狂った世界に中指を立てて笑う

キセイ

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第八章 体育祭

《side 兎道 湊都》

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結局副会長に追いつくこと出来ず一人で宝玉を届けに行った。いや、別に俺の歩くスピードが遅かったからとかじゃくて、普通に地図読めなかっただけ。

歩いてると自分が地図のどの辺にいるのかすぐ分からなくなる。副会長どころじゃなかった。
メールで永利が宝玉奪われないようにしろって脅すから襲撃にビクビクとしながら恐る恐る歩く羽目になったし。

.....まぁそれも取り越し苦労だったわけだけど。

襲撃ねぇじゃん。襲ってきたのはせいぜいカタラくらいだっぞ?ビクビクして損した。

帰ったら永利に脅すなよ!と言ってやろう。
そう決心した俺は噛み付こうとしてきたカタラを真っ二つに切り裂く。

さてさて、俺は今どこに居るんだ??


「.....いやマジで俺今どこ?燈弥の居るC-5地点ってここら辺だろ?味方どころか人の気配すらないんですけど??」


地図と睨めっこ。
目印とか書いてあるけど、これはなぁ.....?
樹齢100年っぽい木があるって言われても分かんねぇよ!?って話だぞコレ。木がどれくらいあると思ってんだ。探せるか馬鹿野郎!

この地図作ったやつ誰だ!?

.....戻って会長に聞きに行くべきか?


「や、やめとこ。あの人怖ぇし」


さっきのことを思い出して身震いする。
俺が宝玉を届けに行った時、会長は台座前に一人佇んでいた。それだけなら別に怖いとか感じなかったんだけど――

あの人....なにか白い錠剤らしきものを噛み砕いたと思ったら、急に台座に頭打ちつけたんだよなぁ。

んで、顔上げたらけろりとして何もなかったかのようにニコニコするし。

怖すぎだろ。

さすがの俺も声かけるの躊躇った。


「ひぃん。燈弥に早く会いてぇ~。というかこの際2年生でもいいから人に会いたい」


会長のことを振り払うように嘆く。一人はキツい。いい加減寂しくなってきた。


「誰かぁぁぁぁぁぁ.....ここ何処だよぉぉ!」

「迷ってんのか?」

「迷ってんの」

「お前らんとこの地図分かりにくいもんなぁ」

「マジそれ――はっ!?!?誰だ!!」


斜め後ろを歩く『誰か』から離れるように飛び退き、魂写棒シェイカーを構える。


「久しぶりだなァ」


人に会いたいとは言ったけどこいつだけはやめろよ神様!!!

立っていたのは白髪赤目の獣。俺の因縁ある相手だった。マジもう逃げたい.....ん?


「そんな睨むなよ。おれはただ情けない叫び声を辿ってきただけだ。というか、お前にとっちゃおれは救世主だろ?」

「.....なんで戦闘狂のフリしてんだよ快楽殺人鬼シリアルキラー


そう言うと男の口元が弧を描いた。


「あっれ~?なんで分かった?おれっちと雅臣見分けんの家の人間でも無理なのに」

「いや、だって雰囲気違いすぎじゃん。俺がどれだけ戦闘狂に追っかけられてると思ってんだ。戦闘狂はもっと、こう.....雰囲気が肉食獣っぽい」

「んだよ。お前雅臣の獲物だったのか」


ちぇ~と口を尖らせるシリアルキラーがすごい子供っぽい。戦闘狂と同じ顔してるせいで、その仕草に違和感ありまくりだ。


「あ、そうそう。お礼言ってなかったな。おれっちを牢から出してくれてありがとー。おかげで毎日楽しく過ごせてる」


俺こいつ嫌い。嵌めたくせに、俺に礼を言うとか完全におちょくってんじゃん。


「それは良かった.....で?誰も殺してないよな?」


シリアルキラーの今までの事件を調べた。俺がどんな人間を逃がしてしまったのか正しく知るため。まぁ調べた内容は散々だったが。
......知らなきゃ良かった。

遊ぶように身体を開き、弄ぶように開いた身体で欲を発散する。


超胸糞悪い


「殺してない殺してナイ。雅臣に見張られてっから。......すげぇ目で見てくんじゃん。おれっちのこと嫌いなの?森では仲良くしてくれてたのに....悲し~~」

「黙れ。この異常人が」


ヘラヘラと笑う男に殺意が湧く。こいつがやっているのは屍姦だ。いや、屍姦よりタチが悪いかもしれない。

なんでこんな人間が存在するんだろう?


「あのさァ.....湊都はおれっちの恩人だから優しくしてやってるけど――あんま調子乗ってんと殺すぞ」

「っ」


シェイカーを持つ手が震える。シリアルキラーに向けている切っ先がぶれる。


「湊都がおれっちを嫌うのって人殺しだからだろ?」


ニヤニヤと。戦闘狂とは違った粘着そうな笑み。
シリアルキラーが1歩近づいてきたため、俺も自然と同じ距離だけ足が下がる。


「いかにも平和な環境で育ちましたって顔だもんなお前。きっと殺すとか、傷つけるとか.....自分には無理って思ってんだろうな。同時に、平気で殺したり傷つけたりする人間を軽蔑してんだろうな」

「.....俺に近づくな」

「湊都の生き方って生きづらそう。無能力者ならまだしも異能者では無理だよソレ」

「っ、近づくなって言ってるだろ!」

「そんな窮屈な世界で生きてる湊都が可哀想だから、おれっち一肌脱いじゃう♡」


一気に距離を詰められ、頬をツーっと撫でられた。嫌悪感から咄嗟にシェイカーを薙ぐが、ガキンと金属音を鳴らし刃は風に阻まれる。


「いひひひっ」


俺はこいつと出会った時、なりふり構わず逃げるべきだった。今はもう、赤い瞳に囚われたように足が動かない。



「さぁ、湊都.....この世界に順応しようぜ」





​────おれは、俺はその日、とうとう一線を越えてしまった。











《side   end》


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