夜瑠（よる）と世界のファンタジア 〜太陽と月の姫〜

明日は林間学校なのに……

　よる夜瑠は……世界……呼……！！
　旅……無理……！

●


　お父さんとお母さん、またケンカしてる。
　先週くらいからずっと、ずっと。

　これじゃ、眠れないよ。
　明日は林間学校なのに。

　二階まで聞こえてきてるからね？
　隠したって、ケンカしてるのわかってるんだから。

　でも。

　トイレに行くフリしてわざとすこし足音をおおきくすると、ふつうのお話みたいになる。

　それから。

　しばらくすると、ケンカしてるような声が聞こえてくる。
　
　『ケンカしてるの？』って聞いたのに。
　お勉強頑張るから、次のテスト頑張るからって言っても。
　
　お花を飾ってみたり、いっぱい笑うようにしても。
　
　お父さんもお母さんもその時は頭を撫でてくれたり笑ったりするけれど、それだけ。夜にまた、ケンカしてる。

　ねえ、お父さん。
　お母さん。
　
　私、怖いよ。
　ケンカしちゃヤダ。

　お父さん。

　いつもみたいに、にこにこ笑って？
　しょんぼりした顔で笑ったらヤダ。

　お母さん。

　また、おしごとおつかれさまって、ぎゅーってしてあげて？
　よるだけじゃお父さん、ちょっとさびししそうだよ。

　お手伝いするから。
　なかなおりのためにがんばるから。

　だから。
　だから。

　よるのことを見て？
　よるのお話を聞いて？

　よるは、大事なことを教えてもらえないの？

　いやだ、そんなの。

　子どもだって、大事なことを言えるんだよ？


●


　よるは悪い子になっちゃいました。
　こっそりとお外に来ちゃった。

　だって、ずっとケンカしてるんだもん。
　よるが入っていくと、その時だけなかなおりして。

　何か、ひとりぼっちな気分。

　でも。

　こうなったら、よるだって泣いてばっかじゃないもんね。
　心配して、二人で探しにくればいいんだよ。

　へへーん、だ。

　林間学校のリュックも持ってきたし、スマホのバッテリーもOK。
　何かドキドキする！

　いつもとちがう、いつもの公園。
　学校帰りにはいっぱいいる大人も子どもも、だれもいない。

　この時間に一人で外に出たことないからフシギ。
　
　見つかったらおこられちゃうかな……。
　うちのすぐそばの公園だから、大丈夫だよね。

　あ、少し元気が出てきたかも。

　風がふわふわ～って、気持ちいい。
　葉っぱと葉っぱが、さわさわっておしゃべりしてる。

　そうだ！

　このお話をお父さんとお母さんにしたら、笑ってくれるかも！

　今週、三人で公園に来て。
　もしお休みの日だったらお弁当食べて。
　
　そのうちにお父さんが、お母さんにごめんなさいするの。
　しょんぼりした顔で。
　お母さん、ごめんねって。

　そしたらお母さんはあわてて、お父さんの手を握るの。
　いっぱい怒ってごめんね？って言うの。

　それでそれで！

　しょんぼりした二人に私が抱きついて、もー終わり！いつものお父さんお母さんに戻って戻って！って言えばケンカはおしまい！

　ケンカは……もう。
　おしまい……。

　……ぐすっ。

　
　

　にゃあん？




　……あ！
　ひぐれ日暮れ！

　いけないんだあ、こんな遅い時間にお外出て！
　あ、よるもでした。えへへ。

　真っ黒さんだから夜だと見つけにくいね。

　うりうり。
　うやうやー。

　えへへ、ふさふさのふわふわが気持ちいい！
　もうちょっと、さわらせて！