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第二章 入学式
《side 兎道 湊都①》 迷子
しおりを挟む鏡に映っているのは耳が隠れるくらいまで伸ばした黒髪に頭のてっぺんからアホ毛を跳ねさせた美少年。その身に纏うはカーキ色の軍服。
それはとてもシンプルで下手したら学ランに見えてしまうものだった。襟や袖に入った赤色の模様やベルトが辛うじて軍服らしく見せている。
そしてベルトに吊り下げるように帯棒する魂写棒。
「うっわ~.....感動。俺ってこんなイケてるんだ」
兎道 湊都こと俺は鏡に映る自分にうっとりとため息を吐いた。自分のこと美少年て言ったけどこれはマジだ。決してナルシなわけじゃない。これでも近所の友達に告白されたり、誘拐されそうになったりとこの可愛さのせいで波乱な日常を過した。
と、それは置いといて。
今日は観式学園の入学式だ。
だから急いで入学式会場まで行かなければならないのだが.....。俺はトイレという名の建物から外に出て当たりを見渡す。
木、木、木、き......森だ。
「なんで俺はこんなところにいるんだ?」
おかしい。俺はさっきまでちゃんと入学式会場に向かっていたはずだ。なのにどうして森に.....?
現実逃避したくて偶然見つけたトイレで鏡を見ていたが、ヴァイオレット色の瞳がただ見返してくるだけでなんの解決もならなかった。
「どうしよう.....あ~、取り敢えず歩くしかねぇか」
ここで立ち止まっていてもしょうがないと思い俺は適当に歩くことにした。声を上げていれば誰かが気づいてくれる....といいなぁ。
「誰かーー!!居ないか一一!?おーい!!」
これって絶対助けに来ない気がする。なんか森の雰囲気が怖いし、何か出てきそうだ。漫画とかでもこういうシチュエーションあるよな、助けを呼んでいるのにガサッと草むらから化け物が.....
ガサッ!!
「ひぎゃ!?」
なになになになに!?!?
ドッドッドッと心臓が爆音響かせているのを感じながら音のなった草むらを振り向く。
すると俺同じ軍服を着た男と目が合った。
「は?」
「あ~ここに居たのか!いや~、声掛けても君どんどん森のほう行っちゃうから焦ったよ」
「ぇ、その?誰??」
「そんなこと今はどうでもいい!着いてきなよ!こんな森まで来ちまって時間がヤバい」
「あっはい」
俺を助けに来てくれたのかな?確かに入学式までそう時間が無いかもしれない。
よかった、優しそうな人で。同じ軍服だけど襟に入っている赤い模様が二本だから二年生か....
「あの本当にありがとうございます。俺遭難するところでした」
「いいよいいよ。この学園クソみたいに広いからね。新入生はだいたい迷うもんさ。でも、あまり大声は出さない方がいいぞ。この森は聖域外だからカタラが彷徨いてるんだ」
「へ~....」
聖域外だったのか.....。
「あれ?反応薄いね。もしかして腕に自信ある感じ?」
「ええまぁ」
「ほーん、そんな可愛い見た目してるからてっきり補助系の異能だと思ったわ。戦闘系かぁ.....めんどくせぇな」
「え?すいません。最後の方聞き取れなかったんですけど、なんて言いました?」
「いんや、逞しいナーって言っただけ」
「逞しいって....えへへへ。ありがとうございます」
この見た目のせいで逞しいとか言われたことがないから嬉しいぜ。家族は可愛いしか言わねぇし、友達は俺が守ってやる!ってなんか張り切ってるしでちょっと居心地が悪かったんだよなぁ。
逞しい.....えへへへへへ♪
なんかむず痒い
その先輩の逞しい発言に俺は嬉しくなり色々と話しかけた。この学園の授業のこと。設備のこと。イベントのこと。それはもう色々と。
我ながらがっつき過ぎたかなと思ったが、先輩は笑って答えてくれた。
(いい先輩だな)
入学初日からこんないい先輩に出会えたことに自分の幸先の良さを噛み締める。
「じゃ、最後に俺からこの学園で過ごすにあたっての注意事項を.....」
「注意事項?」
「ああ、この学園はさ.....弱肉強食なんだよね。だから容易に独りになると狩られるぜ?」
「は?」
先輩は人の良さそうな顔をしていたし、歩きながらこの学園のことを色々話してくれるしで、いい人だと思った。思っていたのに....。
「遅かったじゃねぇか!」
「間近で見るとほんと可愛いなぁ」
「それね~。目がくりくりでちょー可愛い」
「はー疲れた。こいついつの間にか奥に行ってて焦ったわww」
「おつおつ~w」
周りをよく見ずに先輩と話していた俺は自分が入学式会場ではなく、いかにも悪さするのに適してますと言えるような場所に連れてこられていることに気づかなかった。
ねっとりとした視線を向けられ『ああ、なるほど』と納得する。この視線は幾度も感じたことがあるため、こいつらが俺に何をしようとしているのかすぐに分かった。
「先輩....俺を襲うつもりだったん?」
そう聞いたがもう答えは分かりきっている。そのニタニタと浮かべた気持ち悪い笑みが答えだろう。どういう訳かあの人の良さそうな顔をした先輩もどんな魔法を使ったのか今ではただの醜い男にしか見えなくなっていた。
「そうそう!弱そうで可愛らしい見た目の子と遊びたかったんだよね~」
「最初に目をつけたのは俺だぜ?」
「はぁ!?僕だし!!」
「なんだとゴラ!?」
「まぁまぁどーせ輪姦すんだし、喧嘩すんのやめよーか」
「チッ」
「ふん」
「あはは~怒られてやんの!」
どうやら俺をここまで連れてきた野郎がこの三人のリーダーっぽいな。
リーダーの優顔、おちゃらけた金髪、柄の悪そうな坊主頭、チビ(俺よりはデカい)の眼鏡の四人。
クソ....四人をいっぺんに相手すんのはきちぃな。
いや、きついどころじゃない。無理だ。
(人を斬れねぇ俺がこの状況から逃げて入学式へ?.....無理ゲーじゃん)
そう、俺は人が斬れない。
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