狂った世界に中指を立てて笑う

キセイ

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幕間

《side 兎道 湊都》

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あの悪質なイベントから解放されて数日経った。
イベントのせいと言うべきか、イベントのおかげと言うべきか分かんないが、なんかもう色んな悩みがぶっ飛んだ。自分が何について悩んでいたのかも、今の今までちょっと忘れかけてたし....。


「兎道君、じゃあお願いしますね」

「え?ぁ、おお...」


やべっ、話聞いてなかった!!


「なぁ、爽爾そうじは何話してたんだ?全然聞いてなかったのにテキトーに返事しちまった。俺なんか頼まれたのか....?」


まだ近くにいる爽爾に聞こえないよう、小さい声で芙幸に聞けば、出来の悪い子を見るような目で見られた。....やめろっ、そんな目で見るなよ!悲しくなるだろ!!


「学祭2日目に行われる美コンについてでしょ~。三上君に了承したじゃん。出場することに」

「俺がテキトーに返事したのは美形コンクールだったのか!?そ、爽爾待ってくれ!!」


教室から廊下へと向かう爽爾を呼び止めようとするが、何故か足を止めない。聞こえてるよな!?
座ってる場合じゃねぇ!慌てたせいで椅子が後ろに倒れたが、構うことなく爽爾を追いかける。
が、しかし。


「まぁまぁ、湊都なら大丈夫だって!」


芙幸に捕まった。猫のように脇の下を持ち上げられ、床から離れる自身の脚を呆然と見る。
うっそ、俺ってそんなに軽いのか.....???


「それにほら!優勝者は昇級だよ?やる気出るっしょ!」

「なら立候補者が居てもいいはずだろ!?昇級は誰もが求めるもんって言ってたじゃん!」


人形のように芙幸の膝に座らされ、腹に手が回った。
これはっ、見た事あるぞ.....。教室でよく女子がやってたやつ。自分よりちっさい友達を膝に乗っけて「可愛いぃーっ」って狂ったように頬ずりする....アレだ!!


「あ~....みんな身の程っていうやつを知ってるからねぇ。このクラスで一番の美形は誰かってなったら皆湊都をさすと思うよ」

「清継は!?かっこいいじゃん!!」

「俺はそういうの苦手だからな」

「俺も苦手だよ!!」

「湊都はかわい~から大丈夫だってぇ」

「頬ずりやめろっ!!って、今そんなことしてる場合じゃねぇ!!爽爾は!?どこ行ったんだアイツ....!」

「三上は学祭委員長の所へ向かった。美コンを運営する彼に湊都が出場すると伝えに行ったんだ。本来は俺が行くべきなんだが.....。まぁ、湊都の足止めができるのが俺と芙幸だけという理由のせいでな」


足止め言ってんじゃん!!俺が嫌がること前提で行動してんじゃん!
こうしちゃいられない.....っ、その学祭委員長のとこ行かねぇと!


「なぁ学祭委員長って誰!?どこのクラス!?」

「2-A、針山 珠鳴はりやま たまなという生徒だ。古参組だから気をつけて行けよ。.....湊都なら大丈夫だと思うが、念の為聞かれたことには素直に答えるんだぞ」

「針山先輩な!ありがとうっ」


芙幸の拘束から脱出!!いざ2-Aへ!!
....って、あれ?なんで清継は足止め役なのにこんな親切に教えてくれるんだ??





「針山先輩いますか!?」


あれこれ考えながらたどり着いた2-A。最悪なことに爽爾には追いつけなかったし、すれ違うこともなかった。もうこれは先輩に直談判して出場を取り消してもらうしかない!
針山先輩どこ!?


「針山先輩~、いませんか!?」


もう一度教室内に声をかければ、窓際に座ってペンを走らせていた生徒が立ち上がった。
あの人か?

先端に行くほどピンクがかった白色の髪。歩く度にふわふわと揺れてなんだか綿飴みたいな人だ。

そんな針山先輩らしき人が俺の前に仁王立つ。


「.......お前誰、身長いくつだ」


小さな口から出てきたのは可愛らしくもドスの効いた声。しかもなんか、タレ気味な亜麻色の瞳に睨まれている。....初対面にいきなり身長聞くとかなんだコイツ?身長は俺のコンプレックスなのに。でも、清継が聞かれたことは素直に応えろ言ってたな。

仕方ねぇ.....


「......兎道湊都.............156です」

「!!!!!」


一瞬驚いた顔をすると、針山先輩は効果音がつきそうなほどの笑みを満面に浮かべた。顔良....と面食らっていると、ガシッと肩を鷲掴まれ抱きしめられる。


「俺は157!!うわ、マジかです。俺よりちっちゃい奴居るんだ...すね。名前何!?教えて!あ、俺は針山 珠鳴です。タマ先輩って呼べです」

「????」


さっき睨んできたのが別人のように思えるほど友好的な態度で混乱する....こっちが本性?


「お、俺はちっちゃくないぞ!!」

「うんうんそうだ...ですねぇ。ちっちゃくてかわいぃぃです~」

「たったの1cm差だろ!?お前とそう変わんねぇよ!」

「上目遣い可愛っ!!それで?湊都は俺になにか用があるのかです?」


俺こいつ嫌いーー!!やっぱ白髪系の奴とは仲良くなれそうにないな.....さっさと用件終わらそ。


「.....美コンについてなんだけど」

「あっ!そういえばさっき1-Aの出場者で湊都の名前出てきたです。大丈夫!湊都なら絶対に優勝できるです!!」


ですですうぜぇぇぇ!!話入ってこねぇよ!さっきからなんだそのヘンテコな語尾は!?
ぐっ、落ち着け俺。


「ふぅ.....優勝もなにも、俺出場したくないんだ。出場取り消しできないか?タマ先輩学祭委員長なんだろ....?」

「.................出場取り消しはもうできねぇです。もう登録しちゃったからです」

「そこをなんとか!!」

「いくらかわいい湊都のお願いでも無理です。あ、美コンは自身に似合った装いをしたうえ出場するんです。メイクもしろ下さい。今言ったことをくれぐれも忘れないように!!....です!!」


背中を押されて廊下に逆戻り。え?と疑問に思う間もなく、満面の笑みのタマ先輩が「じゃ、当日楽しみにしてるです」と言い教室のドアを閉めた。


「......は?」


俺はしばらくそこから動けなかった。それだけタマ先輩の存在と言動は衝撃的だった。










《side   end》

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