狂った世界に中指を立てて笑う

キセイ

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第七章 夏休み☆

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「燈弥君!荷物の移動手伝うで!」

「ありがとう。じゃあこの荷物を410に持っていって」

「わかった!410.....410?燈弥君何言うとん?僕の部屋は804やで?」

「誰が変態の部屋に泊まると言った?」

「えぇ!!なんで!?僕の部屋の方が広いで?4人部屋なんか窮屈やろ。まぁ僕んとこ今犬飼っとるから、少し狭なっとるけど。で、でも犬預けるから部屋の狭さは解消できる!!それに大事なんは僕が燈弥君の素を知っとるいうことや。のびのび過ごせるで?」


ここって犬飼えるんだね。まぁたとえ犬が居ても居なくても泊まらないけど。
まず.....


「――君がいる時点でのびのび出来ないから。.....ん?君は成績上位者なの?」


そう聞けば残念そうな顔から一転、彼は口元をニヤつかせた。


「そやで!」

「へぇ....でも、決めたことだから。君の部屋には泊まらない」

「なんでやぁぁぁぁぁ.....!」


ちなみにケーキ君は了承済み。話がわかる友人がいて僕は嬉しい。メールでは結構やりとりしてるけど会うのは久しぶりな感じがするし、いい機会だ。

嘆く糸目キャベツの変態を一瞥し、僕は荷物を持って古巣に戻った。



「1週間よろしくねケーキ君」

「おぅ、近況報告よろしく」

「.....ははっ(乾いた笑い)」


懐かしい4人部屋。
あーあ、入学式の頃に戻りたい。


「文貴も湊都もお前が来んの楽しみにしてたぜ」

「伝えるの早いですねケーキ君。つい30分ほど前のことですが?」

「30分もありゃ伝わるだろ」

「それもそうですか。.....3人とも寮に残ってるんですね?帰省しないんです?」

「本当は帰りたくねぇらしいけど文貴は後半に帰るってよ。......湊都は『子離れさせる!』って言ってたから帰らねぇんじゃね?」

「あははは。兎君の親、なんだか想像つきましたよ」

「はっ、だろ?俺も笑っちまった」

「それでケーキ君は?」


黒に近い茶色の瞳をじっと見つめる。
その瞳は感情の揺らぎがなく、驚くほど凪いでいた。


「俺?俺は――帰れねぇなぁ。帰りたい場所でもねぇし、帰って歓迎される家でもねぇ」

「おや、君も訳アリの家出身ですか。僕も気まづくて帰れないんですよねぇ」

「まぁ、あんなご尊顔してたら問題の一つや二つあるだろ。逆になにも問題を抱えてない方がおかしい。当ててやろう……昼ドラも真っ青になるドロ沼家庭。そんで燈弥のせいで家庭崩壊」

「僕のせいですか、言いますね!あっはっはっは」

「ふは、ははははっ」


2人して笑う。
やっぱり僕、ケーキ君とは仲良くしたいなぁ。
人懐っこく笑う彼の姿にそう思った。


「おっと、言うのが遅くなったな。おかえり燈弥」

「――ただいまです。ケーキ君」




その後荷物を寝室に置き、懐かしき座布団に座る。気を利かしてお茶を出してくれるケーキ君は本当に出来た人だ。彼に友達が多いのも納得。


「あ、先程兎君も楽しみにしていると言ってましたが....彼、部屋に帰ってきてるんですか?」


兎君はシリアルキラーを逃がした罰で当分風紀に箱詰めだとトサカ君に聞いた気がする。だから部屋には帰っていないと思っていた。


「.....帰ってきてない。誤解する言い方しちまったな。『自分がこんな状況じゃなきゃ歓迎会すんのに』って湊都は言ってた」

「あらら。そういうことでしたか」


会えないということね.....残念。
校内で兎君を見かけたことがあるが、可愛らしい顔をやつれさせてフラフラと歩いていた。とても心配。


「兎君のこと気にかけてあげてくださいね」

「俺がやらんでも芙幸がやるだろ」

「確かに。でも、気にかけてくれる人が多くて困ることはないでしょう?」

「.....そうだな」


面倒くさそうに言っているが、僕は知っている。ケーキ君が面倒見がいいことを。
じゃなきゃ洗濯したり、料理を作ってくれたりしないよね?こうやって久しぶりに帰った僕をもてなしたりしないよね?


「君ってば、不器用だよねぇ」

「急になんだ?何の話だ?」

「ケーキ君なにか軽いもの作ってよ。実は昼食食べ損ねちゃってさ」

「話変えたな......はぁ、しょうがねぇ。燈弥は何が好き?好きなもん作ってやる」

「じゃあフルーツサンドで」

「すぐに夕飯だからひとつで我慢しろよ~」


キッチンへ向かう背中に「はーい、お母さん」と茶化すように笑いながら、変装を解く。兎君は来ない、文ちゃんは用事で帰るのが19:00頃になると今メールが来た。ならこの部屋にいるのは僕とケーキ君だけ。変装を解いても問題ない。

....やっぱり素が1番楽だ。

髪をかきあげ、風を通せば強くそう思ってしまう。
はぁ、こういう気持ちが隙を作るんだろうな。現に『ケーキ君ならいいか』とこうして変装解いてるし。


「誰がお母さんだ。そこはせめて.....」

「せめて....なに?」


パチリと目が合う。分厚いレンズを介さず見るケーキ君はなんだか新鮮な気持ちにさせされる。
彼って本当に顔が整っているなぁ。

そう思っていると、ふいにケーキ君の顔が真っ赤に染まる。


「――なんでもねぇ!つうか急に素に戻んなよ!!心臓止まったらどうしてくれるっ!?」


捲し立てるように言い捨て、ケーキ君は足早にキッチンへ向かった。


「あは!あっははははは!!」


その姿に吹き出すように笑う。


「ケーキ君ってばなに照れてんの?」



顔の良さに照れるって、意味が分からない。
どうして照れるんだろう?

意味がわからなさすぎて思わず笑っちゃったよ……









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