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お兄ちゃんはとうとう、二人への気持ちに気付いてしまいました。

36 【優也と幸田挿し絵あり】失敗しまくりって事じゃ…… ~お兄ちゃんは掌底を食らいました~

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 うーん……落ち着かない。
 こんな小洒落たカフェ。
 オーガニックカフェ、というらしい。

 という事は、出るのだろうか。
 オーガ。
 出ないか。

 柔らかな照明が目に優しい。
 全面ガラス張りのショーウインドウからは、道行く人が丸見えである。

 当然、外からも僕の姿は丸見えだろう。
 居心地わるっ。

 近くでノートPCに指を走らせる優秀そうなお姉さんとまた目が合う。

 ううう……顔を赤らめて、速攻で目を逸らされるとは。僕に似合わないこんなお洒落な場所に来るから……!

 とん、とん。

 誰かの腰が僕に触れた。
 幸田が呆れ顔で僕を見下ろしていた。

「お待たせ、はいカフェオレ。アンタ、そんな顔して他の女を見つめるのやめなよ。さっきからあの女、有本と目が合う度にモジモジしてたよ?」
「……?何でだ?」
「あーあ、ったくもう。私といるんだから、わ、私を見なさいよ」

 幸田、お前何を言ってるんだ?
 先程目が合った女性を見ると、ため息をついている。僕の渾身の笑顔がそんなにキモいのか?!へこむ……。

「あの女性は僕を見て、何やら残念な人間を見る目をしているんだが」
「はあ、もういいわ。ほんっと調子狂うな……」
「こら。何で僕の前髪を触る。自分の髪をクルクルしろ」

 部室を出てから、やたらと体に触れてくる。

 まさかお前もオシオキを狙ってんじゃないよな……。手から逃れる為に立ち上がって座り直す。

「けちー。髪上げた方がもっとカッコいいのに」
「お前熱でもあるのか?顔真っ赤で言動がおかしいぞ?」
「……いつもと雰囲気違うからっていい気になんな!有本のクセして!」

 そんな訳あるか。
 と、いうか。

「からかう為に来たのなら、帰っていいか?」
「ええ?!待ってよ!有本、何か悩んでるんじゃないの?私恋愛系とか経験豊富だから相談に乗ってあげれるよ!」
「む、そうなのか?」

 自分をびし!びし!と指さして、アピールしてる。正に今聞いてみたい事があるんだけども……ん?

「なあ、ちょっと聞いていいか?」
「はい!なになに?私に何でも聞いてよ!」
「それって言っちゃ悪いが、今までの恋愛しまくりって事じゃ……」
「!!!」

 どべしっ!

 いってえ!

「アンタ、言っていい事と悪い事の区別ってもんがないの?!あたしだってしょっちゅう男をとっかえひっかえしてる訳じゃ……いや、違う違う!ちょっと待って違うんだから!私結構一途なんだから勘違いしないでよね!」
「とっかえひっかえと一途の境界線をとんでもなくうやむやにしすぎだろ!掌底カマすな!ついでにツンデレみたいな言い方するな!」

 
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