民衆に隠し事をしていたのだからね。陰謀論者はこんな美味しい話題は放っておかないだろうよ》
惚けたような含み笑いの声で、まだ続く。
《だが、私もそのお使いだ。実際に聞いた訳じゃあ無い。正直、君のような小物が生きていようが死んでいようが、私にはどうでも良いのだが、お使いを頼まれている以上、言われた事はするべきだろうな》
ボイスレコーダーに縋り付くように、オトニエは続ける。
『た、たす…助けてくれッ!俺はただ、奴らに言われた通りに動いただけじゃ無いか!!』
《……やれやれ、今際の際に命乞いとは。じゃあ答えようか、オトニエ君。『言われた通りに』動いた結果金を貰って、その後『自分だけ助かろうとして』コピーのコピーをメディアに持ち込んだんだろう?『良心』?笑わせるな。良心もクソもあるものか。君の行動にあった軸は、ただの我が身可愛さにすぎんよ》
先ほどとは変わって、少女の声は冷徹だ。
《聞いた話だが、エニグマス氏は死に際まで、己の信念を貫いたそうだぞ?》
『知るかよッッ!!とにかく俺を助けてくれぇぇぇぇッッ!』
レコーダーの向こうにいる少女は、苛立ちと軽蔑を込めた舌打ちをした後、端的に告げる。
《……もういい『シュヴァルツ』、殺せ》
ボイスレコーダーにつかみ掛かろうとしたオトニエを、『シュヴァルツ』と呼ばれた黒騎士は手にした巨大な刀剣で貫き、そのまま壁へと叩きつける。その後、ゆっくりとした動作で剣を引き抜くと、滝のような出血の後、オトニエは壊れた人形のようにズズズ…と壁を伝って床に落ちた。
黒騎士はボイスレコーダーのような機器をしまうと、オトニエの遺体に背を向け元来た通路を引き返していった。
後に残ったのは、死神に蝋燭を吹かれた景色だけだった。
以上、『シュヴァルツ』による活動記録。
※尚、現在この記録は完全に消去されている為、再生する事は不能
もう少しで朝日が登ってくるような時間、アンスは居候の家にたどり着いたのだが……
「……あぁ、そうか。鍵閉まってるだろうな」
アンスがドアノブに手をかけると、なぜかガチャリと鍵が空いていた。
「……?」
おかしい、確かに扉に伝言を貼った筈だ。部屋に入ると、薄暗い灯りがついている。警戒しながら慎重にその足を進める。部屋を覗くと、そこにはありえない光景があった。
上半身は下着のまま、下半身は緩いハーフパンツの格好をしたオーフィアが、グラスに注いだワインを片手に、椅子に腰掛けながら、頬杖をついてこちらを見ていた。
「………遅ぇよ、これ何杯目だと思ってんだ」
「……いや、なんで起きてんだよ」
そういうと、オーフィアはグラスをカランと揺らしながら答える。
「私が鍵閉めたら、お前どうやってこの部屋入るつもりだったんだ馬鹿野郎」
「……いや、別にそこら辺で適当に…」
「遺体で発見されてぇのかお前」
「………」
「……あん?」
オーフィアは言い返してこないアンスに対して、眉を顰める。長い脚を組み直しながら、アンスに問いかけた。
「……お前、何かあったか?」
「………別に」
「いや、嘘だな。その顔は何かあったヤツの顔だ」
アンスはオーフィアから視線を外す。
「……別になんもねぇよ」
「………ハァ~…」
オーフィアはグラスを机に置くと、ガシガシと頭をかきながらアンスに近寄る。
「……?なんだよ」
怪訝な顔をするアンスを、オーフィアは唐突に抱きしめる。
「…ッッ!?お、おいっ!?」
「うるせぇ、黙って抱かれてろ」
背中に手を回され、頭に手を置かれる。煙草と酒と、ほのかに香る甘い香りが、アンスを撫でる。
「……言いたくなけりゃ言わなくていい。ここを出て行きたければそうしろ。だが、お前はまだガキだ。一人で色々背負うな、少しぐらい手を抜け。そういう風に潰れていった奴らを、もう何人も見てきた」
されるがままだったアンスは、ここでようやく答えた。
「……簡単に言うなよ……見なかった事にして、無かった事になんて出来るかッ!毎日毎日悪夢になって出てくるッ!……あの日の記憶がッ!」
対して、オーフィアは耳元で囁くように言葉を紡ぐ。
「……お前が、あの日何を見たのかは知らない。『無かった事にしろ』とも言わん。だが、少しの間だけ忘れる事は出来るだろう。妥協を覚えろ」
オーフィアに対して、アンスは呪いを吐くように呟いた。
「………忘れられる訳……無いだろうが……」
「あぁそうか。だったら……」
「………ッッ!?」
アンスは、グルンと空中を舞ってベットに投げ飛ばされると、そのままオーフィアに押し倒される。
アンスに馬乗りになったオーフィアは、そのまま体重をかけると、顔を近付けて言う。
「私が忘れさせてやるよ」
「……正気か?」
「悪いな、随分前から酔ってる」
あれからどれくらい経っただろうか。登りきっていない朝日を見るに、多分さほど時間は経ってないのだろう。
激しく動いた後のように疲れきった顔で、アンスは窓の外のまだ低い朝日を見ると、顔面に手を当ててため息をつく。
(………喰われた)
それをぼーっとした顔で、ベットの上からオーフィアが見ている。濡れたシーツの上であぐらをかいて、タバコを揺らしながら独り言のように呟く。
「酒と煙草に金と性欲、それが満たされてれば、大抵の嫌な事は忘れられるさ。ま、受け売りだけどな」
オーフィアはフワっと口から煙を垂らすと、灰皿にタバコをジュッと押し付け、頬杖をついてアンスに言葉を投げる。
「なぁ、そろそろ本名ぐらい聞きたいんだが」
「………」
「言わねぇと、テメェに無理やりヤられたってタレ込むぞこの野郎」
「お前も未成年に手ぇ出したって事実があるだろ」
「んなもんどうにでも出来るわ、警察舐めんなクソガキ」
「拒否権ねぇじゃねぇかッッ!!」
アンスは、起き始めた街を眺めながら、ぽつりと言う。
「……アンサード」
「…ん」
オーフィアは口に新しい煙草を咥えながら薄く微笑み、アンスの方を見る。
「『アンサード・バトロ』、俺の名前だ」
振り返るアンサードは、呆れたような顔をしていた。聞いたオーフィアは、特に驚きもせず、口から煙を垂らす。
イカれた街は瞼を開けて、今日という日を狂と言う文字で埋め尽くさんと動き出す。
限界値を超えた心は、何も感じ取らなくなっている。
正義のヒーローが、必ず勝つとは限らない。
途切れる最後の記憶が、俺にそう語っていた。
『………ッ……いッ』
意識が溺れているような感覚の中、段々と収束していくのがわかる。
『………いッ………いってば』
視界が光を得ない中、朦朧としている意識を、声を頼りに集める。
「おい……いいかげん起きろ」
ばちんッという殴打音と共に、完全に目が覚める。視界の外には、見慣れてはいけない天井。覗き込む顔は制服を着た凛々しい女性のものだ。滲む目元をこすりながら、ベット代わりのソファから起き上がる。まだ意識がはっきりとしない中、女性から止めどなく声が届いてくる。
「私は仕事に行くんだ。お前に鍵を預けたく無いから、とっとと部屋を出ろ」
「……何も叩かなくても良くないか」
目が覚めるにつれて、徐々に痛みが増していく感覚から察するに、けっこう強く引っ叩かれたらしい。
「職業不明、本名不明、おまけに異性であるお前を部屋に居候させてやってるんだ。お前は土下座するレベルで感謝をしろ」
「……いや、仕事はしてるつもりだって」
「ならとっとと金を寄越せ。タダで住ませてやってると思うなよ」
痛む頬から手を離し、明日の方を見ながら呟く。
「………こんなのが警察かよ」
言うと、少年のこめかみに拳銃が突きつけられる。
「わかった、その言葉を墓標に刻む方針で良いんだな?」
スッと無言で両手を上げる。そのまま蹴り飛ばされるように部屋を出されると、女性警官は扉を施錠する。
「……さっきの質問だが、警官は常に人手不足だ。こんな街だからね。私が警官に向いてない性格だってのは、私が一番理解してるよ」
「自覚はあるのか」
「うるせぇ」
割と本気のグーで殴られ、意識がブレた。
「帰ってくるのは夜中だが、どこぞで野垂れ死ぬなよ」
それだけ言うと、女性警官はひび割れたアスファルトの道を歩いて行った。
「……『こんな街だから』……か……」
世界最大にして世界最高の犯罪率を誇る世界最悪のスラム街、『ロスト・シティ』
白昼堂々の薬物取引や銃乱射などBGMのようなものだ。混沌に無秩序に、今日もイカれた街はその歴史を刻んでいく。
「………いくか」
少年は服についた埃を払いながら立ち上がると、歩き始める。
女性警官が詰所に入る頃には、時刻ギリギリの時間になっていた。
「おはようございます」
「おぉはよぉ~、うひひぃ~……」
詰所に入りがてら、正気かどうかもわからない先輩と挨拶を交わす。警察がこんな調子なのだ。悪事を裁こうにも人手は足りないし、そもそも汚職で溢れている。
デスクにつくと、同期から話しかけられた。
「おはよう、『オーフィア』。珍しく遅いわね。まぁ、何時間遅刻しても怒られないだろうけど。そもそもオーフィアみたいなしっかり出勤してくる人の方が珍しいものね」
「おはよう。まぁ、今朝方ちょっとゴタゴタしてな」
「例の少年?」
同期から言われ、オーフィアは額に手を当てて答える。
「その通りだよ。家賃は払わねぇわ、今だに本名も言わねぇわ、今朝こめかみに拳銃突きつけてやったよ」
「わーお、刺激的な朝ね」
同期は適当に返すと、続ける。
「でも、貴女も変わってるわオーフィア。この街でそんな少年の面倒を見てるなんて。いつでも捨てることはできるのよね?」
「………そうなんだが」
もう数ヶ月も前になるだろうか。とある建物で爆破事件が起きた後、建前上の出動をした。崩落した建物もロクに調べることなく、『生存者0人』として、他の警察は早々に引き上げた。他の面々が引き上げた後、オーフィアだけ現場に残ってタバコ休憩をしていたところ、瓦礫の中から、一人の少年が這い出てきた。全身ボロボロで顔面に火傷を負いながらも、五体満足の少年は、焦点が合っているのかいないのかわからない眼でオーフィアを捉え、力強く彼女の腕に掴み掛かった。
『……助け…て……くれ……』
正直ゾッとした。何を見たのか、その眼は深い失望と、憎悪を宿しているような眼差しだった。
……そして、興味が湧いた。この街の人間をそれなりに長く見てきたが、こんな眼をする少年は他に出会ったことがない。彼が何を見て、何をしようとしているのか。そんな純粋な興味が彼女の次の行動を決めた。
『……とりあえずウチに来い。出会ったばかりで信用できないと思うが、ここで野垂れ死ぬよりはマシだろ』
そのあとは、度々意識を手放しそうなあの少年を引きずって家まで運び込んだ。相当重症だったようで、手当をした後の数日間は、昏睡状態に陥っていた。
あの少年を家に引きずって行ったのは、そんな興味もあったのだが、他にも『生存者0人』として記録してしまった事件に生き残りがいたとなれば、帳尻を合わせる為におそらく警察はあの少年を殺すだろう。理由は聞くだけ無駄だ。十中八九この街の警察なら「その方が楽だから」と答える。そんな街なのだ。
自分もだいぶこの街に染まって来たと思っていたが、自分にまだそんな良心が残っていたとは…正直意外だった。
「あら?どうしたの?固まっちゃって」
「別に。居候をどうしようか、悩んでただけ」
同期に対しては、宿なしの少年を拾ったと説明している。変に勘ぐられはしないだろう。適当に返事をしつつ、デスクの上に散らばる書類を片そうとペンを持った。
「全く、警察がこぞって書類仕事を放棄してるだなんて、世界の秩序に反していると思うんだけどな」
ぼやきながら、オーフィアは『爆破事件 事後報告書』と書かれた書類に手を付け始めた。
(あー…そういえば)
少年と出会ったあの日、放っておいてもマトモに捜査する警官がいないことぐらい上も知っているはずだが、あの時だけ何故か撤収命令が早々に出された事を、オーフィアは思い出した。
暗いマンホールの下、カツンカツンと梯子を降りていくと、そこにはアリの巣のように複雑な地下通路が現れる。侵入者対策だから仕方がないとは言え、目印ぐらいあっても良いんじゃないかと思う。
少年は、迷いなく地下通路を真っ直ぐ進んでいく。複雑そうに見えて、目的の場所まではさほど遠くないのが唯一の救いだろうか。少年がレンガ調になっている壁を押すと、そこが回転扉のように周り、別空間に来たのかと思うぐらいの施設がそこに広がっていた。
「お、来たか『アンス』。待っていたぞ」
顔見知りのメンバーに挨拶をして、部屋へと通る。扉一枚隔てた先の部屋には、年齢に性別、そして恐らく種族すらバラバラのメンバーが集まっていた。
「ん?あ、ようやく来たよ」
「オッセーな。待ちくたびれたっての」
「……悪かったな」
部屋は散らかっており、家具が適当に配置されている。なんなら本棚などは横に倒されて腰掛けにされている。だが、各々に定位置があるようで、アンスも特に迷わず、いつもの扉が外れた冷蔵庫に腰掛けた。
アンスが壊れた冷蔵庫に腰掛けたことで、全員が集合したと見なされたのか、ホワイトボードの近くにいた男が喋り始めた。
「今回集まってもらったのは、情報屋から重要な情報を取得したからだ」
片手が義手になっているその男は、手にしていた書類をボードに磁石で貼り付けて行く。
「数ヶ月前に起きた爆破事件、これは住人の不手際だとされていたが、どうやら真実は違う。警察が提出した書類にも『生存者0人』とされていたが、これにも矛盾があるな」
義手の男がアンスに目配せすると、アンスは仕方なさそうに話し始める。
「俺がその事件の唯一の生存者だ……前も話したぞ」
そんなアンスに、前髪を立てた男が絡む。
「オマエ、やっぱなんか知ってんじゃねーの?」
「…………知らない。それも話しただろ」
アンスが睨むと、前髪の男はケッとつまらなさそうにそっぽを向いた。
義手の男が軽く咳払いをした後、続ける。
「情報屋によれば、この建物の住人ではない人物が、ここに出入りしていたらしい。その男は行方をくらましていたが、その隠れ家が判明した。この男は我々が長年追い続けていた情報を有している可能性のある人物だ」
義手の男は、手にしていた書類の一つに赤くマーキングをして、ホワイトボードに貼り付ける。
「『オトニエ・ケイリー』。今回のターゲットだ。ターゲットは莫大な資金を何らかの方法で入手しており、護衛が多数いることが判明している。極力戦闘行為は避け、ターゲットを捕獲する事が今回の任務だ。任務は本日深夜に開始予定、メンバーは後にこちらから通達する。解散」
各々が部屋から出ていった後、義手の男にアンスが呼び止められる。
「アンス、今回の任務は君が適役だ。おそらく任務のメンバーになるだろう」
「……そうか」
「あぁ、それと要件があと一つ。ドクターが君を呼んでいた。おそらく薬の話だろう。後で寄ると良い」
「……わかった」
端的な返答を返すと、アンスはスタスタと部屋を出て行った。一人部屋に残った義手の男は、誰にでもなく呟く。
「……虚ろな眼の中に、時々見せる深い深い憎悪のような色……君は……本当はあの事件で、何を目にしたんだ……?」
カーテンをめくったその先には、白を基調とした病院のような部屋が広がっている。広めのデスクに簡易ベットと多種多様な(あからさまにガイコツマークのついたビンもある)薬が並んでいた。組織の人間が「医務室」と呼んでいる場所だ。
回転するタイプの椅子に座っている白衣の男は、若そうなのに髪が真っ白だった。男がアンスに気がつくと、目配せで目の前の椅子に座るように促す。
「最近はどうだ」
医者の単調な言葉が、アンスに投げられる。
「……悪夢を見る」
アンスの言葉に、医者は「だろうな」と分かりきっていたような表情で、手にしたペンでカルテのようなものに何かを記入していく。
「とりあえず、精神安定剤をまた処方しておく。飲んだあとはなるべく早く寝ろよ」
「……わかった」
アンスの言葉に腕をパタパタと振って答えた医者は、別のカルテに目を通し始める。組織が組織なだけに、怪我人も絶えないのだろう。
アンスが所属している組織は、この『ロスト・シティ』で秘密裏に活動する、『レジスタンス』と呼ばれる組織だった。義手の男が一応のリーダー格として存在しており、この街で長年「見えない敵」を追っている。
この街は誰も彼もが生きていく上で、自分のもしくは仲間の命を守るために、非人道的な人体実験や機械兵器の開発をしている。『ロスト・シティ』は外から見れば、異世界のように映るだろう。だが、この混沌とした街を整えるような技術は、軒並み潰されているような形跡がある。データ上それは第三者が関わっていることが明白であるが、表舞台には全くと言って良いほど、その名前も存在も出てこない。
そんな、この街の『闇』のようなものを相手にしている組織なのだ。死んだメンバーなど数え切れないと、義手の男は言っていた。
医務室を出ると、待ち構えていたかのように二人の人影があった。一人はバツ印のついた仮面をつけている男で、ミリタリーな黒いジャケットを着ている。もう一人はツバの長い帽子を目ぶかに被った、歯並びの良い笑顔が特徴的な女子だった。帽子少女はアンスに手を振りながら話しかける。
「ヤホー、アンス。今回の任務はあーしとコイツだってー」
「コイツって、ハハっ!『マイル』、オマエ殺されたいのか~?」
「サイコパスって、思考読めなくて怖すぎー」
不穏な単語が飛び交っているにも関わらず、普通に笑顔で会話している。逆に渋い顔をしているのはアンスだった。アンスは額に手を当てて、ため息がてら話す。
「……まぁ、マイルは分かる。機械に強いしな。だが……『ジャック』、なんでお前まで来るんだ」
「いやー、ターゲットが護衛を雇っている可能性大なんでしょ?だったら俺ちゃんの出番なんじゃーな~い?」
ジャックと呼ばれた男は、ナイフを手元で遊ばせながら適当に答える。
「……今回はターゲットを殺すわけじゃあないんだが」
「ま、潜入任務って言っても、流石に戦力ゼロはまずいって考えたんじゃなーい?こーれが最初じゃないんだしぃー。よろしくちゃんだぜー?」
そういうと、ジャックは通路の向こう側に消えていった。アンスは傍に残るマイルに話しかける。
「……お前も嫌なら断って良いんじゃないのか。サイコパスと組まされるなんてごめんだろ」
アンスの言葉に対して、口元を綺麗に歪ませながらマイルは答える。
「んー。あーしが機械強いのは本当だしー、ジャックはあんなだけど、確かに強力な戦力ではあるしねー」
でかい帽子で相変わらず目が見えないが、本気で嫌がっている訳でもないようだ。
「ただまー気をつけるのはアンスの方じゃない?あーしは付いて行くけど、基本的にサポートだしー。むしろ危ないのはずっと近くにいるアンスの方じゃないかなー?」
帽子からはみ出た髪の毛を気にしながら、マイルは続ける。
「『殺人鬼ジャックレイ・クロース』、殺人によって生を実感しているサイコパス。後方支援のあーしより、むしろアンスが気をつけるべきな気がするよ~」
「……ま、組まされるのは初めてじゃあ無いしな。それに、俺は何故か奴に気に入られてるらしいからな。心変わりしない限りは大丈夫だろうよ」
「そうかなー。まぁ、なんにせガンバンないとねー、アンス因縁の事件だし」
「………そう……だな」
……マイルは全て知っている訳じゃない。俺がその事件の生き残りだからそう言っているだけだ。
そうだ…………これで……この任務で………手がかりが………
「おーい、アンスぅー」
いつの間にか目の前に来ていたマイルは、ムニっと両手でアンスの頬を触る。
「ほーらー、笑顔だぞーん」
「……あぁ」
「んじゃー、また任務でなー」
そういうとマイルは、帽子をグイッと被り直して通路の向こうへ消えていった。
アイツは、正体をあまり明かしていない俺にも、無邪気に接してくる。空気を読むというよりは空気を和らげるような感じだ。レジスタンスにわざわざいなくても良い気がするが……
………いや、本名すら明かしてない俺が言える立場ではないか。
自嘲気味に鼻で笑うと、アンスはポケットから一枚の紙を取り出しながら、地下通路を歩いていった。
その日の職務を終えて家に着くと、扉に何やら白い紙のようなものがくっついていた。オーフィアはすぐさま拳銃を抜き、物陰に隠れる。『こんな街』だからこそ、あんな白い紙っぺら一枚でも、警戒しなくてはいけない。オーフィアは足音を殺しながら扉に近寄ると、軍用のライトを引き抜いて紙に当てる。
[今日中に帰れるかわからん。鍵閉めて寝とけ]
……………
オーフィアは若干イラつきながら、扉についた紙を引き剥がしてビリビリに破いた後、ジッポライターで燃やした。何のためにここまで警戒したんだ、数秒間無駄に気を張らされたと思うと腹が立つ。
……イヤに綺麗な文字だったが、見覚えがある。あれはアイツの字だ。
「………全く」
オーフィアは軍用ライトと拳銃をしまって、部屋に入る。ワインセラーには確かヴィンテージ物のボトルがあった筈だ。今夜は開けてやろう。
冷たい風を頬に受け、服の襟元をグッと上げる。手元のトランシーバーからジジ…とノイズが聞こえた。
《あー、あー。聞こえますー?あーしっすー》
「……聞こえているが、何でこんな古びた無線機なんだ?」
《あんねぇー、オンライン系のネットワーク通信なんて使ってみろー?逆探知され放題、ジャックし放題でしょってー》
「……そんなもんか」
《そんなもんすー》
アンスは無線の調子を確かめながら、手元にあるターゲットの情報がまとめられた紙に目を通す。
『オトニエ・ケイリー』
元々は『ロスト・シティ』で何でも屋のような稼業をしていた男で、言ってしまえば小物も小物だった。それこそ下請けのような依頼がほとんどで、それほど儲けがある訳でもなかった筈だ。それがどういう訳か、例の「爆破事件」の後に莫大な資産を手にいれた形跡がある。以来、この地下秘密基地みたいな家に閉じこもっているようだ。
爆破事件の起きた建物に出入りしていた人物で、レジスタンスによれば「見えない敵」の情報を持っている可能性が高いとの事だ。つまり任務でターゲットを捕獲した後、その情報を吐かせることが目的だろう。
思考をまとめていると、耳元につけたイヤホンから義手の男の声が聞こえて来た。
《確認するが、今回の任務は殺しではない。ターゲット捕獲後、速やかに脱出し待機させている車で拠点まで戻れ。接敵は極力避けろ。作戦開始後、そのイヤホンは破棄。『オトニエ・ケイリー』の捕獲が完了した後、トランシーバーでコチラに通信しろ。そちらから連絡するのはその一度だけにするんだ。では、検討を祈る》
イヤホンのからの音声が途切れると共に、ジジジ…ブツッと音が聞こえてきた。恐らく中の回路が自動的に焼き切れたのだろう。指示通りにイヤホンを捨てると、踏み潰して粉々にする。
「じゃー行こーぜぇーアンス」
ジャックがナイフと指ぬきグローブの調子を確かめつつ呟く。サイコパスと行動するなど不本意だが、戦力的には確かに期待できる。
「……あぁ」
手元にある『オトニエ・ケイリー』に関する書類を、ちゃちなライターで燃やしながらアンスは答えた。
《3…2…1…時間だー。作戦開始ー》
マイルの気が抜けた声で作戦が始まった。
(……この任務で、ようやく真実に一歩近づけるだろうか。あの事件の……)
オトニエの屋敷というか、引きこもっている家は、一階から地下に通ずるエレベーターがあり、本人はその最奥の地下5階に居を構えているようだ。異常なまでに何かを怖がっているように感じる。
一階のダクトから、天井裏に侵入し、隙をみてエレベーターに乗り込む予定だ。そして、驚くほど順調に天井裏まで侵入できたのだが………
アンスとジャックは何かに勘付く。
「なぁ、アンス」
背後から小声でジャックに話しかけられる。
「……あぁ」
オトニエは莫大な資金に物を言わせて、護衛を多数雇っているのではなかったか?
「………静かすぎる」
アンスとジャックが忍び込んでから、足音一つ聞こえない。
夜の喧騒が響く、ネオンに照らされた繁華街。その端に、四駆の車が止めてあった。車内は色々改造されており勿論違反だが、バレなければ良いのだ。
その車内には、無線機をいじるマイルと義手の男が乗っていた。
「こんな時間帯でもここは騒がしーなー」
「まぁ、繁華街だからな。銃声が無いだけマシだろう」
義手を閉じたり開いたりする男に、マイルは尋ねる。
「しょーじきな所、何でアンスを『レジスタンス』にしたんで?」
マイルの問いに、義手の男はその腕から視線を外して答える。
「……アイツはな。『見える』んだ」
「……『見える』?」
「あぁ、恐らく普通の人よりも格段に。視界に入った情報から自分の欲しい情報をまとめる。あれはもう努力の賜物とかではない。才能の類だ」
義手の男は続けて話す。
「それにだマイル。アイツを『レジスタンス』に入れたんじゃない。アイツの方から入ってきたんだ」
「………ハァ~イ?」
予想の斜め上の回答がきたのか、マイルは変なリズムで相槌を打つ。
「俺が任務外で行動してた時、俺はアンスに捕まった。俺が捕まえたんじゃ無い。俺が捕まったんだ。人気のない場所で後ろから声を掛けられてな。第一声が『アンタ、レジスタンスってヤツだろ?』だったのには、流石に驚いたが」
「アンスって改造人間でしたけー?それとも人工能力者ー?」
「人工能力者は都市伝説だが………アンスは素の人間だ。だから言ったろ、アイツの才能なんだ。言うなら『視覚情報の完全理解』みたいな感じだな」
「あー……だからアンスって監視カメラとかサーチシステムに引っ掛かんないんだー」
「ま、そういう事だな。アンスはその眼で監視カメラの死角やサーチシステムの範囲を視覚情報から理解して、避けることができる。ジャックが「殺人鬼」の通称で呼ばれているのに対して、アンスはあぁ言われてるからな」
「『観察者』………かー。そういう意味だったんねー」
「ま、そう言うことだ」
言って、義手の男が葉巻を咥えて火をつけようとした途端にトランシーバーが鳴った。マイルと義手の男は顔を見合わせる。
「……早すぎるな」
「なんかあったとかすかねー」
言いながらマイルはトランシーバーのチャンネルを開く。
「もしもーし、どったー?」
トランシーバーからは、確かにアンスの声が聞こえてきた。
《………『オトニエ・ケイリー』は……既に殺害されている》
天井裏からエレベーターに乗った後、一つのエレベーターで最下層まで行けない構造だったため、通路を通ってまた別のエレベーターへと乗らなくてはいけなかったのだが、その道中、恐らくオトニエが雇っていたと思われる傭兵や護衛や賞金稼ぎは全て殺されていた。
巨大な剣で裂かれたような遺体や、貫かれたような跡のある死体で通路が溢れかえっていた。
「アンス」
「わかっている」
明らかに何者かによって殺害されている護衛から察するに、先に誰かがここに侵入している。
通路には咽せ返るような血の香りが漂っていた。見た限りだと、全員が巨大な獲物によって一撃で葬られたような形跡だ。
「……ジャック、気をつけろ。先客の持っている獲物の大きさは推定2.5メートルだ」
「うわー知りたくなかったんだけど~」
既に何度か組んでいるジャックは、アンスが自身が『見た』情報を確実に引き出す才能に長けている事を知っている。つまり、アンスが言うことは、ほぼ間違いないのだ。
(死体の損傷具合から、恐らく片腕で振り回している。随分怪力だな……接敵したら逃げる選択肢を優先した方が良さそうだ)
(2メートル超の武器を振り回す敵…ねぇ~…さぁて、俺ちゃんどうやって立ち回るべきかなー……)
思惑は違えど、アンスとジャックはお互いに謎の先客を警戒しながら、死体のお花畑が広がる通路を渡り、エレベーターを乗り継ぎながら最下層の地下5階に辿り着く。
そこには……
「…………クソが」
アンスは吐き捨てるように呟くと、トランシーバーを持つ。
……そこには、胸に大穴を開けながら、壁にもたれ掛かるように死んでいるオトニエ・ケイリーの姿があった。
以下、『オトニエ・ケイリー捕獲作戦』の報告書
・「見えない敵」の情報保有者候補であった『オトニエ・ケイリー』の隠れ家を特定
・「殺人鬼ジャックレイ・クロース」及び「観察者アンス」を現場に派遣。その後、予定時刻よりかなり早い段階で通信
・ターゲット『オトニエ・ケイリー』は既に何者かによって殺害されていた事が判明
以下、簡潔に本作戦をまとめる。
『オトニエ・ケイリー』の捕獲失敗により、本作戦は失敗と判断する。又、『オトニエ・ケイリー殺害』の実行犯である「見えない敵」もしくはその他脅威勢力に警戒せよ。
地下通路の散らかった部屋で、レジスタンス構成員たちは集まっていた。
「以上が、結果報告になる。あと一歩の所で「見えない敵」の情報を得ることが出来なかった。しかし、これまで尻尾を掴むことすら出来なかった我々が、その足元に掴みかかる所まで来た事を考えると、成果はあった」
義手の男の言葉に、レジスタンスのメンバーが呟く。
「なぁ、そもそもその『爆破事件』て、本当に「見えない敵」と繋がってるんか?」
「その可能性が高いと考えての作戦だろ。オトニエが殺されたのも、口封じだろうな」
「だがよ、そもそもその『爆破事件』て、なんだっけ……えーと」
「『バトロ一家』だよ。マフィアの。数ヶ月前に少し話題になったでしょ」
「『エニグマス・バトロ』ね……マフィアの一家が爆破されても、この街じゃあ誰も不思議がらねぇさ。大方、恨みでも買ってたんじゃあねぇの?」
義手の男が咳払いをして続けた。
「今回は以上だ。解散」
各々が解散する中、義手の男はアンスに近寄る。
「アンス、今回は残念だったが気にしなくて良い」
「………あぁ」
虚な眼をするアンスを見て、義手の男は続ける。
「…なぁ、やはり君は…何かを知っているんじゃあ…」
言いかけると、アンスは遮るように言葉を発した。
「アンタが気にすることじゃあ無い。何も知らないさ」
「……そうか」
義手の男はそれ以上言及せず、話題を変えた。
「今日は帰って休むと良い」
「…あぁ」
アンスは振り返ることも無く、部屋から出ていった。その後ろ姿を見届けた後、義手の男は一人考える。
(……明らかにいつもと様子が違う……やはり…何かあったのだろうか……出来れば、力になってやりたいが……)
そこまで考えると、義手の男はハッとしたように首を横に振る。
「……何を考えているんだ、俺は」
雑念を払うように独り言を呟く。彼と死んだ息子を重ねるなど、どちらにも失礼で不敬な事だ。
気持ちを切り替え、義手の男は新たな作戦を考案すべく、手元の資料に目を落とした。
【監視カメラ映像より、一部抜粋】
以下、『____』の活動記録。
ガチャリ、ガチャリと金属質な重い音が、オトニエの屋敷に響く。
音を発しているのは、全身鎧にフルフェイスの鉄兜を被った、西洋騎士のような格好をしたモノだった。背丈は恐らく2メートル程の長身、しかし細身。片手には身長を優に超える超巨大な刀剣が握られていた。ソレが歩いた跡には、斬られ、貫かれ、断頭された遺体がバーゲンセールのように散らかっている。
黒く輝く全身鎧には、己が武勲を讃えるように、相手の返り血が跳ねていた。
『う、撃てッ!!撃てッ!!』
『ダ、ダメだッ!コイツっ、銃が効かないッッ!』
『馬鹿野郎ッ!鎧着ている奴に普通の銃弾が効くわけねぇだろッ!!』
黒服を着た護衛達は、阿鼻叫喚に飲まれていく。
ゆっくりと、だが確実に死を刻む足音を響かせる、黒く輝く全身鎧の騎士。
立ちはだかるモノを一撃で葬りながら、死屍累々を築き上げていく様は、まさに死神。
『お、おいッッ戦闘用のロボはどうしたッッ!!』
『真っ先に出して全部潰されたッ!!もう一体も残ってねぇよッ!!』
『お、おいッッ!早く退くぞッ!!はや…く゛ッッ!!』
悲鳴を上げる間もなく、黒騎士によって潰されていく傭兵や護衛達。恐怖が盤面を支配する。
『お、おい!防壁を下ろせッッ!』
『で、ですがまだ向こうに仲間が……』
『良いから下ろせッ!!死にたいのかッ!』
『りょ、了解ッッ!!』
厚さ30センチを超える防壁が通路を分断し、指示を出した黒服は防壁に寄りかかり、一呼吸つく。
……そして、その呼吸が、人生最後の呼吸になった。
厚さ30センチを超える防壁の向こう側から、巨大な刀剣が防壁を貫いて、寄りかかっていた黒服ごと突き刺した。
『ご…ごぶっ、ごぼっ……』
『あ……あぁぁぁッッッ!!!!』
防壁は軽々と破壊され、黒騎士は刀剣に黒服を突き刺したまま悠々とその歩みを進める。
『ば、化物がッ!!』
『死ねぇぇぇッ!!』
そう叫んだ果敢な護衛達も、すぐに物体へと成り果てた。
黒騎士は最下層に辿り着くと、扉を破り最奥の部屋へと辿り着く。
『ヒッ…ヒィッ!?た、助けてくれッ!俺はただ、アンタらの言う通りにしてただけじゃないかッ!』
扉の向こう側には、情けない顔で床に尻餅をつく男が居た。黒騎士は話すこと無く、手にしたボイスレコーダーのような物を男に向ける。
《あー、あー、聞こえてるかな?えーっと、あぁそうだそうだ、オトニエ君》
レコーダーからは、少女のような声が響く。幼さを残す可愛らしい声色は、裏腹に口調が随分と大人びていた。
《まぁ、私はただのお使いのような者だ。君の前に立っているヤツは私の代わりみたいなものだね。なにぶん現場に直接行く時間も惜しい身の上故、こんな形での対面だがご了承願うよ。さて話を戻すが、君はエニグマス氏のマフィアに潜入し、彼の所有していた重要書類をコピーして、オリジナルを破棄する仕事を頼まれていたらしいじゃ無いか》
レコーダーから聞こえてくる少女の声に、縋るようにオトニエは答える。
『そ、そうだッ!俺は言われた通り、奴らの情報が載っていた書類をコピーして、オリジナルを破棄した!コピーした書類も渡した……けど……』
オトニエは頭を抱えながら叫んだ。
『でも……人が死ぬなんて思ってなかったんだよおぉぉぉッ!!』
《ほう?それで?罪悪感とでも言うべき感情に動かされて、『コピーのコピー』をメディアに持ち込んだ、とでも?》
『ち、違う……罪悪感じゃない……!これは俺の良心だッ!……今頃アンタ達は『連合政府』に存在を知られたッ!この街で好き勝手は出来なくなるぞッ!』
オトニエがそう叫ぶと、レコーダーの向こうの少女は素っ頓狂な声を出す。
《あぁ、何か勘違いしているね。オトニエ君》
幼い少女の声は、オトニエを突き刺す。
《私はお使いといったが、奴らのお使いじゃない。君が言っている連合政府のお使いだよ》
『……………は?』
オトニエは、全身の血が凍ったかと思った。
『な、なんで………』
《鈍いね。鈍いなぁ、オトニエ君。マフィアに潜入したのによく生き残れたな?君》
少女の声はため息混じりに続く。
《連合政府は、彼らを黙認している。だが、存在が知られれば困るのは彼らでは無く、連合政府の方だ。民衆に隠し事をしていたのだからね。陰謀論者はこんな美味しい話題は放っておかないだろうよ》
惚けたような含み笑いの声で、まだ続く。
《だが、私もそのお使いだ。実際に聞いた訳じゃあ無い。正直、君のような小物が生きていようが死んでいようが、私にはどうでも良いのだが、お使いを頼まれている以上、言われた事はするべきだろうな》
ボイスレコーダーに縋り付くように、オトニエは続ける。
『た、たす…助けてくれッ!俺はただ、奴らに言われた通りに動いただけじゃ無いか!!』
《……やれやれ、今際の際に命乞いとは。じゃあ答えようか、オトニエ君。『言われた通りに』動いた結果金を貰って、その後『自分だけ助かろうとして』コピーのコピーをメディアに持ち込んだんだろう?『良心』?笑わせるな。良心もクソもあるものか。君の行動にあった軸は、ただの我が身可愛さにすぎんよ》
先ほどとは変わって、少女の声は冷徹だ。
《聞いた話だが、エニグマス氏は死に際まで、己の信念を貫いたそうだぞ?》
『知るかよッッ!!とにかく俺を助けてくれぇぇぇぇッッ!』
レコーダーの向こうにいる少女は、苛立ちと軽蔑を込めた舌打ちをした後、端的に告げる。
《……もういい『シュヴァルツ』、殺せ》
ボイスレコーダーにつかみ掛かろうとしたオトニエを、『シュヴァルツ』と呼ばれた黒騎士は手にした巨大な刀剣で貫き、そのまま壁へと叩きつける。その後、ゆっくりとした動作で剣を引き抜くと、滝のような出血の後、オトニエは壊れた人形のようにズズズ…と壁を伝って床に落ちた。
黒騎士はボイスレコーダーのような機器をしまうと、オトニエの遺体に背を向け元来た通路を引き返していった。
後に残ったのは、死神に蝋燭を吹かれた景色だけだった。
以上、『シュヴァルツ』による活動記録。
※尚、現在この記録は完全に消去されている為、再生する事は不能
もう少しで朝日が登ってくるような時間、アンスは居候の家にたどり着いたのだが……
「……あぁ、そうか。鍵閉まってるだろうな」
アンスがドアノブに手をかけると、なぜかガチャリと鍵が空いていた。
「……?」
おかしい、確かに扉に伝言を貼った筈だ。部屋に入ると、薄暗い灯りがついている。警戒しながら慎重にその足を進める。部屋を覗くと、そこにはありえない光景があった。
上半身は下着のまま、下半身は緩いハーフパンツの格好をしたオーフィアが、グラスに注いだワインを片手に、椅子に腰掛けながら、頬杖をついてこちらを見ていた。
「………遅ぇよ、これ何杯目だと思ってんだ」
「……いや、なんで起きてんだよ」
そういうと、オーフィアはグラスをカランと揺らしながら答える。
「私が鍵閉めたら、お前どうやってこの部屋入るつもりだったんだ馬鹿野郎」
「……いや、別にそこら辺で適当に…」
「遺体で発見されてぇのかお前」
「………」
「……あん?」
オーフィアは言い返してこないアンスに対して、眉を顰める。長い脚を組み直しながら、アンスに問いかけた。
「……お前、何かあったか?」
「………別に」
「いや、嘘だな。その顔は何かあったヤツの顔だ」
アンスはオーフィアから視線を外す。
「……別になんもねぇよ」
「………ハァ~…」
オーフィアはグラスを机に置くと、ガシガシと頭をかきながらアンスに近寄る。
「……?なんだよ」
怪訝な顔をするアンスを、オーフィアは唐突に抱きしめる。
「…ッッ!?お、おいっ!?」
「うるせぇ、黙って抱かれてろ」
背中に手を回され、頭に手を置かれる。煙草と酒と、ほのかに香る甘い香りが、アンスを撫でる。
「……言いたくなけりゃ言わなくていい。ここを出て行きたければそうしろ。だが、お前はまだガキだ。一人で色々背負うな、少しぐらい手を抜け。そういう風に潰れていった奴らを、もう何人も見てきた」
されるがままだったアンスは、ここでようやく答えた。
「……簡単に言うなよ……見なかった事にして、無かった事になんて出来るかッ!毎日毎日悪夢になって出てくるッ!……あの日の記憶がッ!」
対して、オーフィアは耳元で囁くように言葉を紡ぐ。
「……お前が、あの日何を見たのかは知らない。『無かった事にしろ』とも言わん。だが、少しの間だけ忘れる事は出来るだろう。妥協を覚えろ」
オーフィアに対して、アンスは呪いを吐くように呟いた。
「………忘れられる訳……無いだろうが……」
「あぁそうか。だったら……」
「………ッッ!?」
アンスは、グルンと空中を舞ってベットに投げ飛ばされると、そのままオーフィアに押し倒される。
アンスに馬乗りになったオーフィアは、そのまま体重をかけると、顔を近付けて言う。
「私が忘れさせてやるよ」
「……正気か?」
「悪いな、随分前から酔ってる」
あれからどれくらい経っただろうか。登りきっていない朝日を見るに、多分さほど時間は経ってないのだろう。
激しく動いた後のように疲れきった顔で、アンスは窓の外のまだ低い朝日を見ると、顔面に手を当ててため息をつく。
(………喰われた)
それをぼーっとした顔で、ベットの上からオーフィアが見ている。濡れたシーツの上であぐらをかいて、タバコを揺らしながら独り言のように呟く。
「酒と煙草に金と性欲、それが満たされてれば、大抵の嫌な事は忘れられるさ。ま、受け売りだけどな」
オーフィアはフワっと口から煙を垂らすと、灰皿にタバコをジュッと押し付け、頬杖をついてアンスに言葉を投げる。
「なぁ、そろそろ本名ぐらい聞きたいんだが」
「………」
「言わねぇと、テメェに無理やりヤられたってタレ込むぞこの野郎」
「お前も未成年に手ぇ出したって事実があるだろ」
「んなもんどうにでも出来るわ、警察舐めんなクソガキ」
「拒否権ねぇじゃねぇかッッ!!」
アンスは、起き始めた街を眺めながら、ぽつりと言う。
「……アンサード」
「…ん」
オーフィアは口に新しい煙草を咥えながら薄く微笑み、アンスの方を見る。
「『アンサード・バトロ』、俺の名前だ」
振り返るアンサードは、呆れたような顔をしていた。聞いたオーフィアは、特に驚きもせず、口から煙を垂らす。
イカれた街は瞼を開けて、今日という日を狂と言う文字で埋め尽くさんと動き出す。
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