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お兄ちゃんはとうとう、二人への気持ちに気付いてしまいました。

41 キャラかぶっちゃってるよ?! ~幼なじみは、ズルは許しませんっ!~

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 会計を済ませて外を見ると、街は夕闇の中。
 スマホを見ると六時を過ぎていた。

「奢り、ごち!」

 幸田は嬉しそうに笑っている。
 こら、何で腕にしがみついてくる?
 
 よせ。ぽよぽよがむにむにしてるじゃないか。
 何がしたいんだ、コイツ。
 ダメだ、離れてくれない。
 
「……うふふ♪もしかして、さ。有本って実はこのイケてる感じがホントなんじゃない?」
「どこがイケてたのかさっぱり分からんが……なあ、幸田。誘ってもらって生返事だったのは悪いけど、飲みに行くって話はまた今度じゃダメか?土曜日の友達と一緒に。お詫びがてら奢るから、さ」
「えー!今日これから二人で行こうよ!三人じゃヤダ!」

 んー。
 取り合えず先に言っておくか。
 
「ごめん。実は聞いてもらってるうちに悩み、解決したんだ。本当にありがとう。あとは今日はもう、部屋に帰って少し考えたいんだ」
「え?!どういう事よ!その気にさせといて!」

 その気?
 どの気だ?

「あいつらを忘れる為にも……新しい恋を!わ、わ!私を彼女にするって言ったじゃないっ!」
「は?……え?!」

 いやいやいやいや!嘘だろ?!
 でも……幸田、目がウルウルしてるよ!

 マジでそんな事言ったの?!
 え?!結論とはを言ったのか?僕!

 ……いや。
 無いな。
 いくら考え事してたとはいえ、流石にそれはおかしい。

 生返事ならともかく、思ってもない事をそこまで言わないんじゃないか?イケメンならラノベのように後々の修羅場確定、僕ならば……只の痛い奴が何の寝言をホザいてんの?!キモ!とか。

 ぐふっ。
 自分に痛恨の一撃を入れてしまった。

 一旦、必死に言い募る幸田から目を逸らし、深く息を吸って吐く。

 すう。
 はあ。

 ……よし。

「あのな、幸田。それは無い」
「言ったもん!」

 幸田……何かムキになっているな。
 でもここは否定しないと。
 
「僕にだな、いくら夢想癖があるとはいえ……心にもない事は言わないはずだ。そしてそんな悪癖があるなんて聞いた事がない。それに決めたんだよ。僕はあの二人が幸せになるまで、誰とも……」

 ガガッ!!

 え?
 幸田の後ろから伸びた手……悪役令嬢とひよこの着ぐるみさん?!

「ダメかしらん。正攻法なら黙って見てましたデース」
「ほのか。私の真似ってそれぴよ?泣かすぴよ?」

 ほのか?!
 葛?!

「え……きゃー!出やがったぁ!」
「ちょっと待てえ!そこのちっさい悪役令嬢は、ほのかか!見守りアプリで来たのはわかるが!」
「見て見て!ほのか、悪役令嬢になったんでござるわ!」
「まずは正気になってくれ……!」

 そして。
 嫌そうな顔をして後ずさる幸田の傍にいるひよこ。

「葛……何でひよこの着ぐるみ着てるんだ?」
「ひよこデース」
「キャラかぶっちゃってるよ?!」

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