狂った世界に中指を立てて笑う

キセイ

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第五章 面倒事はいつも突然やってくる

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「け、ケーキ君!!」


覗いてたの君かっ!!!!

でも考えてみれば最後に一緒にいたのはケーキ君だから居るとしたらそりゃ君だよね......

ホッとしたような気持ちになりなが僕の肩に手をかけている彼に目を合わせると、彼は疑心の表情を浮かべていた。


「ケーキ君?」

「.......お前は本当に一条 燈弥か??」

「当たり前じゃないですか」


急に何言ってるんだ?
するとケーキ君はいきなり両手を伸ばしてきて.....
右手は僕のウィッグに、左手は瓶底メガネに。
え?と思うまもなく彼は両手を素早く引いた。


「っ、本当に一条燈弥なのか!?!?」

「!?!?」


パサリと首筋にかかる髪の感触に、広がる視界。

あ、ヤバい
どうしよう
見られた
バレた

思考はぐるぐるその言葉で埋め尽くされ、けれども身体は自然と動く。

無感情に
機械的に
切り捨てるように
斬り捨てるように

魂写棒アルマタクトを抜い――


「......悪い。混乱してた。声とかお前そのまんまだよな」


驚きで肩が大きく揺れ、
頬に添えられるひんやりした手に魂写棒に伸ばしていた手が止まる。


「お前もお前で大変そうだなぁ.....」


彼の瞳に宿る感情は?
憐憫
共感
安堵


前にもその感情を向けられたことがある。誰に向けられたかは今となっては思い出せないが、その時の激情は覚えている。

何に対しての憐憫なの?
僕の何に対して共感した?
僕の何を見て安堵した?


そんな感情を僕のことをよく知らない他人から向けられるなんて腹立たしい。

僕のことをよく知りもせず憐憫?
他人に憐憫されるほど僕は惨めじゃない。
それは共感も安堵もそうだ。
僕の何を知ってそんな安っぽい感情を向けている?


嗚呼、怒り以外感じられない。




......だけどなんでだろう?
前はそう激情に駆られたのに、


ケーキ君に向けられるその視線に全然腹が立たないんだ。


おかしいな?おかしいね?
おかしすぎてなんだか笑ってしまいそうだ。

きっと彼も色々とあったのだろう。

だから僕はケーキ君に憤りを感じないのかもしれない。彼もまた僕と同じでクソみたいな過去を持っているのかもしれない。

でも、
でもね?

僕は傷の舐め合いなんて御免だよ

添えられた手に擦り寄り彼と目を合す。


「っ」


息を飲む音が聞こえる。
僕に釘付けなっているのがわかる。
僕を意識したのが目に見える。
触れている手に熱が宿ったのが感じられる。

目を丸くしている彼を見てクスリと笑みが漏れた。


「何を思ったのか分からないけど.....君の物差しで僕を量らないで欲しい。それで勝手に身近に感じられても不愉快だ」

「――わ、るい」


うん、いいよ。
僕はケーキ君から離れ一定の距離を保つ。
さて.....これからどうしようか。ケーキ君を殺すのはなんだか惜しく感じるから、秘密にしてもらう方向にしようかな。


「ケーキ君。僕は一条 燈弥で合ってるよ。変装してたのは、ほら.....自分で言うのもアレなんだけど、僕見た目がこんなんだからさ。素でいると色々と大変なんだ」


先程の空気感を塗りつぶすように砕けた口調でそう言えば、ケーキ君はハッとしたように僕に視線を合わせた。


「......そりゃー、その見た目だとなぁ。もう一度聞くけど本当に燈弥か??いやっ、お前が自分を燈弥だって言うんだから燈弥なんだろうけど!~ダメだ!受け入れるのに時間がかかる!!っていうか以前メガネの下見せてもらったことあったけど顔違くねぇ!?」


いつものような返しに内心ほっとした。さすがの僕もさっきの空気感はキツイ。自分でやっといて何言ってんの?って話だけど……


「アレはメイクだね。平凡に見せるメイク。今日は....というかここ最近はメイクできなくて、いや面倒くさくて?まぁいいや。ここ最近はメイクせずにメガネかけてたからなぁ。想定外」

「4人部屋のとき1番寝るの遅くて、1番起きるの早かったのはその為か!」

「うん。今は1人部屋だから4人部屋の頃よりは楽になってる.....はずなんだけど、上手くいかないねぇ人生って」


委員長のせいで安心して変装を解けない。
まぁそんなことは今どうでもいいか。


「それでケーキ君.....このことは他言無用で。いいですね?」


ウィッグを被りピンをパチリと留め、瓶底メガネをかける。


「知ってんのは俺だけか?」

「はい、君だけです」

「そうか俺だけか。......なんかそっちの格好の方が落ち着くな。口調も」

「慣れてるからですよ」

「いーや!さっきのお前は間違いなく人外だった」

「なんですかそれ?人外って。言われ慣れてますけど」


よく神様とか天使とかモノノ怪とか
色々言われる。僕の顔はそれほどのものらしい。


「そういやなんで倒れたんだ?やっぱ過労か?」

「その通りです。委員長が休みをくれないせいで今日の全校集会前こんなざまに......委員長に会うのが嫌ですね。どんな文句を言われるのか」

「今日こっち泊まるか?」

「泊まる」


もう今日は委員長に会わない。風紀の業務はお休みして授業受けたら寮に帰って大人しく寝よ.......


「あ~......燈弥が寝てる間、俺見張ってやるよ」

「お願いします」


後のことなんてもう知らん。あとの僕に任せよう。今日は寝る!











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