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お母さんの気持ちと、ケンカの理由②
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「え? よ、よよよ、よる! どうしたの? もう遅い時間だよ。明日は林間学校で早起きなんだから、もう寝ないと!」
和樹があわててる。わたしもよるの表情に和樹のシャツをぎゅうってつかんだ。
しまった。
しまった!
ここのところずっとこの話をしてた。アツくなってムキになっちゃうこともあったけど、よるに聞かれてないと思ってた。バレないようによるが寝た後に話してたつもりだったけど。
くちびるをアヒルにして。
目をウルウルさせて。
しょんぼりとわたしたちを見あげてくる、よる。
これは、今日はじめて聞いた、の顔じゃない。
体がふるえる。
わたしは、こんなに何かを言いたそうにして、何も言わないよるを。
こんなに悲しそうな顔をして、わたしたちに抱きついてこないよるを知らない。
「よる? よる! ちがうの!」
和樹といっしょによるにごめんなさい、しないと!
「……ケンカ、してるの?」
「ち、ちがうよ! お父さんはお母さんといつもなかよしでしょ? でも今は大事なお話をしてて、たまたま大きな声が出ちゃったんだ。よるもお母さんも、ごめんね?」
「そ、そうそう! いきおいで『えいやあー!』っておっきな声でお話しちゃったの! ごめんね、心配しちゃったよね。ほらほら! 今日もこんなに仲良し!」
和樹にしがみついて、よるにむかっていっしょに横ピース。すこしだけよるが、ホッとした顔をする。
でも。
わたしたち、何してたんだろう。
よるのための話とか。
よるの未来の話とか。
よるをこんな顔にさせてまで、すること?
和樹と目があった。
たぶん、同じことを考えてる。
「大事な、お話……?」
「そう! それでお父さんとお母さん、いっしょうけんめいマジメにお話をしてたから……もしかしてケンカしているように見えちゃったかな、ごめんね。俺がいけないんだ」
「そう、なの?」
「そうそう! でも私もいっぱいいけなかった! ごめんね? 明日は林間学校だからはやく寝ないとね」
こくり。
わたしたちをかわりばんこで見て、よるがうなずいてくれた。でも、和樹はわたしのエプロンを、わたしは和樹のシャツをつかんだまま、動けない。
よる、ごめんなさい!
よる!
「……よる、も」
「ん? どうしたんだい?」
「なぁに? よるもどうしたの?」
えんりょしながら話しだしたよる。
「大事なお話だったら、よるもいっしょに……」
!!!
おもわず、和樹の顔を見た。
まっさおな顔で、和樹も私を見ている。
「……ううん。よるはもう寝るね! お父さんお母さん、おやすみなさい!」
小走りでリビングを出ていくよるに、わたしたちは立っていられなくて座りこむ。
「和樹……ごめん。全部私のせいだ」
「ちがうよ、俺もアツくなってファルルに話しかけてたからいけなかった」
「よるにあやまりにいってくる!」
「待って! よるは明日の朝早いから、あやまったあとに『林間学校から帰ってきたら全部話す』って約束だけよるにしておこうよ」
そうだ。
グランディアやわたしたちのことを説明していたら、寝るのが夜中になっちゃう。それはダメ。
「うん……わかった」
「あとは今、よるが起きてるうちにあやまりにいこう」
●
「よる、寝たかい?」
二階にあがって、そっとよるの部屋のドアをノックして、和樹が小さく声をかける。
「……寝たのかな」
「そうかも……」
ドアをあけてみると、ベッドのよこにリュックを立てかけてよるが寝ている。
「戻ろうか。起こしちゃかわいそうだ」
「うん……」
ドアをしめ、二人でしずかに階段をおりてリビングに戻った。
「コーヒーいれるけど、ファルルは紅茶でいいかい? いったん落ち着こう。ファルル、涙をふいてあげるから」
「私もコーヒーがいい……ありがとう、ぐすっ」
和樹が私の涙を優しくふいてくれる。
でも。
泣きたいのはよるのほうだと思うと。
よるがどんなにツラい気持ちでいたのかと思うと。
涙がとまらない。
お母さん失格だよ。
よる、ごめんね。林間学校から帰ってきたら、かならず全部話すから……。
和樹があわててる。わたしもよるの表情に和樹のシャツをぎゅうってつかんだ。
しまった。
しまった!
ここのところずっとこの話をしてた。アツくなってムキになっちゃうこともあったけど、よるに聞かれてないと思ってた。バレないようによるが寝た後に話してたつもりだったけど。
くちびるをアヒルにして。
目をウルウルさせて。
しょんぼりとわたしたちを見あげてくる、よる。
これは、今日はじめて聞いた、の顔じゃない。
体がふるえる。
わたしは、こんなに何かを言いたそうにして、何も言わないよるを。
こんなに悲しそうな顔をして、わたしたちに抱きついてこないよるを知らない。
「よる? よる! ちがうの!」
和樹といっしょによるにごめんなさい、しないと!
「……ケンカ、してるの?」
「ち、ちがうよ! お父さんはお母さんといつもなかよしでしょ? でも今は大事なお話をしてて、たまたま大きな声が出ちゃったんだ。よるもお母さんも、ごめんね?」
「そ、そうそう! いきおいで『えいやあー!』っておっきな声でお話しちゃったの! ごめんね、心配しちゃったよね。ほらほら! 今日もこんなに仲良し!」
和樹にしがみついて、よるにむかっていっしょに横ピース。すこしだけよるが、ホッとした顔をする。
でも。
わたしたち、何してたんだろう。
よるのための話とか。
よるの未来の話とか。
よるをこんな顔にさせてまで、すること?
和樹と目があった。
たぶん、同じことを考えてる。
「大事な、お話……?」
「そう! それでお父さんとお母さん、いっしょうけんめいマジメにお話をしてたから……もしかしてケンカしているように見えちゃったかな、ごめんね。俺がいけないんだ」
「そう、なの?」
「そうそう! でも私もいっぱいいけなかった! ごめんね? 明日は林間学校だからはやく寝ないとね」
こくり。
わたしたちをかわりばんこで見て、よるがうなずいてくれた。でも、和樹はわたしのエプロンを、わたしは和樹のシャツをつかんだまま、動けない。
よる、ごめんなさい!
よる!
「……よる、も」
「ん? どうしたんだい?」
「なぁに? よるもどうしたの?」
えんりょしながら話しだしたよる。
「大事なお話だったら、よるもいっしょに……」
!!!
おもわず、和樹の顔を見た。
まっさおな顔で、和樹も私を見ている。
「……ううん。よるはもう寝るね! お父さんお母さん、おやすみなさい!」
小走りでリビングを出ていくよるに、わたしたちは立っていられなくて座りこむ。
「和樹……ごめん。全部私のせいだ」
「ちがうよ、俺もアツくなってファルルに話しかけてたからいけなかった」
「よるにあやまりにいってくる!」
「待って! よるは明日の朝早いから、あやまったあとに『林間学校から帰ってきたら全部話す』って約束だけよるにしておこうよ」
そうだ。
グランディアやわたしたちのことを説明していたら、寝るのが夜中になっちゃう。それはダメ。
「うん……わかった」
「あとは今、よるが起きてるうちにあやまりにいこう」
●
「よる、寝たかい?」
二階にあがって、そっとよるの部屋のドアをノックして、和樹が小さく声をかける。
「……寝たのかな」
「そうかも……」
ドアをあけてみると、ベッドのよこにリュックを立てかけてよるが寝ている。
「戻ろうか。起こしちゃかわいそうだ」
「うん……」
ドアをしめ、二人でしずかに階段をおりてリビングに戻った。
「コーヒーいれるけど、ファルルは紅茶でいいかい? いったん落ち着こう。ファルル、涙をふいてあげるから」
「私もコーヒーがいい……ありがとう、ぐすっ」
和樹が私の涙を優しくふいてくれる。
でも。
泣きたいのはよるのほうだと思うと。
よるがどんなにツラい気持ちでいたのかと思うと。
涙がとまらない。
お母さん失格だよ。
よる、ごめんね。林間学校から帰ってきたら、かならず全部話すから……。
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