仔犬のキス 狼の口付け ~遅発性オメガは義弟に執心される~

天埜鳩愛

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恋敵の台頭

恋敵の台頭5

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   動悸が高まり心臓が破けそうになりながらも、和哉は長い手足で布団を蹴り上げベッドから転がり降りた。そのまま這いずるように廊下に出てから壁を伝って立ちあがり、一階にまで何とか降りる。頭の中はどうにか兄の家まで向かうことしか考えておらず、縺れる脚でコートを着たところを物音に気が付いてギョッとした顔で廊下に出てきた桃乃と敦哉の両方に止められた。

「そんなふらふらの身体でどこにいくの!!!」
「行かなきゃ……。兄さんところに……」

 両親に抱き止められながら、再び熱が爆上がりして情けなくも膝から玄関の冷たい土間に崩れ落ちてしまった。
 父に客間まで引きずられて布団に寝転がされ、子供のようにスマホを取り上げられて安静を言い渡されたが、実際そこまでが体力の限界だった。しっかりと休まなかったためか体調が再び悪い方に傾き、和哉はその後一日布団の住人とかした。

 なんとか回復を見せた翌々日。まだ感染力があるかもと母から足止めされていた柚希が心配をしてドーナツを手に仕事帰りに駆けつけてくれた。
     心身ともに完全に回復しきれていない和哉は憂顔でぼんやりと自室のベットの上、勝手に再生される好みでない曲まで流しっぱなしで聞いていた。

「カズ?    起きてる?」

 柚希お手製のニラと卵の入った雑炊を手に兄は返事をせぬ弟の様子に体調がまだ悪いのだろうと眉を顰めた。そのまま持ってきた食器をPCを避けるようにデスクの端に置くと、気づかわしげにそっと指先で和哉の頬に触れてきた。

「カズ、丈夫だから滅多に寝込まないのに。やっぱりインフルエンザは相当キツかった?」

    体調不良の一因を作りこんできた兄のその呑気な口ぶりに苛立ち、手の甲を音がなるほど強く振り払う。すると日頃は穏やかな弟の思いがけぬ仕草に兄は大きな目をまん丸に見張りあからさまに傷ついた顔をした。しかし今の和哉にはそれに構う余裕がなかった。
     あの夜からどろりとしたマグマのような嫉妬心に  今も身を焦がされたままなのだ。

「兄さん、新年会のあった晩に部屋にいたのって、晶先輩だよね?」

   和哉のこの数日の鬱屈を全てぶつけるような詰問口調に、柚希は頬を引くつかせて答える前から怯んでいる。年始早々バイトに出てしまったのと病気のせいで、中々会えなかった愛しい柚希がすぐ傍にいる。

(いつでもあの柔らかな笑顔でいて欲しいのに)

 愁いと戸惑いを帯びたこんな顔を見たい訳では無いのにと、和哉はそのことにも自分勝手に傷ついた。寝転んだ姿勢から胡座をかいてベッドの上に座り直すと幼い頃のように兄を真っ直ぐ射抜くように見据えた。

「答えて」

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