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幼なじみのお兄ちゃんへの気持ち。
21 お兄ちゃん、サークル女子に見つかる ~姉妹は、お兄ちゃん専用です~
しおりを挟む葛に夕飯のデザートは何がいいかチャットしたら、『優ちゃんがいるからいいわよ』と謎の答えが返ってきた。
困ってほのかにも聞いたら、『私達がいるからいらないじゃん』って何なの?
買ってきてくれるって事?
それとも、また弄られてるの?
でも。
よくわかんないけど絶対二人でクスクス笑ってそう。
仕方がないので駅ビルの和洋の菓子店を回ってみる。
二人の好きそうなものはわかってるし。
あ、映画を見ながら食べるお菓子も買ってくか。
ポテチとかは食べなかったらそのまま保管しといてもいいしね。
「わ!オーラがしょっぼい冴えない男がケーキなんて見てる!似合わなーい!」
「……げっ?!こ、幸田……!」
洋菓子を物色している僕を覗き込んできた幸田。
コイツ、この駅使ってたのか?!
「げ!はこっちの台詞よ!あーあ、休みの日まで会っちゃったよラノベオタに」
「……だったら声かけなきゃいいだろうに」
「ねー知佳!私も紹介してよ!イケてるじゃん!」
幸田の後ろからひょい!と別の女子が顔を出してきた。
普段なら用事の無い限り話す事のないゆるふわ茶髪女子二人に、思わず一歩下がってしまう。
「あー……コイツ、こんな顔してるけど中身はただの本オタクで人付き合いも悪いしクッソまじめで話もつまんないし、サークルでももくもくとテニスしてめちゃめちゃ浮いてるむっつりスケベ男だから、映里の趣味じゃないと思うよ」
「え!そうなんだ!」
おい。
結構な紹介をしてくれたな、ありがとう。
ほとんどは事実だが、サークルの女子をそんな目で見た事なんて……あ!
き、昨日………!あ、あれ?やばそうだから僕サークルサボったし。
それとも、いつもそんなにガン見してた?!
「でも、そんな真面目君を骨抜きにしてみたいかも♪」
「ちょっと!私のサークルの人間まで食い散らかそうとしないでよね!」
「何よ!知佳なんかウチのダイビングサークルの合宿に乱入してたじゃん!」
「それとこれとは別!」
こっわ!
これが肉食系女子!
……というか、僕もうそろそろ移動していいですか?
そろそろ、と後ずさりをしながら声を掛ける。
「じゃ、僕はこの辺で……」
「ちょっと待ちなさいよ!どうせ暇してるんでしょ?そんな高そうなケーキを買って帰るくらいなら、私達に美味しいご飯奢りなさいよ!」
いや、暇じゃないよ?
それに、おとといタクシー代全部出したよね?
僕は君のお財布じゃありません。
「あ!いいね!よかったね、両手に花だよ君!」
「いや、夕ご飯は用意してもらえるし、遠慮するよ」
「何よ!実家でご飯なんて、いつでも食べられるでしょ!こんなに可愛い女子と普通の女子と一緒にご飯を食べれるなんて最高でしょ!あ、ありがたく思いなよ!どうせ彼女なんている訳ないんだから、嬉しいでしょ!」
「ねえ知佳。普通の女子ってもちろんアンタの事よね?」
「違うわよ!」
……何を言ってるんだ?
さすがに自分勝手な事を言ってばかりいる幸田に、腹が立ってきた。
●
” お兄ちゃん! ”
” もう、優ちゃん、ほら ”
ふと、ほのかと葛の顔が浮かんだ。
” お兄ちゃん、辛い?悲し?ほのかが抱っこしてよしよし、してあげるからね ”
” 悲しくて傷ついた時は、分かち合いましょう。絶対に受け止めてあげる ”
ほのか、葛。
僕は守っているつもりで、どれだけ守られていたのか。
どれだけ、僕を支えてくれているのか。
愛しさ。
大切さ。
笑顔。
気持ち。
やっぱり、僕は二人の理想のお兄ちゃんでありたくて。
あんな素敵な妹分達の笑顔を見ていたくって。
逢いたい。
二人に、無性に逢いたい。
情けないくらいに、逢いたい。
僕の、妹分達。
大切な、大切な妹分達に。
逢いたい。
目の前で好き勝手言ってる幸田とその友達と過ごす時間が勿体ない、と思える程に。
●
「何うつ向いてんのよ!……な、何よ!何でそんな泣きそうな顔してんの?ば、ばっかみたい!そんなに嫌なら……そんなつもりじゃ!と、とにかく行くよ!」
「何か可愛い!よしよし、お姉さんが……」
左右から二人が伸ばしてきた手に硬直する。
びしぃ!
ぱしっ!
「いたい!」
「きゃ!」
「……えっ」
左右同時に振り払われた手。
「お兄ちゃん、怖がってますね。どうしてなのかな?かな?」
「あら優ちゃん、随分ね。嫁を差し置いて浮気なんて許さないわよ?」
「な、何よアンタ達!」
「せ、制服?高校生?嫁え?!」
笑いを貼り付けたような顔で、左右から僕を抱え込むほのかと葛。
「ほのか?葛?」
「くう!嫁って先に!かくなる上はっ!……お兄ちゃんの彼女兼専用のお肉です」
「何か卑猥ね、その言い方。なら、そうね。優ちゃんの嫁で妹で専用の袋ね」
ちょっと待ってえええええええええええ?!
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