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第十三章 命尽きるまで貴方を想ふ①
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しおりを挟む────ドッ、ドッ、ドッ、ドッ
心臓が口から飛び出そうだ。それくらいバックバク音が鳴っている。骨が軋むほど強く抱きしめられている現状も相まって、もうなんか倒れそう。
そうです、はい。今僕はヒナちゃんにぎゅうぎゅうに抱き締められています。
さっきまで風紀室に居たのに、いつの間に僕は委員長室に移動したのだろうか?瞬間移動??
でもアレは瞬間移動というより首根っこ掴まれて放り投げられたような感覚だったけど....。
あれが黄犀の異能かぁ。見たことあったが実際に自分が体験するとすごい怖い。だってさっきまで地面に立っていたのに、いつの間にか落下に変わってるんだよ?.....恐るべし黄犀の異能。
でも本当に恐ろしいのはこの状況だ。
言うが落下してきた時、既にこのぎゅうぎゅう締めだった。つまり黄犀の異能が発動すると同時に抱きつかれたわけだが.....いや、なんかグイッと引っ張られた感覚はあったんだよ?でもそれを感じたと同時にもうこの景色だったから.....感情が追いつかない。
「.......ヒナちゃん?」
恐る恐る名前を呼ぶ。
もしかして守ってくれたのだろうか?
彼からの返事を期待したが、数十秒経っても返事は返ってこなかった。未だにぎゅうぎゅう締め。落ち着かせるように僕もヒナちゃんの背に手を回しポンポンと軽く叩く。....締めつけが強くなった。中身が出ちゃうよヒナちゃん。
そこでふと、彼の握る黒い物体に気づく。
銃だ。彼のサナートの異能。でも僕の知る普通の銃と違って、銃口から長い筒のようなものが伸びていた。
えっ、ちょっと待って?
心臓を落ち着かせ、耳を澄ます。
するとドアの向こう側からギャーギャーと騒ぐ声が微かに聞こえた。
「......もしかして反射的に撃った?」
「.............................撃った」
「ふっ、んふwあははは!大丈夫だよ。あの騒ぎようからして生きてる生きてる。落ち込まないでヒナちゃん」
「落ち込んでねぇよ。.....まぁ安心はしてるが」
「へぇ!!安心!!」
「妙な勘ぐりはやめろ。俺はアイツらが死んだらお前が悲しむと思って銃口をズラしただけだ」
「彼らが死ぬと確かに悲しいね。でも僕は君の手で殺される彼らを見るのが1番悲しい」
「......そうか」
「あれ?照れてる?」
「そうだな照れてる。まさかお前がそんなに俺の事を思ってくれてるなんて思わなかったからな」
背中に回された手が僕の頬に触れ、クイッと顔を上げられる。見上げる彼の顔は口元を緩め嬉しそうに目を細めていて....なんとも穏やかだ。
そのままジッと見つめられ、なんだかまた熱が上がってきた。彼のそういう笑顔はまだ慣れない。うーん、なんか敗北感。ヒナちゃんのクセに僕をイジめるとは.....今すぐにでも変装をやめて彼の顔を見詰め返したい。
――あれ?
ムスッとしてたら温もりが消えた。
「暇だろ?今日はここに居ろよ」
僕から離れたヒナちゃんに手を引かれソファに座らされる。
「暇じゃないです。僕には授業が───」
────キーンコーンカーンコーン.....
「暇だろ?」
「......えぇ暇ですね」
暇という名のサボりになったけど。
もう授業に行く気が無くなったので、僕に凭れる彼を押しのけようと踏ん張っていた手を下ろす。はいはいどーぞ、好きにくっついてください。
「って、君は仕事ですか?僕を引き止めといてそれはないんじゃない?暇な僕を構う義務があるのですよ君は」
「かわ─────ん''ん''っ、じゃあなんか話題寄越せ」
書類をテーブルに投げ置いたヒナちゃんは偉そうに言った。最初何か言いかけてなかった?気のせい?
「話題....話題......あ、そういえば」
スマホを取り出し、彼にある画面を見せる。
「星菜のお爺様からメール来たんだよね。メアド交換した覚えもないのになんで僕のメアド知ってるんだろ?五大家だから?」
「.......おい、そんな事気にしてる場合じゃねぇだろコレ」
唸るような不機嫌声に苦笑う。
『燈弥君、久しぶり』
『実は君に頼みたいことがあってね』
『私の孫の斎良のことなのだが』
『君に孫の性癖を矯正してもらいたい』
『あの日のことで少しでも私に感謝の気持ちがあるのなら』
『どうか頼まれてくれないかね?』
「あの日のこと、感謝の気持ち、お爺様だぁ?.....燈弥話せ、全てを」
ヒナちゃんに永将さんとのやり取りを言う訳にはいかない。かといって嘘を言ってもバレそうだ。
「パーティの日、君と一緒に次の日を迎えることが出来たのは星菜のお爺様のおかげなんだよ。彼の人が永将さんを諌めてくれたから今がある」
「それがお前のお爺様呼びとどう繋がるんだ。いつ面識を持った?お前は俺と一緒にいたはずだ」
うーん、引き下がってくれないかぁ。
ここは仕方ない。
「内緒」
「はぁ?それで俺が――」
「どうして君はチビちゃんを目の敵にするの?」
「.........チッ」
「人には他人に言えないことが2つ3つあるものさ。僕としては互いに秘密を探り合うより、コレの解決策を一緒に考えて欲しいんだけどなぁ~」
これと言ってスマホを揺らす。
そうそう今問題なのは星菜の子息のことだ。僕としては老公に恩返ししたいからこの依頼を受けるつもり.....いや、恩返しというより借りを残しておきたくないんだ。だってあのお爺様は腐っても星菜の前当主だからね。さっさと借りを返すのが吉さ。
「.....ふん、アレは末期患者だ。もう治せねぇよ」
素直に引き下がったヒナちゃんに安堵すると同時に興味が湧く。彼がチビちゃんに向ける感情は何なのだろうかと。憤怒、悲哀、後悔.....僕が関係してるのは流石に気づいているが、それにしても殺意を滾らせすぎじゃないかと思う。
.....いつか話してくれるのだろうか?あぁ僕が話さない限り無理か。
「君にそこまで言わせるのかぁ、星菜先輩は」
「で、なにか案があるのか?」
「ん~.....お爺様が直して欲しいのは彼の性癖でしょ?でも性癖って直すことできないから....歪めようかなと」
「......なにを、する気だ」
「そんな恐ろしいものを見るような目で見ないでよ~。ちょっと暴力的指導をするだけさ」
「調教の間違いだろ」
「いいね調教。五大家の一角を調教出来たら今後の人生安泰間違いなしだよ。だって星菜の権力を意のままに使えるからね」
「緋賀だってお前が望めば.....」
「あはw本気で言ってる?ラスボスが居るのに?.....と、まぁ冗談はここまでにして。星菜先輩対策としてヒナちゃん、君の緋賀の仕事を見学したいんだけどいいかな?」
緋賀の仕事と言えばヒナちゃんの顔が強ばった。
あ~そんな顔をさせたい訳じゃないんだけど、今回ばかしは仕方ない。星菜先輩の調教は手強いから、それ相応の用意をしなくちゃ。
「嫌だ。他を当たれ」
「どうしても僕に見られたくないって言うなら、はいコレ録音機」
「?」
「これで痛がる人達の声を録音してきて。できれば呻き、絶叫.....聞いてて胸が痛むような音がいいなぁ」
「いったい何をするつもりなんだよ。こんなんで星菜を矯正できるとは思わねぇが?第一アレの――」
「やってみなきゃわからない。頼んだよ永利クン」
「っ!」
なにか言おうとした彼の言葉を遮るように名前を呼ぶ。すると途端に口を噤み逃げるように僕から目を逸らした。苦虫を噛み潰したような横顔が名前呼びの効果を示している。
ふふ、これからも使おっと。
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